機動する世界の狭間で:A Robot Meets a Girl Across Variable Worlds   作:るろうに2025

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ep.10-5 Adapted

「敵が、15体……」

 

 私は白龍のコックピットの中で、報告で受けたその数字を反芻した。広大な夜の海を、月明かりと眼下の街の光が照らす。

 

「はい、三鷹市上空に大規模な空間動を確認しました。揺れの大きさから、12から15体ほど出現すると思われます」

 

 モニター上に表示された中津川さんの表情が強張って見える。おそらく、オペレーター陣もここまでの数は想定していなかったのだろう。一拍遅れて優月の声がスピーカーから流れる。

 

「三鷹上空って、まさにここだよね?」

「うん……でも、まだなにもないよ」

 

 縮小地図上では、白龍と真鶴は三鷹駅上空5kmの高さにいることになっている。報告通りの場所だが、モニター上ではなんの異変も起きていない。

 

「空間動は目には見えない」

「その声は……!」

 

 優月が歓喜の声を上げる。通信に割って入ったのは、智だった。

 

「神谷くん!」

「今回はオペレーターとして指揮をとらせてもらう。いままでの2人では勝てない。だが、指示通りに戦えば絶対に乗り越えられる」

 

 その声は驚くほど頼もしかった。絶対的な確信に満ちていた。

 

「杏子ちゃん!神谷くんの戦略は絶対だからね!」

「う、うん……わかったよう」

 

 私は押されるままに返事をした。操縦レバーを握る力が強まる。

 

 ――大丈夫、きっと大丈夫。

 

 自分を鼓舞する。怖くないと言えば嘘だ。だけど、いまはユズと神谷くんの言葉を信じるしかない。

 

「さあ、出るぞ」

 

 神谷くんの静かな声が、戦場を支配する。

 

「距離、600」

 

 胸がざわつく。眼前にあるのは、夜と月と街だけ。

 

「500」

 

 レーダーにも、肉眼でも確認できない。だが、敵はすぐそこにいる。

 

「400」

 

 手に、全身に緊張が走る。

 

「300」

 

 でも、これまでと違うことがあった。

 

「200」

 

 ユズと一緒なら、神谷くんと一緒なら。

 

「100」

 

 大丈夫。

 

「0、お出ましだ」

 

 その瞬間、空が割れた。

 

 キィーン!!

 

 甲高い音がコックピットを震わす。思わず耳を塞ぎそうになる。

 

 空にみるみるうちに亀裂が入っていく。その中から、数多の影が見えた。

 

「敵機の数……8、9、10……」

 

 智はゆっくりと増えていく数を数えた。

 

「全部で……15。うち無人機14、有人機1」

「有人機?」

 

 優月が確かめるように復唱する。白龍のモニターにも同様の情報が表示された。

 

 富士山麓の戦いではいなかった、有人機。その存在が、私の心を揺らした。

 

「焦るな、まずは出方を伺う」

 

 智の言う通り、敵にはまだ攻撃する様子はなかった。

 

 ――でも。

 

「あの真ん中のロボット、見覚えがある」

 

 私がそう呟くと、モニターにとある文字が出た。それは、過去に戦った機体と特徴が一致していることを伝えるものだった。

 

「また相まみえたな、白き魔物の操者よ」

「……!」

 

 響く声、鈍い声。

 

 街を、私の大切なものを壊すと抜かした声。

 

「貴様らの街が見えるな」

「……また来たんだ」

「覚えているか、思ったよりは賢いようだな」

「忘れるわけ、ないでしょっ」

 

 吐き捨てるように私の口から言葉が溢れる。私の手を微かな怒りが帯びる。

 

「白き魔物の操者よ」

 

 敵の有人機がゆっくりと前へ出る。周囲の無人機がそれに従うように隊列を整えた。

 

「貴様らは、実に面白い。幾度も生き延び、なお抗う。その愚かさは、もはや賞賛に値する」

「勝手言ってくれるね……」

 

 優月の口調が険しくなる。

 

「聞いたよ、わたしの仲間に舐めたこと言ったんだって?」

「貴様の仲間に?我は当然のことを言ったまでだ。これは戦争だ。貴様らが守らんとするものを壊すのは当然のことだ。責めるべきは、貴様らの弱さだ」

「ほざくなあっ!!」

 

 優月の怒声がスピーカーを揺らす。これまで聞いたこともない口調に、思わず身が引き締まる。

 

「わたしはっ……わたしたちは!あんたのような奴には負けないっ!街も、友達も、守ってみせる!!」

「守る、か」

 

 敵の有人機が、わずかに笑ったように見えた。機体の頭部がゆっくりと傾く。

 

「ならば見せてみよ。貴様らの守るという幻想が、いかに脆いかを」

 

 敵の無人機が散開した。上下左右、あらゆる方向に散らばり、こちらを睨みつける。

 

 それは、夜空全体が敵になったようだった。

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