ネコミミ美少女に進化してヒロイン達から勇者を奪うペット枠に転生したので未来を変えたい   作:日ノ 九鳥

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勘違いだけど助かってよかった

 薬草を手に入れた僕は野営地に戻るべく森の中を進んでいた。

 

 全身が悲鳴を上げている。身体のあちこちに傷があるし、体力も底をついている。今すぐにでも体を横たえて休みたいところだが、野営地まで戻らないといけない。

 

 それにもう焚き火の光が見えている。遠くにぼんやりと見える暖かな光。あれが野営地だ。

 

 あそこまで辿り着けば安全。そう思うと、疲れた身体も少しは楽になった気がしてくる。

 

 薬草を探すのに苦労した。夜の森は危険で、下手したら帰ってこれなかったかもしれない。でもなんとか見つけることができた。これでレベルを抑制できる。

 

 ようやく戻れる。

 

 僕はそう思いながら、光に向かって進み続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 だが野営地に近づくにつれ、違和感を覚えた。

 

 普段と違う慌ただしい気配。人の声が聞こえる。

 

 本来はみんな寝ているはずの時間だ。なのに何故こんなに騒がしいのだろう。

 

 僕は疑問に思いつつ、警戒しながら野営地に近づいた。そしてその光景を目にして——息を呑んだ。

 

 リリアナが地面に横たえられていた。時折、苦しそうに呻いている。……彼女の腕には昼間の蜂の刺し傷から黒い筋が広がっていた。

 

 レオン、カタリナ、ノエルが焚き火の周りに集まっている。全員、深刻な表情だ。

 

 「……どうしてだ。毒は弱く、自分で治療もしていたはずなのに。」

 

 レオンが苦虫を噛み潰したように呟く。

 

 「……おそらくカースドビーだったんだ。レイジビーの特殊個体。……おかしいとは思ってたんだよ。本来レイジビーは塊になって動くんだ。だから一匹だけリリアナのとこにいって刺すなんて。……はじめっから群れの個体じゃなかったんだ。」

 

 ノエルが心当たりを呟く。その声には焦りと違和感を放置した後悔が滲んでいた。

 

 「……ノーラまでの距離は?」

 

 レオンがカタリナに尋ねる。

 

 「徒歩で半日以上かかる。走ったとしても、今からでは……」

 

 カタリナの言葉が途切れる。間に合わない。そう言っているのと同じだった。

 

 「リリアナなら解呪もできるけど、よりによってダウンしているのは本人と来てる。……同じ後衛ならせめて私が刺されていれば」

 

 ノエルが苦しそうに言った。

 

 リリアナの容態がさらに悪化する。彼女の呼吸が荒くなり、顔色もひどく悪い。

 

 レオンが拳を握りしめて悔しがり、カタリナが何もできない自分に苛立つ。ノエルは何か方法はないかと必死に考えている。

 

 三人の絶望的な様子を見て、動揺した僕は足元の砂利を踏みしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 音を立てた僕の方向に三人が視線を送る。

 

 「ミーニャ?」

 

 レオンが僕に気づいた。

 

 「ミーニャ、どこに行ってたんだ!」

 

 カタリナが僕の姿を見て驚く。

 

 でもノエルは僕の身体ではなく、僕が咥えている薬草に目を留めた。

 

 「それって、……まさか!!」

 

 ノエルが僕の口から薬草を取って確認する。そして驚きの声を上げた。

 

 「この薬草……様々な状態を治癒できる効果がある。代償に少しの力を失うが……呪いにも効くはずだ」

 

 「本当か!?」

 

 レオンとカタリナが驚く。

 

 「ミーニャ、お前……どこでこれを?」

 

 レオンが僕に尋ねた。

 

 「ボロボロじゃないか……まさか一匹で探しに行っていたのか」

 

 カタリナが僕の身体を見て、理解したように呟く。

 

 僕はただ静かに彼らを見つめた。

 

 正直、ノエルが薬草について説明するまでは思いつきもしなかったが、確かにあの薬草のメインの用途は治癒だった。

 

 本当は自分のレベル抑制のために探した薬草だった。でもリリアナを救えるなら、使ってほしい。

 

 リリアナの命の方が大事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「急いで調合するよ!」

 

 ノエルがすぐさま薬草の調合を始めた。

 

 カタリナが水を用意し、レオンがノエルの指示通りに焚き火の火力を調整する。三人は必死だった。

 

 ノエルが薬草を煎じる。独特の香りが漂う。

 

 「ノエル、薬草の知識もそうだが……調合などできたのだな」

 

 カタリナが驚きながら尋ねた。

 

 「……昔の腐れ縁の影響でね」

 

 ノエルが短く答え、煎じた薬を冷ます。

 

 レオンがリリアナを起こし、カタリナが彼女の頭を支える。

 

 「リリアナ、飲むんだ」

 

 ノエルがリリアナに薬を飲ませる。

 

 リリアナが苦しそうに薬を飲み込んだ。

 

 僕は三人の必死な様子を見守る。薬草が効いてくれることを祈る。

 

 リリアナが助かってほしい。

 

 僕は強くそう願った。

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、変化が起きた。

 

 リリアナの腕の黒い筋が傷口に吸収されるように先端から薄くなっていく。追随するように彼女の呼吸が安定していく。

 

 そしてリリアナがゆっくりと目を開けた。

 

 「リリアナ!」

 

 レオンとカタリナが安堵の表情を浮かべる。

 

 「大丈夫か?」

 

 レオンが尋ねた。

 

 「……はい。正直もうダメかと思いましたが……、どうやって解呪を……?」

 

 リリアナが弱々しく答える。

 

 「薬草が効いたんだ。ミーニャが持ってきてくれた」

 

 ノエルが説明する。

 

 リリアナが僕を見た。その目に涙が浮かぶ。

 

 「ミーニャ……」

 

 リリアナが僕をそばに寄せて抱きしめた。

 

 「助けられちゃいましたね……。ありがとう」

 

 リリアナの声が震えている。

 

 僕はリリアナが回復したことに安堵した。

 

 内心では複雑な気持ちも抱いているが、まずはリリアナが無事で良かった。

 

 それだけで充分だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 リリアナが僕の傷に気づいた。

 

 「ミーニャ、そんな姿になって……今、回復しますね」

 

 リリアナの手が僕の身体に触れる。温かな光が身体を包み、傷が癒されていく。

 

 回復魔法だ。

 

 傷が治っていくのを感じながら、僕はリリアナの腕の中で丸くなった。

 

 「ミーニャ、今日はゆっくり休んでください」

 

 リリアナが優しく僕を抱きしめる。

 

 「私たちすら知らなかった薬草を、こんなに早く取りに行っていたなんて……気にしたことなかったけど結構上位の魔物だったりするのかねぇ」

 

 ノエルが感心したように呟く。

 

 リリアナが僕の体温を感じながら眠りにつく。レオンとノエルもリリアナが無事だったことに安堵して休む。

 

 レオンと交代したカタリナが見張りを続ける。僕はリリアナの腕の中で目を閉じた。

 

 複雑な気持ちが僕の心を満たしていた。

 

 薬草は自分のレベル抑制のために探したものだった。それなのに結果的にリリアナの命を救ってしまった。

 

 焦りもある。でもそれよりも、リリアナが無事で良かったという思いの方が大きい。

 

 薬草を自分に使うことは叶わなかった。けれどリリアナを失うよりはずっと良かった。

 

 そう思うと、不思議と心が落ち着いた。

 

 温もりに包まれながら、僕は静かに目を閉じた。

 

 リリアナの安定した呼吸が聞こえる……彼女が無事で良かった。

 

 僕はそう思いながら、深い眠りに落ちていった。

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