『魔宝少女マジカルファルス!』ノベライズ版 作:maTSue
RANこと
「この力、もしかして私の都合の良いように何でもできちゃうんじゃ……ダメだ、そんなこと考えちゃダメだ!」
RANは頭を振って自分に言い聞かせるが、心の奥底で膨らむ甘美な誘惑に葛藤していた。
そんな中、RANは街中で偶然、大学時代の友人である
「らんちゃーん! 久しぶり!」
「美咲……!」
互いの名を呼び、カフェに入る二人。近況を語り合う中で、美咲がやや頬を赤らめながら「実は今、すごく好きな人がいるんだ」と打ち明けた。RANの心臓が跳ねたが、美咲の口から出たのは、RANの知らない別の女性の名前だった。美咲はその女性に夢中で、どうすれば彼女に気持ちが伝わるか、RANに真剣な眼差しで相談を持ちかける。
RANは友人として「応援するよ」と答えた。しかし、その言葉とは裏腹に、内心は激しく動揺する。
(エクスタシースプラッシュを使えば……! 美咲の気持ちを、私に向けることができる!? 淫獣を少女にするみたいに、美咲の『好き』を私に向けることができる……!?)
魔宝少女の力による現実改変の誘惑が、RANの心の中で大きく膨らむ。プリアポスがRANの肩に現れ、その心の揺れを面白がるかのようにニヤニヤしていた。
その時、美咲のスマホが鳴った。相手は彼女が想いを寄せている女性からのようだ。
「あ、彼女からだ! あの、もしよかったら、今からここに呼んでもいいかな? 彼女に、大学での一番の友だちを紹介したくて!」
RANは「うん」と頷きながらも、内心は複雑な感情で渦巻いていた。
ふたりの飲み物が空になる頃、カフェの入口にひとりの女性が姿を見せる。美咲は嬉しそうに手を振って席を立った。
ひとりテーブルに残ったRANが葛藤する中、カフェの外に淫獣の反応が出たことをプリアポスが伝える。今回は小型で素早いタイプ。その外見はタコの足のような複数の触手を持つ、おぞましい姿をしていた。
淫獣はカフェに侵入し、真っ先に美咲、そして美咲の想い人の女性に執拗にまとわりつき始めた。複数の触手が二人の体を絡め取り、執拗にもてあそぶ。
「美咲に触るな!」
RANは友人を守るために迷わず変身し、魔宝少女マジカルファルスとなる。
RANはマジカルフェロモンを放ち、淫獣と周囲の人間を興奮させ、動きを鈍らせる。RAN自身も、美咲への想いと、目の前の淫獣への怒りでドリームエネルギーが高まり、マジカルスティックが屹立し、強く光り輝いた。
淫獣を追い詰め、エクスタシースプラッシュを放とうとするRAN。その脳裏には、「美咲を自分に振り向かせる」という妄想が強く浮かび上がる。
「さあ、キミの望む通りに……!」
プリアポスがRANを唆す。RANは一瞬躊躇した。もし、この力で美咲の心を書き換えたとして、それは本当に「美咲の想い」なのだろうか? 友人として、それは正しいことなのか?
葛藤の末、RANは「美咲の恋は、美咲自身のものだ!」と叫び、その妄想を振り切った。彼女は淫獣と美咲たちの間に入り、美咲たちに背を向けてエクスタシースプラッシュを放つ。万一にも美咲たちを巻き込まないように、慎重に、淫獣へと集中させた。
淫獣は可憐な、自然には発生しない鮮やかな髪色(ピンクや青、紫、緑など)の少女に変身し、混乱の中で無力化された。美咲と彼女の想い人も無事だった(フェロモンの影響で若干興奮気味だが)。
戦闘直後、RANが自身のマジカルスティックに意識を向けると、そこには明らかに以前とは違う、微かな輝きと、より洗練された、まるで新しい素材でできたかのような質感を感じる。
「え……? これって……」
プリアポスがRANの顔を覗き込み、告げた。
「一皮むけたね、RAN。これこそがキミの新しい力“ヘルマプロディトス”だ!」
「へ……?」
当惑の表情を隠せないRAN。その時、美咲の声がRANの名を呼んだ。
「らんちゃん!」
美咲は周囲を見回し、RANを探している。RANは慌ててその場を離れ、身を隠して変身解除してから現場に戻った。
「さっきまでそこにいた魔法少女に助けてもらったの! かわいくて、きれいで、すごく強かった!」
美咲は興奮さめやらない様子でRANに報告する。RANは複雑な表情で「とにかく、無事でよかった」とだけ返した。
美咲はその後、笑顔で自分の想い人と去っていく。RANはそれを見送り、友人としての選択をしたことに、ほんの少しの清々しさを感じた。
「ふむ、なかなか良い選択だったんじゃないか、魔宝少女。キミは、また一つ大きな壁を乗り越えたようだね」
プリアポスがRANに語りかける。
「うるさい……。これでよかったんだ……」
RANがそう呟くと、プリアポスがニヤリと笑った。
「これで、次のステージの始まりだ。ようこそ、魔宝少女!」
RANは、自身のマジカルスティックが新たな力を得たことを自覚し、その変化に驚きと期待、そしてさらなる不安を感じるのだった。
【続く】