岡崎いるかに選ばれたい   作:姉小路

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解像度低いのは仕様です


結束いのりはお礼したい

〈結束いのり視点〉

 

私の初めての海外遠征であるタイで行われたジュニアグランプリ1戦目は4位という結果で終わってしまった。今大会で1位の座についたのは同じく代表に選ばれて来たいるかちゃんだった。表彰台の隣で4位で終わってしまった事にため息をついていると背中を突かれる。

 

振り返ると試合で見かけた選手が立っていた。沢山話しかけてくれるが英語なので全く聞き取れない、急いで司先生に翻訳アプリを出してもらい会話する。タイ代表のクンちゃんと言うらしい、話すうちに意気投合したので連絡先を交換した。名前は海老という意味を表すらしく複雑な気持ちになるも海外に初めての友達が出来たことに喜んだ。

 

「明日は男子の試合が終わる夕方までは自由です、近くの市場でお土産でも買いに行きましょうか」

 

「はい!お土産買いに行きたいです!」

 

金弓先生の言葉に胸が弾む。確かにタイまで来たのに皆へのお土産とかを何も買っていなかった。そう決まったならいるかちゃんも買い物に誘いに行こう!クンちゃんに別れを告げているかちゃんの元へ走る。

 

「いるかちゃん!優勝おめでとう!!ねぇねぇ明日買い物に行かない?」

 

「先約があるから無理だけど」

 

「え!?」

 

誘うと決めた時点でいるかちゃんなら来てくれると思っていたので断られるのは想定外だった。よくよく考えてみればいるかちゃんには沙地さんがいるのでそっちを優先するに決まってる。

 

「まぁ一応サチに一緒に行くか聞いておく」

 

「いいの!?ありがとういるかちゃん!!」

 

「そんな喜ぶなよ。まだ一緒に行くか決まって無いし決めるのはサチなんだから」

 

「そうだよね!」

 

最初と比べたら遥かに良い回答となって返ってきて思わず喜んでしまったがまだどうなるか決まって無いから喜びきれない。沙地さんはなんて答えるんだろう、やっぱり昨日邪魔をしちゃったから断られちゃうかな?決まったらまた後で連絡をくれる事になったので一旦保留となった。

 

いるかちゃんと沙地さんってやっぱり付き合ってるのかな。記憶の中のいるかちゃんが沙地さんの方が年上って言ってたけどどこで知り合ったんだろう?沙地さんも昔はスケートしてたのかな?少し考えるだけで色々聞きたいことが出てくる、それに沙地さんには昨日プールで助けてもらったお礼を言えてないのでちゃんとお礼がしたい。

 

『サチが明日一緒に行こうだって。良かったね』

 

『うん、楽しみにしてるね!』

 

『普段なら即答で断るのに今日はめっちゃ悩んでた。本当に珍しいよ、サチになんかした?』

 

『私は何もしてないと思うけどな』

 

『そうだよね、全然想像出来ないもん』

 

いるかちゃんから連絡が来て明日一緒に行けることが決まった。ただどうして沙地さんが同意してくれたか分からない。何か心当たりもない、明日本人に聞いてみようかな。

 

翌日天気に恵まれて問題なく買い物に出ることができた。いるかちゃんと沙地さんだけでなく五里先生たちやお父さんたちも含めた大人数で行く。

 

「サチは一昨日にも市場に来たんだっけ?」

 

「行ったのはもっと地元の人向けって感じの所だったからこの辺は来てないな〜」

 

「なら新鮮な気持ちで楽しめるか」

 

どうして私は2人の間を歩いているんだろう…2人は全く気にした様子もなく私を挟んで会話している。途切れることなく続く会話に割って入るタイミングがなく3人で並んで歩き始めてからしばらく経つが一言も発せてない。まさか沙地さんはコレを見せつけるために!?怖いと思いながら沙地さんの方を見ていると五里先生が2人に声をかける。

 

「お前ら二人の世界に入るのは良いがいのりちゃんが萎縮してるぞ!!そこに置くなら会話に混ぜてあげろよ」

 

特にサチお前な、と名指しで言われて沙地さんは困った顔をしながらこっち見る。多分五里先生に言われたものの話題が無いんだろうなっていうのが顔を見るだけで伝わる。

 

「いのりさんはさ俺のこと覚えてる?」

 

「え?」

 

沙地さんが頑張ってひねり出した質問に何か返答してあげたかったが思わぬ質問に言葉に詰まる。覚えてる?って事はどこかで会ったことがあるって事だよね、どうしよう全く覚えてない。どうしようっているかちゃんの方をチラリと見ると私たちの様子を見て笑いを堪えていた。

 

「もうムリ、面白すぎ!!やっぱサチ覚えられて無いって!!」

 

「その反応を見る感じやっぱそうだよね」

 

「あんな自信あったのに忘れられてるじゃん」

 

アハハハとお腹を抑えながら笑ういるかちゃんと悲しそうな表情を見せる沙地さん。思わず沙地さんにごめんなさいと謝るが「俺が悪いから大丈夫だよ」と返された。

 

「サチは私とお前の姉貴とスケートしてたから一緒に遊んだことが何回もあるんだよね、忘れられてたけど」

 

「まだそんなに言うの!?」

 

「だって昨日の夜あんなに自信満々だったじゃん」

 

「あ、あははは」

 

2人の会話に笑うことしかできない。続く会話を見て私ここにいて2人の邪魔になっていないかなと思ってしまう。

 

「まぁいいや改めてよろしくね、いのりさん」

 

「あ、はい」

 

「悲しい答えだったけど聞けてよかった。どう接すれば良いか分からなかったんだよね〜」

 

悲しそうな表情から一転笑顔を浮かべて沙地さんは手をこちらに出す。変わりように戸惑いつつも握手する。

 

「さ、話してないでお土産とか買おうよ。いのりさんは何か買うものとかあるの?」

 

「えぇと皆にお土産は買いたいと思ってます!!」

 

「ならあっちの露店見に行こう。遠目で見たけどいるかちゃんも好きそうな物売ってたし」

 

感じていた沙地さんの掴みどころのなさは明るい買い物への楽しさに上書きされる。3人でお土産を見たり変な帽子を被ってみたりして市場を全力で楽しんだ。最初は沙地くんと距離感を感じていたがこの買い物を通じて仲良くなれた気がする。

 

 

 

 

夜、試合が終わった男子の選手も一緒にバーベキューが行われた。昼間の買い物で仲良くなれた沙地くん、いるかちゃんと一緒のテーブルで食べる。沙地くんはお酒を飲む男性陣のテーブルに誘われていたがいるかちゃんにひっ付いて断っていた。

 

「言うの忘れてたけど沙地くん一昨日は助けてくれてありがとう!!お陰で昨日も滑れた!」

 

「お礼なんていらないよ、その分金弓先生に謝っときな」

 

「大丈夫、もう怒られた後だから…」

 

沙地くんに言われて昨日試合が終わった後に怒られた事を思い出す。怖かったな美蜂先生、美蜂先生がいないのに勝手にプールに入った私が悪いんだけど思い出したくない。

 

「いのりさんは今日は楽しめた?」

 

「はい!凄く楽しかったです!」

 

「そう言ってくれるなら断らなくて良かった」

 

最初の目的のいるかちゃんとはあまり話すことが出来なかったけど沙地くんと仲良くなれたから良かった。これからも何か3人で出来ればいいなと心から思った。

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