女子一夏女子
女子真由女子
女子女子女子
女子がゲシュタルト崩壊ング!
第一話――女子、男子、女子。女子、俺、女子。
「――君、織斑一夏君!」
「は、はい!」
目の前の男子が立ち上がるが少し声が上ずっていて、周りからくすくすと笑い声がする。
気がついたら俺は教室にいた。
そして周りを見ると、目の前の男子――織斑一夏とやら以外は女子だった。
「ご、ごめんね、いきなり声を上げて呼んだりして。で、でもね? 出席番号順に自己紹介をしていって、「あ」から、今は「お」なんだよね。それで織斑君の番だから自己紹介をやってくれるかな。だめかな?」
と、先生らしき人物はなにやら言いにくそうに喋っている。
「え、えぇと……織斑一夏です。よろしくお願いします」
と、織斑一夏が言うと女子の目が輝いて一夏を見る。
好奇心がキラキラと……訂正、ギラギラと光っている。
「……以上です!」
ガタタッと周りの女子がズッコケる。
そちらに意識が行っていたせいで一人、接近していたことに全く気付かなかった。
織斑一夏も同様だったようで……
バシッ
「げっ! 関羽!?」
出席簿の様なもので頭を叩かれるまで気づいていなかった。
「誰が蜀の将軍か」
バシンッ!!
と再び音が聞こえる。このクラスは芸人が多いらしい
どうやらこの女性……こちらもおそらくは先生であろう彼女は出席簿で生徒に殴る癖があるらしい。
できるだけこの先生に近づくのは避けたほうが良さそうだ。
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を1年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことをよく聞き、理解しろ。出来ない者は出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠15歳を16歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
そう織斑千冬が言い放つとクラス中から、黄色い悲鳴が上がった。
「キャ―――――!!!! 千冬様、本物の千冬様よ!!」
「ずっとファンでした!!」
「私お姉さまに憧れてこの学園にやってきました! 北九州から!!」
その他の飛び交うその黄色い声を拾い上げれば、「千冬様」「おねえさま」「かっこいい」「素敵」といった感じでアイドルを前にした追っかけのようなそんな感じだった。
だが、北九州を強調しなくてもいいだろう……というか、ここは日本だったのか……
織斑千冬じゃない方の先生の髪が緑色なんだが……?
「全く……毎年よくこんなに馬鹿者共が集まるものだな。感心させられる。それとも何だ? 私のクラスにこういったやつらを集めさせているのか?」
と、織斑千冬は呆れた顔でそう言う。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!! お姉さま! もっと叱って!! もっと罵って!!」
「でも時には優しくして!!」
「そしてつけあがらない程度に躾して!!」
と、地響きが起こるかのように再び女子生徒の叫びがする。
拾い上げると「もっと叱って」「もっと罵って」「いっそ踏んで」「強く縛って」「そして叩いて」「でも優しくして」「そしてつけ上がらないように躾して」などなど……一言言わせて欲しい、変態が多すぎる。
「で? お前は満足にも挨拶ができないのか」
「いや、千冬姉……それはヘブッ!?」
織斑千冬の手が織斑一夏の頭をつかみ、机に叩きつけていた。そのままギリギリと押し付ける。
ふむ姉弟か、ならあのスキンシップは生徒へではなく弟への対応か。
「ここでは織斑先生だ」
「は、はい、織斑先生」
はぁ、とため息をつく織斑千冬。弟をみてどうしてコイツは……といった感じだったが。
すぐにキッと表情を教師のそれに正す。
女子たちのヒソヒソ話に耳を傾けると「
そんなにすごい人なのか? この人は。というかISってなんぞや?
「面倒なことはさっさと済ませたい。次は貴様だ、火神真由」
じっと俺を見て、“かがみ まゆ”と言った。それはつまり、この世界にすでに俺の情報が加えられているということだ。
俺の名前が火神真由だったかどうかは分からないが、この世界ではそういう設定なのだろう。
まあ過去やオリジナルの事は今はどうでもいい。
それに、これで少なくとも戸籍などの情報は安心できた。のだが、如何せんここがどういう場所かわからないことにはどうにもこうにも立ち回れん。
まあ黙っていても事は始まらない。ないとは思うが、出席簿で叩かれるのも勘弁だしな。とりあえず挨拶だけはしておくか。
席を立つと織斑一夏に向けられていた眼差しが俺にも向けられる。
コソコソと女子の「織斑一夏よりはマシだろ」というニュアンスの言葉が聞こえてくる。
その期待を無視し俺は、「火神真由です。よろしく」とだけいい席に座った。
バシンッ!
やっぱり出席簿の餌食になったけど。
しかたないだろう? 新人なんだ天丼くらい大目に見て欲しい。
というかさっきから徐々に威力が増しているのは俺の気のせいか?
「痛いんですけど織斑千冬さん」
もう一度こんどはコツンと頭を小突かれる。
「織斑を見て同じことをするか普通」
「まぁ普通ならしませんね。でも自分芸人じゃな」
バシッ! と叩かれる。
「先生だ。誰が芸人だ誰が」
「いた……誰ってみんな?」
俺の発言を聞いて、壮大にこける少女達。……そのリアクションに言ってるんだ俺は。
「ふん、面白いやつだな貴様。まあいい時間もないしな、あとは順番通り自己紹介をしろ」
「はい」
出席簿が飛んでくるかと思ったが、流石にそれは飽きたのか自己紹介へともどる。
織斑一夏と目があったが今は話せる状況じゃない。
「えっと、鏡……」
この女子も“かがみ”かややこしいな。
……戸籍で思ったんだが、俺の家ってどうなってんだ? あれか家なし子なのか? 其の辺の説明とか欲しかったな……
「では、諸君には半月でISの基礎知識を学んでもらう。その後の実習だが、基本動作は半月で身体に染み込ませろ。いいな? 良くなくても返事はしろ」
家に付いてあれこれ―豆腐には住みたくないなとか―考えているうちに自己紹介が終わったらしい。
「はい!」と周りの女子みんなが声を揃えて返事をする。
俺は完全に乗り遅れただけだったが織斑一夏は間をあけ、安心したといった感じにため息をつく。
「みなさんも知っている通り、ISの正式名称はインフィニット・ストラトス。日本で開発されたマルチフォーム・スーツです」
いや、知らないから。
というかなんだ? 手を振っただけで画面が出てきたぞ。そういえば自己紹介の時も机からなんか生えてたな。
「十年前に開発された当初は宇宙空間での活動が想定されていたのですが、現在は停滞中です。アラスカ条約によって軍事利用は禁止されているので、今は専ら競技種目スポーツとして活用されていますね。そしてこのIS学園は世界で唯一のIS操縦者育成を目的とした教育機関です」
つまり世界中の少年(2名)と少女を将来有望な軍人に……いや軍事利用がダメなんだっけ? まあ、芸人養成所ではないのならよかった。
「世界中から大勢の生徒が集まって操縦者になるため勉強しています。様々な国の若者達が自分たちの技能を向上させようと、日々努力をしてるんです。では、今日から三年間しっかり勉強しましょうね?」
「はい!」
周りが元気に返事をする中、織斑一夏はプルプルと震えていたと思ったらこんどはガックリといった感じだった。
後ろから見てるだけでわかるくらいに絶望一色だ。そんなに姉が担任なのが嫌なのかコイツは。