元の居場所に帰れると期待していたアクアだっだが、その期待は粉々に打ち砕かれた事により、行き場の無い怒りをベジットにぶつけていた。
そんな彼は彼女がそれで気が済むのなら、別に構わない様子だ。
「偶には当たりなさいよーっ!!」
勿論、全てを避けているが…
それから八つ当たり?に疲れたアクアを背負いアクセルに戻って来た。日はまだ落ちていない時間だ。
そしてベジットは受付のお姉さんに討伐の報告をしていた。彼の後ろには少し不満げな表情をしているアクアが立っている。そんな彼女をお姉さんは疑問に思ったが、切り替えて自分の仕事に意識を向ける。
「クエストの完了を確認しました。ご苦労様でした。」
「おう。へー、蛙を倒すだけで本当にレベルが上がるんだな。」
「はい。初心者の冒険者ほど成長は早いですよ。
ではジャイアント・トードの買い取りとクエストの達成報酬を合わせて11万エリスとなります。ご確認して下さいね。」
「サンキュー。」
報酬を受け取ったベジット。
お姉さんはさっきから何か言いたげな表情しており、それに気づいたベジットは尋ねた。
「あーの…ベジットさん達でしたら30分もあればクエストクリア出来ます…よね?」
正直、お姉さんもベジット1人で十分だろうと思っているが、それだとパーティの意義が無くなる事はわかっている。でも聞いてみたくなったのだ。
「まあな。だが、アクアの修行の為に時間を掛けたんだ。機嫌が悪いのは…聞かないでくれ。」
「は、はあ…修行…ですか。」
成程、それでアクアの不満な表情をしているのは余程彼とのその修行が相当厳しかったんだろう、とお姉さんは納得と同情をしていた。
「という訳だ。それじゃあ、オレ達は行くぞ。」
「はい!足止めして申し訳ありませんでした。それとお話をして頂いてありがとうございます!」
会話を終えたベジットは空いている席へと向かっていた。彼について行くまだ不満げなアクア。
着席すると
「なーアクア、賭けはお前の勝ちで良いから、いい加減機嫌を直せよな?」
「むむ…んー…ベジットがそこまで言うのなら仕方ないわね!"シュワシュワ"は頂くわよ!それともう一つのお願いを聞いてくれる?てか聞いて!」
「わかった。ただし、出来る範囲でだ。」
「じゃあ、癒やしの力だけで
「へいへい、良いぞ。」
仕方ないと言った表情で了承をするベジット。
内心は前回の討伐クエストの件で自分に頼りっぱなしにするかと思っていたが、何だかんだこの先もやっていこうとするアクアに少しだけ感心していた。
そして次の日の昼過ぎ…
「"アークプリースト"のあたしが居るのに…来ないわね?」
「半日経ったが来ねえな。それでお前は何て書いたんだ?…へー、どれどれ……。」
『このパーティに入ってから毎日がハッピーです。宝くじにも当たりました。』
『アクア様のパーティに入ったおかげで病気が
治り、モテモテになりました!』
「(随分と加入条件が厳しい募集だな?それに全部胡散臭いし。)」
「おい、加入条件の範囲を少し広げな。流石にこの街で"上級職"だけの募集は、ちと無理があるぜ?」
「だって…だって…!」
「このまま続けても無駄なんだよ無駄。」
腐っても上級者のアクアと一緒に居て、その彼女よりも遥かに強い自分が居るのに何故、仲間の勧誘やこちらのパーティに入りたがらないのか甚だ疑問だが。
「募集の貼り紙、見せてもらいました。」
「ん?」
「えっ…!?」
「ふっふっふっ…この邂逅は世界が選択せし運命。私は貴方がたの様な者達の出現を待ち望んでいた!」
2人の前には黒の魔女帽子、黒のローブ、
黒マント、魔法の杖を持った、格好だけ見ればそれはもう魔法使いとしか思えない
左目に着けている眼帯とカッコつけたクサい言動が見られるが…
「我が名はめぐみん!"アークウィザード"を生業とし。
「(ほーう…チビの割りには妙に気が高いな。)」
「ふっふん…余りの強大さ故、世界に疎まれし我が禁断の力を汝に欲するか?」
「………?」
「ならば、我と共に究極の深淵を覗く覚悟をせよ!人が深淵を覗く時、深淵もまた人を覗いているのだ。」
「お前、さっきから何を言ってんだ?バカなのか?」
「バカだと!?ち、違うわい!」
「ん?その
「如何にも!我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し!岩をも…く…ず…す…。」
ノリノリで豪語していた、めぐみんと言う少女はへなへなと地面に倒れる。
「お次は何だ?」
「は…はい…3日も何も食べてないのです…何か食べさせて頂きませんか…?」
「何だ、腹が減っていたのか。そいつは構わんが、その前にその目…怪我でもしたのか?だったらコイツに治してもらいな。」
「ふふっ!コレは我が巨大な魔力を抑えるためのマジックアイテム!もし外される事があれば…この世に大いなる災厄がもたらさせるだろう…!!」
「それを外すと力が開放されて、前より確実に強くなるのか。」
「あ…あの…徐々に近づかないで下さい…我はとても恐怖を感じてます…!?」
「そいつは凄いな。まあ"その前"というやらは一切知らんが。」
「無視ですか!?そ…その…う…ウソです…単にオシャレで着けてるだけです…。」
「………。」
「ごめんなさい!引っ張らないで下さい!!やめ、やめろーーっ!?」
「あのね彼女達、"紅魔族"は生まれつき高い知力と魔力を持ってて、大抵は魔法使いのエキスパートで、皆んな変な名前を持っているわ。」
「ふーんエリートみたいなもんか。さて、もう離してやるか。」
「今、離さないで下さい!!そーと…我に近づいて下さい…絶対…絶対になあ!?」
「……腹立つ。」
「ああーーっ!?いったい目がーーーっ!!??」
引っ張った眼帯を離した事により小気味良い音が鳴った。
「あらら…つい手が滑っちまった、悪かった謝るよ。」
「わざとですよね?…まあ良いです。」
「にしても、少し変わった名前だな。"ん"を抜いて"メグミ"では駄目なのか?」
「そこですか…?いや…駄目です。それに変わった名前とは
大体の人にはフルネームを変だと言われるが、まさか最後の"ん"だけを指摘されるとは思ってもみなかった。
「これ以上の長話はよそう。せっかく来てくれたんだ、とりあえずメシでも食っていきな。」
「は、はい!感謝します!!」
それから運ばれた食事を一心不乱に食べている、めぐみんを他所にベジットとアクアは、彼女の"冒険者カード"を見ていた。
「冒険者カードは偽造できないし、彼女は"アークウィザード"で間違いないわ。強力な攻撃魔法を使える"上級職"だよ。」
「ほーう、お前のお目当て通りに来たって事か。(まあ、オレはこの世界の強さの基準ってのがまだわからんが…)」
「その通りよ。それに彼女が本当に"爆裂魔法"を使えるなら凄い事よ!最上級の攻撃魔法だもん!」
2人の会話を食べながら聞いていた、めぐみんは一度箸を止めアクアに呼称ではなく、自分の名前を呼んで欲しいと指摘する。
そして次はベジットの方に視線を向ける。
「今回といい、
「………。」
「あれ…
めぐみんとアクアの発言を返すのでは無く黙って聞いてベジットはようやく口が開く。
「なあ、めぐみん…お前はさっきから」
「
「「え………!?」」
何処かの自称甘いマスクの化け物が驚愕した表情みたいになるアクアとめぐみん。
「
「あ…あの…一応名前を…聞いて良い…ですか…?」
「オレはベジットって名前だ。因みにコイツはアクアだ。」
「す…すみません…ひ…人違いでした…///」
盛大に勘違いした事により恥ずかしさが増し、それを見られまいと帽子の鍔を下げ、俯くめぐみんだったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
めぐみんの"アークウィザード"としての強さを知る為にクエストを受けて、草原に居る3人。
めぐみんは遠くに佇む巨大蛙を自分の杖で指し説明する。
「"爆裂魔法"は最強魔法。その分魔法を使うのに準備時間が掛かります。準備が整うまであの蛙の足止めをお願いします。」
「時間稼ぎか、わかった。」
「ベジット。あっちにも…!」
別の方向にもう1匹の巨大蛙が出現していた。
そちらの方は3人に気づきこちらに接近してくる。
そしてベジットは各自に命令を出す。
「アクアは接近してくる蛙をギリギリこちらまで引き寄せてぶっ倒す。めぐみんはオレの後ろで溜めの待機、溜め終えたら遠い方を狙え。オレは万が一の備えだ。これでいいな?」
「わかりました。」
「任せて頂戴!!」
「あれ?アクアは"アークプリースト"ですよね?そうでしたら近接戦は不向きでは…?」
「そこは大丈夫、コイツはやる時はやるんだ。だから、めぐみんにも見せてやりな?アクア。」
「良いわよ!何処かの誰かさんのお陰で"武闘家"にも兼任しているんだからね!!」
「ふっ。じゃあ…1、2、3…!思いっ切りやれ!!」
まずはアクアはこちらに接近してきた巨大蛙に向かって行き、前回の討伐時に放った技を繰り出す。
「ゴッドアッパーーっ!からの…ゴッドインパクトーっ!!」
「(………!!??)」
一発目は顎に、二発目は仰け反った際に間髪入れずに背後に回り頭部に打ち込む。一連の流れは見事に命中したが、念には念の為にダメ押しにもう一発放つ。
「確実なるトドメの…ゴッドブローーっ!!」
「(…………。)」
地面に仰向けで倒れる巨大蛙。
「またやったわよ!ベジット、めぐみん!なーはっはっはっ!!」
またも巨大蛙の討伐に成功したアクアは遠くに居る2人にピースサインをしては高笑いをする。
ベジットは彼女に早くこちらに戻って来る様、催促するが有頂天になっている為、話を聞いていない様子だ。
「まあいい。…ん?へー成程、なかなかの力を感じる。」
彼の後ろに待機していためぐみんの魔力の上昇によって増幅する力を感じ取り、感心していた。
周囲は段々と薄暗くなり、様々な色の光が発生し輝いていき、そしてめぐみんは詠唱をする。
「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法…」
「"エクスプロージョン"!!!」
解き放たれた爆裂魔法は、遠方に佇む巨大蛙の体格をいとも簡単に覆う程の莫大な爆発が発生した。
「思ってた以上にやるじゃねえかめぐみん!。でも、ちーとばかし長いな?」
煙が晴れ、彼が見たものとは、巨大蛙が元々居た位置には地面を抉る程のクレーターが出来ており、勿論あの爆発で無傷で済む筈も無く、跡形も無く消えていた。
「流石にあれ程の爆音だ…感づかれるか。」
叩き起こされたかの如く、地面から新手の3匹が出現する。その光景はさながら何処かの"
「めぐ…おい、何。寝転がってんだ?」
「我が奥義である爆裂魔法はその絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き1つ取れません。」
「
命が消える程では無いが、と心の中で付け足す。
「まさか新手が来るなんて予想外です。ヤバいです。喰われない様に守って下さい。最悪背負って逃げて下さい。」
「めぐみんはそこで休んでな。後はオレに任せろ!アクアーーっ!オレの攻撃を喰らいたく無ければ、こっちに来なーーっ!!」
これには流石に彼の言う事を聞かねば、無事に済まないだろうと勘付いたアクアは2人の方に走って来る。
「さ、流石に3匹同時に相手はキツいわ!」
「油断して喰われるからな。」
「違うわよ!!?」
「あの…今、イチャイチャしないでくれます?」
「し、してないわ!!」
そんなやり取りをした後に、ベジットは両腕を左右に開き、開いた両手からエネルギーが溜まっていく。
「そらそらそらそらっ!!」
右腕を前に出すとエネルギーの弾丸が放たれ、次は左腕を前に出すと同じくエネルギーの弾丸が放たれる。これを高速で放つ技、所謂"連続エネルギー弾"だ。
エネルギー波の時と同じく、このエネルギー弾も着弾すれば爆発が発生する。違いは高速で放たれる技の為、休む間もなく次々と爆発しているのだ。
「ふう…ざっとこんなもんだろ。」
「あら、今回は意外にも気持ち良さそうな技ね。こう…全ブッパーって感じで?」
「………。」
着弾点の煙が晴れると、爆裂魔法と同様に地面を抉る程のクレーターが出来ており、勿論、巨大蛙はあの爆発で無傷で済む訳が無い、跡形も無く消えていた。
そして意外にも今回は視認出来たのか、感想を述べるアクア。あまりの凄まじさに目が点になっているめぐみん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
討伐クエストから街に戻って来た3人。
爆裂魔法による全魔力の消費の弊害でマトモに歩けないめぐみんをベジットが背負い、彼の隣に並ぶアクア。
「ベジットさんが居なかったら、多分蛙にパクッと喰われていましたからナイスアシストです。」
「そいつはどうも。」
「蛙の口の中って良い感じに温かったりして…まあ、イヤですけど。」
一度、巨大蛙に喰われた事のあるアクアに視線をやり、どうだったのだ?と言いたげな表情のベジットに彼女は顔を明後日の方向に向き、下手っぴな口笛を吹いていた。
それはそうと話を変えるベジット。
「お前の爆裂魔法は大人数の相手やトドメの一撃、ここぞという状況でのみ使うんだ。それ以外は他の魔法で対処しろ、いいな?」
「使えません。」
「ああ、今のレベルではスキルポイントが足りない、ってヤツか?」
「違います。私は爆裂魔法しか使えないんです。他には一切魔法は使えません。」
「え?爆裂魔法が使えるレベルなら他の魔法だって使えるでしょ?あたしなんか"宴会芸スキル"を習得してから"アークプリースト"の全魔法を習得したし。」
「"宴会芸スキル"ってのは知らんが…成程。めぐみん、お前がその気になれば他の魔法を使える訳だが、
「その通りです!私は爆裂魔法をこよなく愛する!爆裂魔法しか愛せない"アークウィザード"!例え1日に1回でもです!だって私は爆裂魔法を使う為にアークウィザードを選んだのですからっ!!」
「素晴らしい…!素晴らしいわ!非効率ながらもロマンを追い求める姿にあたしは感動したわ!!」
一撃必殺が好きな者が聞いたら食い付きそうな話だ。
「我が望みは爆裂魔法を撃つ事のみ。そう、アークウィザードの強力な力が今なら食費と残費だけで!これはもう長期契約を交わすしかありませんねっ!!」
たが狭い空間や敵がバラけているは勿論、相手を仕留め切れない場合等は使い物にならないお荷物となり却ってパーティの戦力ダウンになるだろう。大抵の者ならその思考になるだろう。
過去にそう言う経験があったのか必死に話を続けるめぐみん。
「私は上級職でレベルはまだ6ですが…最弱だろうと駆け出しでも何でも構いません!」
「わかったから少し落ち着きな。」
必死になり過ぎるあまり何がなんでもベジットの背中から離れようとしないめぐみん。彼は彼女を落ち着かせる為に多少強引だが背中から引き剥がし、地面に降ろし立たせる。
「ベジット…めぐみんはここまでして、ウチのパーティに入りたい!ってアピールしてるから入れてあげましょうよ。なんか可哀想だわ…。」
「荷物持ちでもなんでもします…だから私を捨てないで下さい…!!」
「はあ…別に荷物持ちなんざいらねえし、そんな必死に説得するお前をこのまま見捨てる程オレは薄情じゃねえよ。」
呆れた表情でめぐみんに言う。
「え…?では…パーティに…入って良いの…ですか?」
「良いぞ。ただし、目標は
「は、はい!!ありがとうございます!!そして…これからよろしくお願いします!!」
「よろしくねっ!めぐみん!!」
今まで不安だった表情とは一転、輝かしい表情になっていた。
討伐クエスト完了の報告を終えて報酬を受け取ったベジットはひとり、席に着いていた。因みにアクアとめぐみんは大浴場でゆっくり入浴中だ。
「(あ…アクアに魔王の城のバリアの件、聞くのをすっかり忘れてた。)」
「(まあ今度で良いか…さて、めぐみんが……)」
『今回といい、
『それに…随分
『
『す…すみません…ひ…人違いでした…///』
「(オレの世界の…自分以外の人間がこの世界に居るのか…?それも
「募集の貼り紙を見させてもらった。」
母さん、父さん、お元気ですか?
俺は以下略。
さて、書くのが遅くなりましたが前回と同じく
体内を探索中です。
その道中でニョロニョロした喋る寄生虫の
様な親子2匹と出会いました。
畜生…アニオリ時空かよ…!!
え?何言ってるかって?俺も判りません…
とにかく、会った当初はダメかと思いましたが
こちらを襲って来る訳も無く、案外話が通じる方達で、
あの場所まで案内されてます。そろそろ…着くかな?