俺の脳内選択肢が、呪術師としての尊厳を全力で破壊してくる   作:シモケンサンバ

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【小話】有沢という男について side呪霊組

交流戦直後のある日。

 

厚いカーテンによって一般客の視線から隔絶されたファミレスの一角で、夏油、真人、漏瑚、花御、陀艮の5名は、今後の計画に影を落とす「有沢」という存在について議論を交わしていた。

 

沈黙を破り、漏瑚が一口も手をつけていないコーヒーの湯気を見つめながら、夏油に問いを投げかけた。

 

「……夏油、一つ確認したい。あの有沢という男は何者だ? 交流戦で見せたあの不気味な挙動、あれは単なる実力ではないだろう。光る棒を振りながら黒閃を連発するなど、呪術の理を外れている 。」

 

夏油は手元の資料を閉じ、呪霊たちを見渡して答えた。

 

「呪術総監部と繋がりのある私ですら、有沢については名前以外の確かな情報を掴めていない。五条悟が、総監部に情報を流さないように口封じをしている可能性が高い。」

 

「だが、断定はできないまでも、彼の術式は『世界の原理原則を書き換える』類のものだと私は推測している。」

 

真人が興味深げに身を乗り出し、具体的にどういうことかと尋ねると、夏油は卓上のグラスを指先で軽く叩き、その硬質な音を響かせながら説明を続けた。

 

「例えば、君たちは火に触れたらどう感じる? 当然、『熱い』と感じる。それは火が熱量を持つということが、この世界の原理原則だからだ。」

 

「だが、有沢はこの原理原則を上書きする。彼が世界の定義を『火は冷たいもの』と書き換えれば、我々が触れる火は氷のような冷い物体へと変質する。これが彼の術式だろう。」

 

夏油の超理論を聞き、漏瑚の頭頂部からは小規模な噴火が発生した。

「世界の理を改変するだと……? それは最早、神の領域ではないか!」

 

真人や花御も言葉を失い、世界の理を改変する能力に強い戦慄を覚えた。

 

漏瑚がその情報の真偽を再度確認すると、夏油は顔色ひとつ変えず、有沢が残してきた異様な実績を根拠として提示した。

 

「有沢は呪術師になる以前、五条悟と交戦して『無限』を突破している。これは五条自身が総監部へ公式に伝えた事実だ。恐らく、『無限など存在しない』と世界を再定義したのだろう。」

 

「さらに、英集少年院で発生した特級呪霊の事案。特級呪霊を前に『恋ダンス』をすることで、呪術師になって間もないにも関わらず、対象を完全に祓い去った。」

 

「総監部が彼の底を測るために、低級呪霊の任務に1級呪霊を意図的に混入させた際も、彼は全力でラジオ体操第2を踊りながらも、その全てを殲滅している。報告によると、跳躍の衝撃波は地面を割り、腕を振る動作は音速を超えて空気を断裂させたらしい。」

 

「彼の行動には不可解な部分が多いが、その滑稽な動作こそが、世界の定義を書き換えるための発動条件なのかもしれない。」

 

五条悟という最強の個体に加え、世界の理を捻じ曲げる男の存在。

 

夏油の説明を終えた頃、呪霊たちの間には、五条以上の脅威を感じさせる重苦しい沈黙が落ちていた。

 

夏油自身、有沢という魂が持つ因果の強制力には強い執着を抱いていた。

 

もしも機会が巡ってくるのであれば、夏油は五条悟の肉体以前に、世界の原理原則を書き換える特異点こそを自身の器として乗っ取りたいとすら考えていた。

 

その冷徹な欲望を、彼は微笑の裏に深く隠匿していた。

*

*

*

一方、呪霊たちが『神に等しい最悪の術師』として恐れる当の有沢は、任務先へ向かう人気のない山道で、膝の皿が割れるような激痛に耐えながら四つん這いになっていた 。

 

彼の視界には、無慈悲な二つの選択肢が浮かんでいる。

 

 

【選べ】

①これから出会う全ての生物に対し、犬になりきり野太い声で「ワンッ!」と全力の挨拶をする。

②山頂から目的地の駅に到着するまで、最短ルートを「ムーンウォーク」のみで移動する。

 

 

「……ふざけるな。この足場の悪い山道で最短距離をムーンウォークなんてすれば、崖下まで垂直落下だ。全身の関節が逆方向にへし折れるぞ 。」

有沢は、額から滝のような汗を流しながら、自身の理不尽な運命を呪った。

 

結局、彼は「肉体的な完全死」よりも「社会的な尊厳の死」を消去法で選んだ。

 

「……ワン。ワンだ。ワンで行くしかないじゃないか、クソが……!」

 

夏油たちが『世界の理を改変する男』と呼んだその男は、今、四つん這いになり、通りがかった一匹のリスに対して「ワンッッ!!」と、腹の底から響く野太い声で咆哮した。

 

リスは生物学的な許容範囲を超えた恐怖により、その場で白目を剥いて卒倒した。

 

「……すまない、リス。俺も辛いんだ。」

 

有沢は血の涙を流しながら、次のターゲットである登山客の一団の方へと、慣れない四つん這いで這い進んでいった。

 

遠くから登山客の「何あれ、熊?」「いや、裸に近い男が吠えながら爆走してくるぞ!」という悲鳴が聞こえ始めた。有沢の、社会的死を伴う戦い(任務)はまだ始まったばかりだった。

 




IF 羂索 in 有沢


念願だった有沢の肉体を奪った直後、羂索の脳を不条理な二択が焼き、脊髄を激痛が貫いた。

【選べ】
①全裸で永田町を疾走する。
②渋谷で「アウラ、お前の前にいるのは、千年以上生きた呪術師だ!」と叫び、葬送のフリーレンごっこをする。


(なんだ...これは!!!)
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