正義の先で、人は笑う   作:クノスペ

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お久しぶりです
仕事が変わったりして仕事が落ち着いた時にはモチベが無くなってたりして失踪してました。
今回久々にモチベができたのでリハビリを兼ねて新作描きます。
飽きたらまた失踪すると思うので期待はしないでください。


笑わせなければ、死ぬ

 

来訪者は、埃と陽炎が揺れるオラリオの入口を抜け、狭い路地に立っていた。

 

彼は世界中を放浪する旅芸人だった。

そして――

自身が患っている病気を治すため、あてもなく歩いてきた男。

 

オラリオの空は、どこか重たかった。

石畳の通りを歩く人々は足早で、視線は地面か、周囲の影ばかりを警戒している。

闇派閥。

その名が囁かれるようになってから、この街から【立ち止まる】という行為は消えかけていた。

――それでも。

 

「さぁさぁ! ちいさな木偶(でく)たちの、ささやかな夢のお話だ!」

 

広場の端。

布を広げ、糸を張り、からくり人形を操る旅芸人がいた。

人形使いの男は、軽やかな口調とは裏腹に、内側から焼けるような違和感を抱えていた。

 

「......ぜひっ...ぜひ」

 

喉が締まり、空気が入らない。

心臓が、叩きつけるように脈打つ。

全身を針で貫かれるような痛み。

だが男は、倒れない。

指を動かす。

糸を引く。

人形が転ぶ。

頭をぶつけ、ありえない角度で関節が曲がる。

 

「ぜひ...っ」

 

呼吸は壊れかけている。

それでも、人形は踊る。

 

(笑ってくれ...)

 

誰かが笑えばいい。

一人でいい。

そうすれば――

だが、人々は目を逸らした。

 

(誰でもいいから笑ってくれ...)

 

闇派閥。

妙な芸。

関わりたくない。

誰も、笑わない。

視界が暗くなる。

糸が震え、人形が止まりかけた、その時――

 

「......ぷっ、あはは!」

 

高い声が、通りに弾けた。

 

「なにそれ......そんな動き、反則でしょ!」

 

笑い声だった。

隠そうともしていない、素直な笑い。

男の胸に絡みついていた痛みが、すっと引き肺の中に空気が流れ込む。

 

「......っ、は......」

 

息が、入る。

人形が、もう一度跳ねた。

声の主は、青みがかった髪の少女だった。

腹を抱え、目を輝かせて、人形を見ている。

 

「続き、続き!」

 

その一声に、空気が変わる。

釣られるように、周囲から小さな笑いが漏れ始めた。

舞台は、持ち直した。

 

 

 

 

 

人形劇が終わる頃、男は汗を拭きながら糸を巻いていた。

 

「ねえ」

 

少女が、少しだけ声の調子を落として話しかける。

 

「さっき......すごく苦しそうだったけど」

 

男は手を止める。

 

「病気?」

 

少女は、真剣な目で見ていた。

 

「......うん、少し前からね」

 

隠す意味はなかった。

 

「発作が出ると、息ができなくなるんだ。これを治す方法を探して、旅をしてる」

「それで、オラリオに?」

「ちょっと前にいた村で、ここにはなんでもあるって聞いた......だからもしかしたら治す方法もあるかもって」

 

アーディは少し考え、すぐに頷いた。

 

「なら、行こう!」

「ディアンケヒト・ファミリア!案内してあげる!」

「ありがとう...えっと君の名前は?」

 

その言葉に少女は彼に向けて笑顔で名乗った。

 

「品行方正で人懐っこくてシャクティお姉ちゃんの妹でLv3のアーディ・ヴァルマだよ!じゃじゃーん」

「......そっか、よろしくねヴァルマさん」

「アーディで良いよ!ねぇねぇ君の名前は?」

 

少女――アーディの言葉に少年も微笑みながら答えた。

 

「僕はシロガネ、改めてよろしく。アーディ」

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