俺の脳内選択肢が、呪術師としての尊厳を全力で破壊してくる 作:シモケンサンバ
「おい有沢、もう少し離れろ。お前のキモさがうつる」 真希が、バイオハザードの汚染源でも見るような目で有沢を指差した。
「真希さん、ひどい! 俺は五条先生に虎杖の護衛を命じられてるんですよ!」
都立呪術高専の広大な森。交流会の開始を告げる学長の放送が、まるで有沢の公開処刑のゴングのように響き渡った。
作戦通り、虎杖と有沢が中央を突き進む。しかし、後方を追う東京校の面々の足取りは、まるで底なし沼を歩くかのように重い。
理由は明快。
数時間前、有沢が三輪に対して行った「シャンプーの残り香500円買取交渉」である。
これにより、有沢は呪術高専における『味方からも通報される不審者』として不動の地位を築き上げていた。
「虎杖、いいか。京都校の連中が来たら、俺がなんとか……」
「おう! 頼りにしてるぜ有沢! さっきの三輪へのやつも、新手の目眩ましだろ?」
「(……ピュアな瞳が痛い……)」
その時、森の木々が激しく揺れた。 正面から現れたのは、歩く筋肉の塊、――東堂葵。
左右の木の上からは、禪院真依が銃口を向け、西宮桃が「不浄なもの」を避けるように高度を取って箒で旋回する。
さらに後方からは加茂憲倫とメカ丸、有沢を見てガタガタと震えている三輪霞が布陣を敷く。
「いたわよ! 宿儺の器と……変態よ!」 西宮が叫ぶ。彼女の目は、不潔な害虫を視認した時のような嫌悪感に満ちている。
「殺すわ。あんなのが一人でも野放しにされたら、呪術界のコンプライアンスが更地になる」 真依の指が引き金にかかる。
彼女たちにとって、虎杖抹殺は「任務」だが、有沢抹殺は「公衆衛生の維持」へと昇華していた。
(……聞こえるか、虎杖。聞こえるか、五条先生。 今、俺の耳には、かつてないほど清らかな『女子高生の悲鳴』が届いている。 普通なら、これは青春の1ページを飾る甘酸っぱい音のはずだ。だが、俺が受けているのは、恋の矢ではなく、呪力をフルチャージされたガチの殺意だ。)
「待て!! 宿儺の器は俺がやる! お前たちには……『変態』をくれてやる!」 東堂が吠える。
互いに一歩も譲れぬ、あまりに温度差の激しすぎる三つ巴が、今、幕を開ける。
【変態討伐戦】:有沢 vs 禪院真依・西宮桃・三輪霞(+ドン引きする加茂・メカ丸)
【魂の親友戦】:虎杖悠仁 vs 東堂葵
一触即発の三つ巴。虎杖が拳を構えた、その瞬間――有沢の脳内に、火山の噴火のごとき激痛が走った。
【選べ】
① 箒で飛んでいる西宮桃に向かってジャンプし、「二人乗りのバイクはもう古い! これからは『二人乗りの箒』で愛の逃避行だ!」と叫びながら、後ろから抱きつく。
② 銃を構える禪院真依に向かって、「その銃の弾丸、僕の『愛の告白(ラブレター)』で受け止めてみせるよ」とウィンクし、口でキャッチしようと全力で顔を突き出す。
有沢は、上空の西宮と、地上の真依を見比べる。
(①はダメだ!! 西宮さんは小柄だから、あんな体勢で抱きついたら空中から垂直落下して頭から地面に刺さって死ぬ! 物理法則で死ぬ!! ……ならば②だ!辛いけど消去法で②しかない!!)
有沢は、プライドという名の呪力を全て捨て去り、②を選択した。
「真依さぁぁぁん!! 撃って! 僕のハートを、その鉛のラブレターでぶち抜いてぇぇぇ!!」
有沢は猛然とダッシュした。真依の銃口に対し、一切のガードを捨て、むしろ「さあ、ここを狙え」と言わんばかりに顎を突き出し、唇を突き出して、瞳孔の開ききったウィンクをかます。
「なっ……!? !? !? !? 」 真依の顔から血の気が引いた。彼女は今まで、数多の呪霊や呪術師と対峙してきたが、「ウィンクしながら口で弾丸を受け止めに来る男」など、想像の範疇外だった。
「ひ……っ、こっちに来るな!! 汚い!! 来るなぁぁぁ!!」 パン、パン!! と乾いた銃声が響く。しかし、あまりの嫌悪感に真依の手元が狂い、弾丸は有沢の耳元をかすめて背後の木を粉砕した。
「外しちゃ嫌だよ真依さん! さあ、おかわりを頂戴!! チュッ!!(投げキッスの音)」
「ひぎゃあああああああ!!」 真依は、特級呪霊に襲われた時でも出さないような悲鳴を上げ、全力で後退した。
「……何をしている、真依! 相手はたかが一人……加勢する」 加茂憲倫が冷静に矢を番え、一歩前に出ようとした。
さらに後方からメカ丸が腕の砲身をチャージしながら告げる。
「ターゲット確認。非効率ダ。一気に火線デ焼き払ウ」
しかし、その歩みは西宮桃の叫びによって制された。
「入ってこないで、男共!!」 「えっ?」 加茂が呆然と足を止める。
「これはもう任務とかじゃないの、『衛生上の問題』よ!!
真依も、後退りしながら叫ぶ。 「そうよ! あんたたちが混ざったら除菌の効率が悪いでしょ!! 私たちだけで、あの『歩く公然わいせつ物』を完膚なきまでにデリーとしてやるわ!!」
一方、その狂乱のすぐ隣。 虎杖悠仁と対峙していた東堂葵は、有沢の奇行を数秒間見つめた後、深く溜息をついた。
「……まぁいい。ノイズは多いが、俺たちも始めるとしよう!!」 東堂はシャツを勢いよく引き裂き、筋骨隆々の肉体を晒した。
「……どんな女が好みだ?」
「えっ、今!? この状況で!?」 虎杖は戸惑いつつも、拳を固めて構えを取る。
「関係ない!! あの変態の邪気が届かぬうちに、俺とお前の魂をぶつけ合うぞ!!さあ答えろ、尻のデカい女は好きか!?」
「よく分かんねーけど、やるしかねーな!!」
有沢が「ねぇ真依さーん! その銃、僕の唾液でワックスがけしてあげよっかぁ!?」と追い回し、女子たちが「消えろ! 蒸発しろ! この世からログアウトしろ!!」と殺菌剤(呪力)をぶつけ合うカオスな戦場の中心で、東堂と虎杖の、あまりに純粋で場違いなタイマンが幕を開けたのである。