僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~   作:破れ綴じ

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閉じ込めすぎは良くない

 えっと? 

 お前らが聞きたいのは「オレについて」「何を受け継いだか」「この街について」「ボスの有無」……だったか? 

 オーケー、順番に話してやるよ。

 まずは「オレについて」だな。

 

 

 

 伝説の勇者シエル──その「体術の才能」を受け継いだ転生体、名前を『リュト』。

 つっても、前世で体術なんて齧った程度にしかやってなかったが……。

 

 オレが生まれたのは……前世でも旅の途中で寄った、田舎の小さな村、そこの外れにある古びた道場だった。

 とにかく印象的だったのは──力が前世の全盛期並にあったことだな。ガキの頃から大人顔負けの素振りができたし、石を持たせればすぐに砕いたなんてこともあった。

 力が有り余って、体の中から湧き出してくるエネルギーが抑えきれない。しかも前世で覚えた体術は大体記憶持ち越し、それがオレだ。

 まァ楽しかったな。力が強いなんてガキにしちゃオモチャでしかねェからな。

 

 ただなァ……その、なんていうかな。

 前世の記憶をはっきり思い出した時はとにかく変な気分だったよ。

 

 だってさ、考えてもみろよ。

 ちょっと器用貧乏でちょっと強かったからって、「世界を救ってくれ」だの「魔王を倒してくれ」だの、とんでもない期待と重圧を押しかけられてきたこと。

 お前ら二人と一本なら覚えてんだろ? 

 世界中を旅して、戦って、傷ついて、病気で老い先短くなって、最期は来世の自分に託して死亡……ってさ、好きなことなんざまるでできなかっただろ?

 

 だから前世の記憶を思い出したときも、世界の抑止力になるなんて「使命」は面倒で仕方がなかった。

 せっかく健康な体に生まれたんだ。こんなに丈夫で、どこまでも行ける足を持ってるんだ。だったら使命なんて無視して、好きに生きたいって思うのも当たり前だよな? 

 

 ……「ボクたちはそうじゃなかった」? 

 ……まァ、そういうヤツもいるか。

 オレは違ったんだよ。使命なんざクソくらえ、オレは自由に生きてやるって。

 多分勇者シエルの「自由」とか「抑圧からの解放」とかを求める心をより濃く受け継いじまったんだろうな。

 

 だから──飛び出した。

 今から……数年前か。道場ってほら、結構厳しいとこあんだろ? 

 村の境界線を越えた時の、あの空気は美味かったな。肺が満たされるような、自由の味。

 これからはオレの時間だ、使命なんざどうだっていい。好き勝手生きて、かつては見れなかった世界を見て回ってやるって旅に出たんだよ。

 

 腕に自信だってあったから気を付けて動いてりゃ前世よりずっと安全だろうしよ。

 前世に囚われてちゃいけねェって思って、一人称も口調も変えた。「勇者シエル」なんて過去は捨てて、ただの「リュト」として生きるたって決めたんだ。今じゃすっかり慣れたよ。

 旅は最高だった。数百年前とは違う景色。昔じゃ食べられないようなメシ。強い魔物とも戦ったし、気紛れでボスをぶっ倒すこともあった。

 自由を謳歌してた……この山に来るまでは。

 

 とまァ、オレについての情報はこんなとこだな。

 この山に来たのは元々、ただの通り道のつもりだったんだが、ここには面倒な事情があって。おかげでオレはここから出られなくなっちまった。その「事情」ってのは後で話してやるよ。

 

 

 ……あ? 「なんで急に逃げたのか」? 

 そっか、それもあったか。

 えっとな、別にアンタらの顔が怖かったわけじゃねぇ。

 オレが逃げ出したのは──その「金色の目」のせいだ。

 

 金色の目ってのは前世のシエルの目で……シエルの生まれ変わりの連中が持ってる目でもあるだろ。

 っていうのも、旅の途中にな。どこぞの街で遊び歩いてる時に出会ったんだ──オレと同じ、金色の目をしたヤツに。

 

 ……性別? 多分女だったと思うが……まァそんなことどうでもいいだろ。

 問題なのは、ソイツの中身だ。どうにもソイツは勇者シエルから「使命感」とか「義務感」とか「自己犠牲の精神」みたいなもんを受け継いだらしくてな。

 オレの存在に気づいてすぐ「勇者として生きるべきだ」「力は正義のために使え」「使命を受け入れろ」とかなんとか抜かしてきやがって、オレの生き方を、真正面から否定してきやがった。

 で、オレがそれを鵜呑みにする訳もねェし……おかげで大喧嘩になっちまった。ありゃキツかったぜ。

 

 それのせいで、警戒してたんだ。

 あの「金色の目」を持つヤツは、皆あんな堅物なんじゃないかって。

 また説教されるってだけなら楽でいいが、意識高くしすぎてもう一回殺し合いみたいなことになっちゃ堪らないからな。

 だから逃げた。アンタらはそこまで過激派じゃねーみたいだが……同類には関わりたくなかったんだよ……。

 

 ……ま、そんな訳だ。

 身の上話はこれで全部したつもりだぞ。

 

「なるほど……ちょっと無責任なタイプのボクなんだね」

 

『これはこれでまた拗らせたシエルが出てきたなぁ』

 

「こっち側に回って思ったけど……あの時のぼくもこんな感じだったのか……」

 

 なんだテメェら好き勝手言いやがって。

 こちとら自分自身三人に見つめられる中聞かれたことに正直答えて言っただけだってのによ。

 

 つーか、聞いてた時の反応見るに──もしかしてオレの方が少数派なのか? 

 てっきり勇者シエルは皆同じ気持ちで、生まれ変わった後は好き勝手生きていきたいってのが普通だと思ってたんだが……コイツらマジでバカ真面目に抑止力目指してるって? 大変だねェ……。

 

 

 

 ……じゃあもう一つ、さっきから尋ねられてる──コイツらが本当に欲しがってる情報についても喋っとくか。

 この判断が失敗に終わったら今の世界にとって大損だが……もう教えるしかねェもんな。

 

「じゃ、次に『ここの面倒な事情』ってのと『ここの主について』も教えてやるよ──着いてきな」

 

「へ? 着いてきな……って?」

 

「何ポカンとしてやがんだ。いいから着いてこいって、知りたいんだろ?」

 

「う、うん……」

 

 だってそうだろ。

 これから教える『この街の真実』は──実際に言うより、見た方がずっと早いんだから。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 瓦礫の山を越えて、崩れかけた階段を登り切った先──オレの隠れ家の屋上だ。

 ……つっても、屋根が吹き飛んだだけのただの廃墟だが。見晴らしだけはいいんだよな。

 

「着いたぞ、ここだ」

 

 風が強くなってきた。肌にへばりつくような湿気を含んだ風じゃねェ、もっと乾いた、高い場所特有の風だ。

 ここなら誰にも聞かれねェし、何よりあいつがよく見える。

 

「ふぅ、結構歩くんだね」

 

「ぜぇ……はぁ……あの、腕の中が……恋しい……」

 

 後ろからついてきてた二人は……あー、エスクリは平気っぽいが、マージュの方がキツそうだ。肩で息をしてやがる。

 まァ、ここまで登ってくるのは骨が折れるよな。オレは慣れっこだけど、普通の魔法使いにゃキツいか。

 

 目の前に広がるのは、トロワジーの街並みと、それを囲むシェーヌド山の岩壁。

 そして、その上空。

 

 雲の切れ間を縫うようにして──悠々と旋回してる影。

 

「……あれが、ここの主──ボスだ」

 

 指さす必要もねェ。見上げれば嫌でも目に入る。

 この距離でもはっきり分かるデカさ。翼を広げりゃ二十メートルはあるか。街を覆う雲みてーだ。

 

 相変わらず高いトコ飛んでやがるなァ……この距離でも風圧を感じる気がするぜ。

 見てるだけでムカつく飛び方だ。完全にこっちを舐めきってやがる。

 

『……なるほど。鳥のボス、か』

 

 ……ふゥん? 

 今のは聖剣のエペか。案外動じねーんだな、もっとデカいヤツでも見てきたか。

 

 まァ鳥だよ、見ての通り。ただの鳥じゃねェけどな。

 全身が鋼みてーな羽毛で覆われてて、鉤爪は岩盤すら紙屑みたいに引き裂く。

 そして何より、あの速度。

 あんな巨体で飛んでるとは思えないスピードで、一瞬で視界から消えたり現れたりする。目で追うのがやっとだ、弓矢だの魔法だの当たるわけがねェ。

 

「……戦ったことは、あるの?」

 

「ああ。最初はな」

 

 そりゃそうだろ。あるさ、何度もある。自由に憧れて囚われるのが大嫌いって話したばっかだ。

 ここに来たばかりの頃、オレはまだ希望を持ってたからな。「力があれば何とかなる」「倒して進めばいい」って。

 思い出すだけでも古傷が疼くぜ。

 あの時はまだ、アイツは人間を舐め腐ってよく地上に降りてきてたよ。オレみたいな威勢のいい獲物を見つけて、遊び半分で狩ろうとしてきたんだ。

 

 甘く見られたもんだよな。

 こっちには前世譲りの怪力と、素手の技術があるってのに。

 

「真正面から殴り合ってやったよ。鉤爪を躱して、懐に潜り込んで……自慢の嘴をへし折ってやった」

 

 あの時の手応えは今でも覚えてる。

 硬い骨が砕ける感触に、アイツの驚いたような悲鳴。

 ざまあみろって思ったね。これならいける、倒せるって確信した。

 

 ……甘かったのはオレの方だったんだけどな。

 

「それなら……!」

 

「でも、それっきりだ。アイツは『羽の雨』って戦法に切り替えやがったんだよ」

 

「……は、羽の雨?」

 

 一瞬期待したような顔のエスクリと、出てきた単語が飲み込めないマージュ。

 まァ、見たことねェよな。見たらトラウマもんだけれど。

 

 アイツは学習したんだ。

 オレ相手だと「地上戦、接近戦じゃ分が悪い」「こいつは餌じゃなくて敵だ」ってな。

 それ以来、アイツはオレの目の前に二度と降りてこなくなった。

 そして安全圏から一方的に、あの鋼同然で矢尻より鋭い『羽の雨』を降らせてくるだけのクソみたいな戦法に徹するようになった。

 

 遮蔽物のない場所でやられてみろ、一瞬で蜂の巣だ。

 防ぐ手段なんてない、盾なんか一瞬で貫通する。オレは廃墟の陰に隠れてやり過ごすのが精いっぱいだった。

 攻撃するどころか、顔を出すことすらできねェ。

 近づけさえすれば勝てる……かもだが、もうオレには無理だ。

 

 でも、一番怖いのはそれじゃなくて。

 

「それ以上に、一番怖いのは──アイツの『知能の高さ』だ」

 

『……知能? さっき言ってた、戦法を切り替える狡猾さのことかい?』

 

「それもあるがそれだけじゃない。テメェら、ここに来たってことは──あの、ぶっ壊された関所に覚えがあんだろ」

 

「あぁ……あったね。確かに、不思議だった」

 

「今の話を聞いた感じだと、下手人はその鳥なんだろうけど……でもどうして?」

 

 そうだな、気になるよな。

 関所ってのはその地域の顔みたいんだもんだ。それがぶっ壊されてて、あんな化け物が空にいるってのに──街は普通に機能してる。おかしいと思うよな。

 

 結論は簡単だ。

 

 

 

「あのクソ鳥野郎は──街にいる人間の顔を全部記憶してる」

 

「へ!?」

 

「そして、自分の情報を意図的に秘匿し、漏洩を徹底して監視してる」

 

「……え、え!?」

 

「だから、『ボスの情報』を知った人間は絶対に──この街から出られねェ」

 

『な、なんてことを……!』

 

 

 

 認めたくねー事実だが、言うしかない。あいつは賢い。

 全滅させたら、自分の食い扶持がなくなると知ってるから、適度に生かしてるんだ。

 

 関所ができたのは、外からの人間に警告するためだった。不用意な出入りを制限するためだった。

 関所ができて以降、人の行き来が減ったことに気づいたあのクソ鳥は──即座に関所をぶっ壊して衛兵を全員食い殺した。

 

 人が入ってこないと、餌が増えない。閉鎖された空間じゃ、いずれ人口は減っていく。

 だから入り口は広げておく必要がある。バカな旅人が迷い込んでくるのを待つために。

 

「じゃあ、街の人がぼくたちに冷たかったり、地図に街の情報が一切なかったのは……」

 

「当然、アイツの努力の賜物って訳だ」

 

 街の人間は、「余所者」がボスの情報を知って、目を付けられる前に逃がそうとしてる。

 わざと冷たい態度取ったり、居心地悪く思わせて、早めに街を通過するよう仕向けてる。

 もし街を嗅ぎまわったり、ボスの情報を知った上で出ていこうとしたり、逃げようとしたら……その瞬間ソイツは即座に食い殺される。

 おかげでこの街の情報は外でほとんど流れない。

 

 だから皆理由を話したがらなかったんだ。

 素通りしてくれりゃ一番安全だから。

 

「……で、それを聞いちゃったってことは、ボクたちは……」

 

「ふふふ、そりゃないだろ? 聞きたがったのはそっちなんだから」

 

 オレは勇者シエルが複数いれば勝てるんじゃないかと思って話してやったんだ。

 そんな焦った顔されても困っちまうよ。

 

 ようこそ、この街の支配下へ。

 これからは街の人間も同情で優しくしてくれるぜ。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「知っちまったもんはもう仕方ないさ。気長にやろうぜ」

 

『えぇ……』

 

 

 あーなんかスッキリした。

 オレの正体も、オレの経歴も、この街の実体も、ボスの情報も。人に言いたくても言えない内容ばっかだからな。久しぶりに喋れてちょっと満足っていうか。

 

 この判断が失敗に終わった場合、この世界から攻撃能力に長けたかつての勇者が三人も消えるってことになっちまうし……正直ちょっと不安ではあったんだが。

 逆に、こんな僻地に元勇者が四人揃ったんだ。これ以上に最適な状況は有り得ねェだろ。

 これで無理ならもう一生無理だろうし、オレたちは運命共同体になった訳だ。

 

『前も大概だったけど、今回も思ったより強敵だよ……? うちのパーティーは近接型ばっかりだし、それだけ早いなら魔法も当てにくい。僕の変形も……今は当てにならないだろうし』

 

 エペはさっきからずっとブツブツ言ってやがる。

 コイツは普段、チームを一歩引いたところから見守ってるポジションなのかね。

 剣が喋ってることに慣れちまったオレもオレだが……抱える頭が無いってのは不憫だな。

 

「もしかして、出られない……? で、でも、ヴィクくんがいれば倒せるか、うん……」

 

 マージュは本格的に不安になってきたみたいだ。それが普通の反応だぜ。

 すぐに可能性を諦めてない辺り、多少は勇者シエルの精神が宿ってるってことか。

 使命に前向きなのは良いぞ。オレにその気持ちは分からねーが。

 

「……仕方ないしもう直接聞いてみようかな。いい加減埒が明かないし……」

 

 エスクリは……あれ、ちょっと様子が違うな。

 さっき話をしたときは相応に驚いてたはずなんだが……今は別のことが気になってんのか、なんか右往左往してやがる。

 

「……ねぇ、リュト」

 

 ……お、直接こっちに聞きに来やがった。

 なんだ? 他に気になることでもあったのか? 

 オレにわざわざ聞きに来るってことは……この街に住むオレじゃなきゃ知らない、余所者には分からない情報を聞きたいってことだよな。

 

「失礼なんだけど、キミの性別って……」

 

「……ん?」

 

 は? 性別? 

 ああ、なんだ、んなことか──

 

 

 

 ──ブチンッ! 

 

 あっ。

 

 ──ゆさっ……

 

 やべ、破けちまっ──

 

「──う、うわあああ!?」

 

「うおっ!?」

 

「ひゃっ!」

 

『うわっ!』

 

 

 

「えっ、あっ、ごめん!」

 

 な、なんだ急に大声出しやがって! 

 さっきテメェに組み伏せられた時にズレちまった──「サラシ」が破けちまっただけだろ! 

 

「え、で、でも、キミ! ま、まさか、お、おおお、女……!」

 

「……いやそうだよ。見りゃ分かんだろ」

 

 なんだテメェ。オレのこと男だと思ってやがったのか。

 そりゃ、体術の邪魔になるからいつもはきつく縛って暴れねェようにしてるけどよ。髪だってウザったいから短くしてるが……別に声は女だっただろ。そこまで動揺することなくないか?

 

「ま、また……ボクは女なの……!? どうしてこんなにも運命は残酷なの……!?」

 

「……何を、女だ男だなんざどーでもよくないか」

 

 なんでそんな過去の性別に拘ってんだ。テメェだって同じくらいのデカさのもんがぶらさがってるじゃねーか。

 オレだって初めは驚いたがもう流石に慣れ──

 

 

 

 ──ドゴォォン! 

 

「悲鳴が聞こえたぞ! エスクリ! マージュ! 無事か!」

 

「うおっ!?」

 

 は!? なんだ!? 

 急に隠れ家の入り口が吹っ飛んだぞ!? 

 

 

 

 ……って。

 

「うわあああヴィクううううう!?」

 

『えっ? どうしてヴィクがここに』

 

「え、わ、ひゃあああああああ!?」

 

 ……なんか不安になってきたな。

 さっきまでは心強かったんだが……本当にコイツらで大丈夫か?




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