【夢の中】で女を犯しまくっていたら、【現実】に影響でちゃった……。   作:BIBI

6 / 14
第6話 アイツだけは有り得ない……。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 夜中の三時半。イノリはゴソゴソという物音で目が覚めた。

 

 

 良い夢を見ていた気もするけど……、駄目……、思い出せない……。確か、カイがいた様な……。何で心地良い夢ほど記憶に残らないんだろ……。悪夢見た時は飛び起きて、記憶に残っている事多いのにさ……。

 

 

 

 なんて考えらながら、イノリはベッドを降りて部屋を出る。階段を降りてリビングに向かうと、帰宅したばかりの母親――ユイがいた。

 

 

 

 彼女はイノリの母親だけあり美人だが、印象は大分違う。イノリは愛想が悪くて仏頂面が多いだけで、顔の造りは可愛い寄りだ。

 

 

 

 でも母親のユイは目の細い綺麗系。そして茶髪を腰近くまで伸ばしており、イノリが父親似なのが際立つ。

 

 

「ごめん。また起こしちゃった?」

 

 

 容姿に反して柔らかい印象の笑顔と口調。仕事で忙しくて疲れているはずなのに、ユイは娘相手にそんな素振りは見せた事は殆どない。

 

 

 

 その甲斐あって、いつもと変わらない態度の母親を見てイノリは安心していた。

 

 

「別に大丈夫」

 

 

 正直眠たいけど……。御母(おかあ)さんと少し会話できる時間って、この時間くらいだし……。

 

 

 出版社に勤めている母は、出社時間や勤務時間が学生と噛み合わない。唐突に夕方くらいに、仕事の合間を縫って帰って来る事も有るが、基本的には深夜帰宅だ。

 

 

 

 だからこそイノリが寝る時間帯が規則的で少し早い。できるだけ早起きする事で、長く母親と過ごそうとしているのだ。

 

 

 

「そういえばカイ君はどうしてるの? 最近は。もしかして手が空いてたりする? ウチの新人、今アシスタントがいないから少し手伝ってほしんだけど、聞いてくんない?」

 

 

「うん……。アイツ最近は元気になったし、多分やってくれると思う。明日にでも()いてみる」

 

 

 母が頼むと、イノリは快諾(かいだく)した。

 

 

「…………それで、アンタはどうなの?」

 

 

「どうって?」

 

 

「カイ君の事。もう付き合ったの?」

 

 

「…………。いや、ないから。何度も言ってるけど、アイツはない……」

 

 

 揶揄(からか)う様にユイは娘の恋愛事情を尋ねるが、イノリは慣れた様子で肩を竦める。

 

 

「カイ君って優良物件じゃない? 顔もめちゃくちゃ格好いいし、手を付けて置かないと後悔するんじゃないの? 出遅れちゃうと他の女に一瞬で()(さら)われてしまうから、気を付けないと」

 

 

 

 娘の恋路が心配半分、揶揄い半分で、ユイは余計と理解しつつも軽く忠告する。何せ仕事で紹介する新人漫画家が、イノリくらい顔が整っていたから、母親としては多少の心配はあった。

 

 

 

 とはいえユイは仕事優先。漫画家は色々犠牲にして夢に一直線な人が多いので、出来る限り担当として力になってあげたい。カイほど腕の良いアシスタントが居るなら、娘の恋敵になろうとも紹介するつもりだ。

 

 

 

「……アイツは顔が良いだけで、性格がクソだからね? 少なくとも女絡みでは。暇さえあれば女の悪口。クソ女がーって叫んでさ。その癖、女好きでセクハラも多い。特に最悪なのは、女を穴扱いしている事。アイツに恋愛感情なんてものは存在しないのよ。確かに人より才能に恵まれているけど、その分だけ性格がクソなの。友人としては面白い奴だけど、恋人になるなんて有り得ないから」

 

 

「長い……。長すぎる。凄く好きじゃん、カイ君の事……」

 

 

 つらつらと熱く愚痴るイノリに、ユイはドン引きしていた。

 

 

「親友だから好きなのは間違いないけど、恋愛感情じゃない。仮にアイツが他の女といちゃついても気になんないし、何なら応援するって……」

 

 

 イノリは母親に背を向けて冷蔵庫に向かう。缶珈琲を取り出し口にしながら、振り返ると「そっか……。早く孫が見たかったけど……」ユイは大きく溜息を吐いて少し落ち込んでいた。

 

 

 

「御母さん……。気色の悪い事を言わないでくれる? アイツとそんな事、私がする訳ないでしょ?」

 

 

 アイツとセックスするとか、想像すらしたくない……。純粋に気持ちが悪い……。

 

 

「じゃあ、アンタってどんな男が好みなの……?」

 

 

「一緒に居て楽しくて、見ていて何となくカッコいい人……?」

 

 

「それカイ君じゃん。めちゃくちゃ顔は格好いいし」

 

 

「いや、顔はそんな重要じゃなくって……。というか、アイツは性格が終わってるから。それに小さい頃から仲良い相手って、そういう目で見れないでしょ……」

 

 

 

「アンタってホントお父さん似だねぇ。あの人も最初はそんな事を言って、私を何度も振りまくったんだよ? 最終的には私が押し倒して、どうにか責任取らせたけどさ」

 

 

 

 自慢げに逆レイプを告白するユイ。とはいえ幸せそうな父親の姿を知っているので、結果的には円満な結婚だったのは間違いないと、イノリは察している。

 

 

 

 というか時代が時代なので、今ほど草食系も多くない時代なんだから、そういう事もあるんだろうと納得していた。

 

 

 

 ウチの母親はちょっと肉食系過ぎるなぁ……。狙った獲物を逃がさないというか。滅茶苦茶重たい……。超草食な私とは大違い……。

 

 

 

「……私はお母さん似じゃないのよ。昔の自分を良く知る相手と付き合うとか正直考えらんない」

 

 

 

 何というか、段々とお互いに異性として魅力を感じるって過程が、何となく気持ちが悪くて苦手……。

 

 

 

 今まで純粋な友情だったものが、少しずつ汚い気持ちになっている感じが嫌いなのかも……。

 

 

 

「ベタに思春期って感じだぁ。アンタみたいなに新しい出会いに魅力を感じるって奴は、絶対大学とかでヤリ捨てられるから。気を付けなさいよ。何度も見てきたんだよね、そういう純情ぶった子が遊ばれてる所を」

 

 

 

 アレは入学当初に見られる風物詩(ふうぶつし)だねと、ユイはテーブルに着いて缶珈琲を飲みながら感慨に浸る。

 

 

 

 妙にリアリティがあるというか……、何か嫌かも、そういうの。やっぱり男って怖いな……。御父さんみたいに女に優しい人じゃないと、私は無理……。

 

 

 

 そういう意味じゃあやっぱりあの女蔑視野郎は論外……。絶対に女をヤリ捨てるクズだし。女に対して酷い事も平気で言うし。

 

 

 アレは――ない。

 

 

 イノリはカイの姿を思い出して渋い顔をして、母親とは向かい側の席に着いた。

 

 

「…………そんな事言われたら、私怖くて恋愛できないかも」

 

 

 良いなって思う相手もいないし。男を見る目にも自信が無い。というか私って警戒心が強すぎて、幼馴染以外とあまり関わろうと思えない……。

 

 

 

 頬杖を突きながら、自分の手に握られた缶珈琲を見つめてるイノリ。

 

 

 

 その様子をジッと見て、「それは……困る。私は孫が欲しいの。最悪男は要らないから、子供だけは作って。学校退学しても良いから、男を見つけて子供を作って欲しいの。女は学歴より子供の方が価値あるんだから」と、冗談半分で言ってユイは苦笑した。

 

 

 

「親の都合すぎる……」

 

 

 あまりにも身勝手な都合に戦慄する。冗談なのは分かっているが、イノリは母親の本音が半分紛れている事も察しているらしい。

 

 

 

「私の同僚が孫出来て危機感を覚えているのよね。今どきは孫なしババァってのは、弱者男性と同じ扱いなの。結構気を遣われるというか、薄ら下に見られる。だから親の名誉の為にアンタには、早く子供を作ってもらわないといけないのよ」

 

 

 

 実際、編集者は高学歴の者が多く、男性だと特に結婚している割合が高い。少なくともユイが勤めている出版社ではそうだった。

 

 

 

 次々に知り合いが孫が出来ただの、娘に彼氏ができただの会話している中で、ユイは少し気不味く思い、加えて娘の将来を心配をしているのも本音であった。

 

 

 

 このまま彼氏を作らない気じゃ……。

 

 

 そうユイが思うのも仕方がないくらい、イノリには恋愛する様子が一ミリも伺えないのだ。

 

 

「お、親の名誉って……、勝手な言い分だけど……。うーん。御母さんに気不味い想いもさせたくないしなぁ」

 

 

 実際、私は奥手すぎるというか……。恋愛に興味なさ過ぎる。このままじゃあ駄目なのも確かよね……。

 

 

 

 少しだけ、幼馴染以外の男と会話した方が良いのかな。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 何かストレスが消えた様な……。とにかく凄く気分が良い……。何で私、兄さんを嫌いになっていたんだっけ……。

 

 

 何か気づかない内にストレスが溜まってたのかな……。何か気分が良いと言うか、ただ寝て起きただけで幸せを感じるというか。

 

 

 

 ソファーに座ってミウはコーヒーを飲んでいる。昨日は行為が盛り上がり過ぎて、寝るのが朝方だった。

 

 

 

 その所為で今は起きたばかりだと言うのに、真昼間(まっぴるま)である。テレビを付ける訳でもなくて料理を作る小さな物音だけが部屋に響く。

 

 

 

 …………気不味い。昨日は何かテンションがおかしかった。その所為で兄さんと、あんなことを――。

 

 

 

「…………ッ!」

 

 

 思い出すだけで顔を赤くしてしまう。今はもう昨日の様な発情はしていない。殆ど完璧にシラフに戻っており、何故あんなことをしてしまったのか自分自身ですら理解できない。

 

 

 

 欲求不満って、恐ろし過ぎる……。まさか実の兄とエッチしてしまうなんて……。しかも逆レイプとか……。

 

 

 

 何やってんだ、私……。

 

 

 自己嫌悪と後悔に陥り、ミウは気まずそうに珈琲をチビチビと飲む。

 

 

 事情も聞いたし、今となっては兄さんの事は嫌いじゃない。というか、傷ついているなら、支えたいとすら思った……。でも――。

 

 

 

 何か、凄く嫌なんだよなぁ……。自分から襲っといて何だけど……、兄さんとこんな関係になりたくなかった……。

 

 

 

 もっと普通の兄妹として仲良くしたかったのに……、何で私、あんな事……。好きでもない相手に体を好きにさせてしまった。それも初めてだったのに。

 

 

 

 薄らと体に広がる様な不快感。それなのに、あの時は凄く気持ちが良くて……。

 

 

 ミウはゾワゾワと寒気を感じ、少し大きく深呼吸した。

 

 

 これが、気持ちの整理が付かない感覚ってなのかな……。音の少ない静かな空間が、やたらと心地よく感じる……。普通の光景が非日常みたいに新鮮に感じるというか――。

 

 

 

「…………。兄さんってあんな事あったのに、いつも通りだね」

 

 

 片手にコップを持ったまま立ち上がり、カイの背中に近づくミウ。恐る恐ると少し緊張気味に、気恥ずかしさを滲ませながら話す。

 

 

 

「まぁ、思春期なんだし、お互い過ちはあるもんだろ。なんでコイツとこんな事をしたんだろって話は、よく聞くしな」

 

 

 

 ミウとは対照的にカイはあっけらかんとした様子だった。手際よく昼食を作りながら、後ろを振り返って苦笑する。

 

 

 

「…………そっか。…………。そうだよね」

 

 

 不意打ちの笑顔に少し照れてしまい、そっと目を逸らすミウは力なく言葉を返した。

 

 

 過ちの一つ。勢いで抱かれてしまったみたいな話は同級生もしていたし……。そういう出来事の一つだと思えば確かに、ありふれた平凡な過ちなのかも知れない。

 

 

 

 私が気にし過ぎていただけなのかな……。

 

 

「そういうもんだ。気にする程の事じゃない。それよりできたぞ」

 

 

 激しい運動の所為か、かなりお腹が減っている。だから起きたばかりの昼食だけど、カイは二人分の牛丼を作ってテーブルに並べた。

 

 

 

「兄さん……。今日は暇なの?」

 

 

 テーブルの席に座り、牛丼を食べながら何気なく尋ねる。

 

 

「イノリの家に行く予定はあるかな……。何か仕事の話があるみたいだし」

 

 

「またイノリさんの家……?」

 

 

 隠す事もなく堂々と女の家に行くと話すカイに、ミウは少し眉を顰めた。

 

 

「……もしかして嫉妬してんのか?」

 

 

 表情を見て何かを察したカイは、一瞬驚いた後に少し揶揄う様に口角を上げる。

 

 

「…………ッ。んな訳ないじゃん……!? 馬鹿なの……!? 一回エッチしたくらいでさ……! 別に私、兄さんに恋愛感情とか無いし……!」

 

 

 

 慌てて目を逸らす。意図してなかったとはいえ、確かに嫉妬っぽい言い方になっていた事を自覚したミウは、バツが悪くて見るからに動揺していた。

 

 

 

「そっか。まぁそうだよな、兄妹だし」

 

 

 何処か納得しながら食事を始めるカイ。別に好かれていると期待していた訳でもないのだろう。別に落胆した気配は感じられなかった。

 

 

 

「…………ッ!?」

 

 

 何でショックを受けてんだ、私……!

 

 

 兄妹で恋愛感情を持てないのは、私も同じなのに……。でも……、何かここまでハッキリ認められると、何か、モヤるというか……。

 

 

 

 ……そもそも、今朝までエッチしまくってた相手が目の前にいるのに、別の女の家に出掛けるとか、何か配慮に欠ける様な気がする。

 

 

 

 そんな事を考えているミウは、少しずつ昨日の様な気持ちの(たかぶ)りに気づいていない。無意識下の発情。夢の中で抱かれた後程ではないにせよ、彼女はジワジワと二度目の発情を始めている。

 

 

 

 この事実に彼女が気づくのは、(しばら)く後になりそうだ。

 

 

 

 





〈あとがき〉

とんでもない【低評価】を初っ端に食らって、テンション超下がっているので、面白いと思った方は【評価】してくれると嬉しいです……。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。