なんとでも言え。私とてテラの大地を救わなければならない… 作:バリアンの(面)白き盾
龍門の寒々とした路地裏。そこは、すでに「地獄」と呼ぶにふさわしい凄惨な戦場となっていた。
龍門の謎の精鋭、影から襲いかかる黒装束の特殊部隊。その圧倒的な波を前に、スノーデビル小隊はレユニオンの仲間たち、力を使い倒れたフロストノヴァを逃がすための唯一の出口を、文字通り命を削って死守していた。
「……姉さん、もう限界だ……」
もうここまでだ……皆、姉さん、すまない…
小隊のリーダーが目を閉じかけた瞬間、凄まじい衝撃音と共に黄金の光が降り注ぐ。
「光天使ブックス! を召喚! 手札から魔法カードを墓地に送り、私はさらにレベル4の……」
現れたのは、白いスーツに身を包み、腰を異常な角度で反らせながら天を指さすという、戦場では見ることはない「変なポーズ」を完璧に決めた男が立っていた。
「な、なんだあいつ……? あの格好、近衛局の新たな刺客か?」
「いや、あんなに股関節が柔らかい兵士は見たことがない……敵か!? それとも――」
戸惑う彼らをよそに、ドルベ(ホワイトシールド)はノリノリで指先を回し、次々と幾何学的な浮遊物体(光天使)を展開した。龍門の部隊を傷つけないよう注意深くアーツだけを封印し、スノーデビル小隊たちへの撤退路をこじ開けた。
目の前で繰り広げられる、テラの常識を超えた「召喚術」の嵐。死を覚悟していたスノーデビル小隊たちは、武器を構えたまま呆然と立ち尽くた。
「……援軍か? いや、あんな格好の奴はレユニオンにいないぞ!」
「おい、あんた誰だ! なんで俺たちを助ける!」
必死に問いかける小隊員に対し、ドルベは背中で語るようにポーズを変えた。今度は片腕を伸ばしピースしているように見える。
「……待て、あの服! 腕のパッチを見ろ、ロドス・アイランドの制服じゃないか!?」
スノーデビル小隊の一人が叫んだ。レユニオンにとってロドスは敵対組織。しかし、目の前の男は近衛局のアーツ部隊を次々と沈黙させ、自分たちを守るように立ちはだかっていた。
「ロドス! なぜ俺たちを助ける! 名を名乗れ!」
必死に問いかける小隊員に対し、ドルベは背中で語るようにポーズを変えた。今度は両足を大きく開き、身体を大きく反りながら片手を反るように伸ばしている。
「私の名はナッシュ・・・ただの旅行者だ。」
「旅行者!? ロドスの制服着てて何が旅行者だ! さっきからそのポーズは何なんだ!」
「私の名はナッシュ・・・ただの旅行者だ。」
「何しに来た!」
だんだんとスノーデビル小隊は困惑に支配されつつあった。
何を言っても同じ返答しか返ってこないのではないか?そう思わされる気迫がこの男にはあった。
「私の名はナッシュ・・・ただの旅行者だ。」
「…………。」
レユニオンの兵士たちは悟った。(あ、さてはコイツ、話が全く通じないな)と。
「私の名はナッシュ・・・ただの旅行者だ。」
一方ドルベは心の中で(いや、違うんだ! 助けに来たんだよ!)と叫びながらも、気分が乗ってきたため、トドメの決めポーズと共に叫んでいた。
黒装束を手加減しながら蹴散らしながら、ゲームの中のシーンに立ち会えたことでテンションも上がっていた。
「バリアンの白き盾!ドルベ! 私とてバリアン世界を救わねばならん!」
「さっきはナッシュって言っただろ! 今度はドルベか! バリアン世界ってどこだよ! お前なんなんだよ!!」
スノーデビル小隊は混乱の極みに達していたが、彼が時間を稼いでいるのは事実。「……理由は分からんが、あの変な奴を信じるしかない。行こう、姉さんのところへ!」
一方、龍門市街。
ロドスと近衛局による対レユニオン連合作戦は、事実上の決着を迎えていた。ケルシーはレッドと共にクラウンスレイヤーとの対話を終え、ドクターと合流しようとしていた、その時。
インカムから飛び込んできた報告は、二つの「あり得ない事態」だった。
「報告します! スノーデビル小隊の黒装束の所属不明の部隊が依然として交戦中のようです! そして……その戦場の中央に、本艦から独断専行したオペレーター、『ホワイトシールド』が何を言っているか分からないと思いますが…、降臨しました!!」
「…………ッ!!」
ケルシーの指が、耳元のインカムを地面に叩きつけようとする衝動に震えた。二徹明けの脳に、最悪のイレギュラーが突き刺さる。
しかし、彼女は超人的な理性でその怒りを抑え込んだ。今ここでインカムを壊せば、状況の把握すら困難になる。
(あの愚か者が……! 近衛局の作戦区域に独断で介入するなど、政治的にどれだけの損害が出るか理解しているのか? ……。いや、それ以上に、私の今後の書類作業が数倍に膨れ上がることは確定したな)
ケルシーの周囲の空気が、フロストノヴァの冷気とは別の意味で凍りついた。
「レッド……ケルシー怖い……」
レッドは飛び火しないよう黙ってケルシーの後を追った。
ドクターはインカム越しにその報告を受けて、顔面蒼白になっていた。
「……アーミヤ、急ごう。彼は恐らくだが感染者を守ろうとしている。だが、このままでは……」
ドクターには見えていた。救われたはずのフロストノヴァが、ドルベの「女、貴様はよく戦った、眠りにつくがいい(訳:お身体大丈夫ですか?ゆっくり休んで下さい)」という宣戦布告まがいの台詞に激怒し、再び戦場が凍りつく未来が。
「彼が口を開く前に、物理的に黙らせないと……龍門が危ない!」
ロドスの首脳陣は、異なる思惑が錯綜する中で、全速力で「白き盾」のもとへと急行するだった。
龍門の湿った地下通路。冷たい空気が停滞するその場所は、レユニオンの感染者たちが闇に紛れて脱出を図るための、合流地点となっていた。
地下の静寂の中、先に安全圏へ移送されていたフロストノヴァは、自身の衰弱した体とは裏腹に、微かな、しかし確かな「繋がり」を感じていた。
(……温かい。まだ、みんなの命の灯火が消えていない……)
目を覚ました彼女は共に脱出しようとしていたレユニオンたちを見送りこの中間地点で待機していた
彼女は自身の力をスノーデビル小隊の「兄弟たち」に分け与えている。その繋がりを通して、彼女には遠く離れた彼らがまだ生きていることが、肌に触れるように分かっていた。
(けれど、どうして……。あの絶望的な包囲網から、どうやって生き延びたというのだ?)
暗い通路の先から響く足音。姿を現したのは、煤と返り血に汚れながらも、奇跡的に一人も欠けることなく生還を果たしたスノーデビル小隊の面々だった。彼女は込み上げる安堵に胸を震わせ、彼らを迎えようと一歩踏み出した。
「……みんな、よく……っ、……。…………え?」
しかし、その安堵は、彼らの後ろから不自然な等間隔で歩いてくる「異物(ドルベ)」によって、瞬時に凍りついた。
スノーデビル小隊の背後から、地下通路の僅かな灯りに照らされて悠然と歩み寄る白い影。
ロドスの制服を不自然にキメた男、ドルベは、心の中で(うわぁぁ本物だ! フロストノヴァだ!良かった、生きて会えて本当に良かった……!)と、猛烈な感動に浸っていた。
しかし、発言禁止令を忠実に(一応)守っている彼は、一切言葉を発しない。代わりに、あふれ出す喜びと敬意を表現しようとした結果、狭い地下通路にもかかわらず右手を壁に突いて身体を弓なりに仰け反らせ、不自然なほど顎を突き出すという、理解不能な「変なポーズ」をフロストノヴァの真ん前でピタリと決めていた。
地下通路はまさに混沌を極めようとしていた。
「……誰だ? その、関節の構造を疑う男は。それにその制服……ロドスなのか?」
フロストノヴァの視線が鋭く冷え目の前の異物(ドルベ)を捉えた。スノーデビル小隊のリーダーが、困惑しながらも必死に説明した。
「あ、姉さん! 落ち着いてくれ! こいつ、ロドスの奴なんだけど、俺たちが囲まれた時に急に降ってきて……黒装束の奴らを全部無効化して、俺たちを地下まで逃がしてくれたんだ!」
「……そうよ。話は全く通じないし、ずっと変なポーズをしてるし、名前も発言するたびに変わるんだけど……悪い奴じゃない……と思う……かも」
フロストノヴァは混乱していた。
命の恩人。ロドス。それにしては、目の前の男から発せられるオーラが、あまりにも「戦士」としての常識を逸脱していたからだ。
ドルベは、彼女の怪訝な視線に(あ、やばい。怪しまれてる。とりあえず、俺は味方だって伝えなきゃ!)と焦り、さらに難解な「友情と信頼」を意味する(と自分では思っている)ポーズへと移行しました。ピースを作り片腕を突出した。
「…………。」
フロストノヴァは、音もなく氷の礫を浮かせた。
「……ロドスの使者。……さっきから、その奇妙な踊りで私を挑発しているのか? それとも、新手の精神攻撃かしら?」
「ち、違うんです姉さん! 多分それ、あいつなりの挨拶なんだよ!」
「そうだよ! きっとバリアン世界っていうところの流儀なんだよ!」
スノーデビル小隊たちの必死のフォローにより、ドルベは辛うじて氷漬けになるのを免れたが、地下通路の空気はかつてないほど「カオス」に染まっていた。ドルベは無言のまま、熱い視線(と変なポーズ)をフロストノヴァに送り続けていた。
地下通路の重苦しい空気の中、フロストノヴァの冷気が鋭さを増していく。
ドルベは焦った。(まずい、このままだと不審者だと思われる!※もう思われてます※ ドクターたちがもうすぐここへ来ることを伝えて、安心させて上げないと!)
彼は深呼吸をし、最大限の「誠実さ」と「緊急性」を込めて、ドクターたちの到着を告げようと口を開いた。
「少しは楽しませてくれたが、結果は最初から見えていた。」
(訳:ドクターたちがもうすぐ到着します。安心してください!)
フロストノヴァの眉間に深い皺が寄ります。「……結果が見えていた? 私たちがここで追い詰められ、貴様に弄ばれることがか?」
「だが安心しろ、貴様が途中で逃げださぬ様、私が地獄まで付き合ってやる。」
(訳:ドクターたちが来るまで、私が盾となって君たちを最後まで守り抜くと約束しましょう!)
「…………ッ!!」
フロストノヴァの周囲で、地下通路の壁がパキパキと凍りついた。
「地獄まで逃がさない……だと? ロドスは、死に損なった私たちをここで根絶やしにするつもりか!」
ドルベは致命的に何か間違えたことにとパニックになり、ドクターとケルシーを象徴するポーズを交互に決め始めだした。
まず、片手を腰に当て、もう片方の手で「眼鏡をクイッとする」仕草(ケルシーのつもり)※ケルシーは眼鏡をつけてないが彼はパニックになっています※をしながら、腰を限界まで反らせた。
次に、フードを深く被るようなジェスチャー(ドクターのつもり)をしながら、激しく足踏みをした。
「ナッシュ…こんな時、君がいてくれたら…」
(訳:まもなくドクターたちがここに来るはずです!)
「……何かの儀式を始めたんじゃないか?……?」
「姉さん、やっぱりこいつ、俺たちの魂を何かに捧げようとしてるんじゃ……」
スノーデビル小隊さえも、あまりの異様さに武器を握り直し始めていた。
ドルベは最後の一押しとして、友情と信頼の証である「あの名前」を叫ぶ。
「私の名はナッシュ! いや、バリアンの白き盾、ドルベだ!」
「何なんだコイツは!? 狂気だ……この男、完全に狂っている!」
フロストノヴァが掌を向け、地下通路に吹雪が吹き荒れようとしたその瞬間――
「ドルベさぁぁぁぁん!! 喋っちゃダメですぅぅぅぅ!!」
通路の奥から、絶望に満ちたアーミヤの叫び声が響き渡る。
ついにドクターたちがに戦場になる直前に滑り込むよう駆けつけてきたのだった!
地下通路の重苦しい空気の中、ドクターとアーミヤが全力で滑り込んできた。
「待ってください! フロストノヴァさん! 彼は敵じゃありません!」
アーミヤの叫び声が響き、ドクターは一触即発の二人の間に必死に割り込んだ。
ドルベはドクターたちの姿を見て(あぁ、やっと来た! 良かった、これで説明してもらえる!)と安堵し、喜びを表現するために左手で顔を覆いながら右手を天に突き出し、背中をCの字に反らせるという、より一層難解な「再会のポーズ」で静止した。
「……見ての通り、彼は極めて……個性的だが、君たちの仲間を救いたいという一心で動いていたんだ」
ドクターの必死の説得と、スノーデビル小隊たちの「実際、彼のおかげで全員生きてる」という証言により、フロストノヴァは少しずつ氷の礫を収めた。
そこでドクターは、彼女の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「フロストノヴァ、君も、君の兄弟たちも……これ以上ここで命を捨てる必要はない。ロドスに来てくれ。君たちの戦いも、その病も、私たちが共に背負わせてくれ」
アーミヤも一歩踏み出し、手を差し伸べた。
「あなたの冷たさは、誰かを傷つけるためのものじゃないはずです。私たちと一緒に、新しい道を歩みませんか?」
フロストノヴァは、差し出された手と、背後で片脚立ちのまま静止しているドルベを交互に見て、静かに口を開いた。
「……ロドス。……今の私に、信じられるものは少ない。けれど、兄弟たちの命を繋いでくれたこと……その一点において、貴方たちの手を取る理由はあるのかもしれない」
しかし、フロストノヴァが手を伸ばそうとした瞬間、彼女の身体を激痛が襲った。アーツの暴走。彼女の身体は、触れる者すべてを凍らせ、自分自身の命さえも削り続けていた。
この時ドルベは思い出していた。
――このままロドスへ連れて行っても、彼女の身体が限界であることに。
(……このままだと、救えても彼女の命は長くない。俺のナンバーズなら、アーツの異常を『無効化』して、彼女の身体を治療できるかもしれない!)
ドルベは無言のまま、凄まじいプレッシャーと共に光を放ち始める…。
「私はレベル4の光天使ウィングス!ブックス!ソードでオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ!No.102!光天使!グローリアスヘイロー!」
地下通路を黄金の光が埋め尽くし、神々しい騎士が降臨した。
「なっ……何をするつもりだ!?」と武器を構え直すスノーデビル小隊。アーミヤさえも「ドルベさん!? 今はそれどころじゃないですよ!?」と驚愕していた。
しかし、ドクターだけは、ドルベがフロストノヴァを攻撃しようとしているのではなく、彼女を蝕む「アーツの暴走」にその剣先を向けていることに気が付いた。
「待て、みんな……! 彼は、戦おうとしているんじゃない!」
ドルベはポーズをさらに深め、NO.102グローリアスヘイローに命じた。
(グローリアスヘイロー! 彼女の身体を蝕むアーツを無効化しろ! 効果、発動!!)
「行くぞ凌牙!グローリアスヘイローの効果、発動!このモンスターはオーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体の効果を無効にし、更にその攻撃力を半分にする!行け!グローリアスヘイロー!シャークドレイクに攻撃!ライトニングクラスター!」
黄金の光がフロストノヴァを包み込む。彼女のアーツに直接干渉し、暴走していた冷気の源を強引に「鎮圧」していくナンバーズの力。
それはテラの科学でもアーツでも不可能な、概念そのものを書き換える「奇跡」の光景だった。
フロストノヴァは目を見開いた。
自分の身体から、絶え間なく続いていた鋭い痛みが消え、凍てついていた指先に、かつて失ったはずの「温かさ」がわずかに宿っていくのを感じたからだ。
ドクターは冷や汗を拭いながら、ドルベの背中を見つめた。
(……言葉は一言も通じない。ポーズは全部変だ。けれど……彼は、本当に彼女を救おうとしているんだな)
当のドルベは、光り輝く騎士の横で「よし、これで行ける!」という意図を込めて、腕を十字に組んで顎を引くという、最高にキメた(変な)ポーズで静止していた。
黄金の光が収まると、地下通路を支配していた刺すような寒気が嘘のように凪いでいた。
フロストノヴァは、信じられない思いで自分の両手を見つめていた。
常に身体を内側から破壊し続けていた激痛が消え、彼女を拒絶の象徴にしていた「触れるものすべてを凍らせる冷気」が、ドルベのナンバーズによって強制的に封じ込められたからだ。
「……姉さんの、身体の冷えが……収まってる……?」
スノーデビル小隊の一人が恐る恐る彼女の肩に触れた。今までなら一瞬で指先が壊死するはずの接触。しかし、そこには確かな「生身の人間の熱」があった。
「……あ……」
フロストノヴァは、震える手でドクターの手を、そしてアーミヤの手を握った。
「温かい……。これが、人の温もり……なのね……」
彼女が分け与えていた力も消失し、スノーデビル小隊は超常的な戦闘力を失った、しかしそれ以上に彼らの顔には「姉さんが生きられる」という、勝利よりも価値のある喜びが溢れていた。
しかし、奇跡の代償は残酷な形で現れていた。
フロストノヴァの胸元で、父・パトリオットから授かった大切なアーツユニットが、強引なアーツ無効化の衝撃に耐えきれず、音を立てて粉々に砕け散ったからだ。
「……アーツユニットが……」
フロストノヴァの顔が青ざめた。
このユニットはパトリオットの持っている同じアーツユニットと共鳴しており、彼女の生命活動を遠隔で示す信号代わりでもあった。それが砕けた今、パトリオットのもとには「フロストノヴァの生命反応消失」という最悪の結末が届いているはずだった。
地下通路に、新たな、そしてより巨大な戦火の予感が立ち込めた。
愛娘を失った(と思い込んだ)「愛国者」の怒りは、ロドスをも焼き尽くす軍神の進撃へと変わるかもしれない。
フロストノヴァはアーツユニットの事を2人に話し今の状況が決して安心できるものではないと説明した。
「ドクター……パトリオットさんが黙っていないはずです。これは、大変なことに……」
アーミヤが震える声で呟いた。
周囲が「最強の軍神」との衝突を予感して戦慄する中、事態の元凶(?)であるドルベだけは、全く別の世界にいた。
(よっしゃあああ! フロストノヴァ生存ルート確定! 俺、今最高の仕事したんじゃないか!? 推しが救われるって、こんなに素晴らしいことだったんだな!)
「少しは楽しませてくれたが、結果は最初から見えていた」
彼はあまりの達成感に、もはやおなじみの言葉を何度も言いながらポーズをとっていた。全力の「喜びの舞」……もとい、究極のポーズを繰り出していた。
「……あの、ホワイトシールドさん? 状況がかなり不穏なんですけど……」
アーミヤが困惑して声をかけるが、ドルベは(俺は今、感極まっている。話しかけないでくれ)と言わんばかりに、さらに腰の反りを深くした。
ドクターは冷や汗を拭いながら、ドルベと砕けたアーツユニットを交互に見た。
「……ドルベ。君のおかげで彼女は救われた。……が、次はパトリオットを相手に、そのポーズだけで説得してもらうことになるかもしれないぞ……」
チェルノボーグのある廃墟。彼はそこで黄昏かのように立っていた。
そこには、テラ最強の戦士と謳われるパトリオットが、折れた大盾を傍らに、砕け散ったアーツユニットの破片を震える手で見つめて立っていた。
(……娘よ……)
ユニットから伝わっていた生命の鼓動は、今や完全に途絶えていた。彼は咆哮することも、涙を流すこともなく、ただ静かに、絶望という名の冷気をその鎧に纏わせた。
愛する娘を失い、彼はただ「レユニオンの盾」としての義務を果たすため、その槍をより深く、より残酷に握り直すのだった。
地下通路で近衛局の黒装束部隊を「光天使」でボコボコにしてしまったドルベは、自分のしでかした事の大きさに(あ、これ龍門との外交問題になるやつだ……怒られるかな……)と、さすがにオドオドしながら、ポーズを崩さず歩いていた。
ドクターとアーミヤも、「フロストノヴァを救えた喜び」と「龍門(近衛局)にどう言い訳するかという頭痛」の間で、顔を青くしたり白くしたりしている。
そんな彼らがロドスのハッチを潜った瞬間、そこには普段からは想像できない「怒りの化身」と化したケルシーが、始末書の束を武器のように構えて待機していた。
「……ホワイトシールド。独断専行、国際問題への発展、そして無線無視。言い残すことはあるか?」
ケルシーの冷徹な声が響き渡る。しかし、彼女の視線はその背後に続く大集団――ロドスの制服を着た男に守られるように歩くフロストノヴァと、武装したままのスノーデビル小隊――を捉え、言葉を失った。
ドルベは、自分を迎えに来てくれた(と思っている)ケルシーに対し、最高の感謝と敬意を示すため、右手を心臓に当て、左手を優雅に振り上げながら、首を不自然な角度で横に曲げる「帰還のポーズ」を決めた。
「女、貴様はよく戦った、眠りにつくがいい!」
(訳:ケルシーさん! 書類仕事、本当にお疲れ様です! ホワイトシールド、無事にフロストノヴァ様を連れて帰還しました!)
「「「…………!!!」」」
フロストノヴァが「えっ、今度はこの緑の女性に喧嘩を売ったの?」と目を見開き、スノーデビル小隊が「さすがドルベさん、ロドスの仲間にも容赦ねぇぜ……」と戦慄していた。
ケルシーの額に青筋が浮かぶ。
「……眠りにつくがいい、だと? 貴様は私に、永遠の安眠(死)を勧告しているのか……?」
「違います! 違うんですケルシーさん!」
アーミヤが必死に割って入る。
「彼は今、ケルシー先生を労っているんです! あと、フロストノヴァさんのアーツ暴走を無力化して、スノーデビル小隊を全員救出して、ついでに近衛局の特殊部隊を……ああっ、もうどこから説明すればいいのか分かりません!!」
ドルベは心の中で(よし、アーミヤが上手く説明してくれているな! 俺は黙ってポーズを維持しよう)と満足げに、さらに腰の反りを深くした。
「……。話は後だ。医療部、ただちにフロストノヴァとスノーデビル小隊を隔離室へ。ドクター、君は後で私の部屋に来い。……そしてホワイトシールド。」
ケルシーは、プルプルと震える指でドルベを指差した。
「貴様は、そのポーズのまま三日間、発言を禁じる。」
ドルベ(一般人)は、あまりの厳罰に「非力な私を許してくれ(訳:そんなぁ、ひどいです!)」という絶望のポーズで崩れ落ちた。
文字数多い?
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丁度いい
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短い