誤爆したため再投稿です
「あら、アーディじゃない」
「アリーゼ!」
「こんなところで会うなんて奇遇ね、そちらの方は?」
「この人はシロガネ、旅芸人で...」
アーディに声をかけたのは、アリーゼと呼ばれた赤い髪が特徴的な女性だった。
アーディは彼女にシロガネを紹介しようと駆け寄った時、シロガネは胸を抑え蹲った。
「......っ、ぜひ......ぜひ...」
「シロガネ!?」
「ど、どうしたの?貴方大丈夫?」
発作が始まったシロガネにアーディが駆け寄り介抱しようとする。
アリーゼは目の前の少年がいきなり苦しそうになったことに困惑して立ち往生してしまった。
(人形はすぐに取り出せない......なら!)
「待っててね、すぐに笑うから...シロガネ?」
少年は立ち上がり、2人に向かって背筋を伸ばす。
そしてよく見えるよう、大きくわざとらしく動き始めた。
見えない箱を持ち上げ、
重たそうによろけ、
足を滑らせたように尻もちをつく。
「...なに、してるの?」
アリーゼの言葉に、シロガネは言葉ではなく次の動きで応える。
見えない縄に足を取られ、派手に転ぶ。
慌てて取り繕うように、胸を張って歩き出す。
しかし三歩目で、また転ぶ。
「...ふふっ」
「ぷっ」
大きな壁にぶつかる。
慌てて避けたら、今度は自分の影に驚く。
「「あはははははは!!」」
少年の滑稽で、どこか愛嬌すら覚える動きに、少女2人は腹を抱えて笑い出した。
その瞬間シロガネの発作は収まり、見えない帽子を片手に深々と頭を下げた。
「貴方、最高ね!」
「ねね!他にもあるのでしょう?ぜひ見せて欲しいわ!」
「分かりました。じゃあ次の演目は」
アリーゼの言葉に、シロガネはさらなるパントマイムを見せようとした瞬間。
「きゃあああっ!!」
鋭い女性の悲鳴が、街の奥から響いた。
笑いが、止まる。
アリーゼの表情が、一瞬で変わった。
「西区の方ね、ごめんなさい旅芸人さん。少し行ってくるわ!」
剣に手をかけ、即座に走り出す。
アーディも、シロガネの方を見る。
「シロガネ、私の行かなくちゃ。だから...」
「...僕も行くよ。大丈夫、自分の身は自分で守れる」
「えぇ!?......危ないと思ったらすぐ逃げてね!」
危険だからと止めるように言おうとした。
しかしアーディはシロガネの顔を見てそう言わなかった。
なぜだか、彼が来てくれた方が良くなる...そんな気がしたからだ。
着いた時には、ひどい有様だった。
石畳の通りは荒らされ、屋台は倒れ、壁には新しい傷が刻まれている。
そこにいたのは――闇派閥。
笑っていた。
怯える人々を囲み、力を誇示するように暴れている。
「やっぱり闇派閥ね...」
アリーゼの声は低かった。
その瞬間――
「うわああああっ!」
泣きながら、一人の少女が飛び出してきた。
「っ!」
アーディが迷わず前に出る。
転びかけた少女を、胸でしっかり受け止めた。
「もう大丈夫、お姉ちゃんたちに任せてね」
「シロガネ!この子をお願い!」
少女は、嗚咽を漏らしながらアーディの服を掴む。
アーディは、すぐシロガネに少女を預けた。
「すぐに終わらせるから、このお兄ちゃんと一緒にいてね」
「...うん」
少女は頷き、それを見たアーディは剣を抜く。
「行くよ、アリーゼ!」
「ええ!」
アーディはそう叫び、アリーゼと共に走り出した。
2人の正義が、闇へ突っ込んでいく。
アリーゼとアーディは強かった。
連携も迷いもない。
闇派閥の男たちが、次々と地面に叩き伏せられていく。
だが――
「......おい!あのガキどもを人質にしろ!」
その言葉と共に、何人かが2人を無視して走り出す。
シロガネと少女の方へ向きを変えた。
「しまった!」
アリーゼが叫ぶ。
「シロガネ!!逃げてぇ!!」
今日オラリオに来たばかりで、恩恵を持っていない一般人である事を知っているアーディが必死で叫ぶ。
しかし、シロガネは逃げなかった。
自身の腕の中の少女に優しく話しかけ頭を撫でる。
「怖かったよね」
「......お兄ちゃん?」
彼がずっと背負っていた鞄を下ろす。
「もう大丈夫だよ」
「怖い人たちは――」
彼は、微笑んだ。
「お兄ちゃんが、やっつけるから」
次の瞬間。
その鞄から巨大なナニカが飛び出した。
「あるるかん!」