負けず嫌いのオレっ娘獣人少女が天才聖女に敗ける話   作:とろろろもち

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入学試験受ける

 

 

「お嬢ちゃん、もう少しで到着だよ。」

 

「はーい…」

 

 御者のおっちゃんの声を聞いて、耳をパタパタ動かしつつ微睡みから意識が浮上する。馬車の幌から顔を出すと、目に入ったものは無数の塔が乱立する都市と、それを覆うとてつもなく巨大な薄い虹色の結界だった。

 

 馬車に数日揺られた末、オレは世界の叡智が集まる場所マギアウルブス、通称魔法都市に到着した。

 

「え、なにこれすげ……… これが魔法都市か〜。」

 

 魔法都市では城壁が無い代わりに、神代から続く秘宝(アーティファクト)を用いて魔物の侵攻を防ぐ大結界が張られていると話には聞いていたが、実際に目にするとそのデタラメさに驚く他ない。

そして魔法学院の一部らしい都市の真ん中にそびえ立つ最も高い塔がその存在を主張していた。

 

 やばい、この都市での生活に心が躍って仕方がない。これ今のオレを客観的に見たら完全にお上りさんだよなぁ…。

 

「嬢ちゃんの腕前で魔法学院の試験に落ちるとは思えんが、合格できるよう応援してるぜ、頑張ってきな!」

 

「ありがとう!まぁ天才たるこのオレにかかれば余裕で首席合格だぜ!」

 

「ふっ…デカい口を叩くもんだ、だが嬢ちゃんならマジのマジで首席合格…イケるかもしんねぇなぁ」

 

 2日目の馬車でホーンラビットに襲われた時、そいつらを身体強化+雷魔法を纏わせた双剣であっさり高級食材に変換にしたことから仲良くなった御者のおっちゃんに別れを告げ、オレは都市にはいる審査を受けに行った。

 

 魔法学院への受験希望者であることを伝え、武器の扱いについて諸注意を受けた後都市に入ったオレは、さっそく目を輝かせていた。

都市の主要街道は、不自然なほどに均整が取れすぎている美しい石敷きの道だった。おそらく土魔法の応用で組んでいるのだろうか?

 

 街道は、多くの人がひっきりなしに往来していた。ここ魔法都市では危険性の高い大規模な魔法を除いて、他者に危害を加えない限り大体の魔法の使用が自由となっている。

 

 道を歩く学生のような若者は、肩から下げた鞄をふわりと浮かせ、重さを感じさせないまま歩いている。また、不自然なほどに静かに進む荷車の車輪をよく見てみると、わずかに浮遊して地面を滑るように進んでいた。

 

 何より故郷では考えられないほどの数の飲食店、装備売り場、そして書店や図書館が街道に沿って数多く展開されていた。

 

 ああもう全てが気になりすぎてしょうがない!荒ぶる心を抑えつつ、オレは試験を受けるため先ずは宿を取りに歩いた。

 

 

 

魔法学院第一次試験、筆記――終了。

 

 終了の合図の鐘が鳴ると、テスト特有の緊張感ある雰囲気が途端に和らいだ。

 1次試験の筆記はだいぶ良い手応えを感じた。特に魔法学の自由記述の部分で、自らが編み出した身体強化による思考加速と、結界魔法の瞬間的な足場としての活用について書きまくったので、加点間違いなしの満点間違いなしである。

 

 算術や歴史などの教養の範囲もパンピーにとっては難しいものだったのだろうが、前世持ち越しの朧気な数ⅢCまでの記憶と、教会の歴史書を読みあさって綿密に対策をしたこのオレからしてみれば赤子の手をひねるよう(さすがに過言)だった。

ちなみに試験中は魔法の使用禁止なので、思考加速を試験で使いヌルゲー化とすることは叶わなかった。

 

 とはいえ筆記と実技の配点はそれぞれ500点なので、気を抜くことは許されない。親にも散々言われたように、いかにこのオレが天才であるからといっても慢心してはいけない。

 

 試験棟を出ると、まだ少し寒い外の空気が快適に感じられた。ぞろぞろと同じ受験生たちが流れ出てき、それぞれ2次試験会場に向かっていく。

 

 人が過密すぎて前が見えん……牛乳を飲みまくってきちんと寝ているのにもかかわらず、10歳頃から全く身長の伸びない己の肉体を恨む。

 

 実技試験会場のだだっ広いグラウンドに向かうと、試験官を示す腕章を着けた何人かの教員が並んでいた。しばらく待っていると、体格のいいゴツいハゲの試験官が前に出てきた。

 

「これから実技試験の試験内容を説明する。何回も言うのは面倒くさいからちゃんと聞いとけよ。」

 

図体がデカいだけあって中々の声量を持つハゲの試験官が説明をする。

 

「実技試験の内容は至ってシンプル、テメェの最も得意な魔法を俺たち試験官の誰かに披露しろ公正に評価してやる。」

「披露形式は自由だ、模擬戦をするでもそこら辺に向けて打つでも面倒くさい方法以外ならなんでもいい。」

「そんじゃ見せに来る準備が整ったやつから順番に名前を言ってから来い。ここでは全員に受験証と連動した致命打を無効にする魔道具が使われてるから殺される心配はないぜ。」

 

 まぁ例年と比べて雑すぎる気がしないでもないが、概ね傾向通りの内容だ。オレは適当に説明をしてたハゲ試験官の列に加わった。

 

「ファイアアロー!ファイアアロー!、はぁ…はぁ…ファイアアロー!くそっ、この人形硬すぎだろ…。」

 

「そこまでだ、まぁ筋は悪くねぇよ。」

 

 前で試験を受けている奴が必死に魔法を連打して、人形を壊そうとがんばっていた。

 周りを見るに、おおよその人間が、魔法の最大出力値をアピールするためか、結界がガチガチに張られている人形に魔法を撃つという方式を選択しているようだ。

 

 模擬戦を申し込んでる奴もいるが、受験生たち的には何もできずボコられるより、人形に撃つほうが評価を取りやすいという考えだろうか。

 

 そんな感じでボケっと他人の試験の様子を眺めて待っていると、自分の番が回ってきた。

 

「よし、次はお前だな。受験番号と名前、そして希望形式を言え。」

 

「受験番号287番のフェリックス・ノルシアです。模擬戦形式でお願いします。」

 

 双剣は貸し出されていなかったので、妥協で選んだ刃が潰されている模擬戦用の片手剣をもち、変なとこで減点されないよう丁寧に発言する。

 

「了解した。チビのくせになかなか気概があるじゃねえか、まぁ手加減してやるからさっさと来るんだな、猫ちゃん。」

 

「チビ言うな殺すぞ

 

「すまん侮辱だったな。いや、事実を伴っているから名誉毀損か?」

 

オレはブチギレた

 このクソハゲを最短で()るという確固たる意識をもって、もはや息をするかのように組めるまでになった身体強化と思考加速を発動。途端、世界が自分の動きを含めてスローになる。

 意識の加速した世界の中で雷魔法を並列で組み、体と模擬戦用のカスみたいな剣に纏う。まとった魔力によって全身の毛が波立つのを感じる。そして電気信号をもって強化した全身の筋肉を思考の加速についてこれるよう操作する。複数属性の長時間多重発動は脳が疲労するので、速攻を選択、足元に小さく発動した障壁を蹴り、加速する。

 

 瞬間、オレは音を置き去りにハゲの首目掛けて肉薄した。

 

 ガキィン!!

 

 金属同士がぶつかるバカでかい音が響く。

 チッ…このハゲ中々勘がいい、本能的に片手剣で首を防御したようだ。

見ればハゲの片手剣は真っ二つになり、首は少し切れている。だが致命となる動脈には至っていないようだ。双剣だったらこれで殺れたんだけどな…

 完全に防御されても抜ける算段だったので、ハゲの防御性能想定を上方修正しておく。

 

 まぁオレの片手剣は無事なので、もう1回やれば殺せる。再び魔法を組む。

 

ま、まて!、落ち着け!死ぬ、死ぬから一旦止まれ!」

 

 何やらハゲが喚いている。致命打を受けると保護が発動すると事前に言っていたことから、この発言は嘘だろう。安いひっかけ問題か?

 

 魔法を展開しっぱなしのオレにハゲは驚いたのか絶叫するように発言する。

 

終わり!オマエの実技終わり!終わりだからその構えを解いてくれ!ガチで頼む!バカにしたのは済まなかった出来心だ許してくれ!!」

 

 ハゲが命乞いをするかのように捲し立てる。

 どうやらオレの実技試験は一瞬で終了してしまったらしい。この怒りの落とし前を付けたいが、今ここで殺ってしまうと減点対象となる恐れがある。不完全燃焼な気分を隠せないままオレは魔力を霧散させ、構えを解いた。

 

 ハゲに向かってクソでか舌打ちを披露しつつ実技修了者の待機所に向かうと、なぜか半径5メートルほどの空白がオレを中心に空いており「化け物…」と周りでヒソヒソと話されていた。

 オレは正当に怒りを表したのみであると言うのに、解せぬ。

 

 

 

 オレが待機所に入ったその瞬間、視界の端から全てを白く、白く塗りつぶすような極光が迸った

 

 唖然としつつ邪魔な受験生をどけて発生源を見ると、そこにはどこまでも蒼く深い宇宙のような瞳を持った白金のような髪を持つ、端正な女が立っていた。

 

 バカみたいな出力だが、おそらく光魔法の光線(レイ)だろう。人形を壊す内容の試験を選択したようだが、魔法を撃った跡には何ものこっていなかった。でしょうね

 

「あれが今代の聖女か…」「格が違うな…」

 

 オレの周りの受験生が何やら喋っている。都会の情報はよく知らないオレだが、何やら凄そうということだけは伝わってくる。

 

 腰を抜かしたそいつの担当らしき教員を不思議そうに見た女は、何か合点がいったような顔をすると、今度は何を思ったのか光属性と闇属性の魔法弾を手に浮かべ、お手玉をするかのように回し始めた。

 

 それは時間が経つにつれて火、水、地と属性を増やし始め、ついには全属性の魔力球をくるくる回していた。お前聖女と言われてるくせに闇属性も使えるのかよ。

 

 マジでバカすぎる。

 属性魔法への適性の個人差云々とは何だったのか、この女は全属性への適性に加え、規格外の魔力出力値と操作性能を持つようだ。

 

 よく観察すると魔法を発動する間、女の宇宙を思わせる両目が薄く煌めいていた。何らかの特異体質なのか?

 その女試験官らしきやつは驚愕のあまりぶっ倒れており、助っ人のような教員が試験終了を伝えていた。

 

 じっと考えながら観察をしていると急にその女はこっちを見て、何秒か経ったあと移動していった。

 吸い込まれるような瞳だった。

 

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