デジモンアドベンチャー IB   作:煮干し銀

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少し期間が開いたので、どこかおかしいかも……。

ちょっと不安ですが、投稿します。


レジスタンスの最高顧問就任

 ピッコロモンの指示により、ティラノモンとグレイモンの戦いに手を出さなかった俺たちは、選ばれし子供たちがもうじき旅立つという事で、その前に会うべくピッコロモンの屋敷へと向かった。

 

「みんな久しぶり。元気にしてたかな?」

 

「「「「シンイチさん!」」」」

 

 戦いのあと、ピッコロモンの屋敷へと集まっていた子供たちの前に俺が姿を見せると、デジモンたちも含めて皆それぞれ一様に驚いてくれる。それをなんだか嬉しく感じながら、俺は彼らに歩み寄った。

 

「シンイチさん、物資ありがとうございました! あの物資のおかげで僕たち無事に砂漠を旅できました!」

 

 一番にそう言ってくれたのは丈だ。続いてヤマトと空も口々に感謝を述べてくれる。そんな彼らを見ていると自分たちがやっていたことが無駄ではなかったと改めて感じられて、嬉しいのと同時に少しばかりむず痒くなる。

 

「いやー、エテモンとの戦いでは役に立ってないからね。これぐらいはしないと大人としての立場がないし、今後もあんまり気にせず物資を使ってくれると俺としては嬉しいよ」

 

 一見謙虚な姿勢だから子供たちはそんな事ないと言ってくれるが、これは別に謙虚になっていっているわけではなく、俺の完全な本音だ。

 

 実はレジスタンスの戦力増強は現在いき詰まっている。

 レジスタンスを結成してから最初の頃は順調に進化と訓練を繰り返して、総合的な組織の力は上がっていた。ときおり現れる黒いケーブルをつけたデジモンたちを救出したり、エテモンの配下らしき連中を捕まえて情報を抜き出したりもした。

 

 だがここ最近はエテモンの動きが変わってきたのか、敵も集団で動いていたりして敗走することが増えている。個々の力は成熟期ばかりなのでこちらが高いはずなのに、成長期も混ざった敵の集団に負ける。これではレジスタンスが掲げる目的の一つである『被害を受けているデジモンたちの救出』もままならないし、いざ子供たちの戦いに加わろうとしても逆に足手纏いになってしまいかねない。

 

 だから今のところ、この件の改善点が見つからない状態では、レジスタンスは選ばれし子供たちの物資補給ぐらいしかまともにできないのだ。

 

 そんなこちらの事情など当然子供たちは知る由もなく。久しぶりに会った俺に対してこれまでにあったことを色々と話してくれた。

 

 しばらく話を聞いて、俺は光子郎君と話したいことがあるからと彼だけを呼んだ。話す内容はもちろんあのメールに書いてあったことについてだ。

 

「光子郎君。メール読んだよ。俺が若返ってるなんて気づきもしてなかった。まさか十歳も若返るなんてね。やけに体が軽いと思っていたけど、二十五歳の体力の衰えってやつをこうなって初めて実感したよ」

 

「やっぱり気づいていなかったんですね。あまりに自然に二十五歳と言っていたので、薄々そうなんじゃないかなと思っていました。ところで、あの手紙の続きについてなのですが……」

 

「ああ、もちろん読んだよ。ずいぶんと悩んでるみたいだね」

 

「はい……」

 

 光子郎の顔が俯き、少し影が射す。俺はそんな光子郎を安心させるように笑顔で話を続けた。

 

「あの件について俺も考えてみたんだけど、結論から言ってたぶん光子郎君たちが本体のコピーってことはないと思う」

 

「えっ!? な、なぜそう思ったんです?」

 

 ガバッと顔を上げて一歩近づいてくる光子郎。

 

「それについて話す前に一つ光子郎君に聞きたいんだけど、君たちは旅で出会った色んなデジモンに『選ばれし子供』と呼ばれているよね?」

 

「はい」

 

「だけどさ、よく考えてみたらそれって変じゃない? だって彼らは君たちに会う前から君たちのことを知っていたみたいじゃないか」

 

「あっ……! た、確かにそうです! レオモンも最初から僕らがそうであるかのように言ってましたし、デビモンもエテモンもそうでした。考えてみれば明らかに変です。僕らがまだ何もしていないうちから、僕らのことを『選ばれし子供たち』と呼ぶなんて!」

 

 光子郎は以前から知識欲が旺盛な少年という印象だった。だから俺は今回、光子郎の意識を『悩ませる問題』から『あり得るかもしれない一つの仮説に対する探究心』に変えて逸らしてやろうと思っていた。

 

 そこで、どんな内容であれば光子郎の意識を逸らせるかと考えた結果、思いついたのが『選ばれし子供』の謎についてだった。

 

 俺はデジモンアドベンチャーのアニメを見たことがない。なので、この『選ばれし子供』という単語にどんな意味があるのかは知らない。ただ一つだけ確かなことは、太一たち7人がデジタルワールドに来る前から『選ばれし子供』の存在は当たり前にこの世界に記録されていたということ。

 

「デビモンやエテモンがゲンナイさんと知り合いとは思えないし、それに俺たちはマップの記録と資源回収のために行った色々な場所で『選ばれし子供』についての記録を見つけてる。所々抜けてたり断片的ではあったけどね」

 

「……ゲンナイさんが記録したものでしょうか?」

 

「さあ、それはあの人に聞かないとわからないな。だけど、残っていた記録から読み取れた部分を繋げてみると違和感は結構あった。例えば人数が5人とか3人とかでブレていたりとかね」

 

 光子郎が黙って俺の言ったことについて考え込んでるのを見ながら、話を続ける。

 

「予言なりがあったとしても、各所に記録しておくのはエテモンやデビモンのことを考えたら危険すぎる。だから思ったんだ。これは君たちの事を記しているのではなくて、別の『選ばれし子供』のことを記しているのではないかって」

 

 俺の語った仮説に対して、光子郎はハッとした顔をする。

 

「そ、そうか! なんで思いつかなかったんだ! 僕らが最初の『選ばれし子供』とは限らないじゃないか!」

 

「うん。過去に君たちとは別の『選ばれし子供』がいて、何かしらの問題を解決したのだとしたら、この記録の内容は辻褄が合うんだ。そしてここからが重要なんだけど。記録には彼らがその後どうなったのか具体的なことが書かれていなかったんだよ」

 

「なるほど。書かれていないと言うことは、その後に特筆すべきことが無かったということ。過去の『選ばれし子供』が存在したと仮定して長くこの世界に留まっていたのなら、その後のことが一つも書かれていないのは不自然です。かと言って彼ら自身のデータが削除されたのなら、彼らの存在を覚えているデジモンたちがそのことを記録するはず。ということですか?」

 

「そう。記録から読み取ると、彼らは元の世界に帰ったと考えた方がしっくりくるんだ。まあ記録に抜けがあって不完全である以上、そうであると確定することはできないんだけど、でも少しは希望が出てきただろう?」

 

「はい。少なくともこの謎について調べ切っていないうちから不安を覚えるべきじゃないですね。それにゲンナイさんにもちゃんと話を聞きたいですし」

 

「そのためには、今はエテモンをどうするかを考えないとね」

 

「そうですね。ありがとうございました。シンイチさん!」

 

 背を向けてみんなの元へと走っていく光子郎。その背中は多少なりとも不安が解消されて少し背筋が伸びていた。

 

 良かった。これで光子郎もエテモンへの対処に専念できるだろう。デビモンの時のことを考えると、エテモンを倒すためには選ばれし子供全員の力が必要になる。光子郎が悩んだままなのは不安があったんだ。

 

「俺たちレジスタンスが力になれれば、テキトーな仮説で誤魔化さないで一緒に悩んでやれたんだけどな」

 

 スマホのデジファームアプリを起動すると、そこには進化条件を満たしたブイドラモンが映っていた。しかしどうしたことか進化ボタンは灰色になっていて、押しても進化不可能のポップアップメッセージが出てくる。

 

「進化さえできれば……何か隠し条件でもあるのか?」

 

 デジモンたちに相談してみても分からない謎の進化に必要な条件。成熟期のまま鍛えても、暗黒の力を得た完全体のエテモンには敵わない。

 

「俺たちは結局、選ばれし子供たちのサポートに徹するしかできないのか」

 

「何を一人でぶつぶつ言ってるッピ?」

 

 俯いていた顔を上げると、いつのまにか目の前にピッコロモンが来ていた。

 

「ああ、すみません。ちょっと考え事をしてまして」

 

「ふむ……。君の考え事についてはまた後にするッピ。今は出発する選ばれし子供たちを見送るのが先だッピ」

 

「そうですね。行きましょう」

 

 ピッコロモンの屋敷が建っている山の麓。選ばれし子供たちとそのデジモンたちが勢揃いしているのを、俺はピッコロモンと共に見送る側に立って見ていた。

 

 この屋敷に来た当時はアグモンを進化させることができないほどに精神が揺らいでいた太一も、試練を乗り越えてスッキリした顔で、ピッコロモンやシンイチに感謝を述べている。

 

 他の子供たちもどこか以前よりも逞しい顔つきになっていて、今の彼らからは頼もしさを感じた。

 

「それじゃあ、俺たちはもう行くよ」

 

「気をつけてね皆。また物資も送るし、何かあったら遠慮なく連絡してくれ。必ず駆けつけるから」

 

「ありがとう!」

 

「またねシンイチ! ウィッチモンも!」

 

「はいはい。あんたたちも体調には気をつけなさいよ」

 

 俺の横に立っていたウィッチモンの言葉を受けた後、背を向けて去っていく子供たち。これで俺たちがここで出来ることも終わりだ。

 

「よし。それではピッコロモンさん、俺たちも本部に戻ります」

 

「わかったッピ。でももう少し待つッピ。私の準備がまだ出来てないッピ」

 

「えっ? もしかしてついてくるつもりなんですか?」

 

「子供たちの修行が終わった今、私が次にやるべきことは君の助けになることだッピ。まだ会ったばかりの私でも君の心の揺らぎが分かったッピ。そんな状態で組織を運営していくことなど不可能だッピ。そこでこの私が君たちの組織の最高顧問に就任してやることにしたッピ! 光栄に思うがいいッピ!」

 

 捲し立てるようにそう言うピッコロモンに唖然とするしかない俺とウィッチモン。

 

 屋敷に戻って最低限の荷物をまとめたピッコロモンが戻ってくると、ピッコロモンは早速と言わんばかりに核心の一言を放った。

 

「君たちの組織は組織とは名ばかりの有象無象の集団でしかないッピ。私が最高顧問に就任したからには、組織再編を行なってスピーディーかつ的確に任務をこなせるようにしてやるッピ! さ〜て、忙しくなるッピ! 何をしているッピ? 早く行くッピ!」

 

 こうしてレジスタンスに最高顧問としてピッコロモンが加わることになったのだった。

 

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