デジモンアドベンチャー IB   作:煮干し銀

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育成アプリとツノモンの進化

 ツノモンによるとここはファイル島なる場所らしい。聞いたこともない島だ。しかしファイル島なんてまさしくデジモンっぽい名前じゃないか。

 

 俺はデジモンたちの世界『デジタルワールド』に来てしまったということになるのか?

 

「ありえない、けど……」

 

 目の前にツノモンがいる以上、そう思った方がまだ納得できる。

 

 俺が唯一プレイしたデジモンゲーム『デジモンストーリータイムストレンジャー』では現実世界にもデジモンが現れていた。ただあれは東京のど真ん中で、たいしてここは森だ。東京でそれっぽい事件があったとかは聞いた事もないし、そもそもあのゲームでデジモンが住んでいる森といえばデジタルワールドの森だった。

 

 変な話だよな。デジタルワールドでは自然豊かな場所に住んでるデジモンたちが、現実に出てくるとむしろ都会的なところの方が多いなんて。まあ、デジタル生命体という設定上、都会に住み着くのは仕方ないのかも知れないけど。

 

 とにかく、俺は自分がデジタルワールドにいると仮定して動くことにした。となるとお次はどうやってデジタルワールドから現実世界へ帰るのかという話になってくる。簡単に帰れるといいんだけど。

 

「ツノモン、この辺りに街ってある?」

 

「あるよ。はじまりの街って言うんだけど、ボクはあの街からここに移住してきたんだ」

 

「そうなのか。もし良かったらその街まで案内して欲しいんだけど、頼めるかな?」

 

「何しに行くの?」

 

「まあちょっとした探し物があってね」

 

「そうなんだ。でもごめん、案内するのは無理なんだ。実は最近この辺りに凶暴なクワガーモンが出てて……」

 

 ツノモンがいうクワガーモンは世代で言うと成熟期にあたるデジモンだったはずだ。たいしてツノモンは幼年期2。

 

 デジモンの世代は左から「幼年期1」「幼年期2」「成長期」「成熟期」「完全体」「究極体」と言う順番で上がっていく。一つ世代が上がるごとにかなり能力差が出てくることを考えると、「幼年期2」と「成熟期」という2段階も差がある状態では、かなりの脅威である事は間違いない。

 

「成熟期の友達とかいない?」

 

「いないね。それどころか成長期の友達もいない。成長期以上になると行動範囲が広がるから、あまり僕ら幼年期と関わることがなくなるんだ。同じ幼年期の友達は沢山いたけど、最近姿を見ないし」

 

「そっか……」

 

 これはきついな。現状俺がこの世界に来て出会ったデジモンはヌメモンとツノモンのみ。ヌメモンは成熟期だけど成熟期の中ではかなり弱いし、敵に立ち向かうより逃げることを優先するようなデジモンだ。俺にすらビビって逃げてたし。

 

 せめてツノモンが成長期に進化していればまだなんとかなるかもなんだけど。

 

 俺は無意識にスマホを取り出して、検索アプリでツノモンの進化先を調べ始めた。

 

「ツノモンの進化先は――ズバモン、リュウダモン、エレキモン、ガブモン、ゴブリモン、ブイモン、か」

 

 この中で俺がゲームプレイ中に使ったのはエレキモン、ガブモン、ゴブリモン、ブイモン。成熟期からのデジモンに乗っての移動を考えると、ガブモンかブイモンが現状では一番良いか。

 

 こんなことを考えても、そもそもツノモンは俺のデジモンというわけでもないし、第一どうやって進化させるんだよという問題もあるから意味ないかもだけど。

 

 俺がスマホに集中していると、ツノモンが急に胡坐をかいていた俺の足の間に乗ってきた。

 

「うわっ、ど、どうしたんだよツノモン」

 

「さっきから何を見てるのか気になっちゃって。その薄い板みたいなのはなに?」

 

「これか? これはスマホって言って、いろんなことができる機械だよ。ネットで調べ物をしたりとか、勉強や動画を見るのにも使えるんだ。例えばほら、これがツノモンの進化先のデジモンだよ」

 

 俺はそのまま今見ていたサイトの画面をツノモンに見せる。するとツノモンはその大きな目を輝かせて声を上げる。

 

「すっごーい! これが僕の進化先のデジモンなんだね。ゴブリモンとガブモンとエレキモンは知ってるけど、後のは知らないや。それに書いてある文字もヘンテコだ! ねえ、残りのデジモンはなんて名前なの?」

 

 文字がヘンテコ? そうか、デジモンはデジ文字ってのを使うんだったっけ。

 

「ズバモン、リュウダモン、ブイモンだよ。このデジモンの顔が表示されてるところを触ると次の進化先まで分かるんだ。やってみるか?」

 

「うん! ツノでも大丈夫?」

 

「あー、いや、ツノだとダメかも。でもそうか、ツノモンは手がないから、どうやってタッチさせるか。うーん……鼻は無いし、口のこの辺かな?」

 

 ツノモンは牙があるからか、口の上の部分が他より少し盛り上がっている。これならタップできるかな。そう思って、ツノモンの口辺りにスマホを近づけると、ツノモンはやってみるねと勢いよくスマホに向かってジャンプした。

 

 それは威力強すぎ。スマホが手からぶっ飛ばされる! と思ったのだが、スマホはなぜかぶつかられた衝撃を受けることなく手におさまっていた。そして次の瞬間、一瞬画面が光ったかと思うと、女性の声の機械音声が流れた。

 

『デジモンファームアプリにツノモンが登録されました。アプリを起動します』

 

 何が何だかわからないうちに、勝手にスマホの画面が切り替わる。そして画面に『デジモンファーム』のロゴが表示されると、次にツノモンの詳細データがポップアップ表示された。そして画面上に表示された進化先のモンスター全てが進化可能と出ている。

 

 これは……

 

「なになに? 何が起こったの?」

 

 びっくりして動転しているツノモン。俺はそんなツノモンに問いかける。

 

「ツノモン、もし今すぐ進化できるなら、進化したい?」

 

「え? う、うん。そりゃあしたいけど」

 

「そうか、落ち着いて聞いてくれ。どうやら俺のスマホを使えばツノモンを進化させたり、強くしたりできるみたいなんだ」

 

「ええっ!? そ、そうなの?」

 

「うん。それで、さっき見せたツノモンの進化先のデジモンのどれかに今すぐツノモンを進化させることができるようになった。もしツノモンが進化したいなら、この中のどのデジモンに進化したいか教えてくれるか?」

 

「えっと……」

 

「急に言われても混乱するだろうから、しばらく考えてもいい。俺はそれまで待つよ」

 

 正直俺自身も急展開すぎて混乱してる。でもこれはチャンスだ。ツノモンがどのデジモンに進化するにしても、これで街までの案内が可能になるはずだからな。

 

 だから俺は1時間でも2時間でも待つつもりだった。だけどツノモンの選択は思ってたよりもかなり早かった。

 

「決めた! 僕はブイモンになる!」

 

「早いな、本当にブイモンでいいの?」

 

「うん。せっかくなら知らないデジモンになりたいし」

 

 よし、これは今後のことを考えたら最高の展開だぞ。ゲームでは移動時間の短縮が何より重要だったからな。ライドラモン最高!

 

「分かった。それじゃあブイモンに進化させるぞ」

 

 俺はスマホ画面の表示からブイモンを選択し、進化しますかと表示されたメッセージの下のYesのボタンを押す。すると、画面をデジモンの方に向けてくださいと表示されて、言われるがままにツノモンに画面を向けた。

 

 光が溢れる。

 

「ツノモン進化! ブイモン!」

 

「おお!」

 

 本当に進化したぞ!

 

「やったよ! 僕進化した!」

 

「すごいぞブイモン!」

 

「「やった! やった! やった〜!」」

 

 はっ! ノリでブイモンと一緒にお喜びのダンスを踊ってしまった!

 

 ま、まあいいか。喜ばしいのは事実だし。

 

「ゴホン。あー、これではじまりの街まで案内してもらえるかな?」

 

「もちろんだよ! クワガーモンなんて、僕がぶっ飛ばしてやるさ!」

 

「あはは! そのいきだ! それじゃあ自己紹介だ。俺は泉堂真一(せんどう しんいち)。よろしくな、ブイモン」

 

「よろしく! シンイチ!」

 

 こうして俺たちは、はじまりの街へ向けた短い旅に出発したのだった。

 

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