なんとでも言え。私とてテラの大地を救わなければならない… 作:バリアンの(面)白き盾
感動の再会に、一瞬だけ戦場の凍てついた空気が緩んだ。しかし、パトリオットが再びその巨大な槍を握り直すと、重力さえも歪めるようなプレッシャーがロドス一行を襲った。
「……娘を救った……貴様らへの……感謝は……ある。……だが」
パトリオットの赤い瞳が、ドクターとアーミヤを射抜く。
「……タルラを……止めるというなら……私を超えて……みせよ。……今の貴様らが……私という名の……壁を……越えられぬなら……彼女には……届かぬ」
パトリオットは、ロドスという組織が、あるいはドクターという指揮官が、このテラの残酷な運命を塗り替えるだけの「力量」を持っているのか、最後に自らの命を懸けて問おうとしていた。
ホワイトシールド(ドルベ)は、この展開を予見していた。
(……やっぱり、こうなるのか。パトリオットさんは、力尽くでロドスの覚悟を確かめようとしている……)
ドルベは、自分が
代わりに、ドルベは「背後で祈りを捧げつつ、片手で天を指し示す聖者」のポーズで固定し、自身の「光天使」をロドスのオペレーターたちの影に潜り込ませ、防御の加護を付与するサポートに徹した。
それを見たドクターは、即座にドルベの意図を察知した。
(……そうか、ホワイトシールド。君はあくまで『ロドス』を勝たせようとしているんだな。君一人の力でパトリオットを圧倒してしまえば、それはロドスの力量ではなく、君という『異物』の力でしかないと彼は見なすだろう。……君のポーズは、私への信頼の証か)
フロストノヴァは、ホワイトシールドの近くで戦場を注視しながら、彼の放つ「心の声」をドクターに伝えたようとした。
(……加護……信じている……光……盾になれ……!!……)
「ドクター、ホワイトシールドは……彼は、自分を盾として、あなたたちがパトリオットを打ち破ると信じてる!」
フロストノヴァの声に応えるように、ドクターが号令を下しました。
「全オペレーター、戦闘準備! ロスモンティス、アーミヤ! ホワイトシールドが展開した隙間から、パトリオットの防壁を穿て!」
パトリオットの槍が空を裂き、衝撃波が地面を砕く。しかし、ホワイトシールドが放った光天使の粒状のエネルギーが、ロドスの前衛たちの盾を不可視の強度で補強し、致命傷を回避させ続けた。
ドルベは(……俺は出ないけどロドスの一員として負けさせない……!!)という強い衝動と共に、プルプルと震える足で「勝利への架け橋を表現するブリッジ・ポーズ」のまま、戦場の背後で黄金に輝き続けていた。
それを見たパトリオットは、娘を救った男の「徹底したサポート」に、戦士としての矜持を感じ取っていた。
「……カカッ。……ヨイ……選別ダ……。……来イ……ロドス・アイランドッ!!」
チェルノボーグの大地に、巨大な盾が落ちる音が響き渡った。
死闘の末、軍神パトリオットは膝をついた。しかし、その面頬の奥にある瞳には、怒りも悲しみもない。そこにあるのは、娘を託せる者たちを見出した、静かな安らぎだった。
パトリオットの傷は深く、その巨体からは命の灯火が消えかけようとしていた。
勝利したロドス一行が沈黙する中、ホワイトシールド(ドルベ)が静かに歩み寄った。彼は「傷ついた友に手を差し伸べる者」をイメージし、右膝を突きながら左手を胸に当てるポーズで固定した。
「……情けハ……無用。……私ハ……戦士トシテ……ココデ……」
拒絶しようとするパトリオットの言葉を遮るように、ドルベはかつて遊戯王ZEXALでドルベ共に戦っていた「荒ぶる魂を持つ友ナッシュ」を思い浮かべながら、最大限の敬意を込めて口を開いた。
「私はお前の様な男を知っている。お前はあいつの事を思い出させる、その荒ぶる言動の裏にある真っ直ぐな魂を感じる!」
(訳:もう、俺たちが戦う理由はどこにもありません。あとは、私たちが信じたロドスにすべてを任せればいいんです)
ドルベの言葉……あるいは、ポーズから溢れ出す圧倒的な「誠実さ」に、パトリオットは一瞬言葉を失っていた。あるいは何をしているのか困惑していたのかもしれない。ドルベは、この伝説の戦士をここで死なせてはならないと強く願っていた。何より、ようやく再会できたフロストノヴァを、再び「父の死」という絶望に突き落とさないために。
(……生きて……二人で……未来へ……!!……)
フロストノヴァはドルベの心の声を聞き取った。パトリオットの傍らに膝をつき、その大きな手を取る。
「父さん……お願い。ホワイトシールドの言う通りだ。……私、ようやく、父さんに触れられるようになったの…!」
パトリオットは、娘の温かな手と、その背後で「夕日に向かって固い握手を交わす幻影」を一人二役で表現しようとしてプルプル震えているドルベを見つめていた。
「…………。……カカッ。……貴様ト……イウ男ハ……。……良カロウ。……コノ……泥濘ノ中デ……モウ少シ……呼吸ヲ……続ケテ……ミルトシヨウ……」
パトリオットが治療を受け入れることを承諾した瞬間、アーミヤの発令でロドスの医療班が、そしてケルシーが素早く動き始めた。
ドルベは安堵のあまり、そのまま「勝利の余韻に浸りながら昇天しかけている彫像」のポーズで固まっていた。
フロストノヴァは、即席の簡易医療室へ運ばれていく父を見送り、ドルベの隣に立ちった。
「……ありがとう、ホワイトシールド。あなたのあの……妙な言い回し。お父様には、言葉以上の何かが伝わったようだな」
(……当然……騎士……魂……共鳴……)
「ああ、そうだ。……『あいつもお前みたいに頑固だったけど、最後は笑ってた』……そんな風に聞こえた」
フロストノヴァの不完全な通訳でしたが、それはドルベが心に抱いた「戦友への想い」の核心を突いていた。
ドクターは、夕闇に輝くドルベの白い背中を見つめました。
(……言葉は通じない。ポーズは相変わらず変だ。けれど、彼はテラで最も不器用な戦士の心を開いたんだな……)
タルラが待つ中心部へ向かう前に、ロドスには確かな「希望」という名の伝承がこのテラの大地に刻まれた。
パトリオットの応急処置が終わり、周囲には緊張感が戻ってきた。
アーミヤとロスモンティスはタルラを止めるべく司令塔上層へ。ケルシーとドクターは地下のエネルギー区域へと、ロドスは二手に分かれて突入を開始しようとしていた。
ホワイトシールド(ドルベ)は、再会したばかりのパトリオットとフロストノヴァを離したくないという葛藤があった。何より、彼の維持する「封印」が解けない距離にフロストノヴァがいなければならない…。しかしアーミヤが…。
その場に残ろうとするドルベの前に、重傷を負いながらも気高く立つパトリオットの部下、「盾の遊撃隊」の戦士たちが立ち塞がった。
「……行け、白き盾と名乗りし戦士よ。我らが大尉の命を救った恩に免じ、ここは我らが死守する。貴公がなすべきは、その力で子兎の道を切り拓くことだ!」
その叱責に近い激励を受け、ドルベはハッと背筋を伸ばしました。彼は(……そうだ、俺だってロドスの一員なんだ!ここで立ち止まっているわけにはいかない!)という、かつてないほど真っ直ぐな決意が彼を突き動かした。
ドルベはフロストノヴァの手を優しく引き、パトリオットの戦士たちに向かって、渾身の「決意のバリアン立ち」を決めながら言い放った。
「バリアンの白き盾!ドルベ!我ら二人の力をみせてやる!」
(訳:わかった! 俺もロドスの仲間として、やるべきことをやってくる!)
さらに、彼は驚くドクターとアーミヤに向き直り、自信に満ちた(しかし相変わらず噛み合わない)挨拶をぶつけた。
「私の名前はナッシュ…ただの旅行者だ。あまり時間をかけてもいられないな。さあ、決着をつけよう!デュエルだ!」
ドルベは凄まじい精神力を集中していた。本来なら距離が離れれば解けるはずのアーツ封印を、「根性」だけで無理やり留めた。フロストノヴァをパトリオットの傍に残したまま、彼女の安全と封印の安定を祈り、アーミヤたちの後を追って司令塔へと駆け出した。
それを見送ったドクターは、ケルシーに頷きました。
「ホワイトシールドが付いているなら、アーミヤたちは大丈夫だ。……行こう、ケルシー。私たちの成すべきことを」
司令塔の入り口には、レユニオンの精鋭部隊が待ち構え。幾重にも防壁が築かれていた。
「アーミヤ、ここは私たちが!」
ロスモンティスが巨大な「剣」を思考で操り、敵の陣形を揺さぶる。そこへ、黄金の輝きを纏った「光天使」たちを召喚したドルベが割って入る。
「我ら二人の力をみせてやる!」
(訳:ロスモンティス、君と俺で道を切り開くぞ!)
ドルベは空中を指差し、召喚のポーズを次々と繰り出す。
「私は光天使ウィングスを召喚!さらにウィングスの効果発動!手札から光天使モンスターを1体、特殊召喚する事ができる!現れろ!光天使、ブックス!!」
戦場に現れた光り輝く天使たちの奔流。さらにドルベの「意地」が最高潮に達しようとしていた。
「光の使いよ、今、悠久の時を超え、輝きの衣をまといて、かの地に降臨せよ!No.102!光天使グローリアスヘイロー!ライトニングクラスター!」
黄金の翼を持つ騎士が降臨し、その圧倒的な質量と光の衝撃波でレユニオンの頑強な防壁を粉砕した。
「今だよ、アーミヤ! 行って!」
ロスモンティスの声に押され、アーミヤは司令塔の内部、タルラが待つ頂上へと駆け上がっていきました
立ちはだかるレユニオンの精鋭たちを前に、ドルベの「光天使」が舞い踊り戦場を支配していた。
「私は光天使ウィングスを召喚!さらにウィングスの効果発動!このモンスターを召喚した時、光天使モンスターを1体を特殊召喚できる!来い!光天使ソード!」
アーミヤが少数の部隊と共に司令塔へ見送った後、ドルベとロスモンティスは司令塔の入り口に陣取っていた。
ここから先は、一歩も通さない。アーミヤの帰る場所を守るための、防衛戦が始まった。
ドルベは「不動の門番」をイメージし、両腕を広げて立ちはだかるポーズで固定した。
「最早どうする事もできまい!」
(訳:ここから先へは、一歩も行かせない!)
レユニオンの兵士たちが次々と襲いかかるが、グローリアス・ヘイローの放つ光が、敵の攻撃を次々と無力化していく。
「行け!グローリアスヘイロー!ライトニングクラスター!」
ロスモンティスの破壊力と、ドルベのアーツの「無効化」の権能。エリートオペレーターとバリアンの力を持った戦士による鉄壁の守りが、司令塔前を絶対不可侵の領域へと変えていた。
司令塔前は、絶対不可侵の状態から地獄のような惨状へ傾きつつあった。
押し寄せるレユニオンの猛攻に、ロスモンティスの「見えない手」は疲弊し、その思考は限界に近い悲鳴を上げていた。彼女を守りながら戦うドルベもまた、自身の持ちうるカード――リソースを使い果たし、かつてない窮地に立たされていた。
「しまった!バリアラピスを・・・これでは本来の力を使う事ができない!私とした事が・・・!」
(……まずい、リソースが尽きた。ロスモンティスはもうボロボロだ。俺一人の力じゃ、この壁は守りきれない……!)
ドルベの脳裏に、最悪の光景がよぎります。
(結局……誰も守れないのか! 何がバリアンの白き盾だ! 何も……! 守れないじゃないか……!!)
奇しくも、かつての戦いで散った原作のドルベと同じ絶望が彼を支配しかけたその時、空っぽのはずの彼の手の中に、まばゆい黄金の光が宿った。新たな運命を引き寄せる「ドロー」。彼の指先に、新たな「光天使」たちが応えようとしていた。
「勝ったと思うのはまだ早いぞ! 我ら二人の力をみせてやる!」
ドルベは震える足で踏み止まり、天に向かって叫びました。その背後で、新たな光の天使たちが次々と舞い降りる。
「出でよ!光天使スケール!このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。手札から『光天使』モンスター1体を特殊召喚する。来い!光天使セプター!」
戦場に降り注ぐ光の柱。ドルベの指揮は止まらない。
「その後、自分の墓地の光属性モンスター1体を選んでデッキの一番上に置く事ができる!私はNo.102 光天使グローリアス・ヘイローを選択!グローリアス・ヘイローはエクストラデッキに戻る!」
一度は砕かれた希望の光天使が、再び彼の魂へと回帰する。しかし、ドルベの猛攻は止まらない。
「更に!私は手札からモンスター効果、光天使スローネの効果発動!自分が『光天使』モンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する!このカードを手札から特殊召喚し、自分はデッキから1枚ドローする!」
ドルベが空中に描いた円から新たなカードが引き抜かれた。
「そのドローしたカードが『光天使』だった場合、そのモンスターを特殊召喚できる。私が引いたカードは!光天使ブックス!来い!光天使ブックス!」
「召喚・特殊召喚した光天使セプターの効果発動!デッキから『光天使』モンスター1体を手札に加える、加えるカードは光天使ブックス!」
わずか数秒の間に、もぬけの殻だったドルベの周囲には、再び眩いばかりの光天使たちが並び立った。その圧倒的な光の圧力に、突撃していたレユニオンの兵士たちがたじろぐ。
「我ら二人の力をみせてやる!」
ドルベはロスモンティスの前に立ち、彼女を背中で庇うように「背後を守りつつ、前方の敵を拒絶する十字のポーズ」をとった。
「……ありがとう、ホワイトシールド。あなたの光……すごく、温かい……。もう一度、頑張れる……!」
ドルベは、自分の中に眠る「ナッシュ」※生きてます※への忠誠と、今この世界で守るべき「ロドスの仲間」への想いを一つにまとめ、防衛戦の流れは変わろうとしていた。
「非力な私を許してくれ……(訳:ここからが本番だ! 覚悟しろ!)」
絶望の淵から這い上がったドルベは、フィールドに揃った三体の光天使——セプター、スローネ、スケールを掲げ、魂の叫びを上げる。
「私はレベル4の光天使セプター!スローネ!スケールでオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」
彼を中心として次元の渦が巻き起こり、そこからかつてないほど濃密な光の粒子が溢れ出した。
「光の使いよ、今、悠久の時を超え、輝きの衣をまといて、かの地に降臨せよ!No.102!光天使グローリアスヘイロー!」
再臨した聖騎士は、ロスモンティスを背後にかばうようにして、その巨大な黄金の翼を広げた。
その時、物陰に潜んでいたレユニオンの術師たちが、一斉にロスモンティスとドルベを狙って高威力のアーツを放った。空を焼き尽くさんとする火球と雷撃が二人を襲う。
しかし、ドルベは微動だにせず、「虚空を力強く掴み取り、指先から光を放つポーズ」を決めた。
「行くぞ!グローリアスヘイローの効果、発動!オーバーレイユニットを使い、相手モンスターの効果を無効にする!」
グローリアス・ヘイローの瞳が鋭く光ると、放たれたアーツの奔流が着弾直前で「ただの光の屑」へと分解され、霧散していく。さらにドルベの意志は、姿を隠している敵術師たち本人をも捉えた。
「最早どうする事もできまい!」
目に見えない光の鎖が遠方の術師たちを縛り上げ、彼らの源石アーツの発動そのものを封殺する。杖を光らせることすらできなくなった術師たちは、その圧倒的な「無力化」の権能に恐怖し、戦慄するしかなかった。
「少しは楽しませてくれたが、結果は最初から見えていた!」
(訳:本番はここからだ!)
司令塔の頂上から、爆発的な炎が消え失せた。
アーミヤとチェンが、ついにタルラの呪縛を断ち切った証拠だった。暴走していた都市の震動がゆっくりと収まり始め、チェルノボーグに奇跡的な静寂をもたらした。
司令塔の入り口。そこには、文字通り「鉄壁」として立ち塞がり続けたドルベの姿があった。
数えきれないほどのレユニオンの兵士が立ち尽くし、遠くの術師たちはその能力を封じられたまま戦意を喪失し撤退していく。
しかし、肝心のドルベは、「右手を高く掲げ、指先で天を指しながら、左手で己の胸を強く掴むという極限の勝利ポーズ」のまま、目を見開いて完全に固まっていた。
「……ホワイトシールド?」
隣にいたロスモンティスがそっと肩に触れると、彼は彫像のようにゆっくりと前方に傾き、そのままガクンッと意識を失った。あまりにも強大な精神力の損耗、封印の維持とグローリアス・ヘイローの使役、何度もの召喚を同時にこなした代償だった。
ドルベが気絶した瞬間、フロストノヴァの胸の内にあった「熱」が揺らぎ、封印されていた冷気が再び漏れ出し始めた。
「くっ……。あいつ、無茶をしたようだな……」
胸を押さえる彼女の隣で、巨大な手が伸び、彼女の肩を優しく、だが力強く掴みました。
「……行ケ……エレーナ…」
パトリオットは、深く傷ついた体を引きずりながらも、その赤い瞳に確かな理性を宿していた。
「……アノ……奇妙ナ戦士ガ……命ヲ懸ケテ……繋イダ『今』ダ。……彼ハ……貴様ガ……仲間ノ元へ……行ケ」
「父さん……。ええ、必ず、あいつを起こして戻ってくる!」
フロストノヴァは、父の言葉を背に受け、司令塔へと続く道を全速力で走り出した。
フロストノヴァが司令塔前に辿り着くと、そこには倒れ伏したドルベと、彼を心配そうに見守るロスモンティスの姿があった。
これまでは近くに寄るだけで嫌というほど聞こえてきた「心の声」が、今は全く聞こえてこない。
(………………)
「ホワイトシールド!! 起きろ、ホワイトシールド!!」
彼女はドルベの肩を掴み、激しく揺さぶり始めた。彼が意識を失ったことで、彼女の体温は再び下がり始めていた。しかし、彼女は自分の命よりも、このあまりにも不器用で、あまりにもお節介な「バリアンの戦士」の意識を引き戻すことに必死だった。
「返事をして……! まだあなたに、ちゃんとお礼も言っていないじゃない!」
フロストノヴァの必死の呼びかけに、ドルベの指先がピクリと動いた。
彼の意識の底に、かつての戦友「ナッシュ」や「メラグ」ではなく※戦友ではありません※、今、このテラで共に歩むフロストノヴァの熱い叫びが届いた。
頬に触れる、凍てつくような「冷たさ」。そして、自分を必死に呼ぶ震える声。
「……ッ!」
ドルベの意識が、弾かれたように覚醒した。
「ブックス!」
(訳:冷っっったっっ!! 耳がちぎれるかと思った!!)
反射的に叫びながら飛び起きたドルベの目の前には、眉を吊り上げながらも、瞳にうっすらと涙を浮かべたフロストノヴァの顔があった。
「……起きたわね、このバカ」
「非力な私を許してくれ……(訳:いや、あまりに冷たかったから、つい……)」
ドルベがしっかりと意識を取り戻し、再び「片手を伸ばしピースのポーズをビシッと決めた。
彼のアーツの封印がフロストノヴァの体内に再び浸透し、暴走しかけていた冷気を再び強固に封じ込めていく。
「……ふぅ。戻った。体温も、アーツも」
フロストノヴァは安堵の溜息をつき、崩れ落ちるようにドルベの隣に座り込んだ。ドルベからは、再びいつもの断片的な「心の声」が流れ込んでくる。
(……生きてる……よかった……お腹……空いた……フロストノヴァ……温かい……)
「……本当、あなたは起きて早々、食べ物のことばかりだな…」
フロストノヴァは呆れたように笑った。
司令塔を見上げれば、そこには戦いを終えたアーミヤとチェンが、肩を貸し合いながら降りてくる姿が見えた。
「我ら二人の力をみせてやる!(訳:さあ、みんなのところへ帰ろう。パトリオットさんも待っている)」
ドルベは「夜明けの地平線を指差し、誇り高く立つポーズ」を決めた。
テラの過酷な運命を、一人の「不器用な騎士」と「氷の女王」が塗り替えた瞬間。チェルノボーグに、本当の夜明けが訪れようとしていた。
チェルノボーグの激闘からしばらく後。ロドス・アイランドの艦内には、かつて誰もが想像もしなかった「穏やかな光景」が広がっていた。
かつて戦場で相まみえ、奇妙なそして奇跡のような別れをしたドクターとフロストノヴァ。本来の歴史では決して交わることのなかった二人が、今、ロドスの食堂の片隅で向かい合い、穏やかにチェスに興じていた。
「……あなたの指し方は、相変わらず無茶苦茶だな、ドクター」
「それも戦術のうちだよ、フロストノヴァ」
笑い合う二人。彼女の体温はドルベの封印によって安定しており、その光景はまさに「奇跡」そのものだった。
その光景を、柱の陰から見つめる影があった。ホワイトシールドことドルベだ。
彼は、自分が守り抜いたこの「救いのある結末」に、感極まっていた。
(…………!!(言葉にならない感動)
彼は決めていた。この尊い、尊すぎる二人の時間を邪魔してはならない。たとえ心の声であっても、不用意に飛ばして彼女の集中を乱してはならない、と。
しかし、溢れ出すパッションを抑えきれない彼は、その全エネルギーを「ポーズ」へと転換し始めました。
まず、二人の友情に敬意を表し、「友情の架け橋を全身で表現するために、片足立ちで上半身を90度反らし、指先でハートを描くポーズ」を敢行した。
続いて、その光景の美しさを讃えるため、「大理石の彫像になりきり、無言で顔面を覆いながら痙攣するように感動を噛みしめるポーズ」へ移行。
さらに、興奮が最高潮に達し、「背後の壁に張り付きながら、空気椅子状態で『最高だ……』と無言で天を仰ぐポーズ」で固定した。
そんなドルベの様子を、通りがかったオペレーターたちが発見した。
「……ねえ、あの人……何やってるの?」
「ホワイトシールドよ。また何かの魂でも感じ取って受信してるんじゃない?」
「見て、あの壁との角度……物理的にありえないわよ。……怖い、目が合ったらポーズの解説されそう…」
新入りのオペレーターたちがドン引きしながら距離を置く中、ケルシーが資料を片手に通りかかり、無機質な視線をドルベに向けた。
「……。ホワイトシールド、壁の塗装が剥げる。そしてそのポーズは股関節に異常な負荷をかけている。今すぐ直立に戻れ。さもなくば、医務室へ強制連行だ」
「非力な私を許してくれ……(訳:あまりの尊さに耐えきれなかったんだ……!)」
慌てて「深々と反省を促す白鳥のポーズ」で謝罪するドルベ。
その騒がしさに気づいたフロストノヴァが、チェス盤から顔を上げて深い溜息をついた。
「……ドクター、気にするな。あの男、ああやって全身で『興奮』を発散させていないと、今度は私の頭の中に直接、大音量で心の声を飛ばしてくるからな。……あれで、精一杯黙っているつもりなんだ」
ドクターは苦笑いしながら、プルプル震えている「バリアンの白き盾」を見つめました。
「……まあ、彼が幸せそうで何よりだよ」
ロドスの日常は、一人の不器用な騎士の「変なポーズ」と共に、今日も騒がしく、そして温かく過ぎていく。
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