岡崎いるかに選ばれたい   作:姉小路

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明浦路司は知る

〈明浦路司視点〉

 

「輝ちゃんはもう頼んだのね。俺はファンタで」

 

「うーん俺はあえてのコーラ?」

 

「オッケー、司先生はどうする?」

 

肉を焼く音と煙が食欲を刺激する焼き肉店の中、目の前でやり取りする3人を見てどうしてここにいるんだろうと思う。いのりさんが中部ブロック大会を優勝した、その喜びをGOE+5でしっかり伝えるつもりだったのに。本当に何で俺はここに居るんだろう。

 

「司先生はお金の心配しなくて良いからね奢りだから」

 

「選手時代から大きな試合の後はあっくんに奢ってもらうのがルーティンなんだよ」

 

「まぁ当時は親の金だったけどね」

 

雉田輝也先生、王仁敦士先生、千羽輪太郎先生の3人は選手時代からの友人なのだろうとても仲が良さそうだ。それにしてもどうしたんだろう敦士先生が何かを探している。

 

「財布無くしたわ」

 

「ちゃんとカード会社に電話しな」

 

「まぁ肉食べてからにするわ」

 

「え、あっくんが携帯を無くしていない!!」

 

「珍し過ぎて明日は雪か!?」

 

「あ、この辺の肉下さい」

 

「おいこっちが動揺してる間に肉注文してやがる」

 

「その肉の会計誰がを持つと思ってんだよ」

 

怒涛に流れていく会話について行けない。本当になんで呼ばれたんだろう、心の中に喜びGOE+5のいのりさんを投影し心を癒す。

 

「一人で行動してて携帯無くしてないの珍しくない?」

 

「3カ月ぶりとかかな?どうしたんだ」

 

「んー、サチに探して貰った」

 

「はぁ!?お前またサチを頼ったのか。キレて無かったか?」

 

王仁先生の言葉に雉田先生が勢いよく立ち上がり呑気に肉を食べる王仁先生の肩を揺らす。冷や汗を垂らしながら言うその姿は何かに恐れているようだ。話に出てきたサチって誰の事だろう?聞いたことの無い名前だ。

 

「あの、サチさんってどなたですか?他のクラブのコーチの方とかですか?」

 

「あぁゴメンね司先生、サチって言うのはスケートに何も関係ない共通の友人の事だよ」

 

「良い奴なんですけどお姫様に関連する事を邪魔すると本当に怖いんですよ。そのうち関わる事になりそうなんで司先生も気をつけて下さいね。冗談抜きで怖いんで」

 

「え!?俺も関わることがあるんですか」

 

「まぁ間違いなく会えますね。彼が執心する姫はあの岡崎いるかだからいのりちゃんが上に行けば確実に。会えたら仲良くした方が良いですよ色んな事で頼れるんで」

 

「俺も試合前にコンビニ行く間愛花の面倒見てもらったり財布を探すのを手伝ってもらったり色々してくれるよ」

 

「いや愛花ちゃんの面倒はお前が見ろよ」

 

とんでも無い事を言う王仁先生の頭を叩く雉田先生、多分この程度の暴力は日常なんだろうな叩かれた王仁先生含め誰も意に留めてない。それにしても岡崎いるか選手か、ここにいる3人のコーチはいのりさんが彼女と同じステージに立つと思ってくれているのか。

 

「まぁ今はサチくんの事なんてどうでも良いじゃないか。今日はもっと別の話をしましょうよぉ」

 

千羽先生が肉を一口食べてから急に俺の肩に腕をかけて詰め寄ってくる。とんでもない勢いに少し引いてしまう。

 

「来月の全日本ノービスA、ここ数年光選手を除いて1位から10位を近畿東京に独占されてしまっています。このままで良いのか俺達名古屋、という訳でこの現状を打開すべく今日は優勝した結束いのり選手を1年でここまで伸ばした司先生をお呼びしました!!」

 

ここで俺ですか!?という顔で千羽先生の方を見るががっしりと組まれた腕からタダ飯食えると思ったのか逃さねぇぞという意思が伝わってくる。

 

「お?敦士じゃん」

 

どう答えたものかと千羽先生の圧に負けずに考えていると助け舟のようにガタイの良い二人組が現れる。五里誠二先生と鴗鳥慎一郎先生だ。どういう経緯か同席することになった。

 

(一緒に食事出来るのは嬉しいんだけどどうして鴗鳥先生の隣なんだ。それでいてこの面子でなんで俺が上座なんだ?)

 

一難去ってまた一難、千羽先生の圧力から逃れることが出来たが今度は鴗鳥先生が隣に配置されて緊張する。そんな俺を他所にコーチ間で会話がされる。

 

「いいな〜名港ウィンドの進出する3人は3回転ルッツを持ってて」

 

「そうだぞ慎一郎!!ずるいぞ!!!」

 

千羽先生の狙ったようなぼやきに迫真の勢いで同意する五里先生。とんでも無い勢いで言っているから騙されそうになるがずるいぞってなんだ。

 

「夕凪ちゃんとかどうして急に飛べるようになったんだよ、教えてくれよ慎一郎!!」

 

「本人の努力ですかね…」

 

「また当たり障りのない回答!!」

 

そんなコーチ達の会話をいのりさんの指導に活用できる所があるかも知れないと思いアンテナを張って会話を聞き逃さないようにする。こんな沢山のコーチが集まっている事なんて珍しい、この機会も活用しないと勿体ない。

 

 

 

 

 

最終的に色々な話を聞くことが出来たので勉強になったと思う。ただサチさんには申し訳ないなと思う。全員が知っている共通の人物ということで度々話に出てきてはエピソードを毎回一つ聞かされてしまった。岡崎いるか選手に会いたくて熱なのに練習に来た話とか岡崎いるか選手と喧嘩して本気で泣いてしまった話とか本人とまだ会ったことないのに詳しくなってしまった。サチさんを自分に置き換えると凄い恥ずかしい気持ちになるので会うことがあったら謝ろうと心に決めた。

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