機動する世界の狭間で:A Robot Meets a Girl Across Variable Worlds 作:るろうに2025
Beginning
夢の中。果てしない、夢の中。
黒い、ただひたすらに黒い世界。なにもない世界。
私、
どこに向かうでもなく、なにに走るでもなく。ただひたすらに、走っていた。
遠くに微かに光が見える。指ですり潰せそうな小ささの、微かな光。
それを見つけた時、私は足を速めた。多分人生で最も速く走っているのに、少しも疲れは溜まらない。
光は次第に大きくなっていく。指のサイズから、掌へ、腕へ。
何分、いや、何時間だろうか。ようやく光に達した時、私は飛び込んだ。
その先にあったもの。それは。
海だった。
海の上空。その向こうには街が広がっている。親によく連れていってもらっていた赤と白の塔、東京タワーがある。
――とすれば、ここは東京湾?
その時、私の横で声が跳ねた。見ると、レモンイエローの髪をした少女がシートに座りながら叫んでいた。
『うるっ……さい!黙って!!』
『しかし
『しかしもでももない!』
少女が鋭く伸ばした足が空を切る。
私の頭に少女の思考が流れてくる。複雑な思考の中に、聞いたこともないような固有名詞が散らばっている。
『ちっ……。左脚と右脚半分、それに右腕も喪失。おかげでバランサーはガッタガッタ。アイカメラだって半分逝ってる。よくこれで動かせてるわね、わたし』
どうやらモニターらしき空間の中に、ロボットのような人型の図が表示される。少女が言った通りの場所が赤く点滅している。
『ごめんね……
少女はロボットを真鶴と呼んだ。それがこの機体の名前だろうか。
『でも、負けるわけにはいかないんだ。ここで負けたら、東京が火の海になっちゃう。それだけは、避けないと』
少女はレバーをグッと握った。モニターが空高くを見上げる。
その先には、漆黒のロボットがいた。銃をこちらに向けている。
『わたしを殺す……?そんなの』
少女がレバーを動かすと、モニターに照準が現れた。敵機の心臓部を狙っている。
『100万年早いわ!!!!』
少女がボタンを押すと、巨大な銃弾が放たれた。弾は敵機が放った弾と空中で交差し、そして。
敵機の心臓部を貫通した。東京湾の空に、赤くて黒い華のような爆発が散る。
『はあっ……はあっ……』
『お疲れ様でした……。だ、大丈夫ですか?』
『大丈夫よ、心配させたわね』
少女は額に手を当て汗を拭った。
『ありがとう、真鶴。わたし、仲間に会えるかなぁ……?って、機械が話せるわけないか』
少女は笑みを浮かべた。どこか、儚げな笑顔だった。
『あれ?誰かわたしを見てる?』
少女は私の方を振り向いた。どうやら私は見えていないらしい。
『気のせいか……』
少女が呟いた時、私の視界が急に開けた。よく見た天井が網膜を刺す。
ピピピ……。ピピピ……。
私の手がスマホへと伸び、アラームを止める。
背中を床敷きのベッドから起こし、陽の差す窓の外を見つめる。
「あれ……私、夢、見てた……?」
起きてから数秒しか経っていないのに、夢の内容はすっかりと忘れていた。
『機動する世界の狭間で』