岡崎いるかに選ばれたい   作:姉小路

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岡崎いるかと喋りたい

スケートリンクを貸し切るにはどんなメダリストでも自由が利かないモノらしい。地方だとそうでも無いらしいが生憎ここは名古屋周辺なのでどこもかしこも予約で埋まっている。そうなると成人していない学生たちでも夜遅くから練習があるなんて事も珍しくない。ただそのお陰で俺はいるかちゃんの練習を見れているのだ。

 

今日のスケートリンクは郊外にあるからかそこそこのサイズの所で結構大きい。俺は邪魔にならないように保護者の人たちが集まるスペースにいる。ただ保護者と言ってもその殆どが奥様方だから少し近くには居づらくそこからも少し離れた位置で座って見ている。見始めた頃はまだ幼く何とも思わなかったが成人した今では居づらいと思う瞬間のほうが多い。成長して気づかなくて良いことにも意識するようになってしまったなと思う。ネガティブな思考にため息をついていると隣に知り合いがやって来る。

 

「お久しぶりです」

 

「見かける事はあったがこうやって直接話すのは一カ月以上前だからな」

 

金髪で目つきが悪く何となくちゃらんぽらんに見える彼は名港ウィンドfscのアシスタントコーチ雉田輝也くんだ。フランクな態度で接してくれるし年も近めなので機会がある度によく話す。

 

「良いんですかこんな所にいて」

 

「今日は慎一郎先生がいるからなあの人の指導を見に来たんだよ」

 

「あぁなるほど」

 

彼は同じクラブのヘッドコーチ鴗鳥慎一郎先生を尊敬している。あんまり理由を聞いたことは無いが俺がいるかちゃんの事が好きなのと同じ理由だろうと勝手に思っている。

 

「お前はいつも通りお姫様を見に来たのか?」

 

「そりゃそうですよ。じゃなきゃココに来る理由なんて殆ど無いですし」

 

「分かってはいたがまぁそうだよな」

 

ヤレヤレといった感じに首を振る。何だコイツと一瞬思ったがわざわざ少し郊外のこんな所まで来てるのにスケートに興味がないと言われたらそんな対応にもなる気がする。ただまぁそれでもイラッと来るところはある。

 

「いつも思うんだが何でそんな執心してるんだよ。確か3歳差だろ?普通に学生なら3歳差は凄く大きな隔たりだと思うんだが」

 

「まぁ色々あったんですよ色々と」

 

「そう言って毎回はぐらかされてんだよ。いい加減教えてくれよ長い付き合いだろ?」

 

「あ、いるかちゃん出てきたんで黙ってて下さい」

 

追求が面倒くさかったので適当言って誤魔化す。タイミングよくいるかちゃんが来てくれて良かった。正直輝也くんは見た目の割に義理堅いし話して良いと思うけど大事なのはいるかちゃんの意思なので勝手には話せない。まぁホント色々あったんだよ。

 

「輝也くん今の見ました?いるかちゃんがこっちを見てくれましたよ」

 

「いやどこのアイドルだよ」

 

こっちに視線をくれたいるかちゃんに全力で手を振りながら輝也くんに共有する。隣の輝也くん呆れた表情を浮かべるが関係ない。もうその呆れ顔は誠二先生で慣れた。

 

練習が始まってからはあんま騒ぐと迷惑になるので大人しく見ている。ジャンプからステップまで全部が素人目では高水準に見えるがきっとまだ何かが足りていないのだろう真剣に練習へ取り組んでいる。隣の輝也くんならきっと何が足りていないか分かるのだろう。そんな調子で終わりまで練習を眺めていた。

 

「じゃまたご飯でも食べに行きましょう。俺こう見えても輝也くんと話したいこと結構あるんで」

 

「マジか、何気にお前からの誘いは初めてな気がするんだけど。明日は雪か雷だな」

 

「そんなに驚かなくたって良いじゃないですか」

 

「岡崎いるかにしか興味がないメンヘラかと思ってたぜ」

 

「ソレに関してはあんま間違っては無いです」

 

帰り際輝也くんに食事の誘いをしたら凄く驚かれた。確かに中学時代からの知り合いなのに一緒に食事をした事は片手で数える程しか無かった気がする。数少ない男性の友達なんだから大切にしないとと改めて思い直した。

 

「雉田さんってチャラい見た目をしてる割には結構真面目だよね」

 

「まぁ昔オラオラしてた分今は落ち着いてるんじゃない?」

 

今日あったことをいるかちゃんに話ながら車を走らせる。大体は誠二先生の方に乗って送迎されている彼女だが月に2回ぐらい今日のように俺が送ってく事がある。

 

「そうだサチ来週のどっかで筋トレに付き合ってよ」

 

「授業のない日ならいつだって良いよ。いつもみたいにカレンダーに入れといてくれたら確認しとく」

 

「決めたら連絡する」

 

それにしても筋トレか、サッカーしてたときはジムまで行って熱心にしていたけど最近は家でもあんまりしていないし久しぶりだな。俺の選手としての売りは高さと初速だったから足を鍛えていた、ちょっと前のことなのに懐かしく感じる。

 

「サチって何でも肯定するよね。特にここ最近」

 

「いるかちゃんの事が好きだから当然だね。それにホントに無理なら無理って言ってるし」

 

「そうなんだけど何ていうか悪化してる気がする。愛されてるって分かりやすいのは嬉しいんだけど絶対愛を過剰摂取してる」

 

「そんな?自分じゃ全く気づいて無いな」

 

そんな会話をして過去の自分の言動を振り返ってみるが自覚はない。強いてあげるなら前のキモいって言われた発言ぐらいかな?アレは流石に重すぎたと思うがそれ以外は普通だったと思う。

 

「あとなんか周りから見たときにサチの一方的な感情だと思われそうなのが最近ムカつく」

 

「俺はそれでも良いんだけど」

 

「お前はもっと自分に優しくしろ」

 

ムスッとした表情を浮かべるいるかちゃんにどう言えば良いか分からず言葉に詰まってしまう。いるかちゃんさえ幸せならあとは何でも良い人間だから自分に優しくって言われても難しい。体はしっかり休めてるし好きな物も食べれているので十分自分を大事にしているつもりだがそう言う事では無いのだろう。

 

「善処します」

 

「絶対嘘じゃん」

 

疑いの目を向けられるがこう言うしかあるまい。その後も他愛のない話続きあっという間に五里邸に到着した。正直名残惜しかったのでまだまだ話したかったがお互いに翌日学校があったのですぐ別れた。

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