ブラスト進化でエクスブイモンになり、見事にクワガーモンを撃退した俺たち。墜落して燃えたクワガーモンはまだ生きていたので、また暴れないように一時的にデジファームの中に入れておくことに。
その直後、エクスブイモンの体は光に包まれ、元のブイモンに戻った。
「はぁ……はぁ……つ、疲れたぁ」
「お疲れブイモン。相当体にきてるみたいだな」
「うん。クワガーモンとの戦いよりも、さっきの一時的な進化がキツかった。身体中が燃えてるみたいで、今もちょっと全身ピリピリして痛い」
「そうか、ならブラスト進化に頼るのはやめた方が良さそうだな」
「そうしよう。もうこれしかないって時だけがいい」
どうやらブラスト進化はデジモンに相当なダメージを与えてしまうらしい。見たところ無理やり次の段階に進化しているようだったし、そりゃあ体に何かしら負担があっても然るべきだろう。
俺たちは水飲み場に戻ってまた少し休憩することにした。ブイモンがこんな状態のままでは先に進むわけにはいかない。
休んでいると、脅威が去ったことを感じ取って他のデジモンたちも集まってくる。その中には、申し訳なさそうな顔をしたバクモンとロップモンの姿もあった。
「あ、あの、シンイチとブイモン。さっきは逃げてすまんかった。俺っち、怖くて気がついたら逃げてしまってて……」
「ごめん、二人とも」
そんな風にしおらしく謝ってくる二匹に俺とブイモンは笑って答える。
「そんなに謝らなくていいよ。あんなのに襲われたら逃げて当然さ」
「そうそう。僕だってシンイチがいなかったらたぶん逃げてたし、むしろ立ち向かっていった僕らがおかしいだけなんだから気にしないで」
俺たちのそんな態度にようやく表情が柔らかくなった二匹。そのあとはクワガーモンを倒したことを賞賛してくれたり、その後のクワガーモンがどうなったかなどを話した。
しばらく休んでいる間、俺はデジファームのモンスター詳細情報を開き、色々と考えていた。もしまた今回のことようなことがあった場合を考えると、せめて成熟期には進化しておきたい。ただ、成熟期に進化するためには少しステータスが足りないようだった。
(道中で鍛えてステータスが伸びれば進化できるけど、ここまでに出会ったアグモンみたいに勝負を仕掛けてくる奴がこの先にもいるかな)
デジモンのステータスを伸ばすには、レベルを上げるかファームで特訓する必要がある。ただファームの方には現状特訓用の機材がないので、実質今はレベル上げしか取れる手段はない。
とりあえずあと1レベル上がれば進化可能になるデジモンが出てきそうだし、これについては道中で考えよう。
お次はこのクワガーモンについてだ。
クワガーモンというデジモンはゲームでの印象だとこちらを襲ってくる凶暴なデジモンという感じだった。ここでも同じだったわけだが、となるとこのクワガーモンをそのまま解放するのは、後々を考えても厄介だ。また襲われるかもしれないし、それにこのあたりに住むデジモンたちにとっても安全を脅かされてしまう。
とはいえこのままクワガーモンをファームで飼うというのは論外だ。クワガーモンを入れた際に気がついたのだが、どうやらファームに入れられるデジモンの数は現状二体までらしいのだ。貴重な枠を腐らせたくはない。
という事で、クワガーモンには申し訳ないが退化させてもらうことにした。
退化先のデジモンは『コクワモン』。デジモンストーリータイムスとレンジャーではプレイヤーを助けてくれる存在だったので、知能や凶暴性に関してもこれで大丈夫だろう。
アプリの画面からクワガーモンを選択し、退化先のコクワモンを選ぶ。コクワモンはこの世界では見ていないが、退化することは可能なようだ。
本当に退化するかというメッセージに即座にYESを押す。すると、スマホの画面に退化演出のムービーが流れて、ムービーが終わるとファームにクワガーモンではなくコクワモンがいた。
そのままコクワモンを選択して外に出すボタンを押すと、スマホの背面から光の筋が目の前の地面に伸びていき、コクワモンが現れた。
「うおっ、な、なんだこいつ!?」
「ごめんブイモン、驚かせた。こいつはさっきのクワガーモンを退化させたコクワモンってデジモンだ。コクワモン、俺の言ってることがわかるか? わかるなら返事してくれ」
「こ……こ……」
うん?
「こここ、この度は誠に申し訳ありませんでした!!!」
「ええ?」
詳しく話を聞いてみると、どうやらコクワモンはもともと臆病な性格だったのだが、クワガーモンに進化したことで凶暴性が高まってしまい、手当たり次第に攻撃するようになってしまったらしい。
俺たちの言葉も理解はしていたらしい。ただのおもちゃぐらいにしか思ってなかったみたいだけど。
「こ、コクワモンに退化していただいたおかげで冷静になれました。あのままクワガーモンのままだったらと思うと恐ろしい……退化していただき本当にありがとうございました! これからはあなた様をご主人様と呼ばせてください!」
「ご、ご主人様!? いやいや、それはやめて! 変だよそれは!」
俺はご主人様なんて呼ばれたくない。だから必死に抵抗したのだが、しかしコクワモンのしつこさは異常だった。クワガーモンの凶暴性は進化したせいかもしれないが、いつまでも追って来るしつこさは元来の物だったということか。
結局仕方なしに俺が折れることになった。コクワモンはまるでメイドのように俺の世話をしたがる。そこは執事のように必要なときに助言したり手伝ってくれたりするだけにとどめてほしかった。お前オスだろ。デジモンに性別があるかは知らないけど、オスに違いない。
コクワモンはブイモンをはじめとしてバクモンやロップモン、そのほか周りにいたデジモンたちにも謝り、優しいデジモンたちはそれを許した。
そして、休憩を終えた俺たちは水飲み場を後にし、はじまりの街を目指して旅を再開した。
サバンナエリアを歩き切り、やがてはじまりの街があるという森の入口へと到着する。この森は最初にいた森と少し様子が違うように見えるが、大部分は変わらなかった。ただ一つ、おかしいと思えることがあるとすればそれは……
「なんか地面が揺れてないか?」
さっきから地面がずっと揺れているような気がしていることだ。
どうも森に差し掛かってから震度1か2程度の揺れが頻発している気がする。この森の奥で超巨大なデジモンがどしんどしんと歩きでもしているのだろうか。
「この森ってめっちゃデカいデジモンが住んでたりする?」
「いや、僕はそんなの聞いたことがないけど。みんなはどう?」
「俺っちも知らないな」
「私も」
「私もぞんじませんね。新しく住み着いたのでしょうか」
「うーん……」
もし仮にそんな巨大デジモンがいるのなら、森に入るのは危険かもしれない。足元が見えなかったとかで踏みつぶされてしまうかもしれないし。迂回するか?
そうやって考えていると、次の瞬間立てなくなるぐらいの巨大地震が起こった。
「な、なんだ!? 本物の地震!?」
震度5ぐらいはありそうな揺れ。しかし、ことはそれだけでは終わらない。なんと目の前の森とサバンナエリアの境界線に亀裂ができ始めていたのだ。
俺はとっさに叫んだ。
「ま、まずい! みんな森に走れ!」
俺とブイモン、そしてすぐ横にいたコクワモンは間一髪森の方に逃げ込む。しかし、後ろにいたバクモンとロップモンがサバンナエリアの方に取り残されていた。
亀裂はどんどんと大きくなる。これはもう走って飛び越えられる距離じゃない。
「バクモン! ロップモン!」
「お、俺っちたちは大丈夫だ! 何とかそっちに渡って見せる。見ててくれ!」
バクモンは自身と恐怖半々の様子でそう叫んだ。
バクモンは飛んでいるので一匹ならこっちに渡れるかもしれない。だがロップモンを背負ってとなると難しいだろう。
どうにかしたいが、しかし俺たちにできることがないのも事実。俺は見守るしかなかった。
バクモンはロップモンを背負う。やっぱり重いようで体が地面についていた。バクモンはそれでもその状態で亀裂に向かって飛び出した。バクモンの身体が亀裂の中に落ちていく。
だめかと思われたその時だった。ロップモンがその大きな耳をいっぱいに広げたのだ。下からの風を受けて浮き上がった。これはいけるか。
「だ、だめだ。あれじゃ届かないよ!」
もうすこし。ほんのもう少しで届きそうだったのに。無情にも亀裂の広がる速度が二匹が飛んで渡ってこれると思っていた想定距離をオーバーしていた。
「この距離なら……! 私が行きます!」
コクワモンが飛び出していく。コクワモン、お前飛べたのか。
コクワモンは背中のスラスターを噴かせてロップモンの後ろに回り、その体を持つと一気に噴射させた。勢いよく浮き上がる三匹の体がこちらへ飛んでくる。
そして、三匹はなんとか森の方に到達。勢いあまって地面に跡をつけながら着地した。
「はあ~、よかった」
俺とブイモンは安どのため息をつく。
それにしても、あまりにも唐突で恐ろしい出来事だった。すでにサバンナエリアは亀裂に入り込んだ海水に分断され、別の島のように見えている。
いったいこのファイル島で何が起こっているのだろうか。
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