なんとでも言え。私とてテラの大地を救わなければならない…   作:バリアンの(面)白き盾

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バリアンの白き盾!ドルベ!

 ロドスの重装訓練場。そこには、新しく配属された「ホワイトシールド」を迎え入れるべく、ロドスが誇る強力な重装オペレーターの面々――ホシグマ、クオーラ、マッターホルンたちが集まっていた。

 しかし、現れた男の姿を見て、重装オペレーターたちの間に戸惑いの空気が流れだした…。

「……なあ、ドクター。本当に彼が新しいオペレーター『ホワイトシールド』なのか?」

ホシグマが、自分の巨大な盾「般若」を地面に置きながら首を傾げていた。

目の前に立つドルベは、洗練された白いスーツに身を包んだ細身の体躯。敵の猛攻を正面から受け止める重装らしい厚みはどこにもなかった。何より、彼は盾すら持っていなかった。

「武器も盾も持ってないよ。それに……」クオーラがじっとドルベの手元を見つめた。「僕にはあの人、重装っていうより、術師、補助オペレーターのように見えるよ?」

マッターホルンも深く頷く。「そうですね。コードネームの『ホワイトシールド』はもしかして人事部の区分ミスではないでしょうか?」

 重装オペレーターたちは『ホワイトシールド』という名前からは想像できない姿に各々色んな思惑を巡らせた。

 ドルベは、心の中でいやいや! 俺のアイデンティティは『盾』なんだ! 重装として皆さんの前に立つ資格もあるはず!(そんな訳ない)!と、必死に自身の「重装」としての誇りを証明しようと意気込み始めた。

 

 余談だが彼は生前の記憶がなさすぎるがためドルベのセリフを話しているに内に自分の事をドルベだと思い込むようになりつつあった。

 そう、彼は(俺はドルベ…!誰が何言おうがドルベなんだ…!)。自分の事をドルベと思い込んでいる一般人になりつつあったのだ。

 

 

 ドルベは力強く胸を張り、最高にかっこいいポーズ(と思っている)で叫ぶ。

「バリアンの白き盾! ドルベ!」

(((……白き盾?)))

 重装たちの視線が、彼の持っていない「盾」を探して彷徨います。ドルベは「今に見せてやる!」とばかりに腕を振り上げ、自慢の切り札を具現化させた。

「現れろ! No.102! 光天使グローリアスヘイロー!」

突如として降臨した巨大な光の騎士。その圧倒的な質量と、周囲のアーツを強引に鎮める「効果の無効化」に、重装たちは息を呑んだ。彼は、本人が耐えるのではなく「強力な個体を召喚して戦線を維持する」補助オペレーターの召喚士としての性質が盾なのだと推測していた。

 

 ドルベは皆の驚く顔を見てよし!手応えありだ!(そんな訳はない)と確信し、満面の笑みで歓迎への感謝を述べた。

「私と共に地獄へ行くぞ! ベクター!」

(訳:私と一緒に、このロドス、ひいてはテラ大陸の平和を守るために共に戦い抜きましょう!)

「「「…………!!!」」」

 重装たちが一斉に盾を構え、戦闘態勢に入った。

「地獄へ連れて行くだと!? 歓迎しに来た仲間を皆殺しにする宣告か!」

「今さっきベクターって言ったけどもしかしてドクターを!?この人危険! 悪い奴だよ!」

 ドクターは心の中でこうなりそうな気がしていた。

(やはり…こうなってしまったか…)

本格的にドルベにはロドスでは発言しないように言って聞かせないといけないのかもしれない。ドクターは前もって保険をかけといてよかったと安堵した。

 ドクターにドルベの他オペレーターたちの歓迎があると伝えておいたアーミヤが別の会議を終えて血相を変えて駆け込んできた。

「待ってください! 違います! 彼はただ、皆さんと仲良くしたくて……! ああっ、ドルベさん、それ以上は言わないでください!!」

 

 

 

 事態を重く見たケルシーとドクターにより、即座に以下の通達が出された。

【緊急通達】

 オペレーター『ホワイトシールド』は、言語出力に深刻な異常(呪い)があり、発言内容が意図せず相手への宣戦布告や殺害予告に変換される。

 現場の混乱を避けるため、「アーミヤが同行していない場での一切の発言を禁止」とする。

 

 

 ドルベは自室でガックリと項垂れていた。

(嘘だろ……。せっかく憧れのロドスに就職したのに、数日で発言禁止なんて……。やっぱりこの「ドルベ語」はどんなに頑張っても俺を苦しめる…)

彼は窓の外を見つめ、静かに、誰にも聞こえない声で(禁止令を守って)呟いた。

「非力な私を許してくれ…。」

(心の声:ごめんなさい。もう黙っています……)

こうしてロドスには、「一切口をきかないが、ポーズだけで光の騎士を呼び出す、無口で危険な召喚士」という噂が広まることになった。

 

 

 

 ロドス・アイランドの作戦会議室は、かつてないほどの深刻な空気に包まれていた。

 ホワイトシールド(ドルベ)が放つ、戦術を根底から覆すほどの圧倒的な力。それを制御し、彼を正しく運用するためには、あの支離滅裂な「ドルベ語」の解読が不可欠だったからだ。

 ドクター、ケルシー、そして疲弊したアーミヤによる「ドルベ語翻訳プロジェクト」が始動していた。

 

ケルシー

「……。言語学的なアプローチはすべて失敗した。彼の発言はサルカズの古語でも、ヴィクトリアの言い伝えでもない。………我ながらあるわけ無いだろうが、何を言いたいかというとつまりは、同じ単語が状況によっては180度異なる意味を持つのが最大の問題だ」

ケルシーはホログラムに映し出された「ドルベ語頻出単語リスト」を指差した。

 

ドクター

「特に『ベクター』という単語が厄介だ。誰に対しても、あるいは何に対しても使われる。……主には怒りの対象に使われている傾向がある…。これは特定の人名なのか、あるいは概念的な『悪』を指しているのか……」

アーミヤ

「……。あの、ドクター……。ドルベさんの心は、本当にかわいそうなくらい真っ直ぐなんです。でも、口から出る言葉があまりにも……あまりにも『威圧感のあるカッコよさ』に振り切れて、私の脳内で翻訳が追いつきません……」

アーミヤは机に突っ伏した。

ケルシー

「最大の問題は、彼の気分が高揚する程『言葉の攻撃性が増す』という点だ。歓迎会での『私と共に地獄へ行くぞ!』という発言。あれをアーミヤが『熱烈な友情の握手』だと解説した際、私は自分の理性を疑わざるを得なかった」

ドクター

「……。いっそ、言葉を無視して『ポーズの角度』で判断するのはどうだ? 45度反っていたら肯定、指を刺していたら説明……というように」

ケルシー

「……。ロドスの最高指揮官と、ロドスの最高責任者が、一人の新人の『ポーズの角度』で意思疎通を試みる姿か。……あまりにも滑稽な姿だな…。非効率的だが、現状それ以外の正解が見当たらんのが口惜しいなと感じ始めてるのは寝不足のせいか…?ドクター、君が最後に寝たのはいつだ?」

ドクター(無言で4本の指を立てた)

「……。つまり、我々が彼の言語を学ぶのではなく、我々が彼の『ノリ』に合わせる必要があるということだ。……ケルシー、試しに何か言ってみてくれ」

ケルシーは一瞬眉をひそめ、極めて不本意そうに、手元の資料を机に叩きつけた。

「……『少しは楽しませてくれたが、結果は最初から見えていた』」

アーミヤ(3轍目)

「……あ、今のは! ドルベさん語だと『今日の会議はこれで終わりだ。みんなお疲れ様』っていう意味に聞こえました!」

ドクター

「……。アーミヤ、今日はもう寝るんだ…。…ロドスの首脳陣が全員この話し方になったら、この艦は一週間で空中分解するな」

 

こうして、ドクターの端末には「ホワイトシールド専用・緊急時翻訳マニュアル」が作成された。

【緊急時マニュアル抜粋】

彼が「バリアンを救わねばならん」と言ったら、それは「やる気がある」傾向がある。そのまま突撃させろ。

 作戦終了時の彼が「我が友ナッシュ」と発言したら、それは「ドクター、さすがです」という称賛。照れる必要はない。

 もし彼が「デュエルだ!」と言ったら……それは単なる「作戦開始」の合図だ。

 彼に「死ね」(地獄へ連れて行くことなどの発言)と言われても、それは「頑張れ」「頑張ろう」という意味の傾向がある。怯えるな。

 彼が「バリアンを救う」と叫んだら、「承知した」とだけ返せ。会話を深掘りするな。迷宮入りする。

 彼が無言でポーズを決めている時は、「満足している」証拠だ。そっとしておいてやれ。

 

 

 

 

 

 会議室を出たドクターの背後で、ケルシーがボソリと呟いた。

「……ドクター。私も一度、彼の真似をして『少しは楽しませてくれたが、結果は最初から見えていた』と言えば、この事務作業の山から解放されるだろうか?」

「ケルシー、それは『呪い』じゃなくてただの『放棄』だぞ。君も最後に寝たのはいつが最後だ?」

 ケルシーは無言で五本の指を立てた。

「………今日は私も君も寝るべきだ」

「…そのようだ。まさか君と意見が一致するとはな」

 

 ドッソレスに訪れた頃より心の距離が近くなったのはドルベという男のおかげなのか。またはドルベという問題児を前にいがみ合う事を忘れてしまっているだけかもしれない。

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