岡崎いるかに選ばれたい   作:姉小路

12 / 28
岡崎いるかについていきたい

いるかちゃんのジュニア大会は彼女の優勝で幕を閉じた。訳ではなく光選手が優勝した。演技は分かりやすいジャンプは勿論のことステップなどのスケーティング含めいるかちゃんが優れていると感じたが審査員はそう感じなかったらしい。俺はいるかちゃんの演技を色眼鏡で見てるだろうし審査に文句は無い。ただ最近負けることの方が珍しかったいるかちゃんに何て言葉をかければ良いか分からなくなってしまった。

 

「サチがそんな顔しないでよ、私は大丈夫だから」

 

試合が終わったいるかちゃんに会いに行ったらそんな事を言われた。いるかちゃんは負けて悔しいとは言っていたが感情が表に出る程では無いとも言っていた。なんだか俺だけが成長せずに取り残されている気もしたがその時だけは気にしないことにした。

 

その日からイタリアに行くまでの数日間はいるかちゃんと毎日のように一緒にいた。トレーニングしたりご飯を食べたり特別なことはしていないが昔のように一緒にいた。そんな生活をしている時にたまたま街で輝也くんと会った。

 

「お前らなんか前より距離感近くなってないか?」

 

「前もこんな風だったと思いますよ。ね、いるかちゃん」

 

「いや実際近くはあるんじゃない?手じゃ無くて腕を組んで歩いてる訳だし」

 

「確かにそうかも」

 

「なんで休日にこんな気分にならないといけないんだよ。お前らもう少し自重しろよ」

 

そう言って輝也くんは苦言を呈して去って行った。そんな言われる程なのかは疑問だがいるかちゃんと親しいことを知らしめれるなら良いなと少し思った。そんな風に時間を過ごし気がついたらいるかちゃんがイタリアへ大会に行く日になってしまった。中部国際空港から行くと聞いていたので時間を作って見送りにやって来た。

 

「いるかちゃん頑張ってね、応援してるから」

 

「もう分かったから。3回目にもなるといい加減だるい」

 

「こういうのは言われるだけ嬉しいって聞いたんだけど」

 

「少なくとも私は別に嬉しく無い」

 

そう言って不機嫌そうな顔をするいるかちゃんの背中には「JAPAN」の文字が書かれている。彼女が出場するジュニアグランプリは世界中の選手が集まる国際大会、選手たちは日の丸を背負って海外の選手と戦うことになる。俺もサッカーで日の丸を背負って戦う事があったがその当時は凄いプレッシャーを感じながらゲームをしていた。きっとここにいる他の選手たちも多かれ少なかれプレッシャーを感じていることだろう。

 

「いるかちゃん写真撮ってもいい?」

 

「この前も撮ったじゃん。似たような写真いる?」

 

「欲しいに決まってんじゃん。大事な記憶はデータにしたいタイプだから。ですよね誠二先生」

 

「なんで俺に振るんだよ…他の人もいるんだから早めに済ませろよ」

 

「分かってますって」

 

誠二先生に念を押されたので時間を気にしながら写真を撮る。いるかちゃんはムスッとしているが大人しく撮られてくれているのでありがたい。以前までは俺のスマホの待ち受けはいるかちゃんが初めて代表に選ばれた時の写真に設定していた。この時の写真が良すぎてあの時から今日まで代表に選ばれる度に写真を撮っている。

 

「また共有しとくね」

 

「いい、いらない」

 

いつも通り返答されてしまったが一応共有しておく。何だかんだ言って1回は目を通してくれているのを知っているので気にしてない。

 

「それじゃもう時間だな。いるかが居ないからって生活習慣乱すなよサチ」

 

「いるかが居なくても元気にしてるのよ?」

 

「泰子さん大袈裟過ぎでしょ。子供じゃないんだしサチは大丈夫だって」

 

「そう?この子いるかがいないとすぐ駄目になるイメージがあるけど」

 

フライトの時間が近づいて来たのでいるかちゃんと五里夫妻と一週間ぐらいの別れを見送る。スケート連盟の人もいるのであまりはしゃげないが姿が見えなくなるまで精一杯手を振る。

 

これからどうしたものかと思って暫く立ち尽くしているとスマホが振動し連絡が来た事を教えてくれる。もういるかちゃんから連絡が来たのかと思い確認すると全く違う人物からだった。

 

『最近運動不足だから明日サッカーしたいんだけどサチは来れる?』

 

送り主は最近会ったばかりの輝也くんだ。面子については詳しく書かれていないがコーチ3人組はいるらしい。予定もなくて丁度暇してたので断る理由がない。終わったあとにご飯でも奢ってもらえたら良いかなぐらいの気持ちで了承の旨を送信する。するとすぐに返事が返って来た。明日の昼前に集合とのことだ。朝イチでは無くて中途半端な時間なのは敦士の寝坊対策らしい。正直昼前でも敦士が起きて来れるとは思っていないがコートを借りるのは高いから遅れずに来て欲しい。引きずってでも連れてきてと送信しようとする前にいるかちゃんから写真が届く。

 

『見て誠二先生の変顔』

 

『どういう状況??』

 

変な顔をした誠二先生とそれを見て笑っている泰子さん。一体どういう状況で撮ったのか全く想像できない写真に思わず返信を優先してしまう。結構長い付き合いだけど誠二先生のこういう顔はあんま見たこと無い気がする。いるかちゃんもそう思って写真を撮ったんだろう。書かれていないけど何となく伝わってくる。写真を見るとまだ少ししか経っていないのに寂しい気持ちが溢れてくる。あと一週間耐えられるのか、少し不安を覚えつつ帰宅した。

あとメッセージは送り忘れて敦士は遅刻した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。