俺の脳内選択肢が、呪術師としての尊厳を全力で破壊してくる   作:シモケンサンバ

8 / 25
【小話】現代最強と絶対選択肢の出会い

それは、有沢が呪術高専という「まともな倫理観がログアウトした場所」に連れてこられる数日前のこと。

 

ごく普通の(そして平均より少し運の悪い)高校生だった有沢は、路地裏で「何か嫌な感じの塊(二級呪霊)」に追い詰められていた。

 

(いやあああ! 来ないで! なんだあのネバネバした巨大な鼻水みたいなやつ! 死ぬ、確実に死ぬ!)

 

腰を抜かして震える有沢。しかし、彼の脳内には絶望を上書きする「あの声」が響く。

 

【選べ】

 

① 呪霊に向かって「君、肌ツヤいいね! どこのエステ通ってるの?泥パック系?」と爽やかに話しかける。

② 全身を独楽(こま)のように回転させ、全力のダブルラリアットを繰り出しながら「私は風! 自由な風なのよぉぉぉ!」と叫びつつ突撃する。

 

(どっちも死ぬわ!! 終わった……俺の人生。でも、ワンチャンにかけるなら②か!?)

 

有沢は涙目で②を選択。 その瞬間、彼の細い体は物理法則を無視した超高速回転を開始。路地裏に轟音と共に「私は風ぇぇぇ!! 自由な風なのよぉぉぉぉ!!」という悲痛な絶叫が木霊した。

 

ドゴォォォォン!!

 

有沢の「自由な風(物理攻撃)」は、呪霊を真っ向から粉砕。二級呪霊は状況を理解できないまま、ただの塵となって消滅した。

 

*

*

 

「へぇ、今の君の術式? それともただの情緒不安定な回転?」

 

上空から降ってきた、軽薄だが圧倒的な「強者」の声。 有沢が目を回してふらふらと立ち上がると、そこには電柱のてっぺんに腰掛け、大福を食べている目隠しの男――五条悟がいた。

 

「え……あ、怪しい……コスプレ野郎……」「ひどいな。助けてあげようと思ってたのに。君、面白いね。今の、呪力は微々たるもんだけど、『強制力』だけは特級クラスだったよ」

 

五条はひらりと地上に降り立つと、逃げようとする有沢の前に瞬間移動で回り込んだ。「君、呪術師の素質あるよ。僕の学校に来ない? お給料も出るし、福利厚生も(それなりに)しっかりしてるよ?」

 

(絶対やだ! この人、顔を隠してる時点でお察しだよ! 100%変態だ!!) 有沢が逃げ出そうとした、その時。本日二度目の衝撃が脳を焼く。

 

【選べ】

 

① 五条悟の目隠しを「いないいないばぁ!」の要領で無理やり剥ぎ取り、満面の笑みを決める。

② 五条悟の胸ぐらを掴んで引き寄せ、「あんたの眉毛、一本もらっていいかな?コレクションにしたいんだ」とガチのトーンで囁く。

 

(死んだ……。今度こそ俺、この白い人に殺される!! でも①だ! 物理的にワンチャン逃げられる可能性があるのは①だ!!)

 

「……っ、この変態目隠し野郎!! 免許証見せろ!!」 有沢は絶叫と共に、五条悟の顔面へ特攻した。

 

五条は余裕の笑みを浮かべていた。彼には「無限」がある。彼に触れられる人間はこの世に存在しない。はずだった。

 

「いないいない――」

 

有沢の手が、五条の顔面に迫る。 通常なら無限に阻まれ、有沢の手は五条に近づくほど減速し、決して触れることはない。

 

しかし、有沢の背後にある「絶対選択肢」は、宇宙の因果そのものを書き換える概念的な強制力。 「選んだ以上、完遂されなければならない」というルールが、呪術の法則を上書きした。

 

パサッ。

 

「――ばぁ!!」

 

「…………え?」

 

五条悟の思考が停止した。

自分の顔には、今、確かに「生身の少年の手」が触れていた。

 

そして、長年誰の手も届かなかった目隠しが、剥ぎ取られてた。 サングラスも目隠しも通さない、五条の「六眼」が、目の前で涙目になっている有沢を捉えた。

 

「……君。今、僕の無限を、ただのギャグで貫通したの?」

 

「すいません……すいません……! 指が勝手に……! 命だけは、命だけは助けてください……!!」

 

有沢はコンクリートに額を叩きつけ、ダイナミック土下座を決めた。 五条は数秒の沈黙の後、肩を震わせ、そして――。

 

「ハ……ハハハハハ!! 僕に触れる方法が『いないいないばぁ』だなんて、呪術全史を探しても君だけだよ!!」

 

五条は腹を抱えて笑い転げた。

 

「決めた。君、不採用にするつもりだったけど、強制採用だ。僕の退屈を壊してくれそうな逸材だよ」

 

「え、嫌です。帰りた――」

 

「拒否権はないよ。君のその『バグ』、僕が直々に観察してあげる」

 

こうして、有沢は「呪いの王の器」である虎杖悠仁よりも先に、五条悟という「最強の災厄」に目をつけられることになったのである。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。