IS 〈レプリカでも人生楽しみたいじゃん?〉   作:紅露雨

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まじで、ISである必要ねえじゃん。


第一一話――parallel world traveler.

「「レッツパーリィ!!!!」」

 

 言うが早いか、二つの黒は喉笛を掻っ切らんと獲物へと向かう。

 

 剣を振りかぶった二人は音よりも速く、その得物を振りかざす。

 超音速の剣撃。しかし、晴久からは殺意を感じない。

 殺意のこもっていない一撃、それでも一撃必殺を誇る一撃。しかし……やはり温い。

 受けた(つるぎ)は前回よりも遥かに軽い。

 

「その程度の攻撃で勝てると思ってるのか?」

「こちとら生憎、お前と違っていつでも全力が出せるわけじゃないからな!」

「なら、勝つのは俺だ!!」

 

 切る、斬る、キル。

 壊れた人形の如く、ただ目の前の敵を排除する為だけに。

 余計なことは考えず斬る事だけを考えて。

 ――全ては終わってから聞けばいい。

 

「チッ……マジで押されてるじゃねぇか」

 

 不意に弾かれ距離を取られたが、超高速戦闘では視界=射程。一瞬で離される距離など一瞬で詰めれる。

 

「遅い」

 

 斬って斬って斬る。ただひたすら、飛び道具なんて一切ない。

 お互いに小細工など無い、勿論俺も能力(スキル)は使わない。

 

 あれだけ押されていたのが不思議だな……。

 やはり、全力じゃなけりゃ取るに足らない。

 

「わーったよ……使いたくなかったが……展開(オープン)

「今更そんなもので――っ」

 

 数十秒はたっただろうか、再び弾かれ距離が開く。

 黒助が出した物は一丁の拳銃。形を形成したと同時に放たれた弾丸。

 その弾丸は正確に俺の肩をとらえ、瞬間、貫かれたかのような痛みが走った。

 シールドエネルギーは50そこそこ減っている。……ただの拳銃で?

 

「お察しの通り()()は競技用じゃない。死んでくれるなよ?」

 

 火薬が2度、3度と炸裂する。そのたびに減っていくシールドエネルギー、襲いかかる激痛、攻守は逆転した。

 

 

 ◇

 

 

 ――よく見ろ。

 

 必死に痛みに耐える中、どこからか声が聞こえた。それは聞き覚えがあるようで、全く知らない声。

 つか、見たくらいで避けられるわけないっての。

 

 ――避ける必要なんてない。

 

 マガジンの中身がなくなるまで耐えろっていうのか? 残量は3千ほどあるが……。

 

《秋華――エネルギー充填……完了。》

 

 勝手に秋華へと充填されるエネルギー。つまり斬れってことか。

 

 落ちる撃鉄、飛ぶ弾丸。飛んできた場所に秋華を構える。目測で20mほど、動くなら今しかない。

 

 禍々しくも神々しい光、激しいようで静かな力。――一閃。

 消える弾丸、切り裂かれた空間、飛ぶ斬撃。それは、新たなる力の開放。

 避ける、避けられる。しかし、その一撃は天を穿った。アリーナの天井がまたしても破れた。

 

「……は?」

「ここからは俺様のターンだな? 派手に行くぜぇ!!」

「いやいやまてまて! お前ってそんなキャラだったか!?」

 

 勝つために動き出す。試合を楽しまない戦闘、後は早かった。

 秋華を薙ぐと斬撃が飛び、避けた所へ桜花を放つ。地味な攻撃だが見た目は派手、一種の弾幕を形成し晴久へと向かう。

 やがて、シールドエネルギーが尽きたのか墜落した。うん、ハイパーセンサも相手のエネルギー切れを捉えてる。

 

 

 ◇

 

 

「はぁ……負けは負けだ、言えばいいんだろ言えば」

 

 ついに晴久の正体が……

 

「俺は別の世界、所謂平行世界から来たんだ」

 

 平行世界か。あの空間は別の世界だった。……俺も平行世界からやってきた住人の一人か。

 

「元々居た世界じゃこれでも力不足なんでね、いろんな世界に介入して力を付けて帰る。それが目的さ」

「じゃあ、なんで襲撃を知っていたのさ」

 

 目的はわかった。俺だって元々この世界の住人じゃないし、そこはまあいいだろう。俺は人間なのかも怪しいけど。

 だけど、謎のISによる襲撃の予言や、俺がイレギュラーだってこと、一夏に対して言った主人公っていうワード。

 俺の予想が正しければ……この世界はたぶん、いやほぼ間違いなく創作の世界。

 

「……この世界の未来を知っているから、としか言えねぇな」

「別に隠さなくったっていい、もうなんとなく想像できちゃってるから……」

「どんな想像かはしらねえけど、それは確実に禁則事項に触れる……俺からは言えない」

 

 別に言われなくたっていい、間でわかるさそんなもん。

 

「この世界は、創作なんでしょ?」

 

 世界が止まる。たった一つの質問。触れてはいけない禁忌。

 今頃ピットでは俺達の行動に疑問を抱いているだろう。もしくは呑気に祝杯でも上げる準備をしているのか。

 

「…………主人公はお前なのかもな。あーあ、オリ主物かー」

「なに自己完結してるのさ、俺にも教えてよ」

「いやなに、まあお前がそう思うならそれでもいいんじゃないか? ただ、これだけは言わせてくれ」

 

 突然俺と晴久の間に、黒いワンピースを着た少女がにゅっと現れる。

 黒いIS、黒のロングコート、黒いワンピース。圧倒的な黒だな、おい。

 

 ( ^ω^)・・・。( ^ω^)おっ?(;゚ω゚)おっ!!?

 

「いやいやいやいや、おかしいでしょ。なんで何もないところから人が生えてきたのさ!?」

「こいつはこういう奴だ、気にしたら禿げるぞ」

 

 ドヤ顔で仁王立ち、なんだろう……すっげー殴りたい。

 

「待ちたまえ少年、なんで拳を固めているんだい? いや、本当」

 

 殴ろうと握り拳を作ると体を震わせ怯える少女。殴る気も失せる。

 いや、それよりなぜこのタイミングで現れたのか気になるな。

 出てくるにしてももっと他にタイミングがあるはずなのに。

 

「……まあいいか、君は誰?」

「私かい? 私の名はアゲハだ」

「名前を聞いているわけじゃないんだけど」

「ふむ、それはすまなかったね」

 

 失礼。と一礼するアゲハ。本名かどうかはこの際おいておこう。

 

「レギオン【Black★ore】のマスター……皆からは【死の抱擁】とか単純に【死神】と呼ばれているよ」

 

 余計わけわからん。まあ、これ以上水を差しても余計に時間がかかるだけか。

 

「それで? 死神さんはなんでここに来たのさ」

「実はハルク……晴久君をこの世界に送り込んだのは私なのだよ」

 

 私は死んだ、スイーツ(笑)

 つまりどういうことだってばよ? 晴久をこっちに寄越した人が来たってことは晴久が帰るってことか?

 

「まあいいや、で? 晴久を連れて帰るの?」

「先ほどの襲撃を見てわかったのだが、どうもハルク……晴久君がいると世界がおかしくなるみたいだからね」

 

 ふむ。あれか、今回の襲撃は晴久とこのアゲハってやつのせいか。

 ……。やっぱ殴ろう。

 

「ああ、あまり私に触れないほうがいいぞ? こっちでいう単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)みたいなもので――」

「――装甲が崩れ落ちた!?」

「私は忠告したぞ?」

 

 殴ったと思ったら受け止められたと思ったら拳の装甲が崩れ落ちた。

 いや、崩れ落ちたのもビビったけど、ほぼノータイムの、しかもISでの攻撃を素手で受け止めたことに驚きだ。

 ……たしかに晴久より全然強い。

 

「不用意に干渉するのもよろしくない。そろそろ私達は戻らせていただく」

 

 アゲハが何もない空間で手をスライドさせている。ホロメニューみたいなものか?

 

「じゃあまあ、そういうわけなんで、名残惜しいけど俺も帰るわ」

「……また会う事があれば、今度は全力全開でもう一度――」

 

 アゲハが晴久の腕を引っ張ると足元が黒く光りだす。

 ……お別れ。

 

 たしかに短かった、たしかに互いの存在に違和感を覚えていた。

 それでもやっぱり、別れって寂しくて……辛いものなんだ。

 

 ――さよなら。

 

 

 ◇

 

 

 気圧の抜ける音と共に開く扉。

 謎のISを抑えていたせいか、猛烈にお腹がすいたので食堂へと向かった。

 中では、織斑千冬から説教を受けている篠ノ之、生徒に囲まれているチビ、セシリアの健闘を称える音羽先輩……何も変わらない1年生や上級生の姿がそこにあった。

 

 あんな事があったのに、呑気なものだ。

 

 こちらに気づいたのか、手を振っている音羽先輩。めんどくさいが、呼ばれたのなら向かう他ないだろう。

 

「お疲れ様。セシリアちゃんも活躍してたけど、()()で全部引き付けるなんて事を出来る娘なんて、たっちゃん位しか居ないんじゃないかしら」

「おかげで私達も避難に集中できましてよ」

「……ありがとうございます」

 

 ――違和感。

 たしかに、俺はISを抑えていた。だからこそ一夏達が上で戦えていたし、それは間違いない。

 ……なんなのだろうか、この違和感は。

 

「……すまなかった」

 

 ふと感じた違和感に気を取られ、篠ノ之の接近に気が付かなかった。

 ……謝るなら、あんな真似はしないで欲しい。

 

「今回はギリギリ間に合ったからいいけど、次はないよ? たぶん」

「本当にすまない」

「ま、そう辛気臭い顔をしないほうがいいと思うよ? 一夏だって、いつまでも引きずるような女は嫌いだろうし」

「む、一夏は関係ないだろう! ……だがまあその、ありがとう」

 

 たわいのない会話。

 もし、あのIS達が俺に気を取られずに一夏を沈めに行っていたら?

 もし、一夏達があのISに負けていたら?

 それ以前に、中継室に俺が間に合わなかったら?

 この笑顔はなかったのだろう。負傷者0人だからこそ、こうやって笑っていられるのだから。

 

 

 ◇

 

 

「お疲れ様」

「お前もな」

 

 晩飯も食べ終わり自室に戻ると既にベットでは湿布まみれの一夏が横たわっていた。

 まるで屍だな。いや、返事したので“ただのしかばね”ではないか。

 時間的にはまだ寝るには早いが、黒桜に乗っていたとはいえ流石に疲れた。一夏なんて普通のISだから余計だろう。

 

 コンコン、と部屋にノックの音が響く……こんな時間に誰だよ。

 

「痛っ……」

 

 ノックに反応して起き上がろうとしたのか……馬鹿だな。

 

「馬鹿なの? 大人しく寝てなよ」

「じゃあ真由が出てくれよ」

「嫌だよめんどくさい」

 

 その言い分は尤もなんだけどね……めんどくさいものは仕方がないだろ?

 当たり前だけど、俺が対応するなんて有り得ない。敵だったら真っ先に殺されるしな。

 というか、寝てるっていう体で居留守を使ってもいいんじゃないだろうか。あれだけの戦闘をしたのだ、今夜は誰だって早く寝るだろ? 俺だって寝たい。

 

「痛っ……はぁ、どちら……箒か、どうしたんだ?」

 

 という訳でいつものように一夏が対応している。だから敵だったらどうするんだよ、まあ敵だったらノックしないけどさ。

 つか、その怪我でよく起きれたな……

 にしても、篠ノ之ねぇ……

 

「あ、あのだなっ。今日の戦いだがっ」

「ん? そういえば試合はどうなったんだ? やっぱり無効試合か?」

「あ、ああ。それは当然だ。あんなことが起きてはな」

 

 まあ、当然だろう。あんなことが起きたらねぇ。

 

「お、お前は何を考えているんだ!」

「へっ?」

 

 いきなり怒鳴りだしたぞ。俺からしたらお前が何を考えているんだと怒鳴りたいんだけど。

 まあ、どうせいつものツンだろうから気にしないけど。いや、これで本気で怒ってたら俺が本気で怒る。

 

「勝てたからいいようなものの……あのような事故、先生方に任せておけばいいだろう! 過剰な自信は身を滅ぼすという言葉を知らんのか!?」

「あ、勝ったのか俺」

「あんなものは勝ったとは言わん!」

 

 どっちだよ。というか、結構本気で激おこぷんぷん丸じゃん。

 出るべきなのかね?

 

「もしかして、心配してくれたのか?」

 

 どうとったらそうな――「し、していない!」心配だったのか……。

 

「誰がお前の心配などするものか! ……と、とにかくだ! これで訓練のありがたみもわかったことだろう。これからも続けていくぞ。いいな?」

 

 訓練って、剣道してもな……。

 

「あー、わかったわかった」

 

 って、わかっちゃうんかい!

 

「わかればいいのだ、わかれば……」

 

 なんだかんだ言っても、このふたりは幼馴染なんだな。俺じゃわからん。

 にしても、いつまで居座るんだ。いや、玄関で立ち話だけど。

 

「一夏」

「ん?」

「その、だな。戦っているお前は……か、かか、かっ」

 

 ホーホケキョ。あ、これはカッコーじゃない。

 

「格好よかっ……な、何でもない!」

 

 ――ヘタレが! そこまで言ったら言えよ! まあ、一夏は聞こえてないんだろうな。なにせ、幼馴染からの好意を全く気づかない朴念仁だからな。いや、篠ノ之のは俺もちょっと理解に苦しむが。

 

 まあ、そろそろ切り上げるだろう。本気で眠たくなってきたので、完全に寝る体勢になる。

 

 

 だがまあ、最後の最後に爆弾は投下されるものである。

 

 

 ――――付き合ってもらう!!

 

 おめで……いや、ご愁傷様です。

 心の中で一夏の冥福を祈り、今度こそ俺は意識を手放した。

 

 

 ◇

 

 

「ハルク、本当に良かったのかい?」

「……別に、元々は居なかったはずの俺の記憶なんていらねぇだろ」

 

 俺は別の世界から来た異物だ。……異物は、どこまでいっても異物でしかない。だから、俺がいた証なんて残しちゃいけない。

 それに、この世界はあいつが創る物語なのだから。

 

「じゃあな、主人公」

 

 

 

 ――例えこの世界が創作だったとしても、この世界は紛れもない本物で、お前はたしかに存在している。




いやー、お○ったお○った。ついでに原作一巻おわり!
前書きでも書いたけど、ISである必要ないじゃん!?
いいもんいいもん。これで、晴久退場したからISになるもん。
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