汚してしまう。歪めてしまう。視線を向けるだけで勝手にフィルターがかかる。
この気持ちもこの想いも伝えるべきでもこの胸に留めるべきでもないんだと、そうわかっているのに。
あぁ、でも。あなたが向けるその眩しすぎる笑顔はやっぱりとても愛らしくて__
まもなく夜になる。
僕は海平線の先をじっと眺めて、海から向かってくるとても冷たい風を浴びてこれからのことを考えていた。
でも、その前にどこか暖かい場所へ行かなければ…多分凍え死んでしまうだろう。なにせ、外気温は多分0度を下回ってるように感じるくらいにはもうくそ寒い。
「なぁ…うちに来ないか?」
隣に座っている大和がそう切り出した。耳が垂れていてなんだかとても愛らしく見える。
「うちって…大和の家…?」
「そ…母ちゃんが許してくれるかわかんねえけどさ、こんなことになっちまった責任取りたいんだ…」
「…」
責任…か。僕だって大和にこんなことをさせた責任を取りたいな。…なら。
「あっ…えっと、お前が嫌なら…」
「行くよ」
そう決めた。僕はあそこには戻らない。
父さんの思いとか、願いとか、もう知らない。あんなことを言ってきたんだ。もう絶対話なんて聞かない。
…サヌには悪いけど、暫くは家に帰らないこと伝えないと…
「…!ほんとか!じゃあ早速オレん家に…」
その時だった。突然近くから物音がした。自然と視線が音とした方へと移る。
高いところから誰かが飛び降りて派手に転んだような音だった。
…ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛…い゛っ゛た゛い゛…という声も聞こえた。
「ふー…ふー…こ、こほんっ、
あの、それ僕もついて行ってもいいですか?」
僕/オレたちは声のした方をよく観察した。そこには見慣れた鮫と犬をキメラしたようなホムンクルスがいた。
「えっ?!サヌ??どうしてここに…??」
「サヌじゃねえか…!?ていうかなんでここが…??」
僕と大和はとんでもなく驚いている。この人気のない海岸沿いで偶然出会ったにしてはなんだか必然性を感じてしまう。
暫く姿を見ていなかったと思ったら…どうして今なんだろうか?
「まあまあ、そんなことはどうでもいいじゃないですか〜」
「ん〜…そうか?まあいいか…」
いいのかよっ
まあ僕もサヌに連絡する用事が省けて良かった気もするけど…うーん…まあ、一応忘れないでおこう。ちょっと怪しいし。
そういうわけで、僕たちは大和の家へと向かった。
途中、サヌがここまでの経緯を教えてくれた。なんでも、ここ最近姿を見せれてなかったのは大事な用事のためだったようで、今さっき現れたのはその用事の大半が終わったからだそうだ。…よくよく考えたらああは言ってたけど、海岸沿いの建物の屋根に登るほどの用事ってなに…?
そう考えているとちょうど大和宅に着いた。あとは大和の両親の許可が下りれば良いのだけど…
「ダメです!」
「なんでだよー!!」
やはりこうなった。仕方ないことでもある。いきなり息子の友達とホムンクルスを暫くの間、家に泊まらせたいだなんて言われても困るよね。
「いきなり2人も止まらせろって?準備とか親御さんとの問題とかあるでしょ!」
「でも、こいつは…数希は、もう行く当ても無いし、オレがこんなことにしちゃったし…責任取りてえし、なにより数希には…」
大和はしゅんとしている。頭と耳が垂れ、指をつんつんしている。…やばい、もう涙目だ。
…だがもう、仕方ないこと。僕はサヌの手を繋いで、一緒に連れてこの家を離れようとする。
すると予想外な言葉が出てきた。
「……はぁ、まったくしょうがないわね」
「え…?」
「暫くは養ってあげるわ。ただし、うちに住むからには郷に入っては郷に従え、よ」
…正直言って、今この人が何を考えているのかわからない。条件も割と簡単で…どうして受け入れてくれるんだろう?
わからないけど、とりあえず返事をしよう。
「…はい!」
「それと、あなたたちの問題はあなたたちで解決して頂戴ね。いつかここを離れることを忘れないで」
…そうだよね。いつかはここを離れなきゃいけない。それに父さんとの問題も、いつかは解決しなきゃいけなくて…
「…わかりました、柚子さん」
「よろしくお願いします柚子さん!」
「もー、名前なんてよそよそしいわ。お母さんって呼んでいいからね」
お、お母さん!?そんな言葉を言わなきゃいけないのか…?で、でも郷に入れば郷に従えって言ってたし…ちょっと恥ずかしいけど…
「えっと…お母さ…うぅ…」
「おかあ…さん?」
「母ちゃん、あんまり数希たちをいじめんなよもぉぉ」
大和が僕とサヌを同時に抱きしめる。相変わらず包容力が高い。多分僕は今満更でもない顔をしていると思う。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ごめんごめん(テヘペロ)!さあ、あがってあがって!外は寒かったでしょう?すぐお風呂に入って夕飯食べましょ♪」
こうして、ある意味で大和と同棲することになった。
家に入ると明るい照明と暖かい空気、そして大和の母親である柚子さんが出迎えてくれた。
その数十分後で大和の父親が帰ってきた。あの人は朗らかでとても優しい感じがしていて、僕たちが暫くいることに快く承諾してくれた。なんなら一気に息子が増えたと思ってるそうだ。
にしても、こんなにもあっさりと引き受けてくれるなんて、大和の両親はとても懐が広いな…と思うのでした。
……あれ、そういえば着替えとか持ってきてたっけ…?
つづく
ご読了、誠にありがとうございます!
ついに一緒に暮らすことになった数希くんたち!果たして彼らはどんな運命を迎えるのだろうか?
ちなみにサヌくんが着地に失敗した理由は足を挫いたからです。足元を見てなかったんですよ…恥ずかしいです…(サヌ)
次回は1/16の4時半に投稿予定です!
お楽しみに!