僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~   作:破れ綴じ

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ラブ、コメ?
これラブコメかな?

ラブコメっぽくないな……(´・ω・`)


……あんびりーばぶる

 ヴィっくんが茂みの方に歩いていった。剣を一本持って。

 残されたのはわたしと──地面に転がった五人。

 とりあえず拘束しておけって言われたからしておくけれど……。

 

 

 

 ……これで本当にいいの? 

 

 

 

 好きにしてくれていい。

 わたしとしてはかなりこっぱずかしいことを言った覚えがある。

 もしヴィっくんが悪い狼だったら今頃ペロリといかれていた。

 だけど事実なんでもするつもりだったし。言ったことに後悔はしていない。

 

 なのにすることが……倒した仲間の拘束? 

 それだけ? 

 

 別に理解はできる。

 師匠を助けるためプレヴィから命令された内容を思えば……こうして封じ込んでおくことは正解ではあるはず。実際仲間の子達も抵抗してたし。その上でボコボコにされてた。

 ただ。覚悟を決めて降伏宣言して。殺されるのも仕方ないと腹を括って。何を命令されても従いますって姿勢で待っていたのに。来た命令は「縛って移動させろ」。それだけ。

 

 わたしは必要とされていなかった? 

 

「い、痛くしないでください……!」

 

「……」

 

 というか。

 普通に生きてるこの人達。

 

 プレヴィの命令は「殺し合え」だった。

 なのにわたしは普通に生きてて……死んだふり? をしてる皆を拘束しているだけ。

 暗殺者の目で見ればこれは命令不履行。

 ルメドに至っては普通に声を出している。隠す気があるのだろうか。

 

 えっと。ルメドは離れた場所で拘束するんだっけ。

 じゃあ残りはまとめて縄でしばっておけばいい。動けないよう念入りに。師匠直伝の業で。

 

 うん。

 呼吸あり。脈あり。意識なし。

 全員生きてる。

 ……全員、生きてる。

 

「うぅん?」

 

 もっと重大な任務を想定していた。それこそ「こいつらにとどめを刺せ」とか。

 ヴィっくんの手を汚させないためにわたしが代わりに殺す役を任されるとか。

 暗殺者のわたしなら苦しまないようにもできる。

 それぐらいの覚悟はしていたのに。拍子抜けもいいところ。

 

 それともヴィっくんが殺し損ねた? 言われる前に皆を殺しておくべき? 

 暗殺者としてならできる。技術的には何の問題もない。首の骨を折るだけ。一瞬で終わる。苦しませない自信だってある。

 でもヴィっくんからその命令は出ていない。

 こんなこと今まで考えたこともなかった。

 

 ……いや。

 やめよう。

 ヴィっくんが殺さなかったのには理由があるはず。

 わたしが理解できていないだけで何か考えがある。

 わたしが勝手に動いたら、その考えを台無しにするかもしれない。

 だから動かない。今は。

 

「サシナ」

 

「ん。おかえりヴィっくん」

 

 ヴィっくんが戻ってきた。エスクリの剣を持って。

 ……あの剣さっき人型に変形してヴィっくん抑え込んでたよな。なんだったんだあれ。

 

 茂みの方で何をしていたんだろう。結構時間がかかったけど。

 準備と言っていたけど何を準備するのか。訳が分からない。

 ただ顔色は……さっきとは少し違う。何かが変わったような、吹っ切れたような。

 師匠救出についての目途が立った? 作戦を考えてた? 茂みで? 

 

「全員殺し終わった。俺は師匠を助けるため、プレヴィを倒しに行く」

 

「……うん?」

 

「それで、この、エペという剣は非常に強力だ。エスクリには悪いが使わせてもらうことにした」

 

「……?」

 

 ……生きているけど。

 

 というか。わざわざエスクリ達の近くまで寄って武器を貰っていくと宣言する意味は? 

 エスクリはどうして生きているのに自分の武器を奪われることに何も文句を言わない? 

 

 まぁヴィっくんの言っている内容は妥当。

 師匠の命を天秤にかけられ仲間を殺すことになった可哀想なヴィっくん。怒りで前の見えない我が幼馴染は宿敵プレヴィを打ち倒すべく──仲間の形見である強力な武器を拝借して戦地へ向かう……。

 あの聖剣の性能はさっきの戦闘で見た。単純な武器として見ても変形能力を交えたとしても。ヴィっくんの膂力と組み合わせればすごい性能を発揮しそう。

 

「手伝う?」

 

「いい。ここに残って、こいつらの監視を頼めるか」

 

「うぅ~ん……らじゃ」

 

 ……監視? 

 処理とは言わない。やっぱり生きていることを把握している? 

 

 エスクリにとっても。あの剣は相棒のはず。

 命よりも大事かは知らないけれど……少なくとも肌身離さず持っていた武器。それを目の前で持っていかれて何の反応も無い。意識が無い訳でもないのに。

 

 もしやすると。

 わたしの知らないところで。わたしの知らない通信手段を使って。ヴィっくんと仲間たちの間で何らかの合意が成立している可能性が? 

 となるとこれはプレヴィにアピールするための死んだふりでファイナルアンサー? 

 

 ……まぁいいか。

 確証はないし。仮にそうだとしてもわたしに黙っているのは理由があるはずだし。

 深追いはしない。わたしの性分じゃない。

 

「──サシナ」

 

「ん?」

 

「これを」

 

 ……なにこれ。

 手紙? 

 

「……了解」

 

 軽い。紙一枚か二枚。

 ……手紙なんてヴィっくんらしくないな。いつ書いたんだろう。さっきの茂みで? 

 とりあえず後で読めばいいか。

 次の指示が書いてあるのかも。

 

「後はよろしく……頼めるか?」

 

「まぁ。不満だけど。一人で師匠をちゃんと助けてこれる?」

 

「……約束はできない。だが、きっと助けてみせる」

 

「ならよし」

 

 ちょっと急ぎすぎな気もするけど。

 師匠を助けるのだから早いに越したことはない。わたしを連れて行かないのも判断の一環なら反論する余地はない。全てが終われば帰ってくるだろうし。分からないことはそのとき聞けばいい。

 サシナは大人しくヴィっくんに従いましょう。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「うん」

 

 わたしは一人。倒れた仲間たちの傍に残されて。

 手の中には封をされた手紙。足元には五つの命。

 

 ただ……あそこまで言ったんだから。

 やっぱり寂しいものは寂しい。うん。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 数日が経った。

 

 手紙はヴィっくんが出発してからすぐ開けた。中身は指示書だった。

 一つ。「全員分の偽装死体を作れ」

 二つ。「完成したら拘束している本人たちと入れ替えて拘束を解除しろ」

 三つ。「皆には話を通してある。プレヴィの監視がある前提で、気づかれないように」

 

 ……つまり、最初から全部仕組まれていた。

 まぁ途中からなんとなくは分かってたけど。

 

 偽装死体の作成には数時間かかった。

 人体に近い形状の造形。衣服の配置。血痕の再現。体格に合わせた重量の調整。

 茂みの中に土をくりぬいた型みたいなものがあったからそれが無ければもっと時間がかかっていたと思うけれど。どうやって準備したんだろう。あの変形する剣? 

 顔の造作は粗め。遠目に見て人間に見えれば十分。近寄って確認されたらバレるけど……プレヴィの監視がどの程度の精度かは分からない以上は最善を尽くすしかない。暗殺者としての技能をフル活用。

 手先が器用で本当に助かった。師匠に感謝。

 

 で。

 

 ──「ありがとう! これでプレヴィの目を欺けたかな?」

 

 仲間たちは当然のように生きていた。

 拘束を解いた途端に動き出す。やっぱり殺されたフリだった。

 最初からなんとなく分かってたって言ってたから。

 

 そして……。

 

 

 

 ──「一応聞いておくけれど、キミも勇者シエルだよね?」

 

 ──「えっ」

 

 みたいな流れで勇者会議なるものに招待されてしまった。

 

 

 

 ……到底信じられないことではあるが。

 勇者シエルの前世を持つ人間と言うのはこの世界に複数存在しているらしい。

 そしてあの場に集まっていたヴィっくんの仲間は全員がその「元シエル」なんだとか。

 本当だろうか。何人か嘘ついてないか? 

 

 ──「えっと……いえす。わたしにはシエルという名の前世がある」

 

 ──「だよね! 前からサシナを誘わなきゃって話があったんだけど……」

 

 どうやらこのパーティーには勇者だけが集まって極秘の情報を話し合う「勇者会議」というものが存在していたらしい。今でもう相当数をこなしているんだとか。歴史ある会議という訳だ。

 わたしが「ヴィっくんを巡る乙女連盟」だなんて想像していたのと同じ頃に向こうは「サシナはシエルの生まれ変わりではないか?」と考えていて。早めにわたしもこの会議に含めようと話し合っていたとのだという。

 

 今が丁度いいタイミングだからわたしにも打ち明けることにしたとか。

 これからわたしだけをのけ者にしてヴィクとの今後を話し合う訳にもいかないし……と。

 ……ちょっと予想外の情報過ぎて上手く飲み込めなかったが。

 流石にわたしは悪くないはずだ。だってヴィっくん言ってくれなかったもん。

 

 説明を受けた内容を簡潔にまとめると。

 ヴィっくんは味方を殺すフリをしてプレヴィを欺いた。

 プレヴィの本拠地として最も可能性が高いのはアザールという都市。

 ヴィっくんはエネの救出とプレヴィの討伐のためそちらへ向かった。

 わたし達は準備ができ次第後から追いかける形になるらしい。

 

 加えて。

 

 ──「えっ? あの剣って……テレパシーで喋れるの?」

 

 ──「うん。エペって名前だよ。意思を持ってて、念話で会話ができるんだ」

 

 ──「……あんびりーばぶる」

 

 あの人型になった剣──エペ。テレパシーで会話ができるらしい。

 戦闘中もその前後も。一切気づかなかった。

 わたしの耳は良い方だと思っていたけど……念話だから耳は関係なかった。

 そもそも送信対象に入っていなければ聞こえない。なんという。

 

 ヴィっくんの仲間達はエペのテレパシーを使ってプレヴィの監視の目をかいくぐりながら情報共有を行っていた。戦闘中の不自然な間もそれ。エスクリが武器を奪われても抵抗しなかったのも事前に合意していたから。

 全て繋がる。茂みの向こう側でごにょごにょやってたのは作戦立案だったのだ。

 

 

 

 ……つまり。

 わたし以外の全員がわたし以上に詳細な指示を受けていた。

 

 

 

 わたしだけが蚊帳の外。

 ヴィっくんはわたしには手紙という……まぁ原始的な手段でしか指示を出せなかった。

 理由は分かる。監視の可能性がある状況でわたしだけそのテレパシーを知らない状態。急に声が聞こえたときにリアクションを起こさない自信はない。あの場では黙っておいて正解だったと思う。

 後で皆からも謝罪を受けたし。わたしだって気にしてはいない。

 しかし解せない。

 

 ヴィっくんがわたしに偽装工作を任せたのは事実。

 暗殺者のわたしにしかできない役割を与えてくれた。

 そこは理解できる。理解できるけど。

 もやもやする。もやもやするのは珍しい。

 

 そんな感情を──数日前から現在に至るまで引きずってしまっている。

 

「ルメド。アザールまではどれくらいかかる?」

 

「全力なら三日ぐらいです。ヴィクトールさんはもう到着してる頃かと」

 

「エペがいないし。ボクの替えの武器も見つけないとね」

 

「プレヴィを倒した後はどうなるんだ。敵はまだいんのか?」

 

「プレヴィ相手にエペを持って立ち向かうヴィクくん……あれ、なんかデジャヴ……」

 

 ……。

 

 手紙に書いてあったのはあれだけだった。

 工作が済み次第サシナも命を懸けて俺達の戦いに加わってくれ……みたいな文言は書いてなかった。書いてたら戦いを強要することになるからわざとヴィっくんが書かなかったんだろうけど。

 

 仲間達はもう動き出している。アザールへ向かう準備を始めている。

 ヴィっくんの後を追う。追いかけて合流して一緒に戦う。そういう空気。

 そんな中で何もしていない自分がここにいる。

 勇者会議というものには入れてもらえたけど──結局馴染めないまま。結局何をすればいいかは分からない状態が続いてしまっている。

 

「……もやもやする」

 

 数日間。仲間たちと一緒に過ごして分かったことがある。

 この人達は──わたしよりもずっとヴィっくんのことを理解しているみたい。

 旅の思い出がある。共に戦った経験がある。幼馴染であるわたしよりも。

 

 それがなんだか……悔しい。

 もっと役に立ちたい。今のままじゃなんか幼馴染って感じがしない。

 

 こんな風に思うのは珍しいのかも。

 わたしは普段……こういう感情とは無縁の生き方をしてきたはず。

 なのに最近どうも調子が狂う。

 色々ありすぎて疲れてるか。ヴィっくんと師匠がいなくて不安なのかも。

 

「……まぁいいか」

 

 偵察にでも行ってこよう。

 仲間達は準備で忙しいなら……わたしはわたしにできる仕事をする。

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 偵察は得意分野だ。

 

 仲間達がアザールへ向かう準備で忙しい中。わたしは一人で村の外縁を回っている。プレヴィの斥候がまだいないとも限らないし周囲の安全確認を怠る訳にはいかない。

 暗殺者の仕事。地味で地道で誰にも見られない仕事。いつもの。

 

 ……いつものなんだけど。

 

 もやもやが……抜けない。

 

 仲間? ができた。

 流れで仲間入りも済んだ。皆もわたしを受け入れてくれた。

 なのにこのもやもや。何だろうこれ。

 わたし普段こういうのないんだけど。

 

 ヴィっくんから一番離れた場所にいるから? 

 幼馴染なのにこの面子で一番ヴィっくんを知らないから? 

 わたしが来なくてもこの仕事誰かやってたな……と思ったから? 

 

「……あー」

 

 ……分からん。

 全部当てはまる気もするし全部違う気もする。

 もやもやってこういうことか。実体験は初めて。

 

 まぁいい。もやもやしてても仕事は仕事。プロフェッショナルなので。

 頭の中の余計なものは横に置いて視界を広げなければ。

 森の音に風の音に鳥の声。いつも通り。

 異常な……。

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

 ……まさか本当に引っかかるとは。

 

 足音。

 村の外側。わたしのいる方向とは逆。北西。複数人。

 敵意なし。殺気もなし。むしろ弱々しい。足を引きずっている音が混じる。

 歩幅が不均等。体力が尽きかけている人間の歩き方。

 

 ……でもこんなところに人? 

 ユイヌは辺境。普通の旅人なら通らない。商人もいない。村人は避難済み。

 

 じゃあ何者? 

 

 とりあえず木の上に登ろう。三秒で。誰にも気づかれず。

 あー……よしよし。見つかった。

 

「う~む……」

 

 実物を見ると分かりやすい。

 数人。ボロボロ。衣服は破れて怪我をしている人もいる。まともに歩けていない。

 互いに肩を貸し合ってやっとのことで足を動かしている。

 長距離を逃げてきた人間。

 

 追手は──いない。確認した。後ろにも前にも上にも下にも。何もない。

 ただの避難民。

 

 来た方向からすると……東。

 距離を考えると数日は歩いてきている。怪我の状態を見るとそれ以上か。

 東に何があったっけ。地図を頭の中で広げて……。

 

「……アザール?」

 

 ……ちょっと待って。

 いやちょっと待って? 

 アザールってヴィっくんが向かった場所じゃない? 

 仲間達がこれから向かう場所じゃない? 

 

 ……やっば。

 もやもやどころじゃないかも。

 

 とりあえず話を聞こう。

 このまま気配を消して近づいたら多分この人達の心臓が止まる。

 恐怖で壊れかけてる顔をしてる。わたしはこういう顔知ってる。

 修行のときに師匠が見せてくれた標本の中にあった。

 

 足音をわざと立てよう。

 枝を踏んだり。草を鳴らしたり。

 暗殺者がやらないことを意識的に。

 ちょっと下手くそに歩けば……。

 

 お。

 気づいた。

 

「!? な、な……!」

 

「ストップ。敵じゃない。近くの村の者。落ち着いて」

 

 バンザイ。両手を見せて武器を持っていないことを示す。

 これも暗殺者の技術。相手を安心させる方の技術。使う機会あんまりないけど。

 

 何はともあれまずやることは保護。

 避難してるユイヌの村の皆のところへ誘導して。そこで面倒を見てもらえればきっと安心できるはず。ああその前にルメドにも見せに行かないと。

 何があったかは分からないけれど。まずは話を聞かなくちゃ。

 

「……え、あ……あ……」

 

 先頭の人がわたしを見て。それから周囲を見て。

 またわたしを見て。

 

 ……うん。これは相当来てる。

 目が合ってるのに目が合ってない。よくある反応。修行で何度も見た。

 

「た、たす……けて……」

 

「うん。助ける。何があったの。どこから来たの」

 

 ……。

 

 ……ああ。

 当たってほしくなかったんだけど。

 

 

 

「ア……アザール、から……」

 

「何か、大きなものが、来て……全部、壊された……」

 

「街が……人が……何もかも……!」




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