アイス・ブレイク! 〜雪原抗戦編〜   作:犬鮫獣人のイクト

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時に人は孤独から人の温もりを感じたくなる。
それはいつだってさみしいからだ。
さみしいと思うことを恥ずかしく思うことも、思ってはいけないと思うことも、それらは必ず正しいわけじゃない。
人が人であるからこそ、他人を求めるのは罪ではないと僕は思う。
永遠に晴れないさみしさなんて、ないはずなんだ。


第6話「寒夜と団欒」

数希たちは山之木一家の世話になり、今日は一夜を一つ屋根の下で共にした。それなりのハプニングもあったが、微笑ましいものであった。

だが、あちらが光を浴びている一方でスポットライトすら当たらない暗い暗い闇の中で、一人の男が気を病んでいた。

 

数日後の夜。

とあるバーにやってきた。

最近はよく世話になっているところだ。

「マスター、いつものを」

「はいよ」

白熊の獣人のマスターはそう言って、カクテルを用意し始めた。俺はこの時間が少し好きだ。なんだか、時間を忘れられる気がする。

「はい、いつものカクテル」

「ありがとう」

俺は一口飲んで、味の余韻を楽しむ。炭酸が仄かな甘さを引き建ててくれている。

「今日はどうしたんだい?またあの話かな」

「あぁ、そうだ」

「まだ息子くんは帰ってこないのかい?」

「…ああ」

そうだ。俺の息子の数希はあの日、俺の親友だった奴の息子にそそのかされて家出をしてしまった。一人で探してはいるが、中々見つからない。

「どうして帰ってこないか、心当たりは本当にないのかい?」

「ないに決まってる!あいつは…あいつは、俺のおかげで今まで幸せに暮らしてきたんだ!…そうだったはずなんだ…」

カクテルを一気に飲み干した。体が暑くなってきた。頭が熱っぽくなり、口は言いたいことを漏らし続けた。

「だいたい、人との関係なんて作るべきでは無いんだ。いつ裏切られるかもわからない上、いつまでも不安定なんだ」

「はいはい、一旦落ち着いてね。はい、冷水だよ」

ぐいっと飲んだ。少し頭が晴れてきた…

「…悪い、取り乱した」

「いいよ。それで、これからどうするの?」

「…親として必ず連れ戻す。あいつには、幸せになってほしいんだ。それには勉学が必要不可欠だし、絶対に大学に行かせる。」

そうだ。俺は昔勉強に向き合わなかったせいで大失敗をした。あんな気持ちを数希に味わってもらうつもりは毛頭ない。俺のやってることは間違ってない……間違ってないよな…?

だんだん目頭が熱くなってきた。腕を枕に机にうずくまると、マスターが話しかけてきた。

「…前も言ったと思うんだけどさ、そんなに勉強勉強って強制しないほうが絶対いいよ」

「おま…マスターには子供がいないからそんなことが言えるんだ。子育ては本当に難しいんだぞ」

「いやぁ、まあそうなんだけどね」

マスターは「ははは」と笑うと話を続けた。

「ま、これは持論なんだけどさ。僕は彼のやりたいことを優先させてあげたいなって思うな。だって、人生の一番大事な時期に勉強ばっかりだとあの子のためにならない思うからね」

「…だがな、あいつももう高2だしそろそろ志望校も…」

「そうだね。だから君がすべきことはちょっとした手助けぐらいが丁度いいはずなんだよ」

「…」

何故か反論ができなかった。なんだか気分がしけてしまった。

俺はお金をカウンターに置くと、椅子から降りる。

「今日はもう帰る。ありがとう」

「いいえ〜。また来てね♪」

俺はバーを離れ、自宅に帰った。

玄関を開けても、誰の声も聞こえず、真っ暗な空間が広がっていた。空間は冷気が詰まっていてとても寒い。まるで冷蔵庫のようだ。

リビングのソファに座る。

もうこの世界には誰もいないのだと思うほどに静かで、暖房の暖かさはこの胸の痛みを和らげることはなかった。

これほど寂しかったのは、妻が家を出ていった時以来だろうか。

冷えたベッドに身を預け、今日も眠る。またあいつらと…数希と妻に会える夢を見ようと願いながら。

 

 

一方で、山之木家では。

 

「数希ー!一緒に風呂入ろーぜ!」

「だーかーらー、恥ずかしくないのかっ??」

「?お前だったらいいぜ!」

「ちょ…そういうことじゃなくてさー」

「父ちゃんも一緒に入ってやろうかー?」

「「あ、それは結構です」」

「おーん…(´・ω・`)」

 

山之木家は今日も騒がしく温かい。

数希とサヌはすっかりここでの生活に慣れており、とてもリラックスしている。

最初は慣れないことも多く知らないこともあったが、だんだんとここが家だと認識できるようになるとリラックスできるようになった。

 

風呂場で男子が2人っきり。何も起きないはずもなく…

というのは冗談ではあるが、何故か一緒に浴槽に入ることに。流石に向かい合っては恥ずかしいので背中合わせで入った。

浴槽は少し狭いが、背中に大和を、服越しではなく肌で感じれて胸が少し落ち着かない。

 

「なあ、数希」

「ん、なんだい?」

「数希はさ…『家』に帰りたいか?」

「……今はまだ、かな」

「…そっか。大丈夫!いつでもここがお前の帰れる場所の一つだからな!」

「…ありがとう、大和」

「いいって!オレが好きにやってるだけだし」

「あれ〜、前は責任取るとかかっこいいこと言ってたのにな〜」

「あれは〜…その〜…へへ」

 

暫く風呂に浸かってると、だんだん一緒に入る提案をしたのはちょっと恥ずかしいことなのでは…?と思えてきた。ううう〜

でも、こうやって数希と一緒に入れるのスッゲー嬉しい。前に一緒に入ったのは保育園時代の時かなぁ。懐かしい。

こういうことを考えるのは悪いんだろうけど、いつまでも一緒にいてえなあってやっぱ思っちまうな。

 

「大和、そろそろ洗わない?僕そろそろのぼせてきたかも…」

「…ん?あ、もうこんな時間か!わりーな!」

 

なんやかんやで大和の背中を流すことになったのは、また別の話である。

一方サヌは、大和の母親の柚子さんを手伝っていた。

 

台所で料理の手伝いをしている。

ナイフやピーラーを使って丁寧に皮を剥くサヌ。おかげで調理のテンポもよく、柚子さんはご機嫌である。

 

「いつもありがとうねぇ、サヌくんは盛り付けが綺麗で助かっちゃうわ♪」

「これでも数希様の執事をやっていたので当然です!」

「ふふ、なにそれ!」

「ふふん!」

 

今のところ平和そのもの。この日常がいつまでも続けば…なんて、叶いっこないのは知ってます。でも好きです。

あとは数希様とお父様が仲直りすれば、万事解決…なはず!

どうか上手く行きますように…

頭で考え事をしていたせいか、手元をあまり見れていなかった。

ツルン!

手からトマトが逃げるように落ちてしまった。

 

「あっ!トマトが!」

「あちゃ〜落っこちちゃったね〜」

「はぁ〜…もったいない…」

「まあまあ!私もよく失敗するし!ね!」

「…そうですね!」

 

トマトを拾い、こっそりと口に含むとお手伝いを再開した。

これからのことを考えると頭が痛いが、今はこの幸せを噛み締めていきましょう。

 

暖かい夜をすごそう。

冷たい氷はすぐそこだけど、いつだって暖かさで生きてきたから。

 

つづく




ご読了、誠にありがとうございます!
すみません!今日は予定通りに投稿できなくて申し訳ありません!お詫びに今回の工夫したところを教えます!
今回の数希のお父さんパートは少し工夫をしてまして、あえて会話と内心の改行をしてませんでした。それは、この人の心の余裕の無さが現れているという意味なんです。
次回は1/19の4時半に投稿予定です!
それでは!
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