負けず嫌いのオレっ娘獣人少女が天才聖女に敗ける話 作:とろろろもち
ふと見たら赤バーが満タンになっていて嬉しさのあまり小躍りしました。
評価、感想、ここ好き等々ものすごく嬉しいです!ニマニマしながら見てます、ありがとうございます!
性癖の自給自足の為に書いているような本作ですが、楽しんで見て頂けると幸いです!! 誤字報告たすかります!!
「いや〜……正直言うとさ」
ふわふわの栗色の髪、寝不足そうなクマのついた目、首から下げたゴーグルは片方がひび割れ、白衣の裾は焦げている。
依頼を通して仲の良くなった、魔具研屈指の倫理観ゆるキャラこと三年のロスカ先輩が言った。
椅子にだらしなく腰掛けながら机に肘をつき、工具をくるくる回している。
「めっちゃ大変だったよ?」
そう言って机の上に金の意匠が施された白いチョーカーを置いた。
幅は指二本分ほどで、内側にはびっしりと細かい魔術刻印が刻まれている。密度がすごい
「おおっ!」
オレは目をキラキラさせてその魔道具を見る。
「フェルちゃんさぁ……持ってきたログとデータがもう、頭おかしい。」
「そうか?」
「そうだよ!」
先輩は即座に食いついた。
「脳疲労の推移、神経伝達の部位による遅延分布、思考加速度の誤差補正、その処理の個人差と共通部分やら何やらたくさん。こんなデータを本当に君の故郷で、しかも二桁に乗るかどうかっていう年齢で取ったの?」
「しかもさ、限界ギリッギリのデータが一番充実してるの、ホントに何?」
「…日々の脳トレの産物ですかね」
「ええ……君そんなことして今までよく生きてこれたね。」
失礼な、オレは周りの安全はともかく自己の安全はしっかりと意識するタイプだ。(カス) まぁ無茶をしたことはなくはないが…
向こうの作業台から、毎度のごとく化け物をみるような目で常識人達がこちらを凝視していた。
ロスカさんはケラケラ笑いながら手を振る。
「でも正直、フェルちゃんの持ってきてくれたデータがなかったら間に合わなかったよ。」
やったことない分野だったし、とチョーカーを持ちながら言う。表情が少しだけ真面目になった。
「時間をかければもっと機能は増やせただろうけど、今回は出力と安定性に特化させた作りになっているよ。いやーもっとおもしろい機能盛り込みたかったんだけどねぇ…」
「安全機構はもちろんつけてる、異常信号が出たら緊急停止されるようになっているし、コントロールが出来てれば上限が上がる感じに設定してるよ。」
部長が後ろでサムズアップをしていた。
「もうちょっと研究が進めば、一般利用もイケるんじゃないかなぁ?なかなかお金稼ぎになりそうな気がするんだよね。これ使うほど魔法を並列発動する人はあんまりいないと思うけど。」
フェルの手にチョーカーが渡される。
思ったよりも軽いが、刻み込まれた術式に金と時間と手間の重さを感じる。
カチリ、とチョーカーを付ける。
それを見た先輩はにっこりと笑った。
「ありがとう、助かったよ」
「まぁたくさんお金と魔物の素材もらったからね、フェルちゃん田舎上がりなのにその財力は意外だったよ、決闘頑張ってね。
あと、魔具研に入部するなら大歓迎だよ。」
「故郷にいる時に魔物狩りで稼いでるからな、部活は他も見てから考えることにするよ。
まぁ今のところオレが一番興味あるのは魔具研だけど。」
オレの発言が気に入ったのか機嫌の良さそうな先輩を背に、オレはチョーカーを着けたまま魔具研を後にした。
規則正しく円形に石畳が広がる第一演習場の外側で、大勢の生徒が遠巻きに囲んでいる。オレとステラはその中心で静かに向かい合っていた。
「……確認する」
淡々とした声だ
「今回の決闘の勝利条件。
相手の
「そうだ」
短く返す。
オレは蒼い双剣を抜き、全身に薄く雷を走らせる。
首元のチョーカーも問題なく作動している。
対面に立つステラは相も変わらず無表情だった。
姿勢は真っ直ぐで、肩の力は抜けたまま何もしていない。
思えばコイツはいつも退屈そうな顔をしている。
「…準備は?」
気だるげにステラが問いかける。
「大丈夫だ」
——ひゅう、と風が吹いた。
「っ!」
次の瞬間、オレの視界は白く塗りつぶされていた。試験でも見せた
恐ろしいほどの数がオレ目掛けてホーミングを付けて飛んでくる。相変わらずとんでもない出力と操作だ。まぁオレのほうが強いが
——バチバチッ
纏雷の出力を上げ、オレは踏み込んだ。
向かってくる
駆けながら対魔法に性能を振った
——ギギィン!!
「チッ、硬すぎだろ!」
オレの双剣による一撃は、ステラの展開する多層障壁を半分ほど貫通した所で阻まれていた。
障壁を足元に展開し、踏み込んで加速を維持する。展開される弾幕を加速した思考と速度のゴリ押しですべて回避し、次の出方を考える。
ステラはわずかに眉を動かし、不思議なモノを見つけたような目でオレを見た。
直後、先ほどよりも圧倒的に速度と大きさを増した膨大な数の光線が新たに展開された。
対応が遅れ、死角から来た一部がオレの脇腹をかすめる。
「ぐッ…」
焼けるような痛みを意図的に無視して回避行動を維持する。
さっきとやることは変わらない、避けきれない分は斜めに展開した障壁で流す、正面から向かってくる光線は手にした双剣で切り捨てる。
避ける、防ぐ、避ける、斬る
チョーカーがしっかり発動している。
思考が鈍らない、あれほど負担だった魔法の並列使用が息をするかのように継続できる。
——ああ、楽しい!
障壁を足場に飛び回り、音を置き去りにステラに斬りかかる。身体強化を足に重点的に回し、纏雷を最大出力にして双剣に集中させ——
バギン!
多層障壁をぶち抜いた
「—っ!」
「ハハハッ」
ステラは驚きの感情に顔を染めつつも驚異的な反応速度で双剣を避けようと回避行動を取り、すんでの所で肩を掠めるに収まる。
だが甘い
——バチィ!
即座に双剣の纏う雷により
溢れる血に確かな手応えを感じつつ、追撃をしようと双剣を再び振りかぶる。
その瞬間。
オレは世界が、凍りついた様な錯覚を覚えた。
圧倒的な威圧を前に本能的に後退する。
今まで見たこともないような表情でオレを凝視するステラの瞳が、星屑を詰め込んだように輝きを増していた。雰囲気がさっきまでとはまるで違う。
なんだ、あれは
ふざけたことに、内臓が溢れそうなほどだったステラの傷は時間を巻き戻すように消えた。
そして
「ぁ゛あっ!」
オレの左手の、根元から先が消失していた。
遅れて切断面からやって来る激痛を気合で堪える。何故だ、オレは何によってこの傷を負ったんだ?
「っ゛、はは……」
回復を切断面に回す余裕は無い。オレは歯を食いしばりながら
「あぎっ…」
ジュッと肉が焼ける音と共に、激痛を加速した思考で余すことなく感じる。
クソ、思考加速のデメリットはこういうところにもある。——だがこれで失血死は免れた。
加速した思考で考える。切断面から見て、おそらく今のは空間魔法の転移か? あの強制力は意味不明だが、転移は座標指定が繊細だったハズなので、立ち止まった瞬間を狙われたのだろう。
左腕の消失による姿勢制御の悪化は、尻尾を使って補う。左手にも纏っていた雷を、右の双剣のみに集中させる。
小さく構築した
まだ動ける。
——ズンッ
その時、ステラの目の輝きが増すと共に石畳の地面が泥沼へと変化し、オレの体にかかる重みが増した。そして今までの数倍の密度の
もはや思考加速込みでも視認がギリギリなイカれた弾幕を、死ぬ気で避ける。
(きっっつい!! 地+水の泥沼化と闇属性の引力か? この制御もう人間辞めてるだろこれ、多分泥沼に触れた時点でアウトだな)
オレは泣きそうになりながらチョーカーの限界ギリギリまで足の強化出力を上げ、自前の障壁のみを足場に地面に足をつけることなく疾走した。
超高速で飛来する新たなタイプの
さっきまでの飽和攻撃とは違い、逃げ道を封じるように一本一本が展開されている。
(コイツ今まで舐めプしてたのか!? 精度と密度の上がり方がヤバすぎる!!)
即席障壁を足元と光線の到達地点に展開し、踏み切り、軌道を変えて飛び、雷を纏わせた双剣で迎撃。
切る、弾く、かわす、滑り込む。
それでも——追いつかれる。
肩が焼け、耳を極光が掠める。
「ぐッ……!」
身を焦がす痛みを無視し、演算を限界までぶん回す。首元のチョーカーが狂った様に熱を持っているのを感じる。
それでも——
——オレが勝つ!!
先ほどまでの攻撃でステラに溜まった電荷を解放する。本来オレは外部に出力する高威力の魔法は使えないが、仕込みがあれば発動ができる!
ステラに向かって雷が走った。
二度目の
白金の髪が揺れた。
増した重力に足を引かれるも、
視界の中央に、こちらを見るステラがいた。
いつものジトッとした無表情とは違い、怒りとも驚愕とも取れない顔をしている。
オレを見つめるその瞳は煌めいており、綺麗だなと不意に思った。
オレは、右の双剣を全力で振りかぶった。
「はぁッ!!」
纏う雷を限界まで圧縮し、一閃。
展開された障壁を斬り、光線を裂き、空間そのものを割るような速度で、ステラへ——
だが、その剣閃が届くことはなかった。
ステラの手の中に、白く輝く剣が握られていた。
超高密度に収束された光魔法が、実体の刃として存在している。
オレの雷刃と、交錯する。
火花が散り、空気が爆ぜ、視界が白く弾け飛ぶ。
———押し負ける
白い閃光が迸る。
オレの、右足の感覚が、消えた
視界の端でオレの足がくるくると回りながら落ちていくのが、どこか他人事のように見えた。
遅れて、痛みが来る。
「……ぇ?……あ、」
見れば、ステラはその身に白い雷を纏っていた。
足がなくなったことでバランスを失い、姿勢が崩れ落ちていく。
尻尾で無理やり体勢を立て直そうとするが、もう制御が効かない。絶望がオレを支配していく
——ドン!!
ステラの放った圧倒的な出力の
パキンと言う音と共に、赤い粒子が視界に入る。
内臓がシェイクされる感覚。オレの小柄な身体が玩具のように吹き飛ぶ。
「……っ、はっ……」
肺の空気が無理やり押し出され、視界が揺れる。片足でも立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かない。目の前が暗くなり、敗北の二文字がオレの脳裏に浮かぶ
急激に霞む視界で最後に見たものは、瞳の輝きを収め柄にもなく焦った顔で駆け寄ってくるステラだった。
それとここだけの話、フェルは尻尾の付け根が弱点です。エッチすぎぃ!!