時間の流れは早いものですっかり年末である。大晦日含め年始は毎年家の集まりで京都の方に行くことになっているのでいるかちゃんには会えない。なのでクリスマスの今日が直接会える最後の日になるだろう。
「今日もいるかちゃんの服似合ってるね」
「流石にクリスマスだしお洒落しないとね」
今日のいるかちゃんは普段のラフな格好と違ってジーンズを基調として合わせており可愛いよりもカッコいいが勝つ印象だ。口紅も多分プレゼントしたものを使って来てくれている。いるかちゃんはこういう所を欠かさないのでやっぱりプレゼントしがいがある。
「何か食べたい物とかある?俺は何でも良いんだけど」
「うーんこれが良いってのは無いな」
「なら表通り歩いて良さそうなお店でも探そっか」
自然な流れで腕を組み一緒に歩く。距離が近いからなのかいるかちゃんからいい匂いがする。コレって前にくれた石鹸と同じ匂いな気がする、いるかちゃんも使ってるんだ。キモいなと自覚しつつ嗅覚に集中しているとスパイスの匂いが漂ってくる。
「なんだかメッチャいい匂いがする」
「この匂いカレーだよね?この辺りにお店あったかな」
「もうカレーの口になったから探そうサチ」
2人で辺りを歩き回りカレー屋さんを探す。一度表通りを歩いて匂いを辿ってみるもお店は無かった、なので脇道にそれて探してみる。栄えているエリアなだけあって道の数は多く中々見当たらない。こうして探している時に検索するのは無粋だとは思うがお腹が空いているから背に腹は変えられないとスマホを取り出そうとしたタイミングでいるかちゃんに突かれる。
「サチ見て今あの店にインド人っぽい人が入ってた」
「あの看板も何もないとこ?」
「そうあそこ」
いるかちゃんが指を差した先を見るとチェーン店などでは無く何か経営している様には見えない建物がある。看板も店名も書かれていない建物は少し不気味である。確かにカレーの気分だがあの建物に入っていく勇気は無い。普通に中で闇取引とかされていそうで怖い。
「あの店に入ろう」
「行かない。俺は行きたくない」
「隠れた店って感じで気にならない?絶対美味しいって」
いるかちゃんの好奇心が刺激されたのか凄い乗り気で店に入ろうとする。無理矢理抵抗することは出来るだろうがいるかちゃんに怪我をさせてしまう可能性があるから怖くて動けず引っ張られる。
「やっぱり止めにしない?よく考えたら今日はクリスマスだよ、絶対チキンとか食べたほうが良いって」
「サチは私と一緒にご飯を食べれたら幸せでしょ」
「それはそうなんだけどぉ」
「なら良いじゃん。ウジウジしてないで行くぞ」
全然嫌だけどそんな風に言われたら否定できないので諦めてついて行く。店の前まで来たタイミングで丁度建物の扉が開きインド人っぽい人が出てった。目が合ったので軽く会釈をしたら向こうも会釈してくれて日本に馴染んでるなと感じる。そのまま変わるように店に入ると店内には日本人っぽい人はいない。
「これメニュー読める?」
「いや分かんない。英語ならまだしも何語だコレ」
凄いスパイスの匂いが漂う店内で席についてメニューを広げるも日本語の表記がなく何の料理か分からない。適当に頼んで運頼みをしても良いが出来ればカレーが食べたいので最終手段として取っておく。
「どれにするか決まった?」
「え、いるかちゃんメニュー読めたの」
「あの席の人が食べてるやつって言うつもり」
「伝わるのそれ?」
「1回やってみれば良いじゃん。すみませーん」
なんだか凄いやる気のある彼女の姿が珍しいと感じる。クリスマスだからテンションが上がっているのかな、それともまた別の理由?どんな理由なのかは分からないけどテンション高めないるかちゃんは可愛いから何でも良いか。
「レギュラーカレー2コデイイデスカ」
結局注文はカタコトながらも日本語が話せる店主で無事に注文できた。いるかちゃんは何だよ日本語話せるのかよって笑いながら言っていたが俺は店主に聞こえていないか少しビビってた。
「なんか今日のいるかちゃんテンション高くない?」
「分かる?まぁサチが理由なんだけど」
「俺が理由なの?なんかしたっけ」
「当たってても教えないけどね」
眩しい笑顔でそう言う彼女の顔を正面から受け止めきれず思わず顔を背けてしまう。なんだ今の笑顔破壊力が凄い、今の俺の顔は真っ赤になっているに違いない。俺の状態が分かった上で顔を覗き込んで見ようとするいるかちゃんから顔を隠し料理が届くくまで耐えた。
「ナンって何でナンって言うんだろう」
「サチ今のって狙ってる?」
「狙ってない狙ってない。ただ純粋な疑問」
出てきたカレーは日本人大好きカレーライスではなくナンカレーだった。ライスで無いのは当然と言えば当然なんだが普段食べ慣れていないのでナンを手つきでちぎる自分に違和感が凄い。
「なんかいるかちゃんナンを食べるの手慣れてない?」
「ん、まぁインドとかあの辺りに行くことは多いからね」
「あー確かにイメージは有るかも」
どうしようかと悩みながらナンを千切る俺に対しているかちゃんは迷うことなく食べ進めている。海外経験の差がこんな所で出るなんて思っても居なかった。
「今度のいるかちゃんの海外、俺も見に行こうかな」
「着いてきてよ、一緒に海外に行ったことは無いから私は行ってみたい」
「旅行じゃ無いんだし邪魔になんない?」
「サチの事を邪魔になんて思わないよ」
いるかちゃんは賛成してくれたし今度誠二先生にも聞いてみよっかな、変に邪魔しちゃっても嫌なので慎重にならないと。この後もいるかちゃんとは色々な話をしながら過ごした。正直クリスマス仕様になった街よりもいるかちゃんの方が印象的だった。