デジモンアドベンチャー IB   作:煮干し銀

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エテモンとの決戦。そして消失

 ピッコロモンの最高顧問就任により、レジスタンスは急速に組織再編されていった。

 

 まずピッコロモンが行ったのは聞き取り調査だ。三十五名にもなるレジスタンスのデジモンたち一体一体に、レジスタンスへ所属する目的と、そのためにどれだけ自分の意思を無視できるかを聞いて回ったのだ。

 

 レジスタンスへの加入が友達や住処を奪われたことからくる復讐心であったり、これ以上の狼藉を許さないという正義感だったりという者は、総じて自分の意思よりも組織力の強化による敵の打倒の方を優先するという面持ちだった。ただ、中にはやはり自分の意思を優先すると言う者もいた。

 

 次にピッコロモンは、それら異なる指向性を持つデジモンたちをグループ分けした。戦闘部隊には復讐心や正義感から組織に従う者たちを、後方支援部隊には自分の意思を優先するデジモンたちを配置するようにした。

 

「組織よりも自己を優先するのは別に悪いことではないッピ。ただ暗黒のデジモンを相手にするのなら、組織を優先しない連携の綻びは致命的になるッピ。よって彼らは戦闘部隊から後方支援に回ってもらうことにしたッピ」

 

 グループ分けが終わると、次は部隊を役割で分ける。飛行部隊、海洋部隊、地上近接部隊、地上遠距離部隊、偵察部隊の五部隊だ。

 

 このうち飛行部隊と海洋部隊については元々進化していたデジモンが飛行特化か、海洋特化のデジモンが所属することになった。偵察部隊は素早さのあるスティングモンを筆頭とした少数部隊となり、残りのメンバーは地上近接部隊と地上遠距離部隊に分けられる。

 

 ここからが重要で、ピッコロモンは地上近接部隊と地上遠距離部隊に配属された面々の進化先を、彼らの意思ではなく独断で決めると言い出したのだ。驚いたことにデジモンたちは誰一人として文句を言わなかった。

 

 近接部隊は攻撃のティラノモンや防御のウッドモン。遠距離部隊はタンクモン、ゴリモン、海賊のような見た目のフックモンと、それぞれなるべく統一したデジモンに進化していった。

 

 これにより訓練による集団戦の精度は格段に上がる。戦闘部隊のそれぞれが所属しているデジモン同士の出来ることを把握しやすくなり、咄嗟のサポートもしやすくなったからだ。

 

 また、指揮系統もピッコロモンを総司令として各部隊のリーダーへ直接指示を出せる構造にしたことで、ピッコロモンの魔法による遠距離念話が驚異的に作用した。その結果、以前までなら押されて撤退していたエテモンの大部隊を完璧に打ち負かすことに成功した。

 

「すごいな、ピッコロモンさんは」

 

「当たり前だッピ。野生で生きて戦ってきた年季が違うッピ! それに君の役割は本来戦うことではなく、デジモンを育てることにあると私は思っているッピ。だから組織運営よりも牧場経営の方が君には向いてるんだッピ」

 

「そう言われるとそうかもですけど……うーん、複雑な気分です」

 

「もちろんこの世界で育てるだけで生きていけるなんてことはないッピ。だから君は君の側近の三体でどう戦うかを考えた方がいいッピ。軍隊の方は私に任せるッピ! 君には直接見えていない部隊を動かす才能はないッピ!」

 

 ピッコロモンのハッキリしたもの言いはキツイけど、同時に有り難くもある。俺の役割が減れば進化について考える時間も増えるしな。

 

 現状レジスタンスのデジモンたちは完全体に進化することができない。アプリを立ち上げなおしたり、スマホを再起動したりもしてみたものの、結果は同じだった。となるとやはり隠された進化条件があると思ったほうがいいだろう。

 

 そう考えていたところ、ピッコロモンはまさかの完全体への進化についての考察まで語ってくれた。

 

「君の力で完全体に進化させられないのは、君がこの世界でどういう役割を持っているのかが鍵になっていると思うッピ。君がこの世界に来た経緯を聞いたところ、明確な理由はわからないまでもある程度の予想をすることは可能だったッピ」

 

 俺のこの世界での役割が予想できると言う言葉に少し動揺しながら、俺はピッコロモンに聞く。

 

「そ、それはどんな役割なんでしょう?」

 

「それはもちろん選ばれし子供たちのサポートをするためだッピ。それ以外に君をこの世界に連れてくる必要性は全くないッピ」

 

「は、はぁ。まあ、そうですね」

 

「君は察しが悪いッピ。つまり君がデジモンたちを完全体に進化させられないのは、選ばれし子供たちのデジモンがまだそこまでの力を得ていないからだッピ! 君の力が子供たちの力から分けられたものであるならば、その力を超える進化を行えないというのは辻褄が合うッピ!」

 

 うーん。正直このピッコロモンの仮説は無茶苦茶にしか思えない。そもそも俺のデジファームアプリが子供たちのデジヴァイスの力から分けられたのであれば、三十五体ものデジモンを成熟期に進化させるのも十分に力を超えてるのではないだろうか。

 

 ここでピッコロモンの説を否定しても話が進まないだけで何の意味もないので、ひとまずそうですねと頷いておく。否定しようにも他に有力な仮説もないし。

 

 

 

 

 

 レジスタンスにピッコロモンが加入してからしばらく経った頃。物資を届けに行ったエアドラモンが、子供たちからのSOS要請を受けて帰ってきた。

 

 エアドラモンによると、現在子供たちは砂漠にある逆さまのピラミッドでエテモンと直接対峙しているらしい。ただ子供たちは全員でエテモンと対峙しているのではなく、空がエテモンと敵対しているナノモンというデジモンに連れ去られてしまったために、二手に分かれているのだそうだ。

 

 エテモンは配下のデジモンたちを集めてピラミッドを包囲している。数が多すぎて多勢に無勢の子供たちは、エテモンの強さも相まって追い詰められているらしい。

 

「そうか、ならまず飛べる飛行部隊の面々は早急に子供たちの元へと向かってくれ。空からの攻撃で敵の動きを乱すんだ」

 

「了解!」

 

「ピッコロモンさん、咄嗟に指示してしまいましたが、あれでよかったですか?」

 

「もちろんだッピ。それより飛行部隊だけじゃエテモン相手には力不足だッピ。近接部隊と遠距離部隊の半数は出払っているとしても、ここからピラミッドまで地上を行くとなると到底間に合わないッピ。私の魔法でもここからだと連れて行けてせいぜい三体が限界、何か手はあるッピ?」

 

「それなら近接部隊のガードロモンと俺のとこのガードロモンを一度退化させてブリンプモンに進化させれば、いま本部にいる部隊の半数ぐらいなら運べると思います」

 

「よし、ではその案でいくッピ! 私は選りすぐりを三体連れて先に向かうッピ。君たちはなるべく急いで後を追ってくるッピ!」

 

「承知しました!」

 

 ピッコロモンが選りすぐりを、近接部隊から二体、遠距離部隊から一体連れてテレポートする。

 

 俺はガードロモン二体を退化させてからブリンプモンへと進化させ、タンクモンとティラノモンをそれぞれ分けて乗せると、ピラミッドへ向けて出発した。

 

 遠距離部隊のブリンプモンは、タンクモンが機械の体をしていることから重く、さらに俺とブイドラモン、ウィッチモンも乗っているためか若干飛行速度が遅くなっている。そのことに気づいた俺は少しでも速度を上げるためにブイドラモンを退化を経て飛ぶことのできるエクスブイモンへと進化させた。エクスブイモンを俺を腕で抱えてハッチから外に出る。ウィッチモンも一緒だ。

 

 それでもわずかに速い近接部隊を乗せたブリンプモンに先に行くように指示し、俺たちも後を追うように飛んでいくと、やがて遠くの方に逆さまのピラミッドが見えてきた。ピラミッドの周囲ではデジモンたちが戦っており、その様はもはや戦争だった。

 

「あっ! シンイチ、あれ!」

 

 エクスブイモンの声にその視線の先を辿れば、地面に刺さったピラミッドの先端部分から濛々と煙が上がっているのが見えた。おそらく爆破による煙だ。だが、そんなことが些細なことに思われるような事態が、ピラミッドの直下で起きていた。

 

「なっ、なんだ!?」

 

 ピラミッドの近くにいたデジモンたちが次々にピラミッドの方に吸い込まれていく。その吸い込み口はピラミッドの下に現れた大きな穴。穴の中には黒く太い絡まりあったケーブルがまるで心臓のように脈打っている。

 

「飲み込まれたデジモンたちが粉々に分解されて消えていく。あ、あれが暗黒の力なのか……?」

 

 直後、ピラミッドが崩壊。まだ少し遠い空の上にいる俺たちを置いて、事態はどんどん進んでいく。

 

 崩壊したピラミッドの残骸から浮上する絡まって塊状になった暗黒のケーブル。その頂上には何故かエテモンが下半身を埋めて突き刺さっている。

 

 何やら叫んでいるエテモンが飛ばす緑色の球は、山を消し、スフィンクスを消し。あまりのパワーにこちらを標的にされたらと思うと俺は少しばかり震えてしまった。

 

「だけど、行かないわけにはいかない。ブリンプモン、俺たちは先に行く。行くぞエクスブイモン! ウィッチモン!」

 

「おう!」「ええ!」

 

 スピードを上げ、近接部隊のブリンプモンを追い越し、エテモンが目の前にまで迫ったところで、ようやく俺は選ばれし子供たちとそのデジモンたちの姿を発見した。

 

「みんなーっ!」

 

「シンイチさん! 太一さんが!」

 

「えっ?」

 

 光子郎の指の先に、暗黒の塊に埋まったエテモンに向かって、紋章を掲げながら走る太一の姿が見えた。俺の目はどうやら節穴だったらしい。みんなのデジモンは成熟期に進化していて体も大きいのに見逃していたなんて。それだけあの悍ましい暗黒の塊に目を奪われていたのか。

 

 いや、そんなことより太一を止めないと危険だ!

 

「俺が太一君を連れ戻しに……!」

 

 その時、太一の紋章が強く輝いた。

 

「グレイモン、超進化!」

 

 グレイモンが進化する。体はより大きく、その背には紫色の翼を生やし、頭、胸、左腕をより戦闘に特化した機械の体に変化させた。そのデジモンの名は……

 

「メタルグレイモン!!」

 

 完全体、メタルグレイモン。その巨体と迫力に圧倒される。

 

 メタルグレイモンはその巨大で暗黒の塊を弾き飛ばした。何てパワーだ。

 

「踏み潰してくれるわ!」

 

 と、メタルグレイモンに弾き飛ばされながらも体勢を立て直したエテモンが吐き捨てる。しかし、メタルグレイモンは謎の発光の後、胸元から必殺技『ギガデストロイヤー』を放ち、それが見事にエテモンに直撃。

 

 核弾頭一発分とも言われる破壊力は暗黒の力に何かしらの作用を与えたようで、暗黒の塊は急速に収縮していく。地面すら飲み込んでいくそれに、太一とメタルグレイモンも飲み込まれ……助けるまもなく、彼らは初めから何もなかったかのように、この世界から消失した。

 

 湧き上がる後悔の念。子供たちから漏れる震えた声。

 

 そんな俺たちを嘲笑うかのように、暗黒の塊が消えた深い穴から、巨大な黄色い4つの目が覗いてくる。

 

 エテモンが消えても、脅威はまだ終わってはいなかった。

 

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