3週間以上彼岸を投稿していませんが、亀更新でどちらも更新していきます。
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ブルース・ヒットマン 雄英高校入学から12年前。
その日のアメリカは嵐だった。
風が吹き荒れ、叩きつけるような雨が肌を刺す。
夜空を引き裂く雷鳴が、何度も世界を揺らしていた。
そんな日だった。
ブルース「ママ?パパ?」
言葉すらも拙い声。
返事は返ってこなかった。
いつもであれば、自身を抱き上げてくれる温かい腕、安心させてくれる低い声、そして何かを作る機械の音がしていたというのに、今は何もない。
ピカっと空が光る。
床には何かの設計図、壊れたよく分からない機械、そして赤黒い嫌な色をした液体。
ブルース「ママ…?」
ブルースにはそれらが何かよく分からなかった。
ただ、胸が締め付けられ、息苦しくなって、泣き方も忘れてしまった。
雷鳴が再びブルースの身体を跳ねさせる。
ブルース「うぅっ…。」
壊れた壁から吹き付ける雨風が、ブルースの身体に突き刺さる。
するとその時。
その壊れた壁から人影が現れる。
「おっと…こりゃぁひでぇ有り様だ…。しかも生き残りがガキ1人…!?」
場違いな程に軽い声。
しかしそれは、同時に父親のような安心感をブルースに与えた。
その姿は緑のシャツ黒いズボンを身につけた、30歳後半程の男性だった。
雨に曝されながらも、壊された機械類や書類を集め、頭をポリポリと掻く。
「嵐の日に大富豪の家が壊滅…っと。しかもガキが生き残り…運が悪ぃのか良いのか分かんねぇなぁ。」
彼はブルースに近寄ると、視線を合わせるようにしゃがみ込む。
「よお、坊主。初めまして…つっても、初対面としては最悪か。」
ブルースは彼に目を合わせると、不思議と父親と姿を重ねる。
ブルース「パパ…?」
男はその言葉を聞くと、肩を竦めた。
「申し訳ねぇんだが、俺はお前の親父じゃねぇぜ。…にしても困ったなぁ…。俺はガキを見捨てるほど人間捨てきれてねぇしなぁ…。」
そう言いながら、彼は自身の緑色のシャツを脱ぐと、ブルースの肩にかける。
「…うっし、暗殺辞めて、こいつを保護しよう!」
男はブルースを軽々抱き上げた。
「坊主、名前は?」
ブルース「ブルース…ブルース・ヒットマン…。」
「そうかそうか!ブルースか!バットマンと同じ名前か…かっけぇじゃねぇか!」
男は笑いながらそう言うと、外に向けて歩き出した。
「俺はレディバグだ!つっても、組織に登録したコードネームでしかねえけどな。本当の名前はとうの昔に捨てちまった。」
ブルース「パパ…。」
レディバグ「坊主の親父とお袋は残念だが…お前は俺が保護してやる。金には困らねぇが…こっから人生ハードモードだぞぉー!」
ブルース「…?」
ブルースは不安だった。
言っていることは難しくてよく分からないが、本当にこの人は大丈夫なのか。
しかし、この人について行けば1人ではなくなる。
幼いながらも、彼はそう感じていた。
時は流れ、1年後。
あの事件が起きたブルースの実家から、レディバグは自身の所属する組織の本部へ戻り、退職届を提出。
彼らの元には何度も刺客が送られたが、その全てをレディバグは撃退。
アパートを何度も爆破されてはいるが、今の今までブルースに被害が及んだことは無い。
そして今日は、レディバグに暇ができたので、ブルースの個性診断を行うことになった。
レディバグ「なぁ、どんな“個性”があるんだろうな!!」
ブルース「ね!楽しみだよ!」
ブルースとレディバグは、待合室でワクワクしていた。
その姿は仲睦まじい親子そのもの。
そして、“個性”とは。
ヒロアカ世界における、世界人口の八割が持つ特殊能力の総称である。
ブルース「そういえば、パパの“個性”は何なの?今まで使っているところ、見たことないんだけど…。」
ブルースは疑問をレディバグに投げかける。
するとレディバグは、一瞬だけ間を置き、からっと笑った。
レディバグ「あー、俺か?俺は“無個性”だ!珍しいだろ?」
ブルースは目をキョトンと輝かせた。
レディバグ「みんなカッケェ個性持ってるけどな、俺は無個性を誇りに思ってるぜ。だってな…あのバットマン、そしてアイアンマンと同じ能力なんだからな!!」
ブルース「えー!!バットマンとアイアンマンと同じかぁ…!かっこいいなぁ…!僕も無個性がいいな!」
レディバグ「そうかそうか!嬉しいもんだなぁ…バットマンに憧れてくれるなんてよぉ…。」
その時、診察室の扉が開く。
「ブルース・ヒットマンくん。どうぞー。」
二人は並んで立ち上がり、診察室へ入っていく。
白い部屋。
タイピングする音
どこかひんやりとした空気に、薬の匂い。
医師は淡々と説明を始め、個性因子の検査が始められた。
ブルースは少し緊張しながらも、レディバグの方をちらっと見る。
レディバグは親指を立てて、にっと笑った。
しばらくして。
医師はモニターから目を離し、一度だけ小さく息を吐いた。
「……検査結果が出ました。」
ブルースは、ぱっと顔を輝かせる。
ブルース「どんな個性ですか!?」
医師は、一瞬だけ言葉を選ぶように間を置き、静かに告げた。
「ブルース・ヒットマンくんは、現在確認できる“個性因子”を持っていません。」
室内が、静まり返る。
ブルース「え?」
医師「いわゆる、“無個性”です。」
ブルースは、しばらく意味が分からず、
きょとんとしたまま瞬きをした。
そして、ゆっくりと笑った。
ブルース「……じゃあ!パパと…バットマンと、アイアンマンと一緒だね!!」
それはそれは無邪気な声だった。
迷いも、不安もない、純粋な笑顔。
しかし、レディバグは一瞬だけ言葉を失った。
レディバグ「(ああ…この世界でよりによって無個性…ねぇ…。俺と同じ…か。)」
ブルース「ねえ、パパ!僕もパパみたいに沢山勉強して、強くなれば、ヒーローになれるよね!」
沈黙が流れる。
その沈黙は子供には理解できないが、大人にとっては何よりも重いものだった。
レディバグ「ああ…ああ!勿論だ!!俺みたいに…いや、バットマン、そしてアイアンマン見たいに!頭、身体、そして道具を極めて!!」
彼はそう言うと、ブルースの頭に手を置く。
レディバグ「そいつら全部!俺らの武器にしちまえば、お前もヒーローになれる!!」
ブルース「ほんと!!?」
レディバグのその言葉に、ブルースは目を輝かせる。
レディバグ「本当だ。パパが保証する!」
ブルース「じゃあ!僕、大きくなったらヒーローになる!スターアンドストライプを、バッドマンを、アイアンマンを超えるヒーローになる!」
レディバグ「いいじゃねぇか!!」
レディバグはそう言うと、満面の笑みを浮かべる。
レディバグ「じゃあ、お前に俺が培った技術、そしてお前の本当の親が遺した知識を叩き込んでやる!」
ブルース「やったー!」
レディバグ「よし、明日にでも日本に行こう!ヒーローになるんだったらあそこの学校に行くのが1番だ!!」
ブルース「いえーい!…って、え?」
レディバグ「うし、帰ったらチケット買うぞ!」
ブルース「えー!!?!?」
こうして、ブルースはバットマンに、義父に憧れ、ヒーローを目指すこととなった。
これは、そんなブルースが、世界一ヒーローらしくないヒーローになる物語だ。
次回は入試