なんとでも言え。私とてテラの大地を救わなければならない… 作:バリアンの(面)白き盾
しばらくはアンケート結果から続き思いついたら投下しようと思います。
それまでしばらくお休みします。
感想、評価、ここすきありがとうございます!
冷え切った地下坑道の最深部。そこには、テラの大地には到底そぐわない、無機質で異質な実験施設が広がっていた。
分厚い防弾ガラスの向こう側で、白衣を纏った男――レヴィ・クリチコが、かつての同郷の人間たちを見下ろしていた。
「……信じられないな。君たちまでこの世界に訪れていたとはな…」
レヴィは芝居がかった手振りで肩をすくめる。
対するレインボー小隊の面々の銃口は、ガラス越しのレヴィの急所から一ミリたりともブレることはない。
「貴様の狂った実験のせいで、どれだけの命が奪われたと思っている! ここで終わらせるぞ、レヴィ!」
アッシュの鋭く冷徹な糾弾が地下室に響き渡る。ブリッツもタチャンカも、彼がこの地で感染者たちをモルモットにしてきた非道な所業に対し、静かな、しかし確かな殺意を抱いていた。
だが、レヴィの顔に浮かんでいたのは恐怖ではなく、歪んだ薄ら笑いだった。
「非道? 狂っている? 違うな、これは『進化』だ。君たちのような兵士には理解できないだろうが……このテラという未知の環境と源石がもたらす、完璧なる生命の形。それを見せてあげよう」
レヴィが狂気に満ちた瞳を輝かせ、背後の巨大な培養槽――脈動する赤黒い肉塊「進化の本質」を起動させるべく、コンソールに手を伸ばした。
その時である。
レヴィの視界の端、レインボー小隊の黒ずくめのタクティカルギアの後ろに、どう考えてもこの場に不釣り合いな「光源」がチラついた。
「……ん?」
レヴィは思わずコンソールに伸ばしかけた手を止め、目を瞬かせた。
アッシュたちの背後で、一人の男が立っている。真っ白な服を身に纏ったその男は、なぜか全身から神々しい光の粒子を撒き散らしていた。さらに彼の周囲には、地球のドローン技術とも全く異なる、白銀の幾何学的な物体が三つ、ふらふらと浮遊している。
そして何より異常なのは、その男が緊迫した防弾ガラス越しの対峙の最中において、右手を天に突き上げ、腰を大きく反らせた、およそ人間工学を無視したような極めて前衛的なポーズで完全静止していることだった。
科学者であり、あらゆる現象を理屈で解明しようとするレヴィの脳が、一瞬にしてショートした。
地球の科学でもない。テラの源石アーツでもない。彼の理解する「常識」の枠組みから完全に逸脱した存在的なバグが、そこにあった。
「な、なんだお前は……!?」
レヴィの薄ら笑いが引きつり、防弾ガラスに張り付くようにして絶叫した。
「その光はなんだ!? 源石の反応はない……ホログラムか!? いや、そうではない……! お前は、一体何なんだ!!」
狂気の科学者を一瞬にしてパニックに陥れた白い男――ドルベは、レヴィの驚愕の視線を一身に浴びながら、さらにポーズの角度を鋭くした。
通訳であるフロストノヴァが不在の今自身の言いたいことは伝わらない。しかし聞かれた以上返事をするが彼が発することができるのは、彼自身の魂に刻み込まれたドルベ語のみである。
「私の名はナッシュ・・・ただの旅行者だ」
地下室に朗々と響き渡る、あまりにも的外れな自己紹介。
アッシュたちレインボー小隊は、背後で突然名乗りを上げた不審な(光る)旅行者に対し、深い溜息をつきながらも視線はレヴィから外さなかった。彼らは道中、この男の奇行には既に道中ながら何度も目にする機会があった為か慣れつつあったのだった。
「りょ、旅行者……? ただの旅行者が、いや人間がそんな発光するわけが!? なぜそんな意味不明な姿勢で浮遊物を従えているんだ! ふざけるな!!」
レヴィは完全にペースを崩され、髪を掻き毟りながら取り乱す。ドルベはレヴィの狼狽える姿を見ながらも決してポーズを崩さなかった。
レヴィは自身の最高傑作を披露する劇的な瞬間を、謎の光る旅行者と名乗る不審者に台無しにされた苛立ちと、未知の事象に対する底知れぬ恐怖が入り交じっていた。
「ええい、構うものか! その訳の分からない光る男も、まとめて新しい生態系の礎にしてくれる!」
レヴィが半ばヤケクソ気味にコンソールの起動ボタンを叩き割るように押し込んだ。
直後、分厚い防弾ガラスの奥で、鼓膜を破るような悍ましい咆哮が響き渡る。巨大な肉塊が蠢き、無数の不気味な触手が培養槽を突き破って溢れ出し始めた。
最悪の生物災害「進化の本質」が、ついにその姿を現したのだった。
鮮血があちこちに飛び散り、滑らかな無機物が分厚い培養槽のガラスを内側から粉々に突き破った。
蠢く変異した四肢は、あり得ない角度で折れ曲がりながら、およそ釣り合わない巨大な球状の頭部を不気味に支えている。
防弾ガラスの向こう側で狂笑を浮かべていたレヴィの体に、紅く尖った骨の槍が容赦なく突き刺さった。自らが生み出した怪物の凶刃は、創造主のあばらを容易く砕き、押し潰し、無惨な肉塊へと変形させながら、巨大な頭部の一部として一つへと融合していく。
己の狂気に呑み込まれ、断末魔すら上げる間もなくレヴィ・クリチコはこのテラの大地から消滅した。
そして、彼をも巻き込んで顕現した悪夢の化身――「進化の本質」が、地下空間に絶望の産声を上げた。
終始狂っていた同郷の科学者のあまりにも無惨な最期。その光景に、数多の戦場を潜り抜けてきたレインボー小隊のアッシュたちでさえ、一瞬だけ気後れしかけた。
だが、彼らは熟練の特殊部隊である。この悍ましい怪物を絶対に地上へ出してはならない。アッシュの短い号令のもと、彼らは直ちに持ち込んだ強力な源石爆弾のセットに取り掛かる。
しかし、起爆の準備には当然時間がかかる。爆薬を適切に配置し、起爆装置を同期させるまでの間、あの巨大な肉の波を誰かが食い止めなければならない。
その絶望的な時間稼ぎを買って出たのは、ドルベことホワイトシールドだった。
彼はアッシュたちの前に無言で歩み出た。
言葉を発すれば、今の彼には独特のドルベ語しか出力されず、異世界の兵士たちを無用に混乱させてしまう。フロストノヴァという通訳がいない今、彼が選んだコミュニケーション手段は、言葉ではなく行動だった。
ドルベは振り返り、アッシュたちに向けて力強く親指を立てる。サムズアップのジェスチャーを一度だけ見せ、力強く頷いた。
(ここは俺に任せろ! お前たちは爆弾のセットに集中してくれ!)
その背中は、どんな言葉よりも雄弁に絶対の守護を約束していた。
ドルベは前を向き、デュエルディスクを天へと掲げた。
彼の周囲に予め待機していた三体の光天使が、主の意思に呼応して目映い光の軌跡を描き始める。
「私はレベル4の光天使ウィングス!ブックス!ソードでオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ!No.102!光天使!グローリアスヘイロー!」
地下坑道の淀んだ空気を切り裂き、三つの光が巨大な渦となって重なり合う。
「光の使いよ、今、悠久の時を超え、輝きの衣をまといて、かの地に降臨せよ!No.102!光天使グローリアスヘイロー!」
圧倒的な質量と光圧を伴って、黄金の巨大な翼を持つ騎士が降臨した。
神々しい光を放ち地下空間を照らすナンバーズ。その威容は、蠢く肉塊である進化の本質とは完全な対極に位置する、純粋な光の結晶であった。
「ギィィィィィィィィッ!!」
進化の本質が、獲物をすり潰そうと無数の触手と変異した四肢を巨大な波のように押し寄せる。
「行け!グローリアスヘイロー!シャークドレイクに攻撃!ライトニングクラスター!」
ドルベの叫びと共に、グローリアス・ヘイローが前方に展開し、激しく打ち据えられる肉の波を巨大な盾で正面から受け止めた。
ズガァァァァァン!!
鼓膜を破るほどの衝撃音が地下坑道に響き渡る。悪夢の化身の暴力的な質量攻撃と、それを一歩も退かずに弾き返す光の騎士の防衛陣形。赤黒い肉片と白銀の光子が激しくぶつかり合い、狂気の空間を二分していた。
レインボー小隊の面々は、その常軌を逸したアーツの光景に、思わず手を止めて一瞬だけ目を奪われた。
巨大な化け物の猛攻を、たった一人で、いや、あの一体の光る騎士で完全にせき止めている。
合流前にロドスの精鋭たちが遠い目をしながら語っていた「実力だけは申し分ない」という言葉の真の意味を、アッシュたちはここで完全に理解した。
あの奇妙なポーズも、意味不明な言葉も、全てはこの圧倒的な戦場支配力の前では些末な問題に過ぎない。彼は紛れもなく、背中を預けるに足る最強の盾であった。
「……爆弾のセットを急げ! 彼の作ってくれた時間を無駄にするな!」
アッシュの鋭い声で我に返ったレインボー小隊の面々が、凄まじい速度で爆薬の結線を進めていく。
ドルベとグローリアス・ヘイローが絶望の波を食い止めるその後方で、反撃の狼煙となる起爆準備が着々と進められていた。
進化の本質が放つ圧倒的な質量と無数の触手を前に、ドルベは一歩も退かずに立ち塞がっていた。
しかし、ここは地下坑道である。狭く入り組んだ地形は、巨大なグローリアス・ヘイローの機動力を著しく削いでいた。空間の制限を取り払うため、ドルベはデュエルディスクに新たなカードをセットする。
「私はフィールド魔法異次元の古戦場―サルガッソを発動!」
ドルベの宣言と共に、坑道内の空間が歪み、異次元の磁場を帯びた古戦場の幻影が現実を上書きしていく。岩壁の制約は消え去り、光天使たちが自在に飛び回れるだけの広大な亜空間が形成された。
後方で源石爆弾の設置を急ぐアッシュたちレインボー小隊は、進化の本質から際限なく産み落とされる小型の変異生物たちを的確な射撃で撃破していた。彼らの目には、空間そのものを書き換えて巨大な化け物を抑え込むホワイトシールドの力が、テラのアーツという概念すら超越した、想像を絶する事象として映っていた。
(このバケモノの無限増殖を止めるには、根本から能力を断つしかない。デュエルの効果通りに通じるかは分からないが、やるしかない!)
ドルベは決着を急いだ。進化の本質の核たる能力を無効化し、完全な無力化を図るべく、グローリアス・ヘイローに指示を飛ばす。
「行くぞ凌牙!グローリアスヘイローの効果、発動!このモンスターはオーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体の効果を無効にし、更にその攻撃力を半分にする!」
黄金の騎士が光の弓を進化の本質へ向けて制圧のエネルギーを放とうとした。
だが、その一瞬の隙を怪物は見逃さなかった。本体から漏れ出た無数の感染生物が盾となり、グローリアス・ヘイローの光を阻んだのだ。
効果の発動を妨害され、体勢を崩した光の騎士の胸部を、進化の本質の極太の触手が無慈悲に貫いた。
「この突然の異変は・・・まさか滅びの前兆!?」
ドルベの叫びも虚しく、頼みの綱であったグローリアス・ヘイローは無数の光の破片となって地下空間に散華した。
最強の盾が破られたことで、戦場の風向きは急速に悪化する。押し留められていた肉の波が、一気にドルベとレインボー小隊へ向けて雪崩れ込んできた。
しかし、ドルベは狼狽えていなかった。
(俺が焦ったせいで隙を作ってしまった。俺の落ち度だ……だが、まだ終わっていない!)
自分のミスを冷静に狼狽えることなく、彼の闘志は全く衰えていなかった。
そして、右手を大きく振りかぶり、渾身の力で次のカードをドローした時、彼の手は確かな逆転の光を引き寄せていた。
「現れろ!光天使、ブックス!!」
新たな光天使が場に顕現する。
ドルベの手札には、かつてドクターをも魅了し、自身にとって最強の切り札、RUM-バリアンズ・フォースが握られていた。これを使えば、より強力な力を持つカオスナンバーズを呼べるかもしれない。
だが、彼はその誘惑を断ち切った。
(不確かな力になんて頼らない。俺自身の最大限の『意地』で、この絶望を打ち砕くんだ!…これがみんなを守るための俺の足掻きだッ!)
「ブックスは1ターンに1度、手札のマジックカードを墓地へ送る事で、手札から光天使1体を特殊召喚できる!墓地に送ったのはRUMバリアンズフォース!来い!光天使スケール!」
ドルベは手札のRUMバリアンズ・フォースを躊躇いなく墓地へと送り、その代償として手札から新たな戦力、光天使スケールを特殊召喚した。
「光天使スケールの効果発動!特殊召喚時に光天使モンスターを手札から特殊召喚できる!来い!光天使ソード!更に墓地の墓地の光属性モンスターをデッキの一番上に戻すことができる!」
墓地に行ったグローリアスヘイローのカードはドルベの魂に帰還しエクストラデッキに収まる。
「グローリアスヘイローはエクストラデッキに戻る!」
先ほど破壊され墓地へと送られていたグローリアス・ヘイローが、スケールの導きによって再びエクストラデッキへと帰還を果たしたことでグローリアスヘイローの再臨を整えた。
場にはブックス、スケール、ソードという三体の光天使が揃い踏んだ。
「私はレベル4の光天使スケール!ブックス!ソードでオーバーレイ!3体のモンスターでオーバレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ!No.102!光天使グローリアスヘイロー!」
三つの光が再びネットワークを構築し、地下空間を眩い閃光が包み込む。
自らの過ちを乗り越え、安易な力に逃げることなく己の最善を尽くしたバリアンの白き盾が、一度は砕かれた希望の騎士を再び進化の本質の眼前に立たせたのだった。
再び顕現したグローリアス・ヘイローの神々しい輝きが地下坑道を照らし出す。
しかしその直後、ドルベの足元に展開された「異次元の古戦場―サルガッソ」の空間から、禍々しい紫色の雷が迸り、彼自身の体を容赦なく打ち据えた。
「ぐああっ!」
「サ…サルガッソの効果!このフィールドはエクシーズ召喚を行うたびにプレイヤーは500ポイントのダメージを受けなければならない!」
以前のように吹き飛ばされ無いよう全身を駆け巡る激痛に耐え、己の身を削るフィールド魔法の仕様によって怪我を負った。
「ポイント制!?」
もはや勝手に出る言葉にドルベは気にせず目の前の進化の本質から目をそらさず集中していた。
その唐突な叫びにアッシュたちは一瞬だけ怪訝な視線を向けたが、紫の雷を浴びながらもその場に留まり、一歩も引かずに立ち続ける白い戦士の姿に、すぐさま自分たちの任務へと意識を戻した。
グローリアス・ヘイローは、進化の本質が放つ怒涛の触手攻撃を真正面から受け止める。
完全な決着をつけるには至らない。だが、今のドルベの目的は怪物の撃破ではなく、背後の仲間たちが決死の作業を完了させるための時間稼ぎである。
光の騎士は身体を軋ませながらも、悪夢の化身の進行を見事にせき止めていた。
その後方では、アッシュたちレインボー小隊が、進化の本質から漏れ出てくる小型の感染生物たちを的確な射撃で次々と撃破していた。
激しい銃撃音が鳴り響く中、ついに最後の手順を終えたブリッツが、アッシュに向かって力強く頷く。
強力な源石爆弾の設置が完了した合図だった。
「退避しろ!起爆するぞ!」
アッシュの鋭い号令が響き渡る。
(任務完了だ!これ以上ここに留まる理由はない!)
ドルベは限界まで怪物を抑え込んでいたグローリアス・ヘイローを即座に消滅させ、踵を返して全力で駆け出した。
直後、レインボー小隊がセットした起爆装置が作動し、地下空間の構造を根底から破壊する凄まじい大爆発が巻き起こった。
轟音と共に坑道の天井が崩落を始め、進化の本質の悍ましい絶叫が瓦礫が砕ける音に飲み込まれていく。
濛々と立ち込める粉塵と、雨のように降り注ぐ岩塊から逃れるため、アッシュたちとドルベは出口へと向かって無我夢中で走り続けた。
ドルベは走りながら、崩壊していく地下空間へ向けて一度だけ振り返った。
土煙の奥底で、無数の岩盤に押し潰され、闇の中へと沈んでいく進化の本質のシルエットが見える。
(あんな悪魔のような怪物とは、もう二度と会うことがないように祈るばかりだ……!)
「こんな戯言はこれっきりだ、今度会った時その時は決着をつける」
ドルベは崩れゆく坑道を必死の形相で走り抜ける。異世界の兵士たちと共に、死地からの脱出を果たしたのだった。
轟音と共に地下坑道が崩壊していく中、命からがら地上へと脱出したドルベとレインボー小隊。
彼らを迎えたのは、サルゴンの赤茶けた砂漠を吹き抜ける熱風と、そして激戦の終わりを告げる静寂だった。
地上で「囮」作戦を実行し、感染生物の大群と死闘を繰り広げていたロドス小隊とフロストノヴァ。彼らの周囲には無数の氷の彫像と化した変異体の残骸が転がっていたが、彼女たちの顔には確かな勝利の安堵が浮かんでいた。
さらに朗報は続いた。ドルベとフロストノヴァが通信を復旧させたフィアルクンの村から、ついにロドス本艦へのSOSが届き、大規模な支援部隊が到着したのだ。
先行して駆けつけたエリートオペレーター・ストームアイの迅速な尽力もあり、ロングスプリングの街や近隣の集落への被害は最小限に食い止められていた。
「よく生きて戻ったわね、ホワイトシールド。それに、アッシュやタチャンカたちも全員無事みたいね」
フロストノヴァが、土埃にまみれたドルベたちを労うように微かに微笑む。
「ああ。厄災の源は、確かにこの手で地下深くへと葬り去った」
アッシュが短く、しかし力強く答える。その傍らで、ドルベは無言でサムズアップを決めていた。彼が展開した光天使の盾がどれほどアッシュたちの作戦を助けたか、その場にいた全員が理解していた。
シュバルツ、レンジャー、そしてBSWのフランカとリスカムも集まり、共に死線を潜り抜けた仲間たちと無事の帰還を喜び合う。
狂気の科学者と進化の本質がもたらした最悪のシナリオは、彼らの手によって完全に打ち砕かれたのだ。
それから、半月の時が流れた。
ロングスプリングの街は、ドラッジの反乱と感染生物の襲撃が残した爪痕からの復興に追われていた。
レインボー小隊の面々も、ロドスの医療チームと協力し、傷ついた領民たちの治療や街の修繕に尽力していた。テラという未知の大地で、彼らは自らの居場所と、そして帰還への道筋を探し始めていた。
ある日の夕暮れ。
アッシュ、ブリッツ、タチャンカ、フロストの四人は、街の小高い丘から、遠く広がるロングスプリングの街並みを見下ろしていた。
彼らの脳裏に浮かぶのは、あの心優しきフェリーンの医師、ミアロの姿だった。彼は今も、街の診療所で昼夜を問わず患者のために走り回っている。ドルベの無茶な突撃によって最悪の運命から救われた彼は、この大地で確かに多くの命を繋ぎ止めていた。
「……色々あったが…良い街だったな」
タチャンカがぽつりと呟く。
「ああ。だが、ここは私たちの故郷ではない。帰るための方法を、見つけ出さなければならない」
アッシュの言葉に、全員が静かに頷いた。
そこへ、彼らを迎えに来た外勤チームの車両が到着した。
シュバルツが運転席から降り立ち、彼らに声をかける。
「もう準備はいいですか?良ければロドス・アイランド本艦へ向かます。」
レインボー小隊は、決意を新たに車両へと乗り込んだ。
広大な荒野を越え、ついに彼らを乗せた車両は巨大な移動都市艦、ロドス・アイランドの駐車スペースへと滑り込んだ。
ハッチが開き、レインボー小隊の面々がテラにおける最大の拠点へと足を踏み出す。
「ようこそ、ロドス・アイランドへ」
出迎えたのは、フロストノヴァだった。彼女の隣には、彼らがロングスプリングで別れて以来、顔を見ていなかったあの「白い不審者」の姿がある。
しかし、その様子はひどく奇妙だった。
ドルベは、駐車スペースの片隅で、両腕を水平に保ち、片足を上げたままの極めて過酷なポーズ(通称・バリアンの白き盾の懺悔の構え)で、微動だにせず固まっていたのだ。彼の周囲には、哀愁を漂わせるように光の粒子が力なく明滅している。
「……フロストノヴァ。彼は、一体何をしているんだ?」
アッシュが困惑顔で尋ねると、フロストノヴァは呆れたように大きなため息をついた。
「あの馬鹿、フィアルクンの村から借りた装甲輸送車をドラッジに突っ込ませて壊したでしょう? その修理費用とパーツ代の請求書を見たケルシー先生が、激怒してね」
「激怒……?」
「ええ。『ロドスの備品を何だと思っている。暫くその意味不明なポーズを維持してしろ。一ミリでも動いたら、給料を向こう半年間減額支給にする』って」
「非力な私を許してくれ……(訳:足が、足がプルプルする……! だがバリアンの意地にかけて、ここで崩れるわけにはいかない……!)」
ドルベの口から、悲痛な声が漏れ出た。
かつて地下坑道で、進化の本質という絶望を前にしても決して揺るがなかった鉄壁の騎士が、今や冷徹な医療トップの命令の前に完全に屈服し、石像のように固まっている。
そのあまりにもシュールな再会の光景に、レインボー小隊の面々は顔を見合わせ、やがて揃って苦笑いを浮かべた。
「……相変わらず、あいつは常識からは外れているな」
「だが、悪い奴ではないのは分かっているさ。……まあ、今はそっとしておいてやろう」
「ええ、気にする必要はないわ。さあ、面接の場所へ案内するわよ。ケルシー先生と、CEOのアーミヤが待っているわ」
フロストノヴァが先導し、レインボー小隊の面々がそれに続く。
彼らが歩き出す背後で、ドルベはピクピクと筋肉を痙攣させながらも、「友の新たな旅立ちを祝福しつつ、己の罪を購う不動のポーズ」を必死に保ち続けていた。
「我が名はドルベ、お前をデュエルで倒す者(訳:歓迎するぞ! ロドスへようこそ! この私が、これからも君たちの盾となろう…!」
(…足が攣りそうだけど!)
異世界から来た熟練の兵士たちと、転生者である不器用なバリアンの騎士。
彼らの故郷への帰還への道筋、そしてテラの大地を巡る新たな戦いの物語は、まだ始まったばかりである。
果てしない荒野を行くロドス・アイランドの艦内に、今日もドルベの謎のポーズとドルベ語が響き渡るのだった。
オリジニウムダスト後は…
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オペレーターとの交流(時系列バラバラ)
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ドクターやロドス首脳陣主体の交流
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単独でサイドストーリーに乗り込む
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