『魔宝少女マジカルファルス!』ノベライズ版   作:maTSue

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第8話『プリアポスが明かす、魔宝の真実と変態の覚醒』

シーン1:絶望と再会

 

 冷たいタイルの床に座り込み、RANは顔を両手で覆ったまま震えていた。公衆トイレの個室は、彼女の絶望を吸い込むように薄暗い。昨夜からの出来事が、何度も頭の中でフラッシュバックする。股間に触れるたびに、あの奇妙な熱と、得体のしれない塊の感触が蘇った。

 

「おちんちんじゃん!」

 

 自分の叫び声が耳の奥でこだまする。あれは幻聴なんかじゃなかった。現に今も、スウェット越しに熱い塊がそこに存在している。

 

「なんで私がこんな目に……」

 

 呻くような声が漏れる。こんな、こんなバカげたことが、よりにもよって自分に起きるなんて。百合の世界に浸ってさえいれば、こんなことには……。

 

 その時、個室のドアが控えめにノックされた。

 

「RAN! 無事だったか!」

 

 聞き慣れたプリアポスの声に、RANははっと顔を上げた。安堵と同時に、こんな醜態を彼に見られることへの猛烈な羞恥が込み上げる。

 

「プリアポス……なんで……なんで私、こんなになっちゃったの……」

 

 RANは半泣きになりながら、個室のドアを少しだけ開けた。プリアポスは、いつもの飄々とした顔で、それでもRANの無事を確かめるように目を細めていた。

 

 

シーン2:プリアポスからの聞き出しと「真の魔宝少女」への可能性

 

 プリアポスはRANを、人通りの少ない公園のベンチへと連れて行った。RANは相変わらず股間を押さえたまま、俯いている。

 

「何があった? 私が家を離れてから、何者かに襲われたのか?」

 

 プリアポスの問いに、RANは震えながら、昨夜の出来事を語り始めた。

 

「……あのね、プリアポス……ひどいよ……予約特典、今日までだったんだよ!? だから、ほんのちょっとだけ、その、家を出て……」

 

 プリアポスは額に手を当て、深い溜め息をついた。

 

「だから言っただろう、戻るまで家にいろと……」

 

「ごめんなさい……でも、そしたら、急にあの子が! 前のマジカルファルスって言ってた、マジカルバロックって言うんだって! 体が、こんな……」

 

 RANは身体の異変への恐怖と、マジカルバロックへの疑問をぶつける。

 

「あいつ、私のこと知ってたの! なんで、なんで私を襲ったの!?」

 

 プリアポスはRANの話を聞きながら、何かを深く考え込むような表情を見せた。

 

「……前のマジカルファルス、か。つまり、千代はキミの先代だ。彼女がキミを襲ったのは、キミが“真の魔宝少女” へと近づいていたからだろうな」

 

 プリアポスの言葉に、RANは顔を上げた。真の魔宝少女? そんなものが存在するのか?

 

「魔宝少女マジカルポール、彼女と連絡が取れなかったのは、彼女も千代の襲撃を受け、活動できない状態になったからだ。キミは彼女以上の成果を出していた。だからこそ狙われたのだろう」

 

 プリアポスは淡々と語る。

 

「千代に指示を出したのは、恐らく、魔宝少女の覚醒を阻もうとする者たちだ。キミは、その者たちにとって目障りな存在になったのだよ」

 

 物語の背後に、まだ見ぬ敵の存在が示唆され、RANの胸に新たな不安がよぎった。

 

 

シーン3:プリアポスからの「魔宝の真実」開示

 

 その後のRANとプリアポスの会話は、何度も淫獣に妨害されながら続いた。

 

「ちっ、鬱陶しい」

 

 舌打ちをするプリアポスの指示で、RANは呻きながら淫獣をいなす。これまでのRANであれば一瞬で終わるような戦いだったが、ふたなり化により力が限定された今のRANは、珍しくプリアポスの協力を得てなお苦戦を強いられた。淫獣はRANの股間の熱に引かれているかのように、執拗に彼女を狙ってくる。

 

「……この程度で手こずるようでは、先が思いやられるね」

 

 プリアポスはそう言いながらも、RANの様子を観察していた。RANが必要な知識を体感したと判断したのか、プリアポスはついにその秘密を明かす。

 

「良いか、RAN。今から話すことは、“真の魔宝少女” となる者が必ず知るべき、そして向き合うべき真実だ。[[rb:妄想 > おもい]]と[[rb:恥辱 > ちから]]が備わった時、世界を変える強いエネルギーが産まれる」

 

 プリアポスはRANに、千代がなぜ自分を襲ったのかという根本的な疑問を解消するため、そしてRANの現状を理解させるため、「魔宝の真実」 を語り始めた。

 

「性欲を持ち、なおかつ男性器からの快楽で性欲を発散せず、鬱屈した状態で年齢を重ねた男性が」

 

「……魔法使いになる?」

 

 RANの問いを、プリアポスは否定する。

 

「正確には、人間ではなくなり、現実を改変する存在そのものになる、つまり[[rb:魔宝 > まほう]] さ」

 

 プリアポスは、RANが手にしてきたマジカルスティック──通称ヘルマプロディトスが、まさにそのような”男性の器” であること、そしてRANがそのドリームエネルギーを用いて淫獣を倒してきたことを告げた。

 

 プリアポスの言葉に合わせて、RANの脳裏では、これまで彼女が経験した淫獣退治のエピソードが一つずつ再生されていく。最初に会ったあの淫獣、推しカップルに勢い余ってぶっかけた時、乙女寮で大勢を相手にした時、美咲の前でぶちこんだ時、そして海での乱交騒ぎ……。回想の中のRANは、いつも通りマジカルスティックを構えていたはずなのに、なぜか今、そこに映るのは、肉の男性器をあらわにして淫獣を無力化する自分の姿だった。

 

「ひっ……」

 

 羞恥に顔色を変え、RANは言葉もないまま身を震わせる。

 

 

シーン4:変態を否定した千代と、変態の定義

 

 プリアポスはRANの反応を一切否定しなかった。いつものように興味深くRANを見つめているようだった。

 

「つまり、今まで行ってきた淫獣退治は、キミが“男性の器” を使って、彼らを無力化、つまり少女化、時にふたなり化させてきた。キミが資料でよく見ている行為だ。千代はそれを変態と呼んで嫌っていた」

 

 RANは、これまで正義だと思って行ってきたのが、「変態」 の所業であったという事実に、吐き気を催すほどの羞恥と自己嫌悪に襲われた。顔を下に向けたまま、彼女は身を震わせる。

 

 プリアポスは説明を続けようとする。

 

「千代の言葉は表層的には正しく、本質的には間違っている。なぜなら真の変態は、この後に起きるからだ」

 

「この世界でも、蛹が蝶になることをそう呼ぶのだろう? 魔宝少女が真の魔宝少女になることもまた、そう呼ばれるのだ。“[[rb:変態 > Metamorphose]]” と」

 

 プリアポスは、そんなRANの様子を見て、千代の離反について語り始めた。

 

「キミと同じように、先代の魔宝少女マジカルファルスであった美作千代。彼女は、この先の真実を知った時、それを拒絶した」

 

 RANの脳裏に、怒りをあらわにしてプリアポスを睨みつける千代の姿が鮮明に浮かぶ。

 

「彼女は怒りと共に私の元を去った。しかし、魔宝少女という宿命からは逃れられず、生きるためにマジカルスティックを再び握るようになったのだろうね」

 

 プリアポスの声には、どこか安堵の響きがあった。

 

「彼女も高いドリームエネルギーを秘めていたが、彼女の視線は男性同士に向けられていた。よく『ノマカプは邪魔、ふたなりは邪道!』と口にしていたよ」

 

 RANは顔を上げ、唇を噛み締める。

 

「あいつ、自分だって腐女子だったんじゃん……」

 

 

シーン5:恥辱からの覚醒

 

 RANは、自己嫌悪と千代への複雑な感情で、精神的な限界を迎えていた。全てを投げ出したい衝動に駆られる。

 

 プリアポスはRANをじっと見つめる。

 

 沈黙の後、RANは掠れた声で口を開いた。

 

「教えてよプリアポス、アイツに何を教えたの? この先にどんな地雷があるの?」

 

 プリアポスはゆっくりと問い返す。

 

「……キミは、自分のペニスで淫獣を倒していたと聞いた時に、何を感じた?」

 

 RANの脳裏に再度、淫獣退治の光景が喚起される。今度は、ふたなり化した彼女の身体で、過去の全てが再演されるかのようだ。

 

 RANの顔は一瞬にして激情の赤に染まり、彼女はプリアポスを睨みつけて、叫んだ。

 

「……興奮したわよ!」

 

 スウェットの股間を両手で抑えたまま、RANの言葉は止まらない。

 

「イライラして! モヤモヤして! もう最悪! でもガチガチの! バキバキで! 限界よ! 心のおちんちんがカチンコチンだよ! 悪い!?」

 

 プリアポスは、RANの言葉を一切否定しなかった。いつものように興味深げにRANを見つめているようだった。

 

「魔宝少女が、マジカルスティックを自分のペニスであると認識し、その時の感情が、衝動が、内なる妄想と結びついた時、[[rb:極限 > エクストリーム]]ドリームエネルギーが生まれる」

 

 プリアポスは続ける。

 

「どんなにドリームエネルギーを高めようと、身体能力を鍛えようとも、通常の手段ではたどり着けない境地。それが“[[rb:変態 > Metamorphose]]” だ」

 

 プリアポスはRANの目を見据える。

 

「キミは、今その身に感じているすべてを力に変えることができる。キミ自身の妄想と、この身体に起きた変化を統合するのだ」

 

 RANは、頭の中で、自分の「百合メインで雑食」と称していたが実際は女体化フィルターをかけていた妄想と、今股間で熱く昂っている「おちんちん」が重なり合う感覚を覚えた。それは、絶望的な羞恥と、これまで経験したことのないほどのドリームエネルギーの奔流だった。

 

 RANは激しい葛藤の末、自らの羞恥と向き合い、それを肯定するかのように、あるいは新たな妄想の形として受け入れるかのように、深く息を吸い込む。

 

 RANの身体から、眩い光が放たれる。ふたなり化が解除され、彼女の股間が元の女性に戻った。そして、[[rb:マジカルスティック > ヘルマプロディトス]] は、これまで以上に輝きを増した姿で彼女の手の中に現れた。

 

 RANは、自身の身体が完全に元に戻ったことを確認し、新たな力に満ちた表情を浮かべる。

 

「マジカルバロック……あんたの否定する“邪道” 、私がとことん見せつけてやる……!」

 

 RANは千代への反撃を誓い、覚悟の表情で空を見上げた。

 

【続く】




Pixiv公開分はここまでになります。

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