『魔宝少女マジカルファルス!』ノベライズ版   作:maTSue

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第1話『マジカルファルス、爆誕! 23歳、夢女子の受難』

 

【挿絵表示】

 

 RANこと東室蘭(ひがしむろ・らん)、23歳。彼女の至福の時間は、いつも自室のベッドの上、タブレットの中にあった。今日もまた、新作のR-18二次創作百合作品に没頭している。画面の中では、彼女の“推し”である二人の女性キャラクターが、互いへの熱烈な想いを滾らせ、やがて禁断の領域へと足を踏み入れようとしていた。

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「はぁ〜、この二人の関係性、最高すぎる……! あとちょっとだけ、こう、えっちな展開があったら完璧なのに!」

 

 RANは思わず声に出して呟き、高鳴る胸を抑えきれない。脳内では、作品の世界観を拡張した、さらに過激で濃厚な百合シチュエーションが繰り広げられていた。指先がタブレットのガラスを熱っぽくなぞる。このまま夜の闇に溶けて、彼女たちの熱情の中に溺れてしまいたい。

 

 その時だった。

 

 視界の隅に、ゆらりと、光の塊が浮かび上がった。最初は目の錯覚かと思ったが、それは次第に明確な形を帯びていく。ふわふわと綿毛のように発光する小さな生命体。そして、その愛らしい見た目からは想像もできないほど、はっきりと、澄んだ声が響いた。

 

「やあ、ボクと契約して、魔宝少女になってよ!」

 

 RANは混乱した。今まで見たこともない存在。だが、確かに自分の目には見えている。頭の中はパニックなのに、オタク特有の好奇心がムクムクと顔を出す。

 

「ボクは精霊プリアポス!」

 

「精霊って、マジで存在すんの!?」

 

「そうさ、魔宝世界からキミをスカウトしに来たんだ!」

 

 プリアポスと名乗る精霊は、RANの目の前でくるくると宙を舞う。

 

「は? 誰、あんた……って、飛んでる……?」

 

 RANは自分がおかしな存在を見ていることに驚きつつ、オタク特有の好奇心が勝り問い返した。

 

「なんで私が魔法少女に? 私、ただの腐女子オタクなんですけど」

 

 眉をひそめるRANに、プリアポスはきっぱりと言い放った。

 

「キミのドリームエネルギーは計り知れないほど高いんだ! 特に想像力が豊かで、なおかつ大勢との交流が少なく、魂の純度が高い人間に発現しやすいんだよ」

 

「……夢女子」

 

 RANは思わず呟いた。プリアポスはニコニコと頷く。

 

「そう! それは魔法使いの素質でもあるんだ!」

 

「まさか……童貞で30歳を迎えると魔法使いになれるっていうあのジョークのこと!?」

 

 RANが口にすると、プリアポスは愉快そうに笑った。

 

「ははは! まさかキミがそれを知っているとはね! だからこそ、キミは素質があるんだよ!」

 

 冗談めかした会話の中に、真剣な眼差しを混ぜ、プリアポスは本題を切り出した。

 

「実はね、魔宝世界から『淫獣』たちが現実世界に漏れ出して、悪さをしているんだ。そいつらを退治してほしいんだよ」

 

 淫獣。その単語にRANは一瞬引いた。しかしプリアポスの説明を聞くうちに、彼女のオタク心が疼き出す。

 

「淫獣はね、大きさは人間程度。子供から大人くらいの大きさに幅があるけど、ひたすらエロ行為を働く生物さ。自発的に人を殺傷しようとはしないけど、痴漢や性的接触は躊躇せず、とにかく迷惑な存在でね。厄介なことに、通常の手段では傷つけることができないんだ」

 

 RANの脳内では既に「淫獣×魔法少女」という新たな妄想シチュエーションが構築され始め、口元が緩むのを止められない。

 

 プリアポスはさらに核心的な能力を説明し始める。

 

「魔宝少女マジカルファルスの必殺技は『エクスタシースプラッシュ』! これはね、キミのマジカルスティックから放つエネルギーで、存在そのものを書き換えることができるんだ。生き物に使うには、エネルギーを体内に入れないといけないから、注意して使ってね。あと、『マジカルフェロモン』で男女問わず周囲の人間を興奮させることもできるよ」

 

「エクスタシースプラッシュは、厄介な淫獣を完全に退治するのに最適だ。淫獣を別の存在、例えばただの少女や、無害な動物、あるいは可愛いぬいぐるみにでも変身させられるからね」

 

 自身の想像力を遥かに超える能力の説明に、RANは戸惑う。しかし、同時に抑えきれない興奮が込み上げてきた。「これ、R-18二次創作のネタになるんじゃ……?」という邪な動機が、契約への大きな一押しとなった。

 

 プリアポスはRANの顔を覗き込み、ニヤリと笑う。

 

「キミの情熱、その魔宝でぶちまけて! 魔宝の力は愛と欲の結晶だよ! 遠慮しないで使ってみて!」

 

 半信半疑ながらも、RANは契約を決意した。オタクとしての好奇心と、少しばかりの悪乗りが彼女の背中を押した。

 

「魔宝変身!」

 

 プリアポスの言葉に従い、RANは叫んだ。瞬間、眩い光に包み込まれる。

 

 光が収まった時、そこに立っていたのは、もういつものRANではなかった。素顔はわからないほどの美少女メイクが施され、フリフリの魔法少女衣装をまとった、まさに“理想”の姿。

 

「優勝! この顔なら許せる! コスプレと思えばギリOK!」

 

 テンションが跳ね上がる。完璧だ。これでいつでもコスプレイベントに行ける。だが、ある一点だけが気になった。

 

「おいマジカルスティックどこ行った!」

 

 さっきの説明にも出ていた、魔法少女の定番であるはずの杖が見当たらない。 RANは自分の身体をまさぐった。その時、股間にこれまで感じたことのない、強烈な違和感を覚えた。

 

「……ってナニコレッ!?」

 

 RANの絶叫が部屋に響き渡る。プリアポスはRANの驚きを心底面白がるかのように、ドヤ顔で言い放った。

 

「そう! よくぞそれに気づいた! それこそがマジカルスティックだよ!」

 

 RANはガクッと膝から崩れ落ちそうになる。「…………殴りたい宇宙。蹴りたい背中」心の声が、虚しく響いた。自分の新たな肉体と、説明を受けたばかりの想像を絶する能力。混乱しつつも、どこかワクワクしている自分に気づく。

 

「現実改変……ってことは、私の妄想が現実になるってこと!? これ、ヤバいやつじゃん……!」

 

 今後の展開への期待と不安が交錯する中、その瞬間、窓の外から女性の悲鳴が上がる。

 

 プリアポス「近くで淫獣の反応だ! いこう、魔宝少女マジカルファルス!」

 

 RANの奇妙で刺激的な魔宝少女ライフが、今、始まった。

 

【続く】

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