『魔宝少女マジカルファルス!』ノベライズ版 作:maTSue
RANこと
「まさか、本当に私の妄想が現実になんて……いやいや、気のせい、気のせい。たまたまだって!」
RANは自分に言い聞かせるが、内心の興奮は収まらない。駅前で起きた「集団ヒステリーからの女性同士の急接近」というニュースを思い出し、やはり自分の能力の影響だったのかと確信めいたものを感じ始めていた。
彼女が今、最も熱を上げているのは、職場の同僚であるクールな先輩・
「一条さんの手が、二葉ちゃんの指先に触れて……そこから甘い電流が走って……ッ!」
その時、プリアポスがRANの部屋に現れた。
「魔宝少女! 近くに反応があるぞ! 早くいかないと!」
「え!? こんな時に!?」
RANは戸惑いつつも、外の騒がしさに気づく。窓から覗くと、近所の公園で人間サイズの金属色の淫獣が、カップルに痴漢行為を働いているのが見えた。
「キッモ! またコイツか!」
RANが思わず吐き捨てると、プリアポスが訂正するように言った。
「いや、あれは機械淫獣だ。淫獣の仲間だけど、エクスタシースプラッシュで遠くからでも倒せるぞ!」
「……って、え、あのカップル、もしかして一条さんと二葉ちゃん!? なんで休日にこんなとこで待ち合わせしてんだよ!?」
偶然にも、彼女の推しカプが淫獣の標的になっていることにRANは衝撃を受ける。妄想と現実が交錯し、混乱と興奮が入り混じる。
「推しカプがヤバい! 変身する!」
RANは急いで変身し、魔宝少女マジカルファルスとなる。
公園へ急行すると、背の高い機械淫獣は一条さんと二葉ちゃんにまとわりつき、二人は怯えながらも助けを呼ぼうとし、互いに励まし合っていた。
「淫獣め! 推しカプを汚すなーっ!」
怒りがRANのドリームエネルギーを高め、股間のマジカルスティックがジワリと屹立する。
RANは前回学んだ通り、まず「マジカルフェロモン」 を放った。甘く淫靡なオーラが公園中に広がり、人々がみるみる興奮状態に陥っていく。阿鼻叫喚の欲望が渦巻く中、一条さんと二葉ちゃんも、顔を赤らめ、体が熱くなるのを感じていた。RANのマジカルスティックも、それに呼応するように眩く光り始める。
「よし、エネルギーは溜まった! 行くぞ! マジカルスティック、セット!」
RANはマジカルスティックを機械淫獣に向ける。しかし、一条さんと二葉ちゃんがすぐ隣にいる。退治の焦りと、二人の百合妄想がRANの脳内で激しくせめぎ合う。
「女の子にちょっとぐらいかかっても大丈夫! いけ、マジカルファルス!」
プリアポスがRANを急かす。一条さんと二葉ちゃんが、恐怖と興奮の中で互いの名を呼んだ。
その時、RANの意識がわずかに揺らぐ。彼女の脳裏に、今朝まで書いていた二次創作小説のクライマックスの情景が鮮明に浮かび上がる。二人が結ばれる、熱烈な、あのシーン。RANの妄想がエネルギーをオーバーフローさせ、マジカルファルスの全身が眩い光に包まれる。
「エクスタシースプラッシュ!」
光の奔流は、以前のものが強めの懐中電灯だとしたら、今放たれたのは夜空を照らすスポットライトの規模だった。それは機械淫獣だけでなく、そのすぐ隣にいた一条さんと二葉ちゃんをも、完全に光の中に包み込んだ。
光が収まると、機械淫獣のいた場所には、小さく可愛らしい、だがどこか痴女めいた表情のミニチュア人形が落ちていた。
そして、その傍らで、一条さんと二葉ちゃんの様子がおかしい。二人はフェロモンの影響だけでなく、エクスタシースプラッシュの「存在を書き換える」力が作用したかのように、お互いを熱っぽく見つめ合っている。
二葉ちゃんが一条さんに抱きつき、一条さんもそれを受け入れ、まるで長年の恋人同士のように、そのまま唇を重ねてしまった。さらに、二葉ちゃんの股間が膨らみ、一条さんのスカートの中に手を伸ばす。
「え……えええええええええ!? うそ、私の妄想通りに……!? 推しカプが目の前で……ていうか、二葉ちゃんふたなり化しとるやないかーい!!!」
自身の能力の暴走による、予期せぬ百合の成就と、あまりにも過激な展開に、RANは絶叫し、その場に崩れ落ちた。
「まあ、予想外にぶっかけちゃったけど、若いうちにはあることだよ。機械淫獣は退治できたし、結果オーライ! 魔宝少女!」
プリアポスが呑気な声を上げる。
「結果オーライなわけあるかァァァァ!!」
公園はフェロモンと、推しカプの濃厚な百合現場というカオスな状況に。RANは急いで変身を解除し、元の姿に戻る。一条さんと二葉ちゃんは、記憶が曖昧になっているのか、その後何事もなかったかのように、だが以前より一層親密になった様子で公園を去っていく。
RANは家に帰り、ベッドに突っ伏す。「私の妄想が、本当に現実になってしまう……。しかも、制御できないなんて……!」
しかし、タブレットを開き、先ほどまでの「推しカプ」の二次創作小説を見ると、その妄想が現実になったことに、わずかな高揚感と、背徳的な喜びを感じている自分に気づく。
RAN(これは……ヤバい。でも、もっと見たい……。もっと、私の好きな世界を……)
プリアポスはニヤリと笑った。
「さあ、魔宝少女。キミの『愛と欲の結晶』は、まだまだこんなもんじゃないだろう?」
RANの新たな課題は、自身の暴走する妄想と、その力をどう制御するか、あるいはどう利用するかへと発展していくのだった。
【続く】