機動する世界の狭間で:A Robot Meets a Girl Across Variable Worlds   作:るろうに2025

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ep.20-2 犠牲

「和解……?」

 

 私は2文字を口の中で転がした。思ってもみない事態に、頭の処理が追いつかない。

 

「はい。私たちは和解をするために来ました」

「和解、ねえ……」

 

 優月が無線に割って入る。不満げな様子が言葉だけでも伝わってくる。

 

「あなたたち、それで許されると思ってんの?」

「……それは」

「わたしたちがどれだけの犠牲を払ってきたと思ってんの?どれだけ街を焼かれ、人を殺され、友達を傷つけられ……。それで、立場が危うくなったら和解しろって?ふざけんのも大概にしなさいよ」

 

 優月は鋭い言葉で相手を刺し続けた。

 

「わたしも、杏子ちゃんも、神谷くんも。死ぬ気で戦ったし死にかけたこともある。そんなことも知らないでよくも……」

「話を!話を聞いてほしいのです」

 

 ハレリールが必死そうな声で訴えかけた。恐怖で声が震えている。

 

「私たちは確かにあなた方の世界を侵略し、虐殺をしました。その点については弁明の余地はありません。本当に申し訳ありませんでした。ですが、あなた方にどうしても伝えたいことがあるのです」

「なによ、その伝えたいことって」

「それは、この戦争の目的についてです」

 

 ――目的。

 

 いままで考えようとして、しかし意図的に避けていたこと。

 

「私たちの王、レブリンはこの戦争の目的を私たちの世界の民が飢えないため、生きながらえるためと説明してきました」

「アリアから聞いたわ。身勝手な理由で戦ってるってね」

「はい……。しかし、それは全くの出鱈目でした」

「出鱈目?」

「レブリンにとって、国民などどうでもよかったのです」

 

 三鷹で戦った時の記憶が蘇る。月光をバックに立つ、レブリンと名乗った男の機体が。エルハ兵の思念を弄んだ男の機体が。

 

「レブリン……彼の目的は別にあったのです。私たちは騙されていました」

「じゃあ、その真の目的とやらってなんなの?」

「それは……まだわかりません」

「はあ?」

 

 優月の呆れ声がコックピットを満たす。

 

「そんな話を信じろっていうの?できるわけないでしょ」

「勝手な話なことは重々理解しています。ですが、わたしたちに戦う意志はありません」

 

 タマナというらしい女性の張り詰めた声が鳴る。

 

「現に、こうして攻撃もしていないじゃないですか」

「そんなことで信じられるわけ……」

「信じてください!」

 

 タマナは必死に叫んだ。枯れそうな声で、いまにも泣き出しそうな声で。

 

 けれども、智の報告が状況を一変させた。

 

「各機。オウラン周囲に高エネルギー反応を確認した。攻撃が来るかもしれない」

「え?だって……」

「やっぱり……」

 

 困惑する私をよそに、モニター上の優月の目が鋭くなる。

 

「そうやって隙をついてわたしたちを騙して……!」

「えっ……?どうして……!?」

 

 タマナは意表を突かれたような反応をとった。まるで、機体が自分の意思に反して動いているような、そんな反応に感じた。

 

「どうして、動いてるの……!?」

「うっさい!この卑怯者が!!」

「信じて!機体が勝手に……!」

 

 オウランの砲門に光が満ちていく。その先にあったのは、千葉の市街地だった。

 

「聖堂!砲門を撃て!」

「わーってる!!」

 

 すぐさま真鶴のレールガンから弾が発射された。狙いは正確だった。

 

 だが、直撃する寸前で弾は弾かれた。モニターに敵機を取り囲むバリアのようなものが表示される。

 

「そんな洒落臭いものまで!!」

「止まって!止まれ!!」

 

 タマナが悲鳴をあげる中、私はペダルを踏み込んだ。白龍のスラスターが噴かれ、敵機目掛けて急加速する。

 

「ゼロ距離なら……!」

 

 それも無駄だった。敵機に迫った時、あたかもなにか硬いものに衝突したような衝撃が白龍の全身に押し寄せた。速度計が低い数値を表示する。

 

「これもか……!」

 

 バリアは攻撃のみならず、機体すらも通さない仕組みのようだった。

 

「来るぞ!」

 

 智が叫んだ瞬間、コックピットが真っ白に染まった。

 

「なっ……!」

 

 爆音と共にオウランから発射されたビーム砲が放物線を描く。

 

「あっ……あっ……」

 

 ハレリールが言葉にならない声を上げた時、ビームは都市に着弾した。半径200mもの巨大な爆発が起きた。青空が紅に落ちる。

 

 その爆発の下で起きた惨劇は、想像に難くなかった。

 

「うっ……!」

 

 私は口を押さえた。そうでもしないと正気が保てなかった。

 

 ――いまの爆発で……。

 

 何人死んだのだろう……?

 

 その現実を、私は直視しできなかった。

 

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