IS 〈レプリカでも人生楽しみたいじゃん?〉   作:紅露雨

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ゴスペル終わるまで多分原作沿い。
多分でもなんでもなく原作沿いですね。
だってプロットなんてないもん。


第一四話――緑色のプードル。

 第二グラウンドに俺は一人で立っていた。皆とは違って着替えていないから当然といえば当然だろう。

 だが、クラスメイトの半分以上はすぐにグラウンドに集まる。早く来る女子達は制服の中にISスーツを着込んでいるため、すぐに着替えてこれるのだ。

 女子達(いわ)く、中に着ていてもあまり違和感は無いらしい。流石(さすが)ISに最適化されたスーツ、無駄に性能が高い。

 まあ欠点があるとすれば、皮膚(ひふ)の電位差を感じ取るために密着するということ。……つまり目のやり場に困る。

 着ている本人たちは俺たちの目は気にしていないみたいだが。

 現に、たわいのない会話に花を咲かせる者もいれば、準備運動に軽いストレッチを始める者もいる。中には少しばかり過激なスキンシップを行う者もいる。

 もしも弾がこれを見たのなら、桃源郷(ユートピア)だ! とでも言うだろうか。絶対完璧超次元的に言うだろうな。……何言っているんだ俺は。

 

「すまない、少し良いか?」

 

 現実逃避中の俺に話しかけてきた声は、聞き覚えのない、低く、鋭い声。

 正確には今日までは聞き覚えがなかった――

 

「聞こえていないのか?」

「なに?」

 

 少々の怒気を(はら)んだ声に渋々振り返るとそこにはやはり、転校生が立っていた。

 勿論デュノアはまだ来ていない。銀髪の方……ボーデヴィッヒだ。彼女もまた、ほかの女子と同様にISスーツに着替えている。

 女子っぽさの欠片もない軍服のような制服から、ボディラインを(無駄に)強調するISスーツ。自己紹介の時からはその姿は想像もつかない。

 灰色のそれは慎まやかなモノも強調している。が、それを気にしている様子は特に見られない。

 因みに、女子用のISスーツはスクール水着のようなレオタードと膝上サポーターである。ボーデヴィッヒは左足にナイフホルダーをつけているが、それに視線を誘導されてしまう。

 俺は女子を凝視する変態ではないと、一応言っておく。

 

「しっかりとした自己紹介がまだだったと思ったのだが……」

「そ、それはごめんね。俺は火神真由」

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。ドイツ軍に所属している。これからの学園生活、よろしく頼む」

 

 雰囲気通り、本物の軍人さんでした。

 俺と仲良くしようとしているので男嫌いではないはずなのだが、それなら一夏がなんで嫌われているのかさっぱりわからない。

 もしかしたらドイツ軍で何か事を起こしたのかも知れない。例えば中学生の時、仮入隊をしていたとか。いや、普通そんな事があるなら日本の軍隊に行くはずだし、そもそも今の軍隊は男手など必要としていない。……余計わけがわからなくなった。

 

「……そこまであからさまに警戒されると、流石の私でも少しくるものがあるぞ」

「いや、教室のあれ見たら嫌でも警戒するでしょ」

 

 実際のところは他の考え事をしていただけなのだが……まあ、合わせておいて損はないだろう。

 しかし、目の前であんな事をされた後で警戒するなという方が無理がある話だ。

 もっとも、俺は警戒なんて元々していないけど。していないはずだ。

 

「まあ、そんな事はどうでもいいか。よろしくね、ボーデヴィッヒさん」

「よ、よろしく。ら、ラウラでいいぞ? 呼びにくいだろう?」

 

 特に呼びにくいということは無いが、今朝の一件からとっつきにくい雰囲気を出している彼女と親しみを持ちやすくするには有難い申し出だ。

 断る理由もないので有難く了承する。

 

「それじゃあそう呼ぶことにするよ。俺も真由でいいから」

「了解した……私は何かおかしなことをしたか?」

 

 どの線もピンと張った綺麗な敬礼。軍ではそれが当たり前なのかもしれないが、どうしようもなく俺の目には微笑ましく映り、ふと笑みがこぼれてしまった。

 それに気付いて少し不機嫌になってしまったので、首を横に振り意味は無いことをアピールする。

 

「それなら良いのだが」

 

 少し腑に落ちていない様子だが周りを見てはっとなる。

 気が付けば織斑千冬がいるではないか。おそらくラウラもそれに気づいたのだろう。

 

「そろそろ列になったほうがいい。……教官は怒らせると怖いからな」

「そうだね。とりあえず列に入ろうか」

 

 ラウラと列に入る。しかし、もうそろそろ着いてもいい頃なのに一夏達が居ない。

 ……もしかしたら女子に捕まったのかもしれない。

 言うなれば俺たちの状況は放し飼いの珍獣だ。視界に入れば囲み、捕まえようとする。特にデュノアの存在は他のクラスの女子をいつもより騒がしく動かすだろう。

 質問攻めにでもあっているのか、群れの中を掻き分けて向かっているのか。前者に(しか)り後者に然り、少なくとも遅刻は免れないだろう。

 まあ、この心配もすぐに杞憂(きゆう)に変わったのだが。

 

「『ハハハこやつめ!』で返して欲しかったぜ……」

「もー、拗ねないでよ。一夏のギャグセンスを褒めたんだから」

 

 噂を噂をすれば影が差すとはよく言ったものだ、背後から男子の声が聞こえてきた。

 男子の声など、俺と一夏、それとデュノアしか発声出来る者はいない。……俺もデュノアも男子とは言い張るには声が高い気もするが。

 振り返ればやはり、仲良さそうに談笑(だんしょう)しながら歩いてきている二人がいた。

 視界には腕を組み、仁王立ちをする鬼もいる。

 

「遅い!」

 

 最後だったのだろう、気付けばグラウンドを歩いている生徒はこの二人だけだ。

 時間もギリギリ、怒るのも無理はないか。

 

「ふん。あれで本当に教官の弟だというのか」

「一応はそうなんじゃない? 昔の写真がないらしいから事実かどうかはわからないけど」

 

 視界の端では、眉間に(しわ)を寄せているチビもいる。

 嫌味を言われているのだろうか、一夏の顔は引き()っている。

 

「喋っとらずにさっさと並べ!」

 

 振りかざされる金棒(出席簿)は二人の脳天を捉え、軽快な音をグラウンドに響かせる。

 身内のケツ拭きは大体一夏だ。……本当、一夏は損な役回りが多い。見ているこちらが気の毒に思える程に。

 

 

 ◇

 

 

「では、本日から格闘および射撃を含む実践訓練を開始する!」

「はい!」

 

 今回は一、二組の合同実習なので、いつもよりも人が多い。そればかりか、織斑千冬への返事ともあっていつもよりも声を出しているのだろう。ラウラも敬礼しているし、それにつられて敬礼している生徒もいる。

 元気が良いに越したことはないが、返事の(たび)に耳が痛くなるのは勘弁願いたい。

 

「今日は戦闘を実践してもらおう。ちょうど、活力を持て余している十代女子が居ることだしな。――(ふぁん)! ボーデヴィッヒ!」

「一夏のせいよ!?」

「なぜ私が……」

「専用機持ちはすぐに始められるからだ。意見は認めん、さっさと前へ出ろ」

 

 急な指名に驚くチビと肩をすくめるラウラ。ベクトルは違えど、どちらも不満が(うかが)える。

 動いてストレスを発散しろということなのか、本当にすぐに始められるからなのか。織斑千冬の考える事は知らないが、経験者同士での試合を見せるのは教育として正しいだろう。

 

「少しはやる気を出したらどうだ、凰。――アイツに良い所を見せるチャンスだぞ?」

 

 ……餌を()くのは教育者としてはどうなのだろうか。ましては弟だぞ? 姉としても最低だな、おい。

 

「まあ、実力の違いってのを見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」

「ふっ……現金なものだな」

「なんだって?!」

「種馬に()びを売る手段とわかると途端に(てのひら)を返したのはどこの誰だったか」

「ぶっ飛ばされたいみたいね」

「できるものならやってみるがいい。もっとも、男に媚びることしか考えていない頭で、私に触れられるものならばな」

 

 一夏に厳しい。ではなく、俺と織斑千冬以外に厳しい。が正しいみたいだ。

 それでも、そこまであからさまに挑発する必要はないと思うが。織斑千冬が止めないのだから、それだけ筋金入りなのだろう。……なんで俺には普通なんだ?

 

「慌てるな馬鹿ども、対戦相手はそこにいる――」

 

 ようやく止めたかと思ったら、指を差した方向には誰もいない。代わりに空から甲高い風切り音が近づいてきた。

 上を見上げるとそこにいたのは、ISを身にまとった山田先生だった。

 よく見るとその挙動は急降下というより、急落下の方が表現は正しそうだ。

 

「どーいーてーくーだーさーい!!」

 

 進行方向が俺の方向じゃなかったので、特に意識することは無かったのだが……落ちた場所が相当に悪い。

 まさか、一夏に直撃するとは思わなかった。いや、瞬時にISの展開ができる専用機持ちというのだから、この中では正しい部類に入るのだが、いかんせん吹っ飛んだ後の体勢がよろしくない。

 当然のようにISを展開した一夏は、風になった山田先生を受け止めきれずに数メートルの距離を地面を回転しながらふっとんだ。

 一夏は起き上がろうとしたのだろう。地面の方向へと手を伸ばす。

 しかし、その手が掴んだものは地面ではなく、山田先生の豊満な胸だった。

 

「そ、その、ですね。困ります……こんなところで……。いや、場所の問題じゃなくてですね! 私と織斑君は教員と生徒でですね? ……ああでも、このままいけば織斑先生がお義姉(ねえ)さんってことで、それはそれで魅力的な――ひゃんっ!?」

 

 あろう事か、揉みしだきやがった。顔に似合わない、大きなそれを。無遠慮に、強引に。

 見つめ合う二人。一夏の手はまだ胸の上だ。

 ……今回は絶対にフォローしないし、できない。例え事故だったとしてもだ。

 逆に、なぜ手を動かしたのか、問いただしたいレベルだ。

 

 一夏に冷ややかな視線を送っていると、背後から金属と金属が合わさる音がした。

 ……一度だけだが、モニター越しに聞いた音。甲龍(シェンロン)の青龍刀ブーメランだった。

 それを勢いよく振りかぶって……いや、投げたらまずいだろ。

 

「――ハッ!?」

「死にさらせっ!!」

 

 案の定、一夏へと力任せにぶん投げた。

 一夏が寸前で察知、回避できたから良かったものの、普通に考えて不意打ちでこれは死ぬ。

 神がかり的な危険察知能力は流石ブリュンヒルデの弟だ。まあ、その勢いで倒れてしまったが。

 この青龍刀は投げたら戻ってくる素敵仕様なんだが大丈夫か?

 

「はっ!」

 

 二度、銃声が鼓膜を揺らす。弾丸は的確に青龍刀の両端を叩き、その軌道を逸らすことで事なきを得た。

 音の発信源は俺ではない。俺が撃ったら当たるどころか周りに被害が出る。だって散弾銃なんだもん。

 実弾兵器を持っていないらしいセシリアも違う。ラウラはまあ、論外だろう。

 ……考えられないが、そうなんだろう。事実、俺の視界には倒れたまま、しっかりと銃を構えている山田先生がいて、その銃口からは微かに煙も上がっている。

 HR前の彼女とは雰囲気も真逆といっていいほど落ち着いており、二重人格を疑いたくなる。

 流石、副担任とはいえ若いながらもクラスを任されるだけある。いや、普段があの様子でもクラスを任されているのは、IS操縦技術が群を抜いて高いからなのかもしれない。……どうして一夏相手に自爆したのだろうか。全くの謎である。

 

 いつもは(うるさ)い女子達も、これには驚きが隠せないのか開いた口が塞がらないようだ。

 

「山田先生はああ見えても元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない」

「む、昔のことですよ。それに候補生止まりですし……」

 

 先ほどの落ち着いた雰囲気は何処へやら、すぐにいつもの山田先生に戻る。

 銃を片付けると宙返りで起き上がる。いや、やっぱ誰だお前。

 勢い余って眼鏡がずれている所はやはり山田先生か。

 

「小娘ども、いつまで()けている。さっさとはじめるぞ」

 

 手を叩き、皆を現実へと引き戻す。チビは納得がいってないみたいだが。

 

「2対1? いくらなんでもそれは……」

「安心しろ。今のお前たちではすぐに負けるさ」

 

 負けると言われたのが(しゃく)に触ったのか、先程よりも目に力が宿る。

 一方で相方のラウラはめんどくさそうに首を振っていた。

 

「では、はじめ!」

 

 号令に合わせて二人とも飛翔する。それを確認してから、山田先生も後を追いかけた。

 

「中国の甲龍か。まだデータで見たときの方が強そうだが……まあいい、せめて一矢報いて見せろ」

「うっさいわね! あんたこそ足引っ張んじゃないわよ!?」

「い、行きますっ!」

 

 言葉こそいつも通りの山田先生だが、顔つきは先程と同じく落ち着いており、その双眼は狩りをする獣の如く鋭い。

 一見すると人懐っこい犬だが、狩りの本能は忘れちゃいない。

 

「さて、今の間に……ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの説明を……」




ラウラが丸くなりすぎてる……いや、逆に刺が多く……いや(ry
ラウラの動かし方が全くわからん!!

まあそんなことより

真由「一夏ー炒飯まだー?」
一夏「あのなぁ……たまには別のも「やだ」……はぁ」

みたいな日常回も書いてみたいぜ。
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