IS 〈レプリカでも人生楽しみたいじゃん?〉   作:紅露雨

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ラウラの口調ってこうでいいん?


第一七話――ワンコインルーム

「火神君、ちょっといいですか?」

 

 午後の実習も終わり、部屋に帰ろうとしたところに山田先生に呼び止められた。

 一夏とデュノアは既に(女子に囲まれながら)食堂に向かっているため俺しか居ない。置いて行かれたというよりは、人に囲まれるのが嫌だから自ら残っている。特に異性というのならば尚更である……負け惜しみでは無い。

 皆が歩きだし、誰も居なくなったタイミングで声をかけられたということは出来るだけ人に聞かれたくないことなのだろうか。

 

「何でしょう」

「非常に言いにくいことなんですけど、部屋の都合がどうにもならなくてですね、デュノア君と火神君と織斑君の誰かに都合がつくまで部屋をお引越ししてもらわないといけなくてですね……」

「俺に白羽の矢が立ったと言う事ですか」

「本当はボーデヴィッヒさんとデュノア君で相部屋の予定でしたが、早く学園に慣れる為にも在校生と相部屋にすべきと言われてしまって……」

 

 国からの圧力がかかったと考えるのが妥当だろう。貴重な男性搭乗者のデータを取るには一緒に暮らさせたほうが都合がいいからな。恋愛関係になれば儲け物、ならなくても信頼が築ければといったところか。その気になれば俺たちを組み伏せる事も可能だろうしな。させないけど。

 俺がラウラとの相部屋に選ばれた理由は、今朝の事もあるしラウラと一夏を相部屋にするわけにもいかないからか。……音羽先輩が言ったことが本当ならラウラとデュノアで相部屋になってくれるのがベストなんだけどな。

 

「まあ了解しましたよ、今朝の件もありますしね」

「そう言ってくれると助かります」

「要件はこれでおしまいですか?」

 

 話が終わったなら早く開放して欲しいものだ。炒飯を堪能する時間が減ってしまう。

 

「すいません。ここだけの話、織斑先生も気にしているみたいなので……ボーデヴィッヒさんの事、よろしくおねがいします」

「教員なんだから生徒にあまり軽々しく頭を下げないほうがいいですよ」

 

 少し歩いてから軽く振り返ると不安気な表情でまだ山田先生はこちらを見ていた。それだけ筋金入りの問題児だとでも言うのだろうか。それともただ、織斑千冬の気にする問題だからなのだろうか。

 誰彼が抱える問題を重く捉える必要は俺にはない。軽く会釈をし、今度こそ俺は食堂へと向かった。

 

 

 ◇

 

 

「と、言うわけで今日から同室で過ごすことになった」

「教官から聞いている。男女が同室になるということに些か納得が行かないが命令ならば仕方がない」

 

 しかめっ面で言い訳をしながら頷くラウラ。

 先に部屋に居たラウラに山田先生から聞いた話を告げ、空いている方のベッドへと腰を掛ける。先に説明を受けていたようで話がこじれることも無ければ、一夏と違いラッキースケベも起きない。

 

「一日しか経ってないけど、学園にはもう慣れた?」

 

 若干気まずい空気が漂う中、無言で居るのは非常に息苦しい。大凡帰ってくる答えはわかっている、しかしこれしか出てこなかったのも考えものだな。いや、お互いの仲が良くなるか悪くなるかは別に今日で決まるわけじゃないからいいのかもしれないけど。

 

「…………真由の目に映っている通りで間違いないと思うが」

「もしかしたらっていう希望がね。それに、二組の娘がちょっかいかけてたように見えたから」

「……よく見ているのだな」

「別に観察ってわけじゃないけどね。特にデュノアさんとラウラのグループは目立つから」

 

 デュノアのグループは常に黄色い声援が飛び交っていたし、ラウラのグループは逆に静か過ぎて嫌でも気になる。また何かしらの揉め事が起きる可能性もなくはないし、警戒していたかどうかで言えば、ラウラには悪いが警戒していたのだろう。

 尤も、山田先生との模擬戦が功を奏したのか、ラウラにも若干の恐怖と尊敬が芽生えているようだし、贔屓目に見ても仲良くは見えないが噛み付いてくれる生徒も居たのだから、心配は杞憂だったと考えていいだろう。

 馴染めたかどうかは別の問題なんだけど。

 

「仲良く過ごせそう?」

「別に私は馴れ合う気などさらさら無いが、そこまで大きく波風を立てるつもりも無い。……今朝の一件だけはどうしても譲るつもりは無いがな」

 

 余程の確執が一夏との間にあるのだろう。こればっかりは本人たちの問題であって、外野が手を出すのは門違いか。……織斑千冬が頭を抱えるだけで手を出していない以上、俺が深入りする問題でも無いだろう。時が解決しないから任されたのかもしれないが。

 

「譲れ無いものを譲れなんて言う気は俺にも無いよ」

「そう言ってもらえると助かる。明日も早い、私は寝させてもらう」

 

 おやすみ。そう言って俺は電気の明るさを下げシャワー浴びた。

 首から外した待機状態の黒桜が心なしか懐かしむかのように光ったような気がした。

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