岡崎いるかに選ばれたい   作:姉小路

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遅くなってしまった


結束いのりの合宿②

合宿が始まった。全国から将来有望な男女選手が集められている。集められた選手たちは3グループに分けられた、私は光ちゃんといるかちゃんと同じグループだった。2人ともこの合宿で更に上手くなるだろうから私はその倍以上のスピードで成長してやる!

 

合宿での練習は普段ルクス東山でするような練習だけでなく栄養学や芸術表現、難しいルールの勉強など座学も多い。スケーティングも連盟の人にアドバイスを貰えるので貴重な機会なので気合が入る。

 

「いのりさんは失敗する呪いにかかっている訳じゃない。失敗するのには原因があるんだよ。ゆっくりで良いから1個ずつ見つけていこう」

 

「分かりました倍速で見つけます!」

 

こんなに恵まれた機会なのにそれでも私は3回転ルッツを跳べない。司先生にも注意されてしまった、本当なら会えなかった半年で成長した姿を見せたかったのに…早く跳べるようにならないと。

 

焦る心に気づかないままとにかくルッツの練習を繰り返す。何度跳んで上手くいかないので一度息を整えるために止まる。すると目の前を通り過ぎるいるかちゃんの姿を捉える。スピードに乗っているいるかちゃんはそのまま3回転ルッツを成功させた。洸平先生とジャンプの研究をしたから分かる、いるかちゃんのジャンプの高さを出せるなんてやっぱり普通の女子選手じゃない。

 

(なのに何で毎回お姉ちゃんの悪口を言うんだろう。お姉ちゃんが意地悪とかしないだろうし)

 

いるかちゃんが凄いからこそ悪口を言う所にモヤモヤする。何でだろうと悩むが答えは分からないし今は練習中だという事を思い出し一旦この件は忘れて練習に戻った。

 

「あのダリアちゃんちょっと良いですか?」

 

練習が終わり皆がお腹を減らせて夕食を食べに向かう中私はその波について行かずダリアちゃんの所に行く。烏羽ダリアちゃん、いつもいるかちゃんと仲良さそうに話しているから何か知っているかもと思って声をかけてみた。

 

「結束実叶といるかの関係ですか?」

 

机のうえに並べられた沢山の装飾品を使い私の髪でダリアちゃんが遊んでいる。宝石みたいな物がいっぱい付いていてキラキラしており凄い可愛い。

 

「私といるかはジュニアからの付き合いなので過去は詳しくありません。あるとしたらいるかは名城クラウンに昔所属していたそうですし結束実叶が憧れだったのでは?」

 

「そうなのかな…」

 

ダリアちゃんの言葉で過去のことを少しだけ思い出す。お姉ちゃんが名城クラウンに通ってたときに連れて行って貰った事がある気がする。

 

「そんなに心配しなくてもあなたは嫌われてないと思いますよ。口は悪いですけど凄く気にしてますし」

 

そうなのかなと思い今までのいるかちゃんの言葉を振り返って見てもとてもそうとも思えない。少し首を傾げていると後ろから大きな物音がする。

 

「何勝手に人の過去をペラペラ喋ってんだよ」

 

恐る恐る振り返って見るとそこには怒りを滲ませたいるかちゃんがいた。倒れている椅子を見るにいるかちゃんが蹴り飛ばしたのだろう。その光景を見て私の頭のなかで数式が出来上がる、コレが世間にバレたらいるかちゃんが出場停止になっちゃう!

 

「今すごい物音したけど何かありましたかー」

 

「な、な、なんででもないです!!大丈夫です!!」

 

廊下の方から物音を聞きつけたスタッフさんの声が聞こえたので慌てて立ち上がりスタッフさんに隠そうとするも慌ててたからか何もない所で躓いて机に顔をぶつけてしまう。不思議と痛みは感じずやって来たスタッフさんに大丈夫だと伝えたが医務室に連れて行かれた。

 

「うん問題は無さそうだね。夕飯は持ってきて貰うよう言ってあるから待ってて」

 

医務室の人にそう言われたので持ってきて貰えるらしい夕食を椅子に座りながら待つ。一連の流れでいるかちゃんの事を一回も聞かれることなくやり過ごす事ができたので目標は達成できた。安心していると夕食を持ってきてくれた。

 

「岡崎選手持ってきてくれてありがとう」

 

「え!?」

 

「何その変な顔」

 

夕飯のおにぎりを持ってきてくれたのはいるかちゃんだった。私の隣に座ったいるかちゃんがおにぎりを食べさせてくれる。丁度良いテンポで食べさせてくれる彼女は慣れているようで思ってたよりも食べやすい。

 

「いるかちゃんって昔私と遊んでくれたよね。小さい頃の事あまり覚えてないけどお姉ちゃんと喧嘩したの?」

 

「してないよ、ただ約束を破られたから怒ってるだけ」

 

少し悲しそうな表情を見せるいるかちゃん。私もお姉ちゃんと一緒にスケートするって約束を叶えられなくなって凄い悲しかった記憶があるから気持ちがわかる。

 

「いるかちゃんお姉ちゃんと電話する?」

 

「しない、オリンピックで金メダル取るまで話さない」

 

私の提案を間を置くことなくスパッと断るいるかちゃんの顔には迷いが一切ない。言い切ったあといるかちゃんはニヤリと笑みを浮かべそれにと続ける。

 

「腹筋割れてるからジャンプも跳べるしな」

 

「な!?」

 

からかってくる彼女に思わず反論してしまう。それでもいるかちゃんは止めてくれないが前よりも話しやすくなったし仲良くなれたと思う。

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