【夢の中】で女を犯しまくっていたら、【現実】に影響でちゃった……。 作:BIBI
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真夜中。疲れて眠たいのだが、イノリは珍しく起きていた。
「あの馬鹿みたいな喘ぎ声は止めてくんない?」
辺りが暗くなった頃、既に帰っていたユイは、娘の喘ぎ声を寝室から聞いていた。セックスに夢中で足音に気づかず、声も押さえず喘ぎまくっていたイノリは「~~~~っ!」頭を抱えて悶えていた。
普段は堅物真面目キャラな分、彼女は笑い飛ばす事すらできず、ただただ赤面し、テーブルの席に着いて固まっていた。
「家に響き渡る程、声がデカいし……。あのね、近所迷惑とまでは言わないけど、もう少し声を抑えなさい。というか、もっと可愛い声を出しなさい。カイ君にドン引きされてるからね、絶対」
指摘する方が恥ずかしいと、咳払いしつつユイは頬が赤くなっていた。
「…………エロい声って言ってくれたから、大丈夫な、はず」
腕を枕にしてテーブルに突っ伏すイノリは小さく自信なさ気に呟く。
「変態カップルかぁ。アンタ達らしいけど……」
「……付き合っては、貰えなかった」
ユイは呆れながら缶珈琲の蓋を開け、悲しそうにイノリは誤解を訂正した。
「流石にヤリ捨てられるのは、ちょっとカイ君も酷い様な……」
私一応母親だし、一言文句を言わないと? いや、でも逆レイプ気味に押し倒していた訳だし……。寧ろカイ君は被害者だから文句を言うのは筋が通らないかも?
少しユイが悩み、腕を組む。
「私がヤリ捨てて良いから抱いて欲しいって言って……。でも、中出しされたし……。やっぱり、何の相談もなく……、勝手に子供作ったら嫌われると思う……?」
「怖い怖い怖い。我が子ながら怖い」
ムクッと顔を上げてとんでもない事を言うイノリに、母親であるユイは自分の肩を抱えてガタガタ震え始めた。
「だってあんな事した後だったら、元通りの関係に戻れないだろうし……、だったらせめて子供が欲しいかなって……」
妊娠するかどうかも分からない状況で、下腹部を大事そうに擦るイノリ。まだセックスした時の名残りなのか、妙に色気が漂い顔も薄ら火照っている。
その様子を見て、流石にユイは表情を歪め、「重いって……。子供は産んでも良いけど……、相談はしないと……。ワンナイト約束で抱いた女が勝手に許可なく子供を産もうとしてるとか、男視点だと恐怖でしかないし……。てか、女から見てもホラーすぎる!」と戦慄していた。
昨日は恋愛対象とかあり得ないみたいな話してなかった……? 初めての相手を大切に想うってのは凄く分かるけど……、これは流石に……――。
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『私、アンタと一緒に夕飯食べるだけで幸せなんだよね……』
人通りが少なく入り組んだ帰路を歩き、ゆっくりと帰宅する途中。月の輝く夜空を見上げて、俺はふと昔聞いたイノリの言葉を思い出した。
そういえばユイさんが夜遅くまで忙しいから、イノリって一人で毎日夕食摂っているんだっけか……。
『小さい頃から家に一人、寂しく夕食を摂るのが当たり前でさ……』
あの時、イノリは本当に寂しそうに笑っていた。
俺もガキの頃は片親だった所為で、周囲からバカにされていたけど、それでも夕食は大抵母親が常に居てくれた。
どういう人生なんだろうな。幼い頃から夜は家に一人。孤独に淡々と夕食を摂る生活っていうのは……――。
俺は友人の家族を見た時、仲の良い両親を見て、自分が当たり前に思っている家庭が少し寂しい物に感じた。
片親な事を今まで気にしていなかったのに……、その日以降は自分が不幸だと感じる様になった。
仮に家で一人過ごす事が当たり前な生活だったら、俺は世界がどういう風に見えていたんだろうな……。
そんな思いに耽ていたら、いつの間にか自分の住むマンションに着いていた。ドアノブを引いて家に入ると、小さな足音が聞こえる。
「兄さん……? 遅くない?」
珍しくミウが出迎えてくれた。
「……まぁいつもよりは遅いかもな」
そう言いながら俺がミウの横を過ぎようとした時――。
ガシッっと腕を掴まれる。無遠慮にミウはクンクンと俺の衣服や首筋を嗅ぎ始めた。これには思わず「どうかしたのか?」と尋ねたが、妹は目を逸らし「別に……」と落ち込んだ様な小さく若干震えた声で自分の部屋に向かう。
その場に取り残され呆然とする俺は、首をコテンと傾げた。
何だったんだ? 一体……。
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ミウはベッドにダイブする。自分の枕に顔を埋め、思わず零れた涙を拭く。
自分でも驚いた……。何か妙に汗臭くて、別の女の匂いが付いているってだけで、ただそれだけで、何故か涙が込み上げるなんて……、思いもしなかった。
私……、どうかしてる……。
兄さんの事、全然好きじゃないのに……。恋愛感情なんて欠片もないはずなのに……。何で彼女ができたのかもって思っただけで、何か涙出たし……。意味、分かんない……。
駄目だ……。心臓がバクバク音を立ててる……。
……兄さんは、どう思ってるんだろ、イノリさんの事。匂いが付くって隣に居ただけであるのかな。絶対ないよね。だって、それだと学校でも匂いが付くはずだし。
煙草や料理じゃ有りまいし、それなりに長くひっついていないと匂いなんて付かないはず……。
別に恋愛対象じゃない……。今でもエッチした時の事を思い出すだけで吐き気がする。気持ちが悪い……。なのに、何で……――。
何でこんなに胸が痛いんだろ……。悲しくて泣いた時特有の、胃がゾワゾワする様な感覚も久しぶりで……、ホントに自分が傷ついているのを嫌でも理解してしまう……。
私はどうなるの……? 初めてだったのに……。もう忘れられちゃうのかな……。私の初めてはその程度の価値しかなかったの……?
兄妹だから駄目なの……? あんな事をやって、兄さんだって、凄く楽しんでいた癖に……。あんな沢山出ししておいて……、私は興味ないんだ……。
男って――最低……。
この日を境に一週間。ミウは勉強にも手が付かず、ただ憂鬱な気分で過ごしていた。母親や兄と殆ど喋る事なく、あっという間に時間だけが経つ。