僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~   作:破れ綴じ

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不安なのでこうして予防線を張っていますが、ちょっとだけグロテスクかもしれません。
できるだけぼかした言い方をしましたが、苦手な方はシーン3だけ注意してください。

戦闘を書くのは……難しい!(・ω・`;)


骨のある男

 ……え? 

 

 ど、どういうことですか? なんで棒立ち? 

 さっき確かに、あのボスがものすごい魔力を漲らせてこっちに襲い掛かろうとしてたのに……何も、来ない。

 

「……何故、肉体強化が起こらない? 魔法陣は……」

 

 ……まさか、これ、不発? 魔法が失敗した? 

 

 え、嘘、そんなことあるんですか? 

 あのボスが、何かとんでもない奥の手を仕込んでて。それが発動して、一巻の終わりなのかと……そう思ったのに、まさかの不発? 

 もしかして、初めからそんな魔法陣なんて無くて、ただのハッタリだった? 

 あるいは他の誰かがその仕組みを、知らず知らずのうちに解除した……? 

 

 で、でも! 

 何はともあれ早くこいつから逃げないと……! 

 

「チッ……かくなる上は、人質を取って……」

 

「おい魔物。その首、繋がっているのが惜しいなら余所見は止めておけ」

 

 ……! 

 

「なるほど……貴様がいる以上、背中は向けられなさそうだな」

 

 そ、そうか……。

 今、僕たちが逃げ出したら、このボスは人を襲いに行けるんだ。

 僕たちがいるのは、デファの職場がある、貴族街への一本道。

 今は時間帯や霧もあってここに誰もいないけど……逆に言えば、すぐ人に会える場所ってことでもある。

 

 だから、こいつを……ここで──パルジュを止めないと。

 他の人たちに、何をしでかすか分からない……! 

 

「っ……ルメド、悪い。痛みを和らげる魔法とか、できるか?」

 

「は、はい! ヴィクトールさん!」

 

 そ、そうだった。僕は治癒術師なんだ。

 手を生やすなんて魔法、一瞬じゃとても使えませんが……それでも、傷口を塞いだり、痛覚を鈍らせることぐらいはできます! 

 手を切り落としたんですから、今ヴィクトールさんは耐えられないほどの激痛を感じてるはず。もし、少しでも痛みが集中の邪魔になったら命取りだ……! 

 

「すまない、助かっ……おお、凄いな。まるで痛くないぞ」

 

「……それしかできませんから、僕は」

 

 僕はシエルだけど……前世のようなシエルじゃない。

 僕みたいな治癒術師は、回復魔法しか使えない。

 ただ、この人に守られることしかできない。

 

 だから、せめてこの人の役に立てることをしなきゃ。

 僕は勇者シエルとしての使命を何も果たせず死んでしまうことにな──

 

「来るぞ! 下がってろ!」

 

 えっ。

 速っ……えっ、伸びた!? 腕が!? 

 

 ──ガギィィィンッ!! 

 

「くっ!」

 

「フン! ルメド様と会話しながらとは……余裕だな!」

 

「まさか! 割と今っ、必死だ……!」

 

 あ、あああ! 

 

 そうか、ボスは自由自在に肉体を変形させられるんじゃないか! 

 それなら、肉体は人間のまま、武器は護衛のままだとしても……人間ではありえない、とんでもない攻撃をすることができる……! 

 

 今のこの攻撃みたいに──腕を伸ばしたり、関節を無視してうねらせたりして、一切軌道が読めない攻撃をしてくるんだ。

 しかも、ボスは凄まじい怪力と異次元の身体能力を両立させた存在。いくら強いとはいえ、片手だけのヴィクトールさんじゃ分が悪い! 

 

「はぁ、はぁ……コイツ、エスクリより速いし、リュトより力あるんじゃないか? 相当強いぞコイツ……!」

 

「『回復』! 『鎮痛』! だ、誰ですかそのリュトって! 『止血』!」

 

 とっ、とにかく! 

 もっともっと回復魔法を重ね掛けしないと! 

 僕の魔力を今全部注ぎ込むぐらいのつもりで……! 

 今ヴィクトールさんがやられたら僕も死ぬんだ! 僕が死ぬ気であの人を回復させないと、どっちも死んでしまう……! 

 

「貴様こそ! 凄まじい剣捌きだ、『魔王様』から力を頂いたこの私に、ここまで張り合おうとは……!」

 

「……っ! やっぱり、お前……!」

 

 っ、速い。速すぎますよ……! 

 

 全力を解放したボスもとんでもない強さだけど……片手のないはずのヴィクトールさんもちょっとおかしい実力してる。

 完全に互角の勝負じゃないですか、もう剣と剣がぶつかり合う音しか聞こえない……! 

 

「『回復』! 『回復』……! 『回復』っ!」

 

 僕ができるのは、これだけ。

 治癒術師として、あるまじき行為だとは分かっています。

 でも、痛みに顔を歪めて動きが鈍れば、その瞬間に殺される。

 

 偉大なる癒しの神よ。今この瞬間だけは許してください。

 痛みという警告を奪い、死ぬまで戦わせる残酷な魔法だとしても……もうこれしかない! 

 

「チッ……!」

 

「ふっ、はっ、っ……らああぁぁ!」

 

 ……効いた。動きが変わった! 

 ほ、本当に? 信じられない、あのボスを、単身で追い詰めるだなんて……。

 

 でも、素人目だけど……今、確かにヴィクトールさんの勢いが上回った! 

 

 あのボスの攻撃は半分以上ヴィクトールさんが弾いてるし、届いても僕が回復してる。

 でも、ヴィクトールさんの攻撃は正確かつ急所を的確に狙った過剰なまでに鋭いものばかり。傷を負えば負うほど、ボスは肉体を欠損し、手数も減らしていく……。

 

「……何故ここまで動ける! さては貴様、ニンゲンではないな!?」

 

「まさか! さっき証明してやったばかりだ……っ、ぞ!」

 

 あいつが焦ってる。

 そうでしょうね、普通ならとっくに動けなくなっているはずの傷ですから! でも、彼は止まらない。僕の魔法がある限り、彼は止まらない! 

 

 読めてる……カウンターの機会を窺っている。

 あいつの焦りが、隙を生むのを、ヴィクトールさんはずっと待っている。

 

 だから、次に大きい攻撃が来た瞬間……。

 

「あっ」

 

 大振り……。

 

 

 

 ──ザンッ!! 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「ギ、ガアアアアアアッ!?」

 

 か、勝っ……た? 

 今、ヴィクトールさんが腕を斬り飛ばして、ボスの腕が握っていた剣ごと全部吹き飛んで行って……。

 

「っ、ヴィクトールさん!」

 

「は、はっ……はぁっ……!」

 

 すごい……すごいですよ、ヴィクトールさん! 

 まさか、あのボスを一人でここまで追い詰めるなんて……。

 あのボスはとにかく近接戦闘に優れていたと知られていたんです。装甲を突き破ってくるパワー、一般兵では目で追うことすらできないほどのスピード。

 かつてあのボスと戦った経験のある三人の元勇者は、全員、「魔法」「罠」「弓矢」という遠距離戦法を取れていたからなんとか対処できていたと言っても過言では無いのに……。

 

 でも、これで、パルジュ……ああいやいや、あれはパルジュじゃないんです。

 いい加減にしないと、僕。とりあえず、あのボスの確認を……。

 

 

 

「痛いじゃ、ないか……貴、様……」

 

 ……あ、え? 

 え、うそ、なんで……そんなに大きく、膨らんで……。

 

 

 

「ああ、最初からこうして圧し潰してやればよかった……どうして剣なんぞに拘っていたのか……」

 

 あれが……さっきまでのボス? 

 筋肉が異常に盛り上がって、皮膚が裂けて、人間の形だったはずの肉塊が……十メートルぐらいになってませんか、あれ。

 え、さっきまでヴィクトールさんが削りに削って。切り落としまくって。どんどん手数が減ってたはずなのに、どうして急にあそこまで大きく……まさか、あれが本来のサイズ? 

 しかも、あの、全身から、ドロドロ垂れているのは……。

 

 ──毒、だ。

 かつての僕を、三人も殺した、あの……毒、だ。

 

「マジ……かよ。まだやらないといけない……のか」

 

「ちょ……ヴィクトールさん!?」

 

「ルメド、回復をまだ頼む。今度こそ、トドメを刺してくるから……」

 

「ま、待って下さい! 今、ボスは毒を出していて……!」

 

「見れば分かる。行ってくる」

 

 な、何言ってるんですか!? 

 そんな、そんな、今、それだけ満身創痍なのに、まだ戦う……!? 

 それしかできることはないと、僕も分かっていますが……流石に無茶なんじゃ……! 

 

 ──ブォン! 

 

「うわぁ!?」

 

「ルメド! 下がっていろ!」

 

 す、すごい衝撃波……が! 

 っていうか、待ってください! 

 

「ヴィクトールさん! 受けてはダメです! あれは触れるだけで肉を腐らせる猛毒の塊です!」

 

「……!」

 

 叫ばないと、喉が裂けるくらい叫ばないと。

 だって、あんなの防御できませんよ! 剣で受け止めても、その衝撃と共に毒液が飛び散って……触れた瞬間にアウト。今までみたいに防ごうなんて高度な技術は通用しないんですよ! 

 

 ヴィクトールさんも気づいたみたいだけど……ああダメだ、止まってくれない! 

 バックステップで距離を取りながら……それでもなお攻撃する隙を伺って……! 

 

「嬲り殺してやる……ヴィクトール!」

 

「触れなきゃいいんだろ! 今度こそその頭貫いてやる!」

 

 ──ズガガガガガッ! 

 

 ダ、ダメです……! 

 ボスが腕を……いや、腕のようなあの太い触手を振り回すたびに──猛毒の雨が降ってくるんですよ!? 

 今こそ紙一重で躱し続けていますけど、逃げ場がどんどんなくなってることが分かってるんですか!? 

 

 ああ、やっぱり避けられてない、何度か被弾して……! 

 

「……っ! 『解毒』! 『解毒』! 『解毒』!」

 

 ここは一本道。

 後ろには貴族街がある。これ以上下がれば、被害が出る。 だから僕たちはこれ以上下がれない……でも! 

 

 僕は何をしてるんですか。『回復』? 『解毒』? そんなの後手後手じゃないですか! 

 毒を浴びてからじゃ遅いんです。浴びないようにしないと……でも、どうやって? 僕には攻撃魔法なんて使えない。結界魔法も専門外。

 ただ突っ立って、彼が傷つくたびに癒す。

 そんないたちごっこで待っているだけなんて……! 

 

 ──ドスッ! 

 

「がはっ……!」

 

「『げどっ……! ヴィクトールさん!」

 

 ああダメだ! 

 

 ヴィクトールさんが動けなくなってる、毒を食らいすぎてもう限界なんだ! 

 剣が、剣が無い! ヴィクトールさんが持ってた剣の柄から先がどこにもない! 

 折られた? 弾き飛ばされた? 溶かされた? 分からないけど、もう無理だ! 

 急いで僕がヴィクトールさんを引っ張らないと、僕しか、もう助けられない! 

 

 僕が早くなんとかしないと! 早く早く早く僕が……! 

 

「……これで、終わりだ!」

 

 あっ。

 

 丸太みたいな尾がフルスイングで……。

 防御できない、回避も間に合わない! 

 

 ──ブオンッ!! 

 

 な、なんですかあの音は……!? 

 明らかに、人からなっちゃいけない音が……ヴィクトールさんっ! 

 

 ──ガンッ!! 

 

「パ、パルジュっ、おねがい、待っ……!」

 

 ──ドシャァッ!! 

 

「……あ」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「てこずらせたな……」

 

 待って、待って、待って。

 あんなに吹き飛ばされて……今、ヴィクトールさんは……。

 

「ん……あの男、私の体内で剣をへし折ったな? ……チッ、変形ができないじゃないか」

 

 あ、あ、あ……。

 大丈夫、生きてる、生きてる……! まだ、息をしてるし、目も閉じてない……! 

 

 でも……。

 

「まあ、あと一撃貰っていたら危なかったが……」

 

 

 

「私の勝ち……のようですね、ルメド様」

 

 あああ……! 

 

 

 

「さ、正体がバレた以上、これからは私の指示通りに動いてもらいましょう。戻りますよ」

 

 どうしよう……どうしようどうしようどうしよう!? 

 ヴィクトールさんは辛うじて息をしてる、まだボスを見据えてるし、まだ諦めてない……。

 でも、これじゃ無理だ! 

 僕じゃ戦えない。ヴィクトールさんの左腕は毒を浴び過ぎて既に腐り始めてるし、頼みの綱の剣だってもうない……! 

 

 ここで諦めたらどうなる? ヴィクトールさんの命は見逃してもらえる? 

 そんなこと……あり得る訳がない。きっとヴィクトールさんは殺される。

 

 その後デファの元に行ったらどうなる? このボスは満足する? 

 それもあり得ない。僕はコイツの指示でデファと対立させられる。

 

 エスクリたちを探す? 彼女たちがなんとかしてくれるのを期待する? 

 無理だ。あの二人じゃ勝てない。どっちにしろこいつがそれを見過ごすはずがない。

 

 今ここで諦めて自殺する? それで被害は小さくなる? 

 まさか。そんなことすれば国上層部のアクセスを失ったこのボスはさらに暴走する。

 

 癒しの神よ、偉大なる癒しの神よ。

 僕は、どうすればいいですか。教えて、もらえませんか。

 このままじゃ、この人を、僕のせいで、失ってしまう……! 

 

「(なあ、ルメド……)」

 

 えっ……。

 ヴィク、トール、さん。

 

「(お前、腕一本……丸ごと蘇生できるか……?)」

 

 ……? 

 

 う、ううう腕? 急に何を? 

 今の……手がない、その腕のことですか? 

 え、手だけならまだしも……腕ですか? 

 今から生やせって言ってるんですか? ボスの目の前ですよ? 

 

「(で、できますけど……でも、その、時間が……!)」

 

「(できるん、だな? 骨も、肉も……元通りに)」

 

「(は、はい! 僕なら……僕ならできます! でも、何を……)」

 

「(なら、大丈夫だ)」

 

 ……ど、どういうことですか!? 

 

 怖い。ヴィクトールさんの意図が読めない。

 何をするつもりなんですか、この状況で……!? 

 あのボスもすぐ近くまで来てるし、今にも拳を振り下ろそうとしてるのに……ヴィクトールさんは、諦めてないとかそういうレベルじゃない。

 ……声が、熱が──おかしい! 

 

「長かったが……トドメだ、ヴィクトール!」

 

「──っ、一瞬だけ目を瞑ってろルメド!」

 

「えっ、あ、はいっ!」

 

 な、何を……! 

 

 

 

 ──ブチブチブチッ! 

 

 ……? 

 何の、音……。

 

 ──バキッ! 

 

「!? 貴様、気でも狂ったか──」

 

 ──ドスッ……! 

 

 

 

「ガアアアアッ!?」

 

 な、なになになに!? 

 何が起きたんですかヴィクトールさん!? 

 

 今さっき、肉から固いものを通すみたいな音がして……! 

 同時に、関節を無理やり外したみたいな鈍い音もして……! 

 その後の突き刺したみたいな音と、聞こえて来た絶叫は何ですか!? 

 目は開けていいですか!? も、もう勝手に開けちゃいましたけど……! 

 

「貴様……ッ! よくも……ッ!」

 

 その手に持ってる、赤くて白いものは。

 ボスの喉元に突き刺してる、その角ばったものは。

 

 いったい──

 

「──ルメド!」

 

「……はっ! ……え、あっ、はい! 『回復』! 『回復』! 『回復』!」

 

「こ、この……貴様アァァ!!」

 

 ──ズブッ! 

 

 ──グシャッ! 

 

 ──ボコッ……! 

 

 ああもう何も見えません聞こえません! 

 僕のやることは、残った魔力でヴィクトールさんを回復することだけ! 疲労で力が緩まないよう、徹底的にあの人を援助することだけ! 

 あの人の右手に骨みたいなものが見えたとか、腐ってたはずの左腕が完全にボロボロになってたとか、僕の「痛みを和らげる回復魔法」のせいでこんなことになったかもしれないとかあるけれど今は考えない! 

 

「離せ! ふざけるな! これを……ッ、抜けェッ!」

 

「抜く訳ないだろ……! 武器が無いと思って……っ、油断したか?」

 

「クソッ、こんな、馬鹿な……魔王様ァァァッ!」

 

 ……!? 

 ……いや! 

 

 考えない考えない考えない! 

 魔王っていうのはきっと何も関係が無いことなんだ! 魔王は数百年前に僕たちが倒したからこのボスは魔王軍の残党か、気が狂っているだけなんだ! 僕のやることはヴィクトールさんを回復することだけなんだ! 

 

 目の前のこいつから……かつての「魔王」と同じような気配を感じるのは気のせいだ! 

 今大事なのは、ヴィクトールさんの身を削った攻撃がとてつもない大逆転になりそうってことだけなんだ! 

 

「『回復』! 『鎮痛』! 『解毒』! 頑張って、ヴィクトールさん!」

 

 ……っ、ボスも全力で抵抗してる。

 喉の奥に刺さったアレを全力で引き抜こうとしてる。

 ヴィクトールさんがそれを押し切るように、物凄い力で押し返して。

 物凄い状態だ。ボスの魔力が辺り一帯にあふれ出してる……! 

 

 な、何ですか、これ? 

 視界が、歪むような、とてつもない圧が……。

 

 

 

「……き、貴様……い、いや、まさか! 貴方は──」

 

「──死ね、魔王の手先が」

 

「グガ……ガアアアアアァァァァァッ!!」




ちなみに。
魔法陣とやらに問題が無ければ、蛇パルジュは今の勇者四人+一本でも余裕で勝てないくらいの強さを想定してプロットを作っていました。
私は学びましたが、あまり無茶なことをしてはいけません。

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