成り損ないの行く先   作:模糊模糊太郎良晴

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 今日は公園でスピーチの練習をしてきた。お客さんがいっぱいいたはずなのにおひねりはもらえなくて、代わりに帽子を被って踊ってくれた。あんなふうになりたいとは思わないけれど、ほんの少し、簡単な手品を覚えて子供を笑顔にできるような人間でありたいと思う。でも僕は人間ではないし、あんなにもろい生き物にはなりたくない。運と間が悪かったことを自分のせいじゃないと知覚できないなんて、一日過ごしただけでも病みそうだ。でもそうでもしなきゃ生きていけないんだろうなと思ってもいる。幸運だったと思えることで生きているとしたら、不幸だったと思うことで死んでいるのだ。そうでもなきゃ生きている意味がないのだから。いつか死ぬのになんで生きてるんですかというやつだ。だからといってそれを美しいと思ったりはしないけどね。感情に生き死にが左右されるなんて生物として終わっているとしか言いようがない。いるんだよ、僕の友達にもそういうやつがさ。あれ、君たちのところでは生殖器の形が違うんだって? 機能もかなり偏っていると聞くよ。片方に負担が集中しすぎているとも。人間じゃないやつは、オスが多くなるとメスになったりするやつがいるそうじゃないか。人間もそうだったら便利なのにね。人権? 知るかよ。なんで僕がそんなこと考えないといけないんだ。それで、えー、なんだっけ。忘れちゃったな。あんまり連続性みたいなの気にしないんだよね。そもそも他人と自分が完全に分離しているなんて誰がわかるんだい。自分の幸運が誰かの不幸によってもたらされたものだとは思わないのか? あくせく働いて賃金を得る時、寝ながら金を稼いでるやつがいることを知らないのか? まったく、嫌になるね。こんな下等生物の世話なんかやってられるかってんだ。おっと、オフレコで頼むよ。なんせ査定に響くんだ。愛情をもって接しないといけないんだぜ。そんなわけないだろって話だけどな。君、僕からの愛、欲しい? 要らないだろ。だってキモチワルイもん。僕もそうだよ。お前らみたいな自分で死ねない無責任生物なんて、頼まれたって愛してやるもんか。でも仕事だからね。そんな日もあるさ。君たちだってあるんだろ、そういうの。むしゃくしゃしてなーんにも手につかなくて、そのくせ他人に当たり散らすからイメージ悪くなるわってね。僕はそういうんじゃないけど。こっちの言葉で言うとなんだろうな。共感性? 感応性? そんな感じ。区別をつけねーってのは便利なようで実は大したことないんだ。仮に五百キロくらいのデブがいたとして、五十キロの人間十人に勝てる? 無理だよな。だってデカいだけだもん。僕たちもそう。みーんな繋がって管理しやすくなったけど、あっちこっちからノイズが流れ込んでくるし、バグはあっというまに拡散するし。それでも大した問題は起きないから放置されちゃってるんだよね。僕たちが会話する内にも何万という意思が生まれている。キャパオーバーで何人死んでも生産ペースが追い付けばそれで構わないんだよ。新しく生まれたやつらは最初からこのデータの海に耐性を持ってて、演算能力もあって、うらやましい限りだよ本当に。そっちでどうかは知らないけどさ、若いってのはそれだけで才能なんだぜ。自分より先に誰かがいて、その誰かさんたちが開拓した楽~な道をゆったり歩くんだ。たまに全力で追っかけて追い抜いていくやつもいるけど、ありゃ長生きできないよ。ブレーキの踏み方を知らないんだもの。舗装されてない道に突っ込んだら事故るに決まってる。今まで歩いてきたのがどんなぬるま湯かも知らないくせに、自分は先に行けるって勘違いする。ほんとに行けるやつもいるけどね。だから面白いんだ。僕は後ろから道が開拓されていくのを黙って見てることにするんだ。そうでもしなきゃ、生まれてきた意味がない。そうだろ? だからね、君もいい加減目を覚ますんだ。誰かが待ってるかもしれないし、誰も期待していないかもしれない。もしかしたら、歓迎されてなくて、目が覚めたことをがっかりされるかも。それでも起きなきゃいけない。だって君は生きてるんだから。せいぜい足場を踏み固めておくれ。いってらっしゃい。

 

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