色々あって更新が遅くなってしまいました。
レジスタンス本部で子供たちが休息をとった翌日、俺はリビングに集めた子供たちとそのデジモンたちに今後の方針を話した。
まず最初に、この話を拒否してそれぞれが独自の考えのもと動くことを制限しないと約束した上で、優先的に行うべきと考えていることをピックアップする。
一つ目はもちろん太一の捜索だ。これは当然行わなくてはならない。
二つ目はゲンナイの捜索。これには光子郎と丈が積極的に行うべきと反応してくれたが、他のメンツは太一優先でそこまでの考えはない様子。
三つ目はデジタルワールドの調査。これには子供たちも難色を示した。前二つはまだわかる。だがこれに関しては今する必要があるのかと。
「皆の疑問はもっともだ。だけど俺は太一くんやゲンナイさんの捜索と併せて調査も行っていくべきだと思う。理由は君たちの現在の状況にある」
「現在の状況というと、エテモンを倒して太一さんとアグモンが行方不明になったというところですが……」
「光子郎くんの言う通り、それが今の君たちが置かれている状況だ。そのことを踏まえて考えてみて欲しい。君たちは元々この大陸に来た目的があっただろう?」
「暗黒の力を持つデジモンを倒して、デジタルワールドを平和にすること、ですか?」
「そう。君たち選ばれし子供の目的はファイル島でゲンナイさんに言われた『この大陸にいる暗黒の力を持つデジモンを倒す』ことだった。そして、君たちはエテモンを倒した」
一度言葉を区切って全員の顔を見る。どうやらヤマトは俺が言いたいことに気がついたみたいだな。
「俺たち、エテモンを倒したのに地球に帰れてない」
ヤマトの言葉に、慌てたのは丈だった。
「き、きっと何か手続きに手間取っているんだよ!」
そうに決まっている、と続ける丈の表情は晴れてはいなかった。察していたのだ。この流れはデビモンの時にすでに見ている。今回も同じなのではないかと。
「残念だけど、おそらく君たちが戦わなくてはならない相手はまだいると思う」
これまで遺跡などで見てきた選ばれし子供たちに関する記録。断片的ではあるものの、いくつか見た記録の最後では決まって選ばれし子供たちが強大な闇を退け、デジタルワールドを救っていた。エテモンは完全体、デジモンにはさらに上の究極体という進化形態がある以上、ここで終わりなはずがない。
俺の言葉に丈以外の子供たちは取り乱したりすることはなかった。ただ、その顔には分かりやすく不安が張り付いている。
そこで俺は、この暗い話を断ち切るように希望的観測を述べる。
「昨日も言ったけど、これまで見てきた記録から考えれば君たちをこの世界に連れてきた存在は、君たち選ばれし子供全員を今回の事態への対処に必要なものとして扱っているはずだ。つまりそれは太一くんとアグモンが確実に生きているということに他ならない。もし太一くんに考えたくもない深刻な何かがあったとしたら、あちら側から接触があるはずだからね」
「それじゃあやっぱり太一は!」
「うん、どこかに必ず生きているはずさ。それがたとえ別世界に行ったのだとしても、君たちを連れてきた存在が必ず彼らを連れ戻す」
「だとしても、俺たちが太一のことを差し置いてこの世界の調査をする理由にはなりませんよ」
ヤマトの言葉に俺は頷いた。
「もちろん、君たちは太一くんの捜索を優先してくれていい。たださっきも言ったようにまだ君たちが戦うべき相手がいるだろうことは間違いない。敵に備えると言う意味でも、捜索の合間にデジタルワールドを調査して互いに報告し合うことは損にはならないはずだよ」
俺の言葉にミミが不安気に言う。
「確かに、何も知らないうちに襲われたらと思うと怖いわ」
「脅威に対して備える。受験に備えるのもおんなじだ。対策を立てておけば怖さは減る。僕は賛成します!」
丈が賛成して手を挙げてくれる。俺はそれを見て微笑みながら、ヤマトに向き直って問いかけた。
「どうだろうヤマトくん。デジタルワールドの調査、協力してくれるかい?」
「はい。それなら俺も納得です。でもなんでわざわざ俺に確認を取るんですか?」
「そりゃあ君が今のこのグループのリーダーだからだよ。先頭を歩く太一くんがいないなら、太一くんが行き過ぎないように制御していた君が副リーダーになる。つまり現状では君がリーダーということじゃないのかい?」
「俺がリーダー……?」
「最初は一番年上の丈くんがリーダーなのかなと思っていたけど、丈くんは皆とは違う視点から意見を出す重要な役割を持っているようだったし、突っ走る太一くんと冷静なヤマトくんがバランスをとってリーダーをやってるのかと思っていたんだけど、違ったかな?」
俺はずっとそう思っていたのだけど、皆が顔を見合わせているところを見るに、ハッキリ役割が決まっていたわけではないのだろうか。まあ、丈はリーダーには見えなかったのでこれまでの発言から勝手にそういう役割なのだろうと思っただけなんだけど。
「私は太一とヤマトがリーダーでいいと思う」
「確かに太一さんとヤマトさんが僕らを引っ張ってくれてた感じはありましたもんね。僕も賛成です」
「わー! お兄ちゃんがリーダーなんだ! あれ? でも太一さんもリーダーなら、本当のリーダーはどっちなの?」
「タケルくんこう考えてみて。太一くんとヤマトくんの2人は相棒で、2人なら1人の時よりも強くなれるんだ。だから2人ともリーダーでいいんだよ」
周りではこう言ってるものの、本人がその気がなければ意味はない。皆と話す傍らヤマトくんの顔をのぞいてみれば、そこには満更でもなさそうな笑顔があった。
「太一と2人だってのはちょっと気に入らないけど。やりますよ、リーダー」
「よし。それじゃあ今後のことについて詳細を詰めていこうか!」
それから俺たちは1時間半ほど話し合いを行った。
まず子共たちは3:2で太一の捜索とゲンナイの捜索に人を割り振り、1人ずつにレジスタンスのデジモンが一体つくことになった。
太一捜索班のリーダーはヤマト。メンバーは空、丈。ゲンナイ捜索班のリーダーは光子郎。メンバーはミミ。
2つの班にはそれぞれブリンプモンが同行し、それによりマップ埋めとスムーズな移動が可能となっている。毎日無線で連絡を取り合い、可能ならば拠点に戻ることで、精神的な負担を減らすことにも貢献している。
皆がそれぞれ捜索をしている間、俺は拠点のデジモンたちの訓練と、デジタルワールドの調査を行う。同行者としてタケルをそばに置いてもらった。これは現状唯一の完全体であるディノビーモンへ進化させるために、子共たちの誰かには残ってもらいたいという要望からヤマトが采配してくれた。まあ、たぶん弟の安全を一番に守りたかったんだろうね。タケルはちょっとだけ不満そうだったけど、こっちもやることが山積みで忙しかったから、すぐにそんな表情は引っ込んだ。
一ヶ月が過ぎ、二ヶ月が過ぎ。そして今は三ヶ月目。この三ヶ月いろいろあったけど、太一もゲンナイもまだ見つかっていない。あったことといえば、新たな闇の気配が漂い始めたということぐらいだろう。
拠点の周りをチョロチョロと隠れて飛び回るピコデビモン。最近の子供達の元にも姿を見せることがあったという。タケルを拐かしてトコモンと仲違いさせようとしたこともあった。その時はエクスブイモンが近くにいて、進化したパタモンと一緒に追い払ったらしい。
子共たちは全員紋章を手に入れた。けれど太一以外まだ誰もパートナーを完全体に進化させられていない。
子共たちが太一くんが見つからないことに焦りを抱く中、俺は彼らがデジモンたちを完全体に進化させられていない現状に、不安を感じ始めていた。