岡崎いるかに選ばれたい   作:姉小路

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結束いのりは知る

〈結束いのり視点〉

 

中部ブロック大会を優勝して一週間、強化練習に呼ばれることになった。練習するスケートリンクは遠目で見てもとても大きくて入る前からテンションが上がる。

 

「こんな大きな所で特別な練習が出来るなんていのりさんは凄い!えらい!!すごーくえらい!!!」

 

「司先生、なんで毎回そんなテンションなんですか?」

 

「初金メダルの最高のタイミングで褒められなかったせいで心に穴が空いちゃってるんだ」

 

さっきまで凄いテンションで褒めてくれていた司先生の表情が一気に変わり悔しそうな顔をする。何か悪いことしちゃった気がするけどまだ3日は続くらしいしその時に頑張って反応しよう。

 

入り口で挨拶をしに行った司先生と別れて先に入る。それにしても今日の貸し切り練習は楽しみだ、全日本ノービスAに出場する選手だけが参加できる特別な練習だし沢山の大人からアドバイスをもらえる。司先生が練習中によく言ってた強くなるための強さを証明する必要がある、コレを出来たから私はアスリートの世界に入れたんだと実感できる。

 

「あ、いのりちゃ〜ん」

 

「総太くん!と、理凰くん」

 

「やっほー」

 

声を掛けてくれたのは同じクラブの総太くん、その隣には普段と変わらず理凰くんがいる。2人してゲームをしているから塩対応だが同じクラブの人を見つけるとやっぱり安心する。理凰くんがいるなら光ちゃんも来てるのかな?そう思い周りを見回すも姿は見えない。

 

「ねぇ理凰くん今日光ちゃん来てるよね?」

 

「光…?明浦路先生がどこいるかを言ったら教える。どこにいんの?」

 

見つからないのは仕方がないので知っていそうな理凰くんに聞いてみる。私の質問に理凰くんが怪訝な顔をするから答えて貰えないのかと思ったが対価に司先生の居場所を聞いてきた。最近のりおうくんは司先生に熱心だし何かあると感じ取ったが光ちゃんの事を知りたいので仕方ない。

 

「瞳先生と話してるけど…何?」

 

「明浦路先生にお泊りに来て貰うようお願いする」

 

「はぁなんで!?」

 

戸惑っている私を放っておいて理凰くんは司先生の所へと向かう。そんな姿を見て我に返り私も理凰くんの後を追う。

 

「もう理凰くんは司先生の生徒じゃ無いでしょ!!独り占めは止めてよ!!」

 

「同じクラブだけが師弟関係とでも!!そのまま浅い絆でいろよエビフライ!!」

 

「エビフライじゃない!!」

 

「うっせぇな!!!」

 

言い争いをしながら理凰くんの妨害をしていると大きな声で怒鳴られる。騒いでいた私たちが悪いんだけど怖くて少し縮こまってしまう。私と同じようにビビっている理凰くんと手を取りフルフルと震える。

 

「テメーら遊びにでも来たのか、キィキィうるせぇよクソガキ」

 

中部ブロック大会の開会式でも会った岡崎いるかちゃんだ。見た目も相まって告げられる言葉に理凰くんと一緒に震えてしまう。このあと練習が始まるまでは理凰くんと一緒に総太くんの近くで大人しくしていた。

 

 

 

 

 

「では演技終了後に気づいたことを生徒と先生にお伝えします。曲がけの順番ですが…」

 

練習が始まって曲がけの順番を伝達される。こうして名前を呼ばれていくのを聞くとこの練習の人数が少ないのを実感する。それにしても何でいるかちゃんはこの貸し切り練習に居るんだろう。そんな事を思っているかちゃんを見ていると隣りにいた光ちゃんと目が合う。手を振ってくれる光ちゃんに嬉しくなる。

 

「私明日早いんで曲かけ一番にしてもらえますか?」

 

曲かけの順番はいるかちゃんが用事があるらしく一番になった。いつも一番に滑るりんなちゃんが嬉しそうな顔をしていたのが凄い印象的だった。

 

「なんで今日はいるかちゃん来てるの?」

 

まいんちゃんの質問に同じクラブに所属する愛花ちゃんに聞いている。私も気になるので耳を傾けその内容を聞く。

 

「ジュニアの練習はサチくんとラブラブしたかったから離れたくなかったんだって!あぁ見えているかちゃん凄いべったりなんだよ!!」

 

嬉々として話す愛花ちゃんに疑念の目を向けてしまう。ラブラブ?あんなに怖かったいるかちゃんがそんな事になるイメージが全く出来ない。理凰くんは何か驚愕して客席といるかちゃんを交互に見ているけどどうしたんだろう。

 

そんな話をしている間にいるかちゃんが滑り出す。男子並みに高いジャンプと大人らしい振り付け、そして体を反らせれるバランス感覚とそこから戻れる腹筋。どこを切り取っても凄い。

 

「いつもみたいに滑れてたし良かったと思うぞ。自分的にはどう感じた?」

 

「周りのチビたちが煩かった」

 

「お前なぁ…サチには良いけどそれで友達とやれてるか?海外行っても頼むから他所の子と喧嘩すんなよ」

 

いるかちゃんのコーチとの会話を聞いて来週彼女が海外で試合があることを思い出す。カッコいいなぁ海外、私もジュニアになったらなりたいな…

 

(来年じゃん!!!!)

 

もう来年からはジュニアなんだ。そうなると来年にはさっき見たあの滑りをするいるかちゃんと戦わないといけないのか。ジュニアこわい…

 

 

 

 

 

 

あのあと光ちゃんの3回転に魅せられた私たちは全日本ノービスで使う3回転ルッツやループの練習をした。私以外はみんなルッツを降りれていて凄い焦る。何度も挑戦したけど結局練習終わりまでに降りれなかった。練習も終わったし着替えようと思ったらまいんちゃんに声をかけられる。

 

「あ、あの!いのりちゃんのお姉さんって実叶って名前だったりする?」

 

「そうだよ!私のお姉ちゃん実叶って言うの!」

 

「えー!やっぱり!!」

 

まいんちゃんはお姉ちゃんがスケートをしてた頃に出ていたアイスショーを見てスケートを始めたらしい。お互いにお姉ちゃんのスケートに影響され始めたので共通の話題で会話が弾む。そんな風に楽しく会話していると急に顔を掴まれる。

 

「あぁだからこんな顔可愛いんだ」

 

視線を動かすと顔を掴んだ手の先にはいるかちゃんがいた。何でかよく分からないけど近い距離でじっと顔を見られている。一通り顔をペタペタと触られたあとに解放される。

 

「結束実叶の妹、だから顔が可愛くておでこに三つ編みしててジャンプが下手くそなんだね」

 

お姉ちゃんがジャンプ下手?そんなことないです。そう言う前に立ち去るいるかちゃんの腕を掴んでいた。

 

「お姉ちゃんはジャンプが下手じゃ無いです」

 

「でもジャンプが飛べなくて止めてるじゃん」

 

「それはその後骨折したからで…」

 

「確率の勝負の世界でもしもなんて言い訳するな」

 

いるかちゃんの言葉に何か言い返しても正しい言葉で詰められる。でもお姉ちゃんはジャンプが下手なんかじゃないしお姉ちゃんに似てるって言われた私も下手なんかじゃない。そうそのままいるかちゃんに言うもの鼻で笑われる。

 

「よくそんな事言えるね、なんで強気なわけ?」

 

「私も腹筋が割れてるからです!!」

 

いるかちゃんの問いに服をめくって腹筋を見せて答える。見ていた周りの人がギョッとするもいるかちゃんが爆笑したので変な空気にならずに話が続く。

 

「アハハハハ。え、ヤバ。そうだよね腹筋割れてるもんね。出来るぞ絶対跳べるようになる。頑張れ〜」

 

いるかちゃんは笑いながら去って行った。急に居なくなって拍子抜けしたら遠くに行っても聞こえてくるいるかちゃんの笑い声に段々恥ずかしくなって来た。意識したら周りからの視線も気になってきたのでその日はすぐに退散した。

 

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