ラインハルト転生   作:パワーワード大好きおじさん

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バディものっていいよね。


09. 炎の運命

グラン歴 761年

 

 

グランベル王国の王都バーハラは、今、建国以来かつてないほどの輝きに包まれていた。

 

晴れ渡る秋の空は雲ひとつない、どこまでも透き通った青色たたえている。

その空へと向かって、数え切れないほどの花びらが放たれた。赤、白、黄。王都の風に乗って舞い踊る無数の彩りは、まるでこの世界に降り注ぐ祝福の雫のようだった。

 

街の至る所からは、楽士たちが奏でる軽快な旋律が響き渡っている。リュートの爪弾く明るい音色と、高らかに鳴り響く角笛の音が重なり合い、人々の心を浮き立たせた。

広場では着飾った市民たちが手を取り合って踊り、酒場からは新たな時代の幕開けを祝う乾杯の唱和が、地響きのように湧き上がっている。

 

「双子のご誕生だ! 王子ユリウス様と、王女ユリア様だそうだ!」

 

「なんと喜ばしい……。これでこの王国も、末永く安泰だ」

 

人々の顔には、一点の曇りもない喜びと希望が満ち溢れていた。

広場の中央に据えられた噴水の飛沫は、さんさんと降り注ぐ太陽の光を浴びて、水晶のような煌めきを放っている。子供たちは歓声を上げて走り回り、路地裏に至るまで、甘い菓子の香りと芳醇な葡萄酒の香りが漂っていた。

 

王城の窓からは、色鮮やかなタペストリーが幾重にも垂れ下がり、風に揺れている。

この日、バーハラを埋め尽くしたのは、ただ純粋な祝祭の喜びであった。

人々は口々に、幼き王子と王女の健やかな成長を祈り、光の時代の到来を確信していた。

 

街角に飾られた聖戦士の紋章が、眩いばかりの陽光を反射して輝いている。

まるですべての悲劇が遠いおとぎ話へと消え去り、永遠に続く平和が約束されたかのような、あまりに美しく、幸福な光景。

 

 

王都へと続く街道には、大陸各地から集まった諸公の紋章を掲げた馬車が列をなしていた。

彼らにとって、この祝儀の場に駆けつけることは、単なる慶事への参列ではない。

それは、新たな支配体系における自らの席次を確認し、未来の王となる赤子への忠誠を誰よりも早く、そして深く刻み込むための政治的なものでもあるのだ。

 

グランベル王国が大陸の覇権をほぼ手中に収め、実質的な支配者であるアルヴィスがその頂点に立っていることは、もはや公然の事実であった。

クルト王子の遺児であるディアドラとの婚姻、そしてその間に授かった双子の王子と王女。

この誕生は、アルヴィスの権力に揺るぎない「正しさ」という名の最後の一片をもたらした。

 

 

バーハラ城の石壁は、街の喧騒を遮断し、広間には無数の蝋燭が揺らめいている。

広間に集った貴族たちの間には、祝賀の華やかさとは裏腹に、緊張感が漂っていた。

 

フリージ家の面々は、一族の結束を示すかのように、ひときわ豪華な魔道士の法衣を纏い、玉座の近くに陣取る。彼らはアルヴィスの最も近い協力者としての地位を誇示するように、周囲の貴族たちを冷ややかな視線で見下ろしている。

その一方で、ドズル家とその重臣たちは、無骨な鎧の音を控えめに響かせながら、広間の隅で静かに時を待っていた。

ヴェルトマーの貴族は、かつてアルヴィスが自らおこなった粛清により数が少なかった。

ユングヴィやエッダに連なるわずかな貴族たちも、この場を避けることはできない。

シアルフィにいたっては、言わずもがな……。

彼らは身を縮めるようにして、洗礼の儀式を待つ。

 

 

重厚な扉が開かれ、アルヴィスが姿を現すと、広間のざわめきが一瞬にして静まり返った。

アルヴィスの腕には、まだ産着に包まれたばかりの小さな命が抱かれている。

その背後には、産後の疲れを隠しきれないながらも、神聖なまでの美しさを湛えたディアドラが控えていた。彼女の瞳は、祝福に沸く諸公を映しているのか、それとももっと遠い、形のない何かを見つめているのか、判然としない。

 

諸公は一斉に膝を突き、頭を下げた。

王の血を引くディアドラと、アルヴィスの圧倒的な力。

その融合によって生まれた双子の存在は、集った者たちに新しい時代の到来を否応なしに突きつけていた。

 

 

バーハラ城の大広間は、千の蝋燭が放つ光と、詰めかけた貴族たちの熱気に満ちていた。

跪く人々の祝福と、それ以上に重苦しい忠誠の誓い。

その中心に立つアルヴィスは、両腕に柔らかな重みを感じていた。

 

右腕には、聖戦士ファラの象徴たる髪色を持つ王子ユリウス。

 

左腕には、聖者ヘイムの再来を予感させる王女ユリア。

 

二人の赤子を抱くアルヴィスの姿は、混迷を極めたユグドラル大陸に終止符を打ち、新たなる神聖王権を打ち立てる象徴そのものであった。

 

眼下に跪く諸公の群れを見下ろし、アルヴィスはこれまでの歩みに思いを馳せる。

 

かつてシアルフィの公子シグルドを灰に帰したあの日、アルヴィスが手にしたのは反逆者を討った英雄という危うい名声に過ぎなかった。

だが今、腕の中にあるこの幼き命こそが、彼に絶対的な正統性を与えている。

クルト王子の遺児であるディアドラとの婚姻、そしてこの双子の誕生。

もはや、アルヴィスを摂政と呼ぶ者はいない。

聖戦士の血を継ぐこの子らの父として、これからアルヴィスは旧来の無能な貴族たちを粛清して、権力をバーハラの一点へと集約させていく。

法を整備し、徴税を一本化し、逆らう者は平和を乱す賊として処断する。

すべては、この子らが統べるに相応しい、汚れなき理想郷を築くため。

 

視線を北へ転じれば、イザークは既にグランベルの版図にほぼ組み込まれている。

残るは、半島の付け根で血を流し続けるレンスターとトラキア。

キュアン亡き後のレンスター王国は、トラキア王トラバントの執拗な侵攻に晒され、今や崩壊の淵にある。

アルヴィスはそれを敢えて静観する。

両者が争い、疲れ果て、民が救いを求めて天を仰ぐその時まで。

「平和の守護者」としてフリージ軍を派遣し、半島全域を慈悲深く包み込むための準備は、着実に整いつつあった。

 

トラキアが落ち着くまでの期間。それが、王国を帝国へと昇格させるための最後の猶予だ。

 

 

(……ここまで来た)

 

 

アルヴィスは、胸の内で静かに呟いた。

かつて、ヴェルトマーの当主として孤独に耐えていた日々が、遠い過去に感じられる。

今や、彼の足下には大陸のすべてが平伏しようとしている。

 

抱き上げたユリウスの額に、一瞬だけ、蝋燭の光とは異なる影が差したような気がした。

 

ふと、マンフロイの闇に溶け込むような目と、交わされた会話を思い出す。

ロプトの血……いいや、違う。これは聖戦士マイラの血だ。

自らの中に流れるその禁忌を、アルヴィスは理想の影に深く押し込めた。

 

 

「諸公よ、顔を上げよ」

 

 

アルヴィスの声が広間に朗々と響き渡る。

赤子を抱いたまま、彼は玉座へと一歩を踏み出した。

跪いていた貴族たちが、一斉に顔を上げる。

その瞳にあるのは、畏怖、羨望、そして底知れぬ野心。

アルヴィスはそれらすべてを、燃えるような紅蓮の瞳で受け止めた。

 

この子らが成人する頃には、戦乱の記憶など歴史の塵となっているだろう。

私が、この手で大陸のすべてを統べ、平穏をもたらす。

それが、どれほど険しく、血に塗れた道であろうとも。

 

今はただ、腕の中の小さな体温だけが、彼を支える唯一の真実であった。

 

 

 

 

オギャー! ついに生まれて来ちゃったよ、運命の子たちが!

 

オレだって誰かにバブみを感じてオギャりたい、ラインハルトです。

まあ、オレもお年頃だからね。許して。それはともかく置いておくとして……。

 

別段、皆既日食が起こったり、周辺の植物が全て枯れ落ちたりはしなかった。

伝え聞くところによると、初産の双子でやや苦労したが普通に生まれてきたとのこと。

覚悟はしてたんだよ。けど、なんかこうして実際に生まれてくるとさ。

 

悪い、やっぱ辛えわ。

 

子供の誕生を、素直に祝福出来ない自分やその状況が嫌になる。

平穏な時間の終わりを告げるカウントダウンがはじまった気がしてくるのも嫌だ。

まあ、しゃーない。切り替えていこ。

 

現在オレは、イシュタル様の守役として王都バーハラまで来ている。

もう誕生祭は三日ほどは続いているのかな? 二人が生まれる前から、各諸公が総出で王都に詰めかけていたので、大層な盛況ぶりになってるようだ。

オレも後で御前試合に出ないとならない。あー、面倒くさ……。

 

王子の誕生は「次代の王」の誕生である。そのため、現役の騎士たちがその武勇を未来の主君に捧げる儀式として、模擬戦が行われるのだ。

諸公の政治的思惑とか、アルヴィスによる力の管理とか、まあドロドロとしていることよ。

 

今頃、イシュタル様は家族みんなで王子様お姫様とご対面しているはずだ。

王宮の護衛は近衛隊が引き受けているので、オレは控えの間で待機中。

 

フリージ家はアルヴィスに最も忠実な腹心としての地位を固めている。

当主ブルームは誰よりも早くバーハラ城へ駆けつけ、莫大な額の献上品を並べた。

アルヴィスの信任を盤石にし、将来的に王家を成立させるための布石を打ったわけだ。

以前に聞いた話とは違い、アルヴィスは今すぐ皇帝となるわけではなさそうだが……。

 

やっぱり、もらう地域はアグストリアになったりしない? しないんだろうなあ。

 

駄目だな、暇だと益体も無いことばかり考えてしまう。

オルエンは今ごろ何をしてるだろう? 三姉妹と仲良く魔道の練習でもしてるのだろうか。

それとも、前にフレッドが馬に乗せてくれると嬉しそうに話していたから……ぐぬぬ。

はあ、今は早くフリージに帰りたいよ……。

 

 

翌日。

王都バーハラが祝祭の狂乱に沸く中、オレはイシュタル様の守役として、その熱気の中心点である闘技場へと足を踏み入れていた。

 

「双子のご誕生を祝す」という名目で行われるこの御前試合だが、その実態は、アルヴィスによる戦力査定に他ならない。新秩序への服従を誓った諸公たちが、自らの軍事的な有用性を実質王様である彼に売り込むための、血の匂いのするプレゼンテーションだ。

 

会場の設営を見れば、その意図は明白だった。

 

第一部、華やかな馬上槍試合。

これは旧態依然とした貴族たちのメンツを立てるための余興に過ぎない。

第二部、集団戦。ここからが本番だ。

フリージの魔道騎士団とドズルの重装歩兵が組み、いかに効率よく敵を殲滅するかをアルヴィスに見せつける、集団殺戮のシミュレーションだ。

そして、オレが引きずり出されることになったのは、第三部。

選抜された「個」による御前決闘だ。

 

「……さてと、いくとするか」

 

控室で魔道書の調子を確かめながら、オレは深く溜息をついた。

この第三部の目的は、アルヴィスの側近、あるいは幼き王子ユリウスの将来的な「近衛」となるべき最強の駒を選別することにあるのだろう。つまり、ここで目立ちすぎることは、あまりよろしくない。まあオレはフリージの騎士だし、大丈夫だとは思うんだけどね。

 

イシュタル様が「ラインハルトの戦う姿、見たいわ」なんて期待に満ちた目でオレを見るもんだから、断れるはずもなかった。だってお兄ちゃんだもん。

 

「無理はしないでね? でも、貴方が一番強いところ、閣下にもお見せしてほしいの」

 

そんな無茶振りを残して観覧席へ向かった彼女を思い出し、苦笑する。

会場の熱気は最高潮に達していた。砂が敷き詰められた円形闘技場。観客席には着飾った貴婦人や、ギラついた野心を隠そうともしない諸侯が並ぶ。

そして、その中央。

一段高い玉座には、あのアルヴィスが冷徹な眼差しでこちらを見下ろしているはずだ。

 

ルールは単純。武器の使用は自由。だが、殺傷力の高い上位魔法は禁止。

あくまで「力」と「技」と「魔力制御」の美しさを競う勝負。

だが、この場に集まった連中の目は寸止めなんて生ぬるいものを求めていない。

 

(……負けすぎればフリージの、引いてはイシュタル様の名誉を傷つける。勝ちすぎれば、それはそれで問題になりそうだ……)

 

オレは腰に帯びた剣と魔道書にそっと触れる。

指先に走る、微かな静電気。

ダイムサンダについて少し考える……あの魔道書は今は手元にないが、今のオレが放つサンダーの一撃は、この場に並ぶ並の騎士たちにとっては、死神の鎌と大差ないはずだ。

 

「適度に無双して、適度に謙虚。……よし、これでいこう」

 

さすがにフリージの騎士は格が違ったと周囲に示すのだ。

オレは完璧な騎士の貌を作り上げ、控室の重い扉を押し開いた。

差し込む陽光が目に痛い。

万雷の拍手と、獲物を待つ獣のような観衆の視線が、一斉にオレに突き刺さった。

 

(さあ、接待プレイの始まりだ。……死ぬ気で演じてみせるぜ!)

 

オレは、静かに闘技場の中央へと歩み出た。

 

 

準決勝までの道のりは、まさに接待プレイと実力誇示の黄金比だった。

適度に手数をかけ、観客が「おおっ」と沸くような鮮やかな雷撃を披露しつつ、最後は華麗に相手を戦闘不能にする。イシュタル様も観覧席で満足げに頷いているのが見えたし、フリージの面目もこれで十分に保たれたはずだ。

 

だが、準決勝。

俺の目の前に立ったのは、漆黒の全身鎧を纏った、異様なほど威圧感のある男だった。

ジェネラル……いや、バロンか?

 

「……よろしくお願いします」

 

俺は謙虚な挨拶と共に、牽制のサンダーを放つ。

だが、奴はそれを避けるでもなく、重厚な盾で無造作に弾き飛ばした。

直後、凄まじい踏み込み。

 

(速い……ッ!?)

 

重装歩兵とは思えない速度で間合いを詰められ、俺は咄嗟に雷の壁を展開する。

だが、奴の剣閃は、その魔力の防壁を紙細工のように切り裂いてきた。

慌ててバックステッポ!……コイツ、ヴォルツのアニキより強くなぁいッ!?

 

剣技も、魔力への抵抗力も、これまでの相手とは次元が違う。

 

オレは「適度な勝利」なんて甘い考えを即座に捨て、本気で魔法を叩き込んだ。

手加減なしの連続魔法。

だが、奴は漆黒の盾を構え、鋼の意志でそれを押し通してくる。

 

魔道書を捨て、素早く剣を抜き放つ。

しかし難なく盾で受け止められ、何とか数合を斬り結ぶが……ああ、ダメだこりゃ。

 

気づけば、俺の首筋には冷たい剣先が突きつけられていた。

 

「……そこまで! 勝者、漆黒のバロン!」

 

審判の声が響く。同時に、響き渡る歓声。

負けた。完敗だ。っていうか、まんまの名前なんだ……。

 

どこかでやっぱり慢心していたのかもしれない。世界は広いや。

この大陸には、物語の記述を越えた化け物がまだ潜んでいるんだ。

 

そんな呆然とする俺の耳に、兜の奥から奇妙な声が聞こえてきた。

 

 

「……しっこくしっこく……クックック……」

 

 

今、なんて言ったコイツ?

 

聞き間違いかと思ったが、奴は確かにそう呟きながら、肩を揺らして笑っていた。

しっこくしっこく? 漆黒だから? なんだその、古臭い芸人みたいな微妙なギャグは。

さっきまでの圧倒的な威圧感はどこへ行ったんだよ。

 

結局、その「しっこくバロン」は決勝戦も圧倒的な力で制し、優勝を掻っ攫っていった。

俺も準決勝敗退とはいえ、実力は十分に見せつけ、「若き天才」としての評価を固めることができたので、面目は保たれたのだが……。

 

「……アイツ、どこに行った?」

 

表彰式が終わった直後、優勝の褒美を受け取ったはずの漆黒の男は、霧に溶けるように姿を消していた。衛兵たちに聞いても「いつの間にかいなくなっていた」と首を捻るばかり。

 

(……なんだったんだ、アイツ。名も無き実力者だったのか、あるいは教団の刺客か……)

 

不気味なほど強い謎の男……オレのログには何もないな。

色々と考えを巡らせてみたが、あの「しっこくしっこく」という脱力感極まる笑い方を思い出すと、真面目に考察するのが馬鹿らしくなってくる。

 

「……まあいい。妖精か何かだったってことにしよう。気にしたら負けだ」

 

オレは深いため息を吐き、観覧席で俺を待っているイシュタル様の方へと向き直る。

負けはしたが、おかげで目が覚めた。

オレはまだ、全然足りない。あんな正体不明の化け物が徘徊するこの世界で、自分の周囲を守り抜くには、もっと……力だけではない「何か」が必要だ。

 

 

 

祭りの喧騒が遠のき、王都バーハラが朱金色の夕闇に沈み始める頃。

闘技場の華やかな熱狂の裏側、石造りの静かな医務室には、乾いた薬草の匂いと、沈殿したような静寂が満ちていた。

 

ラインハルトは、上着を脱ぎ捨てた肩に白い布を巻かれながら、窓の外を眺めていた。

あの漆黒のバロンに打ち込まれた衝撃が、鈍い痛みとなって身体の芯に残っている。

 

(……世界は、広いな)

 

前世の記憶という「正解」を持っていたはずの自分が、名もなき騎士の剣筋に沈んだ。

その事実は、若き天才という虚飾を剥ぎ取り、一人の少年としての姿を浮き彫りにしていた。

 

「見事な試合でしたね。ラインハルト卿」

 

不意に、落ち着いた澄んだ声が、薄暗い部屋の空気を震わせた。

入り口に立っていたのは、自分と同じ年頃の少年だった。

燃えるような、だが何処か柔らかさを持った赤い髪。賢者のような深い知性を宿した双眸。

彼は手に古い羊皮紙を抱え、物静かな足取りでこちらへと歩み寄ってきた。

 

「……あなたは?」

 

ラインハルトは、本能的に姿勢を正した。

目の前の少年に、言葉では言い表せないほどの雰囲気を感じたからだ。

それは魔力でも武力でもない、まるで運命そのものを掌握しようとするような……。

 

 

「これは失礼しました。ヴェルトマーのサイアスと申します。今は、司祭の末席を汚す者です」

 

 

胸に手をあて、軽く頭を下げてくる。その姿はどこまでも静謐だった。

サイアスはラインハルトの隣に立つと、窓から差し込む残光を見つめた。

そして、再び二人の視線が交差する。

 

一人は、未来を知り、それをねじ伏せようとする転生者。

 

一人は、過酷な宿命を見据え、それを知略で超えようとする天才。

 

 

差し込む夕日が、二人の少年の影を長く、深く、石床に刻んでいく。

それは後に、ユグドラル大陸を揺るがす二つの巨大な理知が、初めて重なった瞬間であった。




運命壊れちゃ^~う……でも……ラインハルトとサイアスゎ……ズッ友だょ……!!
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