老いず死なない、まさに理想の状態だ。
しかし老いないというのは、寿命がないもしくは無限にあるということで。人には想像もできないほど長く生きることもできる。
しかしそれは多大な苦痛を負う。
身体は大丈夫だろうが、心はそう硬くはないんだ。
もしも想い人ができてしまったなら、その不老不死者は未来永劫に続く傷を背負うことになる。
なぜわかるかって?そのうちの一人が僕だからさ。
今日も散歩をする。
あれから弥来さんとはたまに会ったりしている。そのどれもがタイムセールを狙っている最中の時間だったけど。
僕と大和は今、朝から散歩をしている。
厚着をしないと凍え死ぬほどに寒いこの冬。最近は毎日雪が降っていて、窓から眺めた景色は一面銀世界の日々であった。
雪が沢山積もり、屋根の上には分厚い雪の層が出来上がっていて、少し面白い。道の脇にはたまに雪だるまがあったりして、景色としてはとても良い。
大昔はここまで寒くなかったらしいけれど、今じゃそんなに想像できない。
そんなことを考えていた。
ふと大和の顔を見ると、どこかが気になっている様子。
「気になるところでもあった?」
「いや〜、あそこに喫茶店なんてあったっけなーって」
大和が見ているところを僕も見てみた。
ビルとビルの間にポツンとこの場にふさわしくないような趣のある喫茶店がそこにあった。レンガで建てていた痕跡が見えるが、今やコンクリートで覆われている。
昔は外国風の建築様式だったのだろう。そんな雰囲気を感じる。
名前は…「喫茶エテルニテ」…?
「…入ってみる?僕も気になってきた」
「おう!行こーぜ!」
二人で寄ることになった。
カランカラン。ドアを開けると、中はかなり洋風な、それこそ中世フランスのような雰囲気が満ちていた。
人はあまりいないようだ。平日の午前中だからというのも理由の一つかもしれない。
「かなりこう、趣があるね」
「すげーな、RPGの酒場みてーだ」
「確かにそうかも…?」
入口で様子を伺っていると、店の奥から人が現れた。白熊の獣人で、ウエイトレスの制服を着ていた。
「あ、いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ♪」
「はーい」「はーい」
僕たちは手前のカウンターの席に座った。
話し方は明るく、そこはかとなく妖艶さを感じる不思議な感じ。そして顔がイケメンだ。もっちりとした顔と妖艶フェイスが絶妙な魅力を作り出している。
だが不思議と違和感のようなものを感じる。まるで現代人ではないような貫禄を感じるのだ。
…まあ、それは一旦置いておき、メニューを見てみよう。
ふむ…
【オススメメニュー】
・特性ソースのオムライス
・いちごのふわふわパンケーキ
・スペシャルチョコパフェ
・たっぷりチーズのハンバーグ
・季節限定!おまかせスイーツ
メニュー表を見るとどれも美味しそうに宣伝されており、どれも興味をそそられる。また、手作り感があって印象がとても良い。
「大和はどれにする?」
「んー…お、オムライスがあるな…オレこれにするわ」
「じゃあ僕はー…スペシャルチョコパフェってやつにしようかな」
「決まったようだね、それじゃあちょっと待っててね♪」
大和はとてもわくわくしているようだ。かわいい。
数分待つと、美味しそうな料理が出てきた。
「はーいお待たせ!特性ソースのオムライスと、スペシャルチョコパフェです!ごゆっくり〜」
「わぁ〜〜!めっちゃ美味しそうだ!」
「これは…すごいな…!」
大和のオムライスは、オムレツの部分がトロトロしていそうでとても美味しそう。
僕のスペシャルチョコパフェは、芸術品だと思うほどにとても綺麗で食べるのがもったいないくらいだ。
僕はスプーンですくった一口を思いっきり食べた。チップ状のチョコとクリームがお互いにハーモニーを生み出し、一緒に含んだイチゴが予想打にしない協奏曲を奏でるような味がした。
ふと大和の方を見ると、とても美味しかったのかめちゃくちゃがっついている。目がキラキラしていて、本当に喜んでいるのが分かる。とてもかわいらしい。
数分後、この最後の一口が名残惜しいと思いながら、無事完食した。
大和も無事完食したようで、もちもちで大きなお腹をぽんぽんと叩いていた。可愛すぎる。
「いい顔で食べてくれたね」
「あっ、えへへ」
「いいね、僕はそういう子好きだよ」
「ちょい、ナンパですか?悪いですが…」
「あーごめんごめん、僕の癖でね。ごめんねぇ」
いつの間にか店員さんと談笑していた。不思議なものだ。何故かこの人の前だと気が緩んでしまう…
「あの…こうして話してていいんですか?」
「ん?あー、今の時間帯はお客さん滅多に来ないし、来客の予定もないからね」
「あの!お名前教えてくれませんか!」
「お、いいよ〜。僕はアルケミヤ・ヒマリアって言うんだ♪」
アルケミヤ・ヒマリア…うーん、何処かで聞いたような…あ
そうだ、歴史の授業とか資料で見たことがある気がする。
ヒマリアという人物が世界のあらゆる場所に、しかもあらゆる時代に存在したことが文献に載ってるっていう話だ。
近代ではその姿をくらましたと聞いたけど…まさか本人ではないよね?
「あの、もしかしてあのヒマリアさんなんですか?」
「さーて、それはどうだろうねぇ。ただの子孫かもしれないよ?」
「あるけみゃ…アルケミヤさんは、いつからこの喫茶店にいるんですか?」
「アルでいいよ〜♪
そうだねぇ、つい最近からかな」
アルさんが話すことは面白くて興味を惹かれる。
だがしかし、もうすぐ帰らないと。
僕たちはアルさんにお礼を言って店を出ようとした。
そしたら、アルさんは僕に手をこまねいてきた。
小さな声で、こう呟いた。
「…大丈夫、サヌくんは君たちのために頑張っているからね」
「…え?」
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。
それでもその言葉には謎の説得力があった気がした。
そうして、僕たちは家に帰ったのだった。
どうしてあの人がサヌのことを知っているのか。サヌは一体何をしているのか。
わからない。何もわからない。
きっとサヌは僕の知らない何かをしている。僕には隠して行うほど、大事なことだろう。
記念日だったりするなら、あの時急に屋根から飛び降りて登場したり、冬休みに入ってから全然姿を見なかったことも理由にならない。
……今度、聞こう。
つ/づnextく?…
「いいの?伝えちゃっても」
「……いいんです」
去っていく主人を見ながら彼はそう答えた。
「…そろそろ時期が近いですし」
「…そっか」
「それに、隠し通すのもそろそろやめようと思ったので」
「それは…どうして?」
じっと彼方を見ている。
「ここからは、主様にとってとてもつらいことが起きる…ですから」
つづく
ご読了、誠にありがとうございます!
実はアルさんは第6話でバーのマスターとして出ていたんですよ?気づきましたか?
数希を取り巻く環境はだんだん未知のものへと変わっていく。次に彼を待ち受けるのは希望か?絶望か?
というわけで次回も未定です!
それでは!