岡崎いるかに選ばれたい   作:姉小路

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岡崎いるかを招く

イタリアから帰って来たいるかちゃんが我が家に遊びに来るということで母と一緒に料理を作りながら待っている。今日はいるかちゃんだけではなく五里夫妻も来るので豪勢だ。

 

「あとは何を手伝えばいい?」

 

「もう料理は終わってるし盛り付けでもしてくれる?」

 

「いつものデカい皿使うね」

 

棚から大きめの皿を取りだし揚げたての油物を野菜と一緒に盛り付けていく。少し早めに作ったのでいるかちゃん達が到着する時には冷めているだろう。彼女たちに温かいうちに食べてもらいたかったがこればっかりは仕方がない。その他にも煮物や巻き寿司を他の皿に盛り付けて机に並べる。こうやって並べてみると鍋などの調理器具に入っていた時よりも豪華に見える。

 

『今スーパーの所だからあと10分ぐらいで着く』

 

いるかちゃんから連絡が来たのでその事を伝えると母は昼になっても寝てる父さんを起こしに寝室へ向かった。もう少しでいるかちゃんに会えるそう思うと心が躍る。イタリアに行っている間も連絡は取っていたが直接触れ合えないと心は満たされなかった。なのでまだ時間はあるのにそわそわしている。

 

ピンポーン

 

チャイムが鳴ったのが聞こえた瞬間廊下を走り玄関を開ける。勢いよく扉を開けてみると立っていたのはサングラスをかけたいるかちゃんだった。

 

「Ciao」

 

手を振りながらそう言ったいるかちゃんに思考停止する。短期間でこうも変わってしまうなんてイタリアで何があったんだ。悪い虫に変な影響でも受けたのか?

 

「いるかちゃんどうしちゃったの!!」

 

「Grazie」

 

何を言ってもイタリア語?でしか返答が来ない。会話が成り立たないこの状況に困惑していると大きな笑い声が聞こえる。見てみるといるかちゃんの後ろで俺達を見ていた泰子さんがお腹を抱えて笑っている。

 

「だから言ったでしょ絶対信じるって」

 

「サチ流石に単純すぎるでしょ。普通に心配になっただけなんだけど」

 

状況を飲み込めずにいる俺に呆れた顔の誠二先生が教えてくれる。さっきまでのいるかちゃんは泰子さんが提案したドッキリだった。泰子さんは一週間いるかちゃんと会っていなかった俺の精神状態を試すつもりで提案したらしい。なんていう提案をしてくれたんだとは思ったが珍しい岡崎いるかを見れたと考えれば価値があったのかもしれない。そんな事を考えていると客人を玄関に立たせているのは良くないんじゃと思い浮かびササッと家にあがってもらう。

 

「久しぶりだね元気にしてたかい?」

 

「まぁぼちぼちだな」

 

リビングに戻ると寝間着姿からキチンと身だしなみが整えられた状態の父さんがいた。今さら誠二先生たちに取り繕う必要は無いと思うが最低限の礼儀として整えているのだろう。インフル対策で手洗いうがいをしてもらったあと席について皆で食事を始める。

 

「あの子すましてるけどイタリアでサチくんの話ばっかり。ライリー先生が引いてたのに気づいて無かったのよ」

 

「それに関してはうちの子も負けてないわよ」

 

家のテーブルは円形なので各々話したい人と隣同士で座っている。母は泰子さんと父さんは誠二先生と隣で食事をしながら話している。母たちがイタリアでのいるかちゃんの事を話してると思い詳しく聞こうと思ったらいるかちゃんに話しかけられて止められる。

 

「サチは私がイタリア行ってる間サッカー以外は何してたの?あんま聞いた覚えが無いんだよね」

 

「うーん挙げれるような事は特に何もしてないけどな。敢えて言うならこの前言ってたカフェに行ったぐらい?」

 

「それって前言ってた本屋の近くのとこ!?一人で勝手に行くなって前にも言っただろ!」

 

「だってクーポンの期限が切れそうだったんだもん」

 

「そういう問題じゃない」

 

本当に行ったのかと念を押されて聞かれたので撮っておいた名物のパンケーキの写真をいるかちゃんに見せる。怒ったいるかちゃんに肩をグーで殴られるがこればっかりは甘んじて受け入れ反省する。でも後悔はない、だって100円引きは勿体ないじゃん。

 

「いるかちゃんこそイタリアはどうだった?観光名所巡ってたのは見たけど面白かった?」

 

「なんか教会ばっかで面白み無かった。そういえばまだお土産渡してない、ちょっと待ってて」

 

いるかちゃんが少し席を離れてお土産を取りに行く。彼女は海外に行く度にお土産を買って来てくれる。前回はインドに行っていて変な置物をくれた、そんな風に消耗品より残るものをくれる事が多いので気づいたら俺の机は小物でいっぱいになっている。

 

「はいコレ」

 

そう言って小さめの袋を渡される。何だろうと思って取り出すと出てきたのは石鹸だった。イタリアの石鹸が有名だとは知らなかったので全く予想できなかった。パッケージのイラストを見る感じフルーツ、オレンジの香りがするらしい。

 

「凄い嬉しいありがとう!!」

 

「ちゃんと使ってよ結構高かったから」

 

「当たり前じゃん絶対毎日使うから!」

 

キモい妄想だけど使えばいるかちゃんの好みの匂いになれるんだ。それだけで使わない理由は一つもない。間違っても父さんと母さんに使われないようにしないと。

 

「こんな良いものを貰ったし今度何かお返ししたいな」

 

「この前貰ったばかりだからいらない。ていうかコレが前のお返しみたいなもんだから」

 

「でも何か渡したいんだよな」

 

そう言ってどうしたものかと悩んでいると頭のてっぺんいるかちゃんにチョップされる。何でだろうと思って顔を見ると真剣な面持をしている。

 

「何回も言ってるけど私は物なんていらない。ただ昔した約束だけ守ってくれたら他なんてどうでもいい。ちゃんと分かってる?」

 

「分かってる。分かってるからこそそれを形にしているかちゃんに伝えたい」

 

「分かってるならいい」

 

俺の気持ちを理解してくれたのか一度は矛を収めてくれる。きっと満足な回答では無かっただろうけど皆がいる所だから引いてくれたのだろう感謝しかない。ただ机を囲んだ範囲の話なので今のやりとりは全て両親と五里夫妻に聞かれている。

 

「おいおい沙地、いるかちゃんを不安にさせてないか?いるかちゃんが泣いてなくても父からしてみれば最低野郎だ」

 

「いるかを泣かせたのか!?そんな日は来ないと思っていたが拳で制裁する日が来たか」

 

酔っ払った男性2人組に凄い勢いで絡まれる。助けてといるかちゃんの方に視線を送ろうと彼女の方を見る。だが彼女も彼女で母さんと泰子さんの2人に捕まっていて俺に助けを求めていた。いるかちゃんを助けようと本能的に立ち上がるもガタイの良い誠二先生に止められて前に進めない。暫く頑張って無理だったのでゴメンねといるかちゃんに視線を送り酔っぱらい2人とプロレスごっこに身を投じた。

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