僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~   作:破れ綴じ

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これ本当にラブコメかな。
ラブコメでいいのかな……。

本当はもっとイチャイチャさせたいんですよ(´・ω・`)


見ていなかったのは、どっちだ

 ああ、思い出しても腹が立つ! 

 腹が立つというか、情けないというか、恥ずかしいというか……感情がぐちゃぐちゃだ! 

 

 なんでだ? なんであんなこと言われなきゃならないんだ? 

 冗談じゃない。「女だったのか」だって? 

 私だぞ? シュヴァだぞ? 寝食を共に……いや流石に寝床までは同じでは無かったが。

 しかし、死線を潜り抜け、お互いの命を預け合った相棒だぞ? 

 

 それなのに……性別すら知らなかっただと!? 

 

「信じられるか、ディアマ!? 数年も、数年も一緒に旅をして、背中を預け合っていたのに……!」

 

「あーっ、まーた始まりましたわー! 帰ってからずっと! もう何回目ですの!?」

 

 ……え、そうか? 

 

 いやしかし、君は書類仕事の片手間によく話しかけて来るじゃないか。今回の事件は私の人生最大の危機だというのに。君にとっては片手間の暇潰しよりどうでもいいことだというのか。薄情者め。

 私がどれだけ傷ついているか、少しは察してくれてもいいだろうに。

 

 いや、あの後確かに彼は謝ってくれたが。

 遺跡の床に座り込んで「だから言わない方が良いかと」「理不尽じゃないか」みたいな目をしつつ、「誤解してすまなかった」「蔑ろにしていたつもりはなかった」「埋め合わせをする」と言ってくれたから、別にもう怒ってはいないが。それでもショックだった。

 私がどうしてショックを受けたのかも理解している様だったし、彼は私が女性だと分かっても態度を変えたりなんてしないだろう、多分。

 だから、事実が共有できた時点で……受け入れるべきなのだろうが。

 

「それにしても……おかしいだろう!? 百歩譲って、昔の私が鎧を着ていたとしてもだ! 声だって聞いていたし、顔だってみていたし……私のどこを見ていたんだ、あいつは!」

 

「知りませんわね~! その色気のない服装や凛々しい立ち振る舞いに聞いてみてはいかが?」

 

「うっ……!」

 

 いや、それは、確かにそうだ。

 普段はずっと鎧を着ているし、そうでない時も動きやすさ重視の軽装だから……確かに、女性らしい見た目ではないだろう。フリルやレースだってないし、ドレスなんか以ての外だ。

 腕だって……まあ、剣を振るうために鍛えているから、細くはないかもしれない。立ち振る舞いだって、騎士として恥じないように背筋を伸ばしているし、媚びたりもしない。

 

「おまけに『僕』でしょう? それで女だと思えって方が無理難題ですわよ!」

 

「それは……その、前からの名残もあって、あえてそうしていただけで……」

 

「殿方なんて見たまんまを信じる生き物ですわ! はい終わり! 次!」

 

「ぐぬぬ……」

 

 ……反論できない、のが悔しい。

 確かに、私は「女」として見てもらうことなんかより、「戦士」として認めてもらうことの方がずっと大事だった。

 前世からの自認もあったし、男勝りな口調を意図的に選んでいたところもある。世界を救う勇者として、弱みなんて見せて民を不安にさせてもいけないと……気を張り続けてた。

 

 それが……こんな形で裏目に出るなんて。

 

 ……でも、それだけで男に見えるか? 

 胸だって……あるぞ? いくら鎧の中で見えないとはいえ。

 それこそ、彼の側にいたエスクリやマージュと同じくらい……いやあの二人も相当大きかったが。負けてはいない……少なくとも男の胸板とは明らかに違うはずだ! 

 

 もっと彼の前で女性的な装備をしてみるべきだったか? 

 露出を増やすとか。そうすれば性別を誤解されるなんて悲しいイベントを引き起こさないで済んだのか? 

 それこそ、下着のような装いをしてでも……そうすれば、彼も間違えようが無いのでは。

 

 ──『見たまえヴィクトール。ビキニアーマーというやつだ』

 

 ──『防御を大事にすべきだと思う。機動力はあるだろうが、急所を狙いやすくないか』

 

 ──『確かに……』

 

 ……ダメだ。

 普段からもっと自分の身を大事にしろと言っていた私ができることではない。

 そもそもそんな痴女めいたことをして、世界平和の何の役に立つというのだ。

 私は彼に女として見られたい訳でもなく、性別すら把握されていないという事実がショックだっただけなのに。服装を女性のものに変えたところで、本来の目的を見失ってしまって……。

 

「はー面倒くさいですわね」

 

「なっ……誰が面倒くさいだ!」

 

「あっもういいですわ! はい切り替え切り替え!」

 

 ……この女。

 パトロンとしては非常に優秀だが、友人としては接するにはあまりにも難がある……! 

 いや、難があるのは私の方もなのだが……。

 

 ああもう、恥ずかしい! 

 再会の喜びで舞い上がっていた自分が惨めだ! 

 私のときめきを返せ! 

 純情を返してくれ、ヴィクトール! 

 

 

 

「そういえば! 今日お客様を呼んでいらっしゃるのでしょう? 例の殿方?」

 

 もう露骨に話題を変えてきたな。

 私との会話に耐え切れなかったんだろうが。

 

 例の殿方……ヴィクトールのことか。

 

「いや、違うぞ。彼の連れだ」

 

「なんだ違いますの!? てっきり彼をお呼びして仲直り大作戦かと!」

 

 そうだ、今日呼んだのはヴィクトールではない。

 彼と一緒にいた、あの三人の女性達──エスクリ、マージュ、ルメド。

 彼女達が「話をしたい」と言っていたから、こっちに招待したのだ。

 

 彼が女性ばかり連れているのは気になるが、彼女たちは「勇者シエルの生まれ変わり」である以上、もうそれは些事でしかない。

 結果どうであれ、一番初めに彼の隣にいたのは私であり、その一点に関して絶大なアドバンテージが私にはある。よく考えれば怒ることでもなんでもなかった。

 

 同じ志を持つ同志として、情報交換をする必要がある。

 悪の根絶方針、これまで見て来た各地のボスの動向、そしてお互いの能力について。

 私としても提案したいことがあったし、世界平和のための会議をするのは非常に重要だ。

 

「まさか。本来の約束より個人の用事を優先する訳にはいかないからな。公私混同は私の主義に反する」

 

「貴女って本当に融通が利きませんわね~、もっと柔軟になっても良いと思いますわよ?」

 

 なんだ、その目は。

 違う、これは正義感だ。使命感だ。

 ヴィクトールと話したい気持ちがないわけではないが……それは二の次。まずは世界平和に向けての足並みを合わせるのが先決だ。

 

「シュヴァの好感度は上げ過ぎるとこうなるのですね~」

 

「……行ってくるよ」

 

「行ってらっしゃいませ~!」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 ……よし、これで人払いは済んだ。

 これなら誰にも聞かれることはない。

 

「すごい豪華な屋敷だねぇ……びっくりしちゃった」

 

「これは……相当お金持ちですね。ソワンでも中々見なかったです」

 

「これだけの環境があるなら……普通、満足すると思うな、ボクは」

 

 ……三人の「私」が、揃いも揃ってこっちをじっと見てるのはなんだか妙な気分だ。

 

 エスクリ、マージュ、ルメド。

 こうして並ぶと壮観だな、自分自身が三人も。

 向こうから「話がある」と言ってきた以上、こちらも下手な対応をする訳にはいかない。話は十中八九「勇者シエル」に関するものだろうし、ディアマに客間を準備してもらえて助かった。

 

 だが……。

 

「話があるとのことだったが──こちらからも提案がある。そっちも聞いてもらえるだろうか」

 

「えっ……まぁ、いいけど」

 

 よし。

 これを飲んでもらえれば、全てが劇的に変わるはずだ。

 

 ヴィクトール、彼とまた離れ離れになるなんて冗談じゃない。やっと再会できたんだ。彼との共闘経験が一番多いのは間違いなく私だし、彼自身としても新人の頃に組んでいた私と活動する方がやり易いはずだ。

 それに、彼の実力を遊ばせておくのは惜しい。現代人である彼に頼り切りなのも正直良くはないが……世界平和のためにも、彼には最前線で活躍してほしい。

 

 そのためには……この街、シズィを拠点にするのが最も効率的だ。

 

 逆にこれ以上の拠点があるだろうか? 

 物流の中心で、世界中の情報が勝手に集まってきて、どこにボスがいるか、どういうボスなのか、必要なことはすぐに分かる。おまけに、どこへ向かうにも足回りに困らない。迅速に討伐地まで到達できる。完璧じゃないか。

 ディアマの傭兵として働くことを打診すれば、彼女の支援まで使えるようになる。装備のメンテナンスだって申し分ない。彼女のことだ、金の横領でもしなければ悪いようにはしないだろう。拠点を置くことは、旅を続けるよりずっと安定している。無闇に旅を続けて消耗するより、よほど建設的だろう。

 

 我ながら完璧な提案だ。

 世界平和のための最適解。

 これは彼にとっても、悪い話ではないはずだ。

 だから、ヴィクトールにはなんとしてもここで私と傭兵活動を行ってほしい。

 ヴィクトールだけではなく、彼女達もこの場所に拠点を置く方が効率的だと思う。この提案が非常に合理的なことは、同じ「僕」である彼女達も分かってくれるはず。

 

「……何かよからぬ企みとかじゃ、無いよね?」

 

「まさか。『勇者シエル』としての使命を思うなら一番の提案だと自負している」

 

 ……ヴィクトールと再び組めるのは、あくまでついで。

 あくまで計画の一部として。私情なんか挟んでいない。

 剣士のエスクリだけ私に対する当たりがキツい気がするが……やっぱり彼女だけ変に嫉妬深いな。

 

 

 

「……それがもし──この街に拠点を置こうという話なら……」

 

 ──ん? 

 

「残念だけど、受け入れられないよ。「ボク」たちのうち誰も……ね」

 

 

 

 えっ……即答か? 

 いやどうして私の提案を……いや、それは当たり前か。向こうも「僕」自身なのだから、考えることは同じなんだった。

 

 でもそれなら……何故? 

 

 私がヴィクトールをここに留めようとしたことに、独占欲を刺激されたのか? 

 別にこれは個人的な感情ではなく、世界のための……。

 

「確かに、効率的かもしれないね……ヴィクくんの負担も減るし……」

 

「そうですね。ヴィクトールさん、かなり無理をしてましたし……」

 

 あっほら。

 穏健派らしきマージュとルメドは理解を……。

 

「でも……やっぱり、ダメだよね」

 

「はい。僕たちは、旅を続けなきゃいけないので」

 

 ……おっと? 

 なんでだ? 

 

 合理性は……理解できるはずだよな? 

 なぜ拒否する? 旅を続けることに、何の意味があるんだ? 

 危険を冒して、野宿を重ねて、情報を足で稼ぐ……そんな非効率なやり方に固執する理由はなんだ? 

 

『悪いけど、そうする訳にはいかないんだ。僕たちには時間がなくてね』

 

「……事情が、あるということか」

 

 ボスは逃げたりしない。

 なのに、時間が無いということは……何か他に切羽詰まった状況にあるということ……。

 

 

 

 ん? 

 今喋ったのは誰だ? 

 

 

 

『やぁ、初めまして、シュヴァ。僕は聖剣のエペだよ』

 

「……剣が……喋った!?」

 

「このリアクションも飽きてきたね」

 

「エスクリ、そういうこと言わないの」

 

「ははは……じゃ、じゃあ。本題に入りましょうか」

 

 嘘だろ、剣が──剣が喋った? 

 信じられない。剣に意思があるだと? 

 そんな話、聞いたことがない。魔剣の類か? 

 もしかして、事情というのは……その剣に関係する……。

 

「……分かった。どうやら私の提案は、余計なお世話になりそうだな。詳しく、話を聞かせてくれ」

 

『勿論。僕の立場についても、併せて説明させてもらうよ、シュヴァ』

 

 

 

『僕たちは一年以内に復活する、魔王ル・マル対抗のために、動いているんだ』

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

『……と、いう訳なんだ』

 

「……真実、なのか」

 

『断定はできないけど、証拠が揃いすぎてる』

 

 ……そんな。

 

 魔王、ル・マル。

 ル・マルというのは……正直、聞いたことのない名前だ。おそらく、私の受け継いだ記憶に偏りがあるのだろう。

 だが……「魔王」という言葉の響き、エペが語ってくれた「魔王についての明確な記憶」、他三人から挙げられた数々の情報を提示されてしまうと……流石に、無視はできない。

 

「……信じられない。いや、信じたくないが……」

 

 ……嘘だと言ってくれないか。

 そんな悪夢のような話、有り得て良い訳がない。

 あの悪魔が、どれだけの人を殺したか。あの悪魔のせいで、地図から消えた国や街や村がいくつあると思っているのか。魔王軍に襲われた人々が、どれほど悍ましい死を遂げたのか。

 一度目をつけられた人間は……その肉体が地面の色と一体化するまで、嬲り殺されることだって少なくなかった。あれを初めて見た時は本当に吐き気が止まらなかった。

 

 いくらなんでも、それだけを忘れることはできないのに。

 だから私は、戦っているのに。

 

「ボクたちだって。嘘だったら、どんなによかったか」

 

 ……ああ、そうだろうな。

 君達だって、受け入れたくはなかったはずだ。

 私達が命を賭して守った平和が、こんなにも早く……再び脅かされるなんて。

 

 ……ふざけるな。

 奴は滅びたはずだ。私たちが終わらせたはずだ。

 それなのに、あの絶望を。あの恐怖を。罪のない人々が犠牲になる、あの日々を──また繰り返すというのか!? 

 

 許せるものか。断じて、許してなるものか! 

 もし奴が本当に蘇るというのなら……なんとしても阻止しなくてはならない。もう二度と、あいつの手による死者を出すことは許されない。

 

 世界を脅かす絶対的な悪を、この手で叩き潰す。

 それこそが私の使命だ。私がこの世に生を受けた理由なんだ。

 

「……理解した。あのボスを探していたのは……」

 

「うん。知能の高いボスから情報を引き出せないか……って、考えていたからよ」

 

 ああ、そうか。

 だから、あの時……私が「倒した」と告げた時、あんなにも複雑な顔をしていたのか。

 報酬を横取りされた悔しさとかでは微塵もなく、手がかりを失って……困り果てていたところだったんだな。

 

 確かに、あのスケルトンは何か言葉を発していたような気もする。

 今となってはもう取り返しのつかないことだが……それでも、もう少し待っていれば、良かったのか。

 

「ヴィクトールも、このことを知っているのだな」

 

『そうだよ。むしろ、その情報を一番に知らされた当事者だね』

 

 彼……剣のことを彼と言っていいかは分からないが。

 彼の話だと、ヴィクトールはこの事実を知りつつ、複数の事情からそれを秘匿している。

 

 エスクリ、マージュ、ルメドも「エペから聞いた」という訳にはいかないから気づいていないフリをしているが……ヴィクトールも、複数の事情から、その事実を一人で抱え込まないといけない状態になっている。

 その、プレヴィ……とかいう占い師が言うには。

 

「……どこから情報が漏れるか分からない」

 

「そうだね。ボクたちは例外にしても、知っている人は少ない方がいい」

 

「……誰を信じていいか分からない」

 

「うん。ヴィクくんが選ばれたのは、勇者の遺志を継ぐと判断してもらえたからだし」

 

「……公になれば、パニックが起こる」

 

「はい。御伽噺の中の存在が外に出てきては……どうなるか想像に難くないです」

 

「……それが敵に感づかれる恐れもある」

 

『そうだよ。ヴィクは誰にも話せない状況なんだ』

 

 ……正しい。

 悔しいが、あまりにも合理的だ。

 私だったら、正義感に駆られてすぐに公表してしまったかもしれない。だが、現実は冷静にリスクを見極める必要があり、結果として沈黙すべきだということ。

 誰よりも世界を思い、誰よりも責任感が強い彼だからこそ、それに同意したのか。

 

 だが……それは、あまりにも過酷すぎるだろう。

 仲間たちにすら隠して、笑顔の裏で……どれほどの重圧に耐えているんだ。

 私たちには「知らないフリ」をさせて、自分だけが骨を折るつもりなのか。

 

 

 

 そんな真実が、一切見えていないまま。

 私は……数日後にも、彼と会う約束をしてしまったのに。

 

 

 

 謝罪を兼ねた場とはいえ……それでも楽しみだった。

 でも……全てを知ってしまった今、私はどんな顔をして彼に会えばいい? 

 

 私は彼に、何を言えばいい。

 数日後の再会。その時、私は君に……相棒として、何を伝えられるだろうか。




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