俺の脳内選択肢が、呪術師としての尊厳を全力で破壊してくる 作:シモケンサンバ
特級呪霊・花御の撤退から数時間後。 高専の敷地内には、ようやく静寂が戻っていた。しかし、そこには勝利の余韻など微塵も存在しなかった。
「――どうやら、呪霊の迎撃に気を取られている間に、忌庫が破られた」
五条悟が珍しく神妙な面持ちで、学長や補助監督たちに報告した。
花御の襲撃は巧妙な「囮」だった。彼女が有沢にマヨネーズをかけられ、黒閃ヲタ芸で激戦を繰り広げられている裏で、真の目的は果たされていたのだ。
・特級呪物「両面宿儺の指」数本
・特級呪物「呪胎九相図」1番~3番
これらが、特級呪霊・真人の手によって強奪された。
呪術界を揺るがす大不祥事である。
本来なら重苦しい空気が支配するはずの会議室だが、五条の報告書には「なお、敵の撤退時には全身から濃厚なマヨネーズの香りが漂っていたとの証言あり」という余計な一文が添えられていた。
「悟……。真面目に報告しろ。なぜ盗難事件の重要参考資料に、マヨネーズの隠し味(マスタード)の有無が記されているのだ」 夜蛾学長のこめかみに青筋が浮かぶ。
「いやぁ、だって有沢が頑張って『下味』つけてくれたからさ。追跡には便利かもしれないよ?……あ、もしかして、お腹空いた?」
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一方、当の有沢は、高専の廊下の隅で膝を抱えていた。
システムからようやく「アンコール終了」の許可が出たのは、五条が現れてから30分後のことだった。
全身の筋肉はヲタ芸による過負荷で悲鳴を上げ、視界にはいまだにオレンジ色の残像が焼き付いている。
しかし、肉体的な苦痛以上に彼を苦しめていたのは、「取れない臭い」だった。
「…………(くんくん)……。まだ、匂いが……。」
どれだけシャワーを浴びても、どれだけ強力な洗剤で洗っても、業務用1kgのマヨネーズを浴び、さらに自らの「呪力(黒閃)」で熱変性を起こさせたあの臭いは、もはや呪いとなって有沢の毛穴に定着していた。
廊下を歩けば、向こうから歩いてきた生徒たちが露骨な反応を示す。
棘: 有沢の姿を見るなり、「……おかか(絶望)」と呟いて鼻を抑え、猛スピードで逃走。
パンダ: 「お、有沢か。悪い、俺、鼻がいいんだ。……うん、お前、今ならサンドイッチの具として戦えるぞ」と言い残し、風上に退避。
真希: 「近寄るな、マヨネーズ小僧。お前の半径3メートル以内は、酸味が異常値だ。目がチカチカすんだよ。」と大鉈を向けられる。
釘崎野: 「 私の高級制服に匂いが移ったらどうしてくれんのよ!!」と、特注の消臭スプレー(3本目)を全噴射してくる。
真依:「……最悪。東京校はついに、歩く総菜パンを呪術師として雇い始めたの?」 有沢をゴミを見るような目で一瞥し、ハンカチで鼻を覆って去っていった。
加茂 憲紀: 「……これが、東京校の隠し玉か。自らの血液ではなく、卵黄のコクを操る術式……。」
三輪 霞: 「あ、有沢さん! さっきのヲタ芸、凄かったです! 黒閃も出てましたし! ……でも、すみません! 私の『シン・陰流』の簡易領域が、マヨネーズの臭いを中和しようとして勝手に発動しちゃうんです! 近づくと呪力が無駄に削られるので、その、10メートル先から応援してますね!」 善意100%の笑顔で、全力のディスタンスを保たれる。
有沢の周囲だけ、化学的な「味の帳」が降りていた。
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夕暮れ時、有沢が一人寂しく中庭で「サラダ記念日」の悲劇を噛み締めていると、追い打ちをかけるように東堂葵が現れた。
「 探したぞ!! お前の放ったあのオレンジ色の閃光……今も俺の魂を焦がし続けている!!」
「東堂さん……。お願いです、今は近寄らないでください。俺、自分がポテトサラダになった気分なんです……」
「気にするな! 友情に臭いなど関係ない!! むしろこの酸味、戦士の休息にふさわしい清涼感ではないか! さあ、もう一度あの華麗なステップを見せてくれ! 魂のアンコールだ!!」
「嫌だああああ!! もう踊りたくない! 誰か、誰か消臭剤を持ってきてくれえええ!!」
有沢の絶叫が響く中、彼の視界の端に再び「赤く染まるウィンドウ」がうっすらと浮かび上がる。
【緊急クエスト予告:味変(あじへん)】 『ケチャップ』で、呪術界に情熱の赤を刻め
① 上層部への報告会に乱入し、ケチャップで「愛」の字を全身に書き込み、「赤い情熱(パッション)」として踊り狂う。
②上層部への報告会に乱入し、老人たちと「全力二人羽織」を完遂する。
(……勘弁してくれ……)